人生もゲームも出会いは一期一会

 2018年3月19日~3月23日、アメリカ・サンフランシスコで開催された、開発者のためのセッションGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2018。ここ数年の会期中のおなじみといえば、GDC会場からほど近くのところで開催される、マイクロソフト主催による“ID@Xbox ショウケース”だ。会場となるイベントスペースLoft One SFには、20タイトル以上のID@Xboxタイトルが展示。試遊台にはクリエイターさんも控えており、メディアに対して「自由に楽しんでください」という場となる。到底時間内にすべてのタイトルに触れられるわけもなく……ということで、まさに出会いは縁の一期一会の機会と言える。まあ、いっそインディーゲームらしいということで、記者がフラリと話を聞いたタイトルを紹介する。

『Wargroove』(Chucklefish)

2Dシミュレーション好きにはたまらない1作

 ぱっと見、なつかしい雰囲気のするターンベース性の2Dシミュレーションゲーム。『Starbound』の開発チームによる最新作で、同作の開発が終わったあとに社内企画立案会議があって、「僕たちはこの手のタイトルが好きだけど、なかなか作られていないから、この機会に作りたいものを作ろう」ということになって、プロジェクトが始動したのだという。プレゼンを担当したリードデザイナーのロドリゴ・モンテイロ氏は、友だちからその話を聞いて『Wargroove』のプロジェクトに加わったという、生粋のシミュレーション好き。影響を受けたゲームを聞いたところ、『大戦略』シリーズや『ファミコンウォーズ』、『ファイアーエムブレム』シリーズ、『ファイナルファンタジータクティクス』など、流れるような口調で語ってくれたので、本作がどのようなゲームか、何となくご理解いただけるのではなかろうか。

 2Dシミュレーション好きが作っているだけに、おおよそのところは押さえられている本作では、“キャンペーンモード”や“マルチプレイモード”、“チャレンジモード”などが用意されている。「同ジャンルのタイトルとの違いは?」との質問に対しては、「開発時に使用しているマップエディタが入っている」とのこと。作ったマップは自分が楽しむのはもちろんこと、ほかのプレイヤーとも共有できる。また、マルチプレイでは、対戦や協力プレイが可能だが、一方で複数の試合を同時進行できるという。“チャレンジモード”では、詰将棋的なプレイもできるようだ。

 モンテイロ氏によると、『Wargroove』は今年の後半にワールドワイドでリリース予定で、「ぜひ日本でも出したいです!」とのこと。2Dシミュレーション好きのツボを押さえまくりに違いない本作。日本での発売も期待したいところです。

リードデザイナー、ロドリゴ・モンテイロ氏

※『Wargroove』公式サイト

『Black Desert』(Pearl Abyss)

Xbox Oneの性能を遺憾なく駆使した美麗なグラフィック

 “ID@Xbox ショウケース”への出展がいささか意外だったのが、Pearl Abyss開発による『Black Desert』。会場で見かけたときは、「あら!」と思わず声を上げてしまった。『Black Desert』がインディーゲームというと少し違和感があるが、ID@Xboxプログラムに乗ったということなのであろう。

 E3 2017でXbox Oneへの展開がサプライズ発表され話題を集めた同作は、日本では『黒い砂漠』という渋いタイトルでおなじみの韓国産のMMORPGだ。吸い寄せられるように試遊のためのコントローラーを握ってしまったのも無理からぬところだが、そのグラフィックの美麗さと動きの滑らかさは驚異的で、それには開発力の高さはもちろんのこと、Xbox Oneのパワフルさも大きく寄与しているようだ。「移植はまったく問題ないですね。Xbox Oneの性能がすぐれているので、スムーズに作業できています」とは、Pearl Abyssのセレナ・リー氏。移植にあたって注力したのはやはりコントローラーによる操作。もともとマウスとキーボードに特化していたので、リングメニューを導入。方向キーにスキルを割りあたるなど、コントローラーにフィットさせるべく工夫をしているという。

 さて、『Black Desert』こと『黒い砂漠』は今夏にもリリース予定。「日本では?」と聞いたところ、いまのところ予定がないような雰囲気で、「もしやるとしたら自社パブリッシングかな」とひと言。「Xbox One版を遊んでみたいという日本の方がいたら、ぜひ教えてください!」とのことで、気になる方は声を大にしてアピールすべし!

