まずはゲームクライアント内にブロンズとシルバーのリーグのシステムを組み込む
2016年4月8、9日、ポーランドの首都ワルシャワ郊外にあるイベント施設“Torwar”にて、ウォーゲーミング『World of Tanks』の世界一を決める大会“Wargaming.net League 2016 Grand Finals”(通称“The Grand Finals 2016”)が開催。会期に合わせて行われた、Wargaming.netのCEOであるビクター・キスリー氏へのインタビューの模様をお届けする。
※記事は、会期初日の4月8日に行われた合同インタビューをもとに、再構成しています。
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Wargaming.net CEO
ビクター・キスリー氏
――まずは、“The Grand Finals 2016”の感想と、前回の大会から進化した点を教えてください。
ビクター “The Grand Finals”の開催は今年で3回目になるのですが、毎回その規模を大きくしています。どれくらいの規模になるかは、会期が終わったあとで正式に発表できると思います。3回目の開催となりますので、過去の失敗を教訓にして、毎年この大会はよくなっていると私は信じています。ルール面でのいちばん大きな変更は、やはりティアXの導入ですね。火力の高い、より大きな車両が導入されて、いずれもさまざまな特徴を持っているので、より戦略的なプレイが求められるようになります。
――大会が年々大きくなっているとのことですが、それはどのような成果によるものですか? eスポーツの隆盛によるもの? それとも、『World of Tanks』の人気がさらに拡大しているからなのですか?
ビクター 両方とも成長している成果だと思います。数カ月前にベルリンで『League of Legends』の大会を見に行ったのですが、スタジアムをまるまるひとつ貸しきって行われていて、多くのファンに楽しまれていました。eスポーツの隆盛ぶりを実感する盛り上がりでした。eスポーツには大きな可能性があると思っています。もちろん、『World of Tanks』のコミュニティー自体も年々拡大を続けていますよ。
――『World of Tanks』は、スマートフォン