2020年2月6日、サイゲームスとアークシステムワークスの最強タッグが贈る、対戦アクションRPG『グランブルーファンタジー ヴァーサス』(以下、『GBVS』)がリリースされた。本作は、人気RPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)の登場人物を操り、世界中のプレイヤーと対戦が楽しめるほか、RPGモードではフルボイスで展開されるオリジナルストーリーが堪能できる。

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 アークシステムワークスが開発を担当する本作は、原作再現度の高いゲームシステムはもちろん、ハイクオリティーのグラフィックも多くのファンを驚愕させた。本作のグラフィックは、どのようにして生み出されたのか? 開発のキーマンであるアークシステムワークスの安部秀之氏、澤田秀明氏、関根一利氏にインタビューを実施し、グラフィックの制作秘話を中心に訊いた。

安部秀之氏(あんべ ひでゆき)

『グランブルーファンタジー ヴァーサス』デベロップメントマネージャー。アークシステムワークス所属。文中は安部。

澤田秀明氏(さわだ ひであき)

『グランブルーファンタジー ヴァーサス』アートディレクター。アークシステムワークス所属。文中は澤田。

関根一利氏(せきね かずと)

『グランブルーファンタジー ヴァーサス』リードバトルプランナー。アークシステムワークス所属。文中は関根。

インタビューで判明した“『グラブル』愛(こだわりポイント)”を動画でお届け!

 本記事のインタビューの中で判明した、アークシステムワークス開発スタッフ陣による『GBVS』のグラフィックの“こだわりポイント”を、一部抜粋して動画でお届け!! ゼタやメーテラのオリジナル衣装については、設定方法なども細かく紹介しているので必見。また、解放奥義のやられ演出なども見どころたっぷりなので、お見逃しなく。映像で観ることで、さらに美しく映える“『グラブル』愛”の数々をぜひ堪能してほしい。

【GBVS】溢れる『グラブル』愛! 『グラブルVS』のグラフィックのこだわりポイントを解説

原作再現にとことんこだわったグラフィック

――アークシステムワークスが手掛けたグラフィックのクオリティーが高くて、多くの騎空士(『グラブル』のファン)が驚いたと思います。ここまでのクオリティーに仕上げるのは、かなりたいへんだったのでは?

澤田そうですね。そもそも『グラブル』に登場するキャラクターのデザインは、アクションゲームに最適化されたものではありません。髪の毛が長かったり、マントがヒラヒラ揺れたりすると、動かすのがかなりたいへんなんです。そこで、最初はキャラクターのデザインを簡略させてもらう案もありましたが、サイゲームスさんのイラストをそのまま動かさないと、騎空士の皆さんは納得してくれないだろうと考えて、原作再現にとことんこだわって開発を進めようと決意しました。

――ファンのためにも、あえて困難な道を選んだと。

澤田それで最初にカタリナを作ってみたのですが、3Dモデルにして動かしてみたところ、「これはいける」と手応えを感じました。残りのキャラクターも、再現度を高める方向性で開発を進めました。

――カタリナもマントが長いので、開発するのはたいへんだと思いますが……。

安部カタリナはもちろん、全体的に揺れる衣装のキャラクターが多くて、モーションを作る開発スタッフは苦労するだろうなと思いました(苦笑)。それに、格闘ゲームなので60フレームで動かさないといけません。ある程度形になるまでは、ちゃんと動くかどうか不安でしたね。

――ちなみに、カタリナから開発を始めた理由は?

澤田最初に作るなら、スタンダードな立ち回りのキャラクターがいいと考えました。参戦するのが決定していたキャラクターの中だと、グランとカタリナがスタンダードなタイプなのですが、より3Dモデルを作るのがたいへんそうなカタリナから着手しました。

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――やはり最初の時点で、参戦するキャラクターはある程度決まっていたのですね。

澤田参戦キャラクターは、格闘ゲームで言うところのスピードタイプや、投げキャラといったように、属性に合わせてある程度決まってはいましたね。ただ、ローアインは最初のラインアップには入っていませんでした。登場させられる数に限りがある中で、いわゆる“色物枠”が必要だよねという話しになったときに真っ先に名前が上がったのが、ローアインだったんです。