Pearl Abyssのセレナ・リー氏

※『黒い砂漠』公式サイト

『Trailmakers』(Flashbulb Games)

レゴのデジタル版? 自由に乗り物をカスタマイズできるアドベンチャー

 『Trailmakers』は、オープンワールドの惑星を舞台に、乗り物を自由に作成して楽しめるアドベンチャーゲーム。1月31日にSteamでアーリーアクセス版が配信されたばかり。会場で触らせてもらったところ、「何かに感触が似ているなあ……」と思い悩んで、ハタと思い出したのがレア社『バンジョーとカズーイの大冒険: ガレージ大作戦』。乗り物のカスタマイズぶりや操作感覚が、同作を彷彿とさせるのだ。などと、感じつつ後日調べてみると、開発元であるFlashbulb Gamesにはレア社のスタッフも参加しているようで、「ああ、なるほど~」と、納得した次第。

※『バンジョーとカズーイの大冒険: ガレージ大作戦』のことが気になる方はこちら

 会場にいたFlashbulb Gamesのプロダクションディレクター オール・テグルバーグ氏とアートディレクター ラッセ・オーゼン氏に本作を発想した経緯を聞いてみると、「Flashbulb Gamesはデンマークの会社で、スタッフはみんなレゴ好きで、レゴに親しんでいたんだ(レゴ社の本社はデンマーク)。デジタルの世界でレゴのようなゲームを作ったら、何回でも作り直せるね……というのが発想のもとになっているね」とのこと。

 ゲームをプレイしながら、マシンをカスタマイズさせていくことになる本作。パーツを充実させるには、“音速を超える”など、ゲーム中で決まった条件を満たす必要がある。現時点では、パーツは80くらい用意されているようだ。そんな本作のこだわりポイントは、フィジックス(物理演算)。しかもリアルなフィジックスではなく、いわゆる“ファンフィジックス”だという。「厳密な物理演算ではなくて、プレイヤーが“こうしたらこうなるだろう”と、想像がつくような、“楽しい物理演算”」だという。かっちりした感じではなくて、微妙にゆるくありつつもそれらしいというところが、居心地がいい。

 先述の通り本作はSteamのアーリーアクセス版が配信中で、その反響を聞いてみたところ、「好評です。おもちゃ箱にいっぱいのブロックを提供したら、皆さんがクレイジーな楽しみかたをしている感じ(笑)。いろいろなモノが作れるという要素はYou Tuberのあいだでも好評で、“こんなものが作れた”という動画が、たくさん上がっていますよ」とのことで、どうやらユーザーは相当自由に楽しんでいるようだ。ちなみに、いちばんすごい乗り物を作っているのが日本人のユーザーさんとのことで、うれしそうな表情をしながら会場で動画を見せてくれました。

 マルチプレイでは4人までプレイ可能で、作った乗り物は友だちとシェアできる。マルチプレイをしていて、ほかのクルマがかっこいいと思ったら、それに乗れるようだ。

 『Trailmakers』のコンソールでの展開に関しては、まずはXbox One先行でリリース予定とのこと。6月を目指しているそうだが、「サーバーの同期が難しくて、それ次第かな」とのこと。Xbox One版もプレビューバージョンで、ユーザーからのフィードバックを受けて、いろいろと充実させていきたいという意向のようだ。気になる日本語版については、「遊ぶ方がたくさんいてくだされば……」とのことでした。

Flashbulb Gamesのプロダクションディレクター オール・テグルバーグ氏(左)とアートディレクター ラッセ・オーゼン氏(右)。

※『Trailmakers』公式サイト(英語)

『Flipping Death』(Zoink)

独特のアートスタイルが印象的、『Fe』のスタジオの最新作

 極めて印象的なアートワークが印象的な本作は、先日配信された不思議なタイトル『Fe』の開発元であるZoinkの最新作。『Fe』を作ったスタジオの新作というだけでも注目に値するが、同行してくれた通訳の矢澤竜太さんにとっては、『Stick It To The Man!』の“精神的続編”ということが響くよう。

 『Stick It To The Man!』は、ある日頭から手が生えて、人の心が読めるようになる男が主人公という奇妙な設定の物語だったのだが、同作の制作後に、「このアートスタイルをひっくり返したらおもしろくない?」というアイデアが出てきたのだという。ただしそのころ『Fe』の開発がスタートしたばかりで、「まずは『Fe』に集中しよう!」ということになったのだとか。とはいえ、そこはクリエイターの性で、『Fe』 の開発中も「こうしたらおもしろいのでは?」みたいなアイデアはちょくちょく溜まっていたのだそうだ。それで、正統な続編ではないけれど、“精神的な続編”ということで作られているのが本作『Flipping-Death』となる。そのため、ストーリー的には『Stick It To The Man!』に対するつながりもあるようだ。

