東京ゲームショウ2018初日、スクウェア・エニックスより、『ロマンシング サガ3』リマスター版の配信時期&プラットフォーム、およびスマートフォン用新作『ロマンシング サガ リ・ユニバース』が突如発表され、ゲームファンの度肝を抜いたのは記憶に新しい。

 2018年8月に『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』が発売されたばかりだというのに、休む間もなく新たな展開を仕掛ける『サガ』シリーズ。今回、TGS会場にて、スクウェア・エニックス 河津秋敏氏、市川雅統氏、作曲家の伊藤賢治氏にインタビューする機会を得たので、新作タイトルと、9月21日に初日を迎えた舞台『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』について、手応えや今後の展望を語ってもらった。

『ロマサガ リ・ユニバース』、『ロマサガ3』、舞台『七英雄の帰還』など、新展開満載の『サガ』についてキーマンに訊く! 各作品の見どころは?【TGS2018】_01
左から、河津秋敏氏、市川雅統氏、伊藤賢治氏。

初日から大喝采! 大きく手応えを感じた『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』

――先日、『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』が埼玉・戸田にて開幕しましたが、初日からスタンディングオベーションだったそうですね。

河津終演後、アナウンスが流れて会場の照明がついても皆さんが拍手を続けていたほどで。あんな光景は初めて見ました。

市川初日からスタンディングオベーションが起こるということはなかなかないそうで、驚きましたし、自分たちも自然と立ち上がってしまいました。

伊藤「殺陣がすごいね~」と、記者の方もおっしゃっていたそうですよ。

――舞台作品をよく見ている記者もうなるほどの殺陣だということですね。噂によれば、ロックブーケの魅力もすごかったとか。

市川ロックブーケは歌を歌うシーンがあって、ロックブーケ役の山田菜々さんもどう歌うか悩まれていましたが、すごくいい歌を聴かせてくれました。

河津ロックブーケは七英雄の紅一点で、ゲームを知っている方の注目度が高いですから、かなり難しかったかと。

伊藤山田さん、プレッシャーで吐きそうだと言っていましたよ。

河津ファンの方に「俺のロックブーケじゃない!」と言われてしまいかねない役でしたが、山田菜々風のロックブーケが出来上がっていて、すごくよかったですね。

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『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』では、『ロマサガ2』の七英雄をテーマにした物語が展開する。
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主人公は、佐藤アツヒロさん演じるノエル。山田菜々さんが演じるロックブーケとは兄妹の仲。
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――イトケンさんは舞台の曲をがっつり書かれるのは今回が初ですよね。完成した舞台を見て、どのような手ごたえを感じましたか?

伊藤稽古を見た段階で、いろいろなことを思い出してボロ泣きしたんですよ(笑)。でも、そのおかげもあってか、本番はじっくり見られたんですけども。なんと言いますか、充実していましたね。前作の舞台では、挿入曲だけを書いたんですけども、今回はガッツリと関われたので。舞台では、新曲と、もとのゲームの曲の両方が流れるのですが、うまく溶け合っているなと感じました。

河津新しい曲とゲームの曲のつながりは、すごくよかったですね。

市川お忙しい中、イトケンさんは舞台用に20曲くらい書いてくださって。

伊藤舞台の曲と、『リ・ユニバース』の曲を作るために、1ヵ月くらい制作期間を設けていたのですが、舞台とゲームの曲って、似て非なるものなんですよね。それぞれを作る過程を、新鮮に楽しめました。

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『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』は今後、東京(10月2日(火)~8日(月・祝))、大阪(10月17日(水)~21日(日))に上演予定。詳細は公式サイトにて。
『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』公式サイト
http://sagastage.jp/

『リ・ユニバース』は、手軽に触れられる『サガ』のチャレンジの場にしたい

――では、『リ・ユニバース』について伺います。そもそも、このゲームを開発しようと思ったきっかけは?

市川構想は3年くらい前からあったんです。

河津フィーチャーフォン用として、以前『エンペラーズ サガ』を運営していましたが、それをスマートフォンのアプリにするのは難しくて。それなら、ゼロから作ったほうがいいだろうと。

市川パートナーのアカツキさんは、佐賀県とのコラボなども「おもしろいですね」と大事にしてくれていて、昨年の舞台も見にきてくださっていて。自分たちと文化が近いのかなと感じています。

――シナリオは、河津さんと、とちぼり木さん(『エンペラーズ サガ』や『インペリアル サガ』、『サガ』舞台作品などのシナリオを担当)が書かれているそうですね。

河津おもにとちぼりさんが書いていますが、物語の発端となる、世界に塔が生えて……といった基本的な設定は自分から提示しました。『ロマサガ3』の300年後という設定は、オリジナルを作った人間じゃないとなかなか出せないアイデアですし。