関根ラインアップには、どうしてもSSレアのキャラクターしか残らない感じでしたが、Sレアやレアのキャラクターも入れられたらおもしろいんじゃないかと思いました。色物枠として登場させるキャラクターを考えたときに、ローアインなら多くのファンが納得してくれるんじゃないかな……と。

――発表されたときには驚きましたが、確かに納得もできました(笑)。

関根それに格闘ゲームのプレイヤーの中には、“とにかく人と同じことをしたくない。人と違うことをやりたい”という人がいて。まさに自分がそうなのですが(苦笑)、そういったニーズに応えるためにも、ローアインのような三枚目のキャラクターは必要でした。参戦キャラクターが全員イケメンだと、作品全体がシリアスになりがちなのですが、ローアインのように無茶ができるキャラクターがいれば、ギャグ要素も入れやすくなりますし。

澤田ローアインが登場することで、戦闘前の掛け合いもバラエティー豊かになりました。ローアインのようなギャグキャラと、マジメなキャラクターとの掛け合いは、化学反応が楽しい内容になったと思います。原作では絡まないキャラクターたちの掛け合いも用意しているので、ひと通り見てもらえるとうれしいです。

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――『グラブル』ファンは注目ですね。キャラクターを作っていくうえで、とくにこだわったポイントを教えてください。

澤田本作には剣を使うキャラクターが多いのですが、キャラクターの得手不得手やアクションの性格を、剣なり武器なりに反映させないと、個性のあるモーションにはできないと考えました。たとえば、『グラブル』の主人公であるグランは、がむしゃらに戦う少年マンガの主人公のイメージでアクションを作りました。彼と同じスタンダードなタイプのカタリナは、グランよりも洗練されたアクションにしています。

――キャラクターごとにイメージを固めたうえで、それぞれ個性が出るようにアクションを考えていったと。

澤田はい。あとはパーシヴァルだと、つねに堂々としていて、自分のペースで戦うというか。敵に倒されたときも、不服そうにしている雰囲気が感じられるようにしました。

――パーシヴァルは歩きかたも特徴的ですよね。王者の風格を感じるというか。

澤田キャラクターの基本的な動作も、騎空士の皆さんに喜んでもらえるように意識をして制作しています。パーシヴァルは、王者の風格が感じられる歩きかたにしたくて、あごを上げて堂々と前進するモーションにしました。パーシヴァルは、原作であごを上げているポーズが印象的なのですが、開発の都合で、構えのポーズはあごを引いているものが多くなってしまって。そこでどうしても、あごを上げて歩く姿を取り入れたかったんです。

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――とくに監修がきびしかったキャラクターは?

澤田美形キャラは、圧倒的に監修がきびしかったですね。パーシヴァルの3Dモデルだと、斜めを向いたときにちょっとだけ顔が崩れてしまうことがありました。カットごとに目や鼻の位置を調整して、原作イラストの再現度を高めたつもりだったのですが、それでもサイゲームスさんからのリテイクがあって。

安部でも、サイゲームスさんがちょっと直すだけで、すぐに原作イラストのパーシヴァルになるんです。『グラブル』の運営を長く続けるうちに、きっと秘伝のタレのようなものができているのでしょうね。サイゲームスさんには、的確な監修をしていただけたので、とても勉強になりました。

澤田逆に、ぜんぜんリテイクがなかったのは、ファスティバかな。あと、防具で顔が隠れているバザラガもリテイクがないほうでした(笑)。

――なるほど(笑)。続いては、アビリティや奥義、解放奥義のこだわりもお聞きしたいです。そもそもこれらの技は、どのように作られていったのですか?

澤田対戦格闘ゲームには、遠距離攻撃の“飛び道具”や空中の相手を攻撃する“対空技”が必要です。原作から流用できそうなものは、アビリティとして本作にも登場させていますが、そうでないキャラクターは、こちらからアイデアを出しました。「原作にこういう設定があるから、このキャラクターはこんな技を使っても大丈夫そうだな」と、技のイメージをまとめてコンテを描いた後、サイゲームスさんにチェックしてもらうという流れで作っています。

――どのような技を考えたのか、具体的に教えてください。

澤田グランの飛び道具である“レギンレイヴ”も、オリジナル技のひとつです。グランは、テレビアニメ版でプロトバハムートの力を剣にまとわせて攻撃していたので、プロトバハムートの力を借りて放つ飛び道具を思いつきました。ちなみに、プロトバハムートは解放奥義にも登場します。攻撃を受けた側が一瞬映る演出は一生懸命考えたものなので、ぜひチェックしてください。とくにローアインやファスティバは、ギャグテイストが強くておもしろいと思います(笑)。

関根グランの解放奥義の“カタストロフィ”はカッコいいよね。ルリアがプロトバハムートを召喚する展開は王道で、「これぞ『グラブル』!」って感じがする。

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――ほかにこだわりのオリジナル技はありますか?

澤田ファスティバの解放奥義は、関根のプロレス愛から生まれました。解放奥義で勝負が決まらなかったときに、レフェリーのカウントが2.99のときにひっくり返すのですが、関根が「2.99じゃないとダメだ」と言って(苦笑)。

関根自分が知る限り、対戦格闘ゲームの勝利演出でレフェリーが3カウントをしてフォールして勝つというものがなかったので、本作でぜひやりたかったんです。その思いから、ファスティバの解放奥義が生まれました。どこからともなくレフェリーが飛んできて、カウントを始めるという突拍子もないアイデアをサイゲームスさんに伝えたところ、快諾してくれたうえに、レフェリーのイラストを描いてくれました。しかもファスティバを紹介するPVにレフェリーが出ていて、めちゃくちゃしゃべっていたんです(笑)。我々の無茶を聞いてくれるうえに、臨機応変に対応してくれるのはとてもありがたかったです。ちなみに、試合が決まらなかったときのカウントは、2.92や2.97というように、ランダムで変化するようにしていますよ。

――そんなところにもこだわりが(笑)。

関根うちが開発する対戦格闘ゲームは、コミカルな演出もウリのひとつだと自負しています。カタリナ、グランとマジメなキャラクターの開発が続く中で、ファスティバやローアインの番が来たときは、「俺たちのターンだ!」と喜びました(笑)。もともと僕がプロレスが大好きなこともあって、ファスティバは原作の設定を取り入れつつ、やれるところまでやろうの精神でアイデアを盛り込んでいます。奥義“ラヴマックス・ボンバー”でくり出すドロップキックで、攻撃を食らったキャラクターが披露する変顔もコミカルな演出にできました。イケメンキャラクターのパーシヴァルもギャグ顔を披露してくれるので、楽しんでもらえるとうれしいです。

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澤田格闘ゲームでは、キャラクターのカッコ悪いところも表現しないといけません。痛々しいだけだと、作品が固くなってしまうので、コミカルな要素はたくさんあったほうがいいと思いました。

安部ファスティバは、アビリティや奥義もスムーズに決まっていったよね。

関根投げキャラとして、わかりやすかったですからね。あとは、パーシヴァルの突進技“王者の行進”も印象に残っていますね。ツェアライセンを相手の近くでヒットさせるとカメラが寄ったり、自己強化技の“トロイメライ”使用後は演出が変わったりと、カメラワークなどもこだわりました。

澤田本作はシンプルなゲーム性なので、カメラ演出を入れづらいなとは思っていました。そんななかで、とくに演出に力を入れる技を絞って、ほかの技を使ったときよりも見栄えがよくなるように工夫しています。

関根ただ、演出をやりすぎると見づらくなってしまうので、見やすさとカッコよさをいい塩梅に調整するのはたいへんでしたが。

――なるほど。女性キャラクターでこだわったポイントもお聞きしたいです。

澤田メーテラは、彼女の魅力のひとつであるセクシーさの表現にもこだわっています。勝利演出で倒れた相手にキスをするのですが、あれは負けた相手にも何かご褒美をあげたくて考えました。

安部メーテラと言えば、隠し衣装を用意しているよね。ゲームも発売されているし、もう言っても大丈夫かな(笑)。

――ぜひお聞きしたいです!

澤田『グラブル』のメーテラの衣装は露出が多くて、サイゲームスさんの意向で海外展開やeスポーツ展開を考慮した調整が開発途中で入ることになったんです。それで、デフォルトの衣装はホットパンツにするなどして、原作よりも露出を抑えた衣装にしたのですが、RPGモードをクリアーすると、オプションで原作の衣装が選べるようになります。ゼタも原作の衣装が選べますよ。

安部「どうしても残したい!」という開発スタッフの声に応えて収録しました(笑)。

澤田リードモデラーのスタッフが、「衣装の布面積が増えたメーテラはメーテラじゃない。原作ファンは喜ばない」と譲らなくて(苦笑)。とはいえ、eスポーツの展開を考えたときに、「露出の多いキャラクターを増やすのは……」という意見もあったので、オマケとして収録しました。

関根ゼタとメーテラの原作衣装は、福原さん(哲也氏。サイゲームス所属のディレクター。『グラブル』を筆頭に、関連タイトルの『リリンク』、『GBVS』を担当)も残したがっていたよね?

澤田そうそう。衣装の布が増えたメーテラの設定画に、めちゃくちゃ残念そうな福原さんのコメントが書いてありました。赤字で「無念ですが……」って(笑)。

一同 (笑)。

――福原さんとリードモデラーを中心とした、スタッフたちの念願が叶ったのですね。

関根ほかにも、“飛翔術”の使い手であるメーテラは「飛べないとダメだよね」という話から、特殊技の“ゼファー”で2段ジャンプができるようにしました。

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澤田本作には、メーテラのほかに空中戦が得意なキャラクターがいないので、ちゃんと個性づけができたかなと思います。

――特殊技と言えば、パーシヴァルの“イクスゼーレ”で、“恐怖(原作では、敵のチャージターンが溜まらなくなる弱体効果)”を再現するのも難しかったのでは?

澤田恐怖は、用意されていた“やられモーション”の中に尻もちをついてダウンするものがあったので、「相手に尻もちをつかせてスキを作ればいいんじゃないか」と、じつはすんなりアイデアが出て開発が進みました。

関根演出に関しては、相手に尻もちをつかせれば“恐怖”だよねとわかってもらえると思いましたが、仕様としてどうするかはよく考えました。先ほど澤田がお伝えしたように、本作はシンプルなゲーム性を目指していたので、RPGに出てくるデバフ要素を格闘ゲームとしてわかりやすく表現したいと思っていました。“恐怖”は、原作だとチャージターンが溜まらなくなるので、奥義ゲージが溜まらなくなるという効果も考えましたが、それだと攻撃をした側もされた側もイマイチわかりにくい。もっとビジュアル的にわかりやすくしたかったこともあり、“恐怖”を与える“イクスゼーレ”は投げ技扱いにして、尻もちをついた相手に追撃ができるように落とし込みました。

原作の設定を活かすためなら苦労してでもとことんやる!

――グランやファスティバの解放奥義が話題に上がりましたが、ほかにお気に入りの奥義や解放奥義の演出があれば教えてください。

澤田僕が好きなのは、シャルロッテの解放奥義“ノーブル・エクスキューション”です。本作には、標準的な体格のキャラクターのほかに、シャルロッテのような小柄なキャラクターも登場します。とくにシャルロッテのように小柄で見た目がかわいい女の子だと、通常攻撃やアビリティをカッコよく作っても、コミカルに見えてしまいます。それがシャルロッテの魅力ではあるのですが、凛々しい姿もきちんと表現したかったので、演出にはこだわりました。とくにお気に入りの解放奥義は、見た目が非常にかっこいいのですが、「トドメでありますー!」というセリフがとてもかわいくて、彼女のカッコよさとかわいさをうまく表現できたと思います。

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安部ユニークなのは、ローアインだよね。奥義も解放奥義も攻撃技ではないという。

澤田そうですね。奥義はふたりのダチ公が助けてくれて、解放奥義はユグドラシルが助けてくれるので。

関根ローアインがプレイアブルキャラクターに決まったときに、ダチ公のエルセムとトモイは登場させたいと思いました。モーションデザイナーに確認したところ、「できる」というのでお願いしましたが、想像以上にたいへんだったみたいです(苦笑)。がんばってくれたぶん、奥義は張り切りました。当初は、“KBSN”状態になって突進攻撃をくり出すだけだったのですが、自由に操作できたほうが楽しいですよね? そこで、KBSN状態でいろいろな技を使えるようにしたんです。

安部結果的に、ローアインらしい楽しいアクションになりましたが、モーションデザイナーは、「ローアインだけにしてください」と言っていましたね(苦笑)。

澤田でも、ローアインはめちゃくちゃおいしいキャラクターになったと思いますよ。解放奥義はユグドラシルを操作して戦えるので、色物キャラを使いたいという人と、美少女キャラを使いたいという人の需要を同時に満たしているので。

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――そもそも、解放奥義でユグドラシルを登場させようと思った経緯は?

関根当初は、すべてのキャラクターが星晶獣を召喚するというアイデアがあったんです。ただ、設定的に難しいキャラクターがいて、原作との整合性が取れなくなってしまう。そこで、グランやカタリナなど、一部のキャラクターだけ星晶獣を召喚して攻撃できるようにしました。

安部ちなみに、カタリナのアレスは『GBVS』から『グラブル』に逆輸入したネタになります。ただ、『グラブル』に登場する前に、本作のクローズドβテストの際にアレスが登場していたので、騎空士のあいだで話題になってしまいましたね。

――なるほど(笑)。ローアインは、星晶獣を召喚するというアイデアの名残りのキャラクターだと思いますが、ユグドラシルを操作できるのは驚きました。

関根サイゲームスさんに、「ローアインは解放奥義でユグドラシルになって戦います」とプレゼンした記憶はありますが、なぜそうなったのか、ちゃんと覚えていなくて。冷静に考えると、自分でも何を言っているんだろうと思いますね(笑)。

安部ローアインは、アビリティでキャタピラも登場するので、結果的に素材数がたいへんなキャラクターになってしまいました。

澤田RPGモードのオンライン救援でプレイヤーがふたりともローアインを選んでプレイすると、画面がとんでもないことになりますよ。いったい何体のキャラクターがいるんだろうって(笑)。ちなみに、ボスのコロッサス・マグナに、ユグドラシルで挑むのもオススメです。“怪獣大戦争”のような、迫力満点の画面になります。

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関根RPGモードに登場するボスも気合を入れて開発したので、ぜひ注目してほしいですね。ボスには、もともとコロッサスを登場させる予定だったのですが、グランの解放奥義でプロトバハムートを作ったところ、「これはいける」と手応えを感じて、サイゲームスさんにコロッサス・マグナを出したいと提案したんです。だって、コロッサス・マグナのほうが、カッコいいじゃないですか(笑)。

――わかります!(笑)。キャラクターとボスのほかに、こだわって点や苦労したエピソードがあれば教えてください。

安部サイゲームスさんは、背景へのこだわりも非常に強くていい勉強になりました。とくにたいへんだったのが、“ポート・ブリーズ群島 アンガド高原”のステージです。ステージはここから作り初めたのですが、サイゲームスさんのオーケーがなかなかもらえなくて、完成したのはかなり後でした(苦笑)。スタッフ一同で先方にうかがって、「サイゲームスが考える背景とはこういうものだ」という、思想や技術をご教授いただきました。おかげでかなりクオリティーが高くなりました。ポート・ブリーズ群島も晴れた青空に流れる雲、そして草原という、ステージコンセプトを実現できたと思います。

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澤田“騎空艇グランサイファー 甲板”や“城砦都市アルビオン 市街地 オリエンス通り”など、一部のステージは最初と最後のラウンドで、雰囲気がガラリと変わる仕掛けを用意しています。アルビオンの市街地だと、最初は雨が降っていて薄暗いのですが、最後は晴れるんですよ。対戦するキャラクターによって背景が変わる演出もあって、“アウギュステ列島 ベネ-ラビーチ”では、ランスロットとパーシヴァルが戦うと興奮したルナールが見られます。

関根原作のファンの方は、ステージの背景を眺めているだけでも楽しいと思います。ただ、対戦中は忙しくてじっくり観るヒマがないと思うので、トレーニングモードも活用してもらえれば。

澤田背景の演出の中では、僕は“騎空艇グランサイファー 甲板”がいちばん好きですね。最初はドッグの中を進んでいくのですが、最終ラウンドでは開けた空に飛び立っていくんです。RPGらしさというか、原作の冒険している雰囲気を、格闘ゲームにうまく落とし込めたステージだと思います。

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黒衣の男は本作のために誕生!? 原作愛が生み出した要素

――お話をお聞きして、皆さんの原作愛がいかに強いかわかりました。実際に『グラブル』はどれくらいプレイされているのですか?