 と、そんな本作は死神の臨時代理人(?)を主人公に据えたアクションゲーム。死んだばかりの主人公が、「ちょっと仮で死神をやってもらえる?」みたいな感じで鎌を渡され、魂集めに励むことになる。本作にはしっかりとしたストーリーラインがあり、それを進めるためには、適宜用意されたパズル要素を解いていく必要がある。そのためには、人に乗り移って、その人を動かしたり、人の心を読んだり、闇の世界から現実の世界に移動したり……といったプレイをしつつ、“考えて”ゲームを進める必要がある。「ちょっと変わったジョークが持ち味のスタジオで、それが思いっきり全面に押しでたテイストになっていますね」とは、矢澤さんの感想。

 『Flipping Death』はセルフパブリッシングで、今春配信予定。プラットフォームはXbox Oneのほかに、Nintendo Switch、プレイステーション4、PCなどを予定しているという。日本語版に関しては、「検討中です。かなり前向きに考えています」とのことだ。

※『Flipping Death』公式サイト

『Remothered:Tormented Fathers』(Darril Arts/Stormind Games)

1990年代、ゼロ年代のホラーゲームに対するトリビュートタイトル

 強烈な存在感で取材陣に迫ってきたのがサイコロジカルホラー『Remothered:Tormented Fathers』。まあ、“強烈な存在感”は代理店の方の営業活動だったりするのだが、それはそれでまたひとつの出会い。ということでプレイしてみると、なんとも怖い。主人公である35歳の女性捜査官ローズマリー・リードが、失踪した少女の謎を追って、彼女の父親の屋敷を訪れて調査するうちに恐ろしい事件に巻き込まれ……というのが、本作のストーリーライン。おどろおどろしい屋敷というと、いかにも怖そうな設定だが、独特なタッチのビジュアルがさらに恐怖を煽る。

 で、試遊しようとすると代理店の方からの「日本語にしましょうか?」との言葉。そう、本作は日本語対応しているのだ。

 『Remothered:Tormented Fathers』のクリエティブディレクターをつとめるのはクリス・ダリル氏。なんと同氏は『NightCry』のコンセプトアートなどを手掛けていたという。会場で、クリス・ダリル氏に聞いた。

――どのような発想で本作は生まれたのですか?
クリス 僕が17歳のときに、本作のベースとなるキャラクターやストーリーを書きました。でも、それをゲームにするのは夢物語で、いつしかどこかにしまいこんでいたんです。その後、この業界に入って『Forgotten Memories』などに携わったりして、キャリアを積みました。その後、独立しようと思ったときに、改めて17歳のときの構想を形にしたいと思いました。本作は、1990年代、ゼロ年代のホラーゲームに対するトリビュート作品でもあります。

――ホラーゲームに対する尊敬や感謝ですか?
クリス はい。『クロックタワー』など、自分にとって大切な作品への。いまだと『MEMENTO』とかも好きですね。僕は本作で、ハイド・アンド・シーク(かくれんぼ)を突き詰めたいと思っていました。戦略を練って、相手を撹乱したり、遠くで物音がするような仕掛けを作って、タイミングよく発動させたり……。たとえば、本作のロープはドアを封鎖するのにも使えます。殺人鬼と同じ建物内にいる、という設定なのですが、殺人鬼は病気の影響で骨や皮膚が強化されていて、絶対に倒せません。ストーリーには宗教と科学が深く関わってきます。

――日本語が入っていてびっくりしました。
クリス そもそも最初から、「英語と日本語を入れよう!」と思っていたんです。トリビュートなわけですから。日本のゲームは、自分を信じる力をくれました。だから、だから日本語をサポートしたかったんです。最終的には15ヵ国語をサポートしていますよ。

――本作でこだわりポイントを教えてください。
クリス 一番重視したのは、生き延びる戦略がたくさんあるようにすることです。いろいろなものを組み合わせるようにしてあるので、単なるかくれんぼじゃなくて、戦うわけでもなく、プレイヤーによってプレイスタイルが変わります。たとえば、僕はステルスゲームが好きなので、隠れて行動する方向でプレイしますが、人によっては走りまくる人もいるでしょう。ほかにも取れる戦略はたくさんあるんです。ストーリーも、しっかりとした奥深いものを用意していて、映画的な演出を心掛けています。名作映画へのリファレンス(チョイネタとして引用し、ほのめかしを入れる)も入っていますよ。『羊たちの沈黙』とか『シャイニング』とか、『サイコ』とか……。

――リリースはいつごろに?
クリス いま、Steamのアーリーアクセス版をリリースしているのですが、5月か6月にXbox Oneとプレイステーション4で完成版を出したいと思っています。サウンドトラックとアートブックも付けます。本作には戸田信子さんにも楽曲を提供していただいています。彼女とは『NightCry』の開発で知り合ったのですが、とても素敵な方です。

クリエティブディレクターのクリス・ダリル氏。

※『Remothered:Tormented Fathers』公式サイト