――そう、『リ・ユニバース』の設定について疑問に思ったところがあるんですけど、『ロマサガ3』の後の世界って、死食は……。

河津そうなんですよね(笑)。ハリードのエンディングを見た人は「あれっ?」って思うはずですが、そこらへんがどう関わってくるかは楽しみにしていてください。

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『ロマサガ3』から300年後、謎の塔が出現。これを攻略するために異界の戦士たちが集うようだ。
※TGS2018会場にて配信された番組をキャプチャーした画像です。
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――新キャラクターが登場するのも気になるところです。青いエビとか……。

河津あの青いエビは自分も気になってしょうがないので。

市川ヴァルドーですね。

河津オリジナルキャラクターですけどね。なんで青いんだ。

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青いエビことヴァルドーさん。
※TGS2018会場にて配信された番組をキャプチャーした画像です
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ヴァルドーさん、なんとこのシーンではボイス付き。
※TGS2018会場にて配信された番組をキャプチャーした画像です
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なんとノーラさんも、ここではボイス付きだった。
※TGS2018会場にて配信された番組をキャプチャーした画像です

市川ところで、キャラクターのフレーバーテキストは河津さんが書いているんですよ。

――えっ、全部ですか?

河津いまのところは全部書いています。書ききれるかわかりませんけど……。

市川びっくりしません? 短いテキストなんですけど、「えっ、こういうことだったの!?」と驚くことがあるんですよ。そういうワクワク感も楽しんでもらいたいというか、自分が楽しんでます、まず。

――つぎに曲について伺います。『リ・ユニバース』の曲は、新しいものもあれば、過去作のものを使っている場合もあるということでしょうか?

市川はい。基本的には新曲を使っているのですが、当然、懐かしのシーンなどでは、昔の曲を使っています。

――TGSのスタジオ配信番組で、イトケンさんに対し「『ロマサガ』らしさを出してほしい」というリクエストがあった、というお話が出ていましたよね。イトケンさんは、『リ・ユニバース』の曲作りを通じて、『ロマサガ』らしさを見つめ直すことになった?

伊藤見つめ直しましたね。25年前に自分との対話と言いますか……あのころどうやって作ったかな、とか、この曲どういう思い出があったかな、とか。そういったことを見つめ直す機会はなかなかないので、貴重な経験だなと思いました。

市川今回は「いま、『ロマサガ』の曲をイトケンさんが作ったら?」というイメージで作ってもらいました。それにしても、イトケンさんの曲って、すごく幅が広いですよね。『緋色の野望』のような曲も書かれるし、『IDOL FANTASY -アイドル ファンタジー-』の曲のような、キラキラした曲も書かれるし。

スクウェア・エニックスが手掛けるファンタジー×アイドル育成ゲーム『IDOL FANTASY -アイドル ファンタジー-』。同作に伊藤賢治氏も参加している。

――以前、『サガ スカーレット グレイス』は、どちらかというと女性的なメロディーだとおっしゃっていましたが、『ロマサガ』の曲を言葉で表すなら、どんなワードを使いますか?

伊藤うーん、あまり言葉ではイメージしていないですね。目の前の楽曲を作るのに精いっぱいでしたし、若造だったし。その、ギリギリで作ってきたものが、舞台化されたりして、いまも愛してもらえるというのは奇跡だなと思いますね。

――あえて表現するなら、そのガムシャラな若々しさが『ロマサガ』の曲らしさ、というところでしょうか。長年イトケンさんの曲を聞き続けてきた河津さんは、今回の曲についてはどう思われますか?

河津『インペリアル サガ』と比べても、今回の曲はぜんぜん違いますね。いい意味で変化していると思います。それと、イトケンの曲は全般的に、透明感があるというか、濁ってない感じがありますね。ドロドロしたものが足りないとも言えるかもしれませんが(笑)、そこはアレンジャーさんが変化をつけてくれたりするので。

伊藤そうですね、最近は若い世代のアレンジャーが入ってくれるので。自分の曲の幅が広がったなと思います。

――気が早いですが、『リ・ユニバース』のサントラの発売の予定は……?

市川やりたいですね。『リ・ユニバース』の中で、イトケンさんにいろいろとチャレンジしてもらいたいなとも思っていますし。「こういう曲、『サガ』で流してみたらどうだろう?」って。

――曲を始め、『リ・ユニバース』が、『サガ』に関するさまざまな挑戦のプラットフォームになるというイメージでしょうか。

市川生放送で、アイテム課金制ということに不安を覚えているユーザーさんからのコメントがありましたが、“基本無料でできる”ということは強みでもあると思うんです。誰もが手軽に触れられる『リ・ユニバース』の舞台で、曲に限らず、いろいろなことにチャレンジできたらと。実際、『エンペラーズ サガ』でやっていたことが、舞台化や佐賀県とのコラボに活かされましたし。『サガ』に関する施策の中心になればいいなと思っています。

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――家庭用ゲームですと、どうしてもお客さんの手に届けるまでに時間がかかりますからね。

市川はい。『リ・ユニバース』のようなゲームであれば、早く反映できて、すぐにお客さんに楽しんでもらえますから。

河津『サガ』の場合は、『FF』ほど重荷を背負っていないので、気楽にやれるというのもありますから(笑)。いろいろなことを試していけると、ユーザーの皆さんにも楽しんでもらえるかなと。まあ、市川くんは気楽ではないかと思いますが。

市川気楽かなと思っていたら、じつは命がけだったということが、いままでもたくさんありました(笑)。

――気になる『リ・ユニバース』の配信時期は?