安部関根は、仕事中もずっとやっているよね?(笑)。

関根仕事もちゃんとしていますよ。ただ、オートでもクリアーできるところを周回しながらですが(笑)。

安部サイゲームスさんの会社に向かう電車の中でも、ずーっとやっていて熱心だなと感心しています。

――関根さんの現在のプレイ状況を教えてください。

関根天上征伐戦やアルバハ(※1)ソロなどの高難度コンテンツはひと通りクリアーしていますね。最近だとコスモス武器は3つぐらい最終上限解放していて、賢者(※2)は4人仲間にしています。全体で見れば、上の下ぐらいだと思いますが、もともとゲーム雑誌のライターだったので、ゲームを攻略するのは好きなんです。

※1:アルバハ……高難度マルチバトル“神撃、究極の竜”。
※2:賢者……シングルコンテンツ“アーカルムの転世”に登場する10人の賢者のこと。

――それだけプレイしていれば、オリジナル技も思いつきますよね。

関根できるだけ原作のキャラクターの性能や特徴を落とし込みたいので、『グラブル』はプレイするようにしています。ただ、自分は3周年のタイミングで初めたので、社内には僕よりもすごいプレイヤーがいて。

澤田UI(ユーザーインターフェース)デザイナーの女の子だよね。

関根そう。僕が知る限りでは、いちばん長くプレイしていてやり込んでいると思います。

澤田ランスロットの勝利演出は、倒した相手に笑顔で手を差し出すというものなんです。これは、『グラブル』をやり込んでいるUIデザイナーに、ランスロットに何をされたらうれしいかを聞いて実装しました。その結果、ランスロットはほかのキャラクターよりも表情差分が多くなりましたね。

関根うちには、僕や彼女のほかにもけっこうガチなプレイヤーが多くて。社内の人間で集まって、ルシファー(※3)に挑んだりもしています。それに、ちゃんと『グラブル』を追いかけていないと、作品内の流行がわからなくなってしまうので。

※3:ルシファー……HIGH LEVELマルチバトル“ダーク・ラプチャー(HARD)”のこと。

澤田騎空士の皆さんの盛り上がりを共有しておくのは重要なんです。実際に、ベリアルの人気が出たのを見ていたので、本作にも登場させることができました。

――ベリアルは、ダウンロードコンテンツで操作できるようになるのも驚きました。追加キャラクターの開発は順調に進んでいますか?

澤田配信時期の早い、黒衣の男とナルメアの開発や調整を進めているところです。女性キャラクターは、かわいい部分や萌える部分が、ユーザーの方に目立って届いているようで、もっとカッコよくしてほしいという要望もいただいています。そこでナルメアは、美しさの中にもカッコよさを感じてもらえるように調整しています。

――黒衣の男はほとんど情報がないので、開発するのが難しいのでは?

安部じつは黒衣の男は、「最強のボスがほしい」という我々の要求に、サイゲームスさんが応えてくれて誕生したキャラクターなんです。ただ、いきなり出てきて“最強”と言われても説得力に欠ける。そこで本作に先駆けて『グラブル』のシナリオイベント“どうして空は蒼いのか”に登場させることになったんです。

澤田黒衣の男が使う技に関しては、うちとサイゲームスさんが共同でアイデアを出し合って考えました。『グラブル』で使っていた技を落とし込んでいるので、特別たいへんだったということはありません。

安部本作のストーリーは、“どうして空は蒼いのか”の続編のような感じで展開されますし、描き下ろしイラストも多いので、ファンの方はお楽しみに。

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――まだ遊んでいない騎空士の方には、ぜひチェックしてもらいたいですね。これから『GBVS』をプレイするという方にメッセージをお願いします。

関根対戦格闘ゲームを初めてプレイする方や、ひさしぶりに遊ぶという方は、RPGモードから初めてください。RPGモードは、登場人物たちの戦いかたを覚えながら冒険が楽しめるので、初心者の方や復帰した方にピッタリです。

澤田好きなキャラクターを操作できるのは、対戦格闘ゲームやアクションゲームの醍醐味です。対戦モードよりも敷居の低いRPGモードなら、キャラクターへの愛情から入った方たちも楽しんでいただけるのではないかと思います。オンラインのロビー機能も充実していて、ファンどうしのコミュニケーションツールとしても便利ですよ。

――まずはRPGモードでゲームに慣れて、対戦を楽しむ流れがオススメなのですね。

関根そもそも対戦格闘ゲームは、ひとり用モードが不親切だと言われています。うちが手掛けるタイトルも、そのあたりをアップデートをし続けてはいましたが、今回はさらにもう一段階やさしい、ひとり用モードを作ったうえで、対戦してほしいと考えました。そこで、FPS(一人称視点のシューティング)のキャンペーンモードのような、ストーリーのついたひとり用モードがあれば、遊んでくれる方たちが世界観に没頭できるのではないかと思ったんです。せっかくの『グラブル』なので星晶獣のような巨大なボスとも戦いたかったですし(笑)。

――それでRPGモードが誕生したのですね。

安部当初は、RPGモードのようなボリュームは想定していませんでしたが(苦笑)。拡張性のあるモードはほしいという話はあったものの、あくまで格闘ゲームの延長線上で考えていました。ただ、開発を進めるうちに盛り上がって、RPGモードに至りました。ゲームが2本分入っているボリュームなので、『グラブル』好きの方にはとくに楽しんでいただけると思います。

関根そうですね。ストーリーはもちろん、武器スキンを収集する遊びにも力を入れていますし。

――武器スキンもユニークですよね。ファスティバはマスクが変わったり。

関根ファスティバは素手で戦うキャラクターなので、一般的にはガントレットになりそうですが、レスラーならマスクだろうと。結果的に取り留めがなくなってしまいましたが(笑)。

――そもそも武器スキンは、どのような経緯で実装することになったのですか?

澤田武器スキンは、「グランがランスロットの武器を持って戦えますよ」と、開発スタッフが見せてくれたんです。それで「これカッコいいじゃん」ってなったところから、話がどんどん膨らんで、実装することになりました。

関根ゼタの武器スキンに“グラーシーザー”を用意するなど、騎空士の皆さんが喜んでくれそうな武器スキンも収録していますし、発売前に公開していない武器スキンの中には、ギャグテイストの強いものもあります。武器スキンにもいろいろとネタを仕込んでいるので、楽しんでもらえるとうれしいです。

――こんな武器スキンがあったと、SNSなどで盛り上がりそうですね。

関根入手した武器スキンはVSモードなどでも使えるので、たくさん集めて戦ってほしいですね。本作は、格闘ゲームでは珍しく、R1ボタンを使ってワンボタンでアビリティを発動させられるだけでなく、技ごとに設定したコマンドを入力する“テクニカル入力”も同時に使えることが特徴です。ガードも対戦相手と逆方向に入力する後ろガードのほかに、ボタンでのガードも導入しました。格闘ゲーム初心者の方でも遊びやすくなっていますし、格闘ゲームが好きな方も、とっさに難しいコマンドを入力できないときは、R1ボタンで技を発動させるなど、ふたつの入力方法を使い分けることでより戦いやすくなっています。格闘ゲームのエントリーモデルとして、うまくまとまった作品に仕上がったと自負していますので、初心者から上級者まで、たくさんの人に遊んでもらいたいですね。

グランブルーファンタジー ヴァーサス

機種:PS4
メーカー:サイゲームス
発売日:2020年2月6日発売予定
価格:6980円[税抜](7678円[税込])、ダウンロード版は6980円[税抜](7678円[税込])、プレミアムエディションは11860円[税抜](13046円[税込])、キャラクターパスセット(ダウンロード版)は9860円[税抜](10846円[税込])、デジタルデラックス(ダウンロード版)は11860円[税抜](13046円[税込])
企画・制作:サイゲームス、開発:アークシステムワークス