市川明確な時期は言えないのですが、そう遠くはないです! お待ちください。

あのころ『ロマサガ3』を楽しんだ人にも、もう一度触れてほしいリマスター版

――『ロマサガ3』リマスター版は、配信時期が2019年初頭に決定しましたが、開発状況はいかがですか?

市川アルテピアッツァさんと、クオリティーを追求しながら進めています。『ロマサガ3』は、本当に皆さんの期待が高いんだなと、反響を受けて実感しましたし……。

――TGS開幕直後に突然発表されて、驚いたファンは多かったと思います。

市川ほかのビッグタイトルがひしめく中で、『サガ』に関する発表がさざ波のようになってしまうのは避けたいと思っていたので、よかったです。

河津最近は、TGSより前に発表するメーカーさんが多いので、TGS当日はねらい目でした。来年は同じ手は使えませんが。

伊藤Yahoo! のトップニュースにもなっていましたからね。

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今回公開された『ロマサガ3』の画面写真が、オリジナル版パッケージの裏側、もしくはオープニングに使われていたシーンのものだと気づきました?(なお、TGSトレーラーで使われているシーンも、オリジナル版のオープニングの使用シーンを踏襲している)
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――いまはゲームから離れてしまっている人が、「『ロマサガ3』はやりたい!」と反応していたりもします。やはり、スーパーファミコンで『ロマサガ3』を遊んだ思い出が強く残っている人が多いんでしょうね。

河津スマートフォンにも対応することで、ゲーム機を持っていない方や、ゲーム機が子どものものになっていて、自分では使えない方にも遊んでいただけるのはいいなと思います。

市川ゲームから離れる理由がプラットフォームであるなら、『サガスカ 緋色の野望』や『ロマサガ3』は多くのプラットフォームに対応することで、皆さんのことを追いかけます! それとは別に、気軽に『サガ』に触れてみたいと思う方には『リ・ユニバース』を遊んでいただければなと。

――『ロマサガ3』リマスター版は、新規要素があるのかどうかも気になるところです。

河津新規要素を追加してほしいという意見もあれば、「何も変えなくてもいい」という意見もありますので、そこは調整していきます。

市川元のよさはそのままに、追加要素はオン・オフできるようにしたいと思っています。

――以前のインタビューで、河津さんが書き溜めていた『ロマサガ3』の設定を入れたいとおっしゃっていましたが……?

市川すべてを入れることは難しいのですが、エッセンスは入れたいなと。

――『ロマサガ3』も『リ・ユニバース』も、続報が楽しみです。

市川ゲームも舞台も、かなり前から仕込んでいたものを、ようやく皆さんの前に出せるようになりました。今回の発表で驚いていただけたらうれしいです。『サガ』は、皆さんにワクワクできるものを届けていくシリーズだと思うので、今後もがんばっていきます。

河津まだ実機プレイを披露できていないので、お見せしたいですね。それと、『サガ』を知らない人にも、どんどん伝えていきたいと思っています。

ところで、『ラスト レムナント リマスタード』について

 『サガ』シリーズとは関係ないが、今回のTGSでは、河津氏がかつて関わったタイトル『ラスト レムナント』のリマスター版である『ラスト レムナント リマスタード』(PS4向けダウンロード専用ソフトとして、2018年12月6日配信予定)も映像出展されていた。

 TGS2018で配信された『ラスト レムナント リマスタード』番組では、「バトルにおけるモラルの概念を考えたのは河津氏だった」というエピソードも飛び出したので、せっかくなので同作についてもコメントをいただいた。

「『ラスト レムナント』のバトルは、自分と高井くん(高井浩氏。オリジナル版『ラスト レムナント』ディレクター)と前廣くん(前廣和豊氏。オリジナル版『ラスト レムナント』リードプランナー)の3人で考えたんですけど。最初に自分と高井くんが「ああしてほしい、こうしてほしい」とガーッと言って、それを前廣くんが練って挙げてきたんです。それを「これはいい、あれはダメ」と2~3ヵ月くらい延々と話して固めてから作り始めたんですよね。あれ(現在の形)でも、当初考えた要素からは半分くらいになっているんですけど(笑)。ちなみに陣形や技の名前が『サガ』っぽいのは、前廣くんが好きでやったことです。自分は「そういうことをしろ」とはひと言も言っていません! こんなに『サガ』っぽくしなくていいのに、って言ったんですけど、「自分がやりたくてやってるんですから」って(笑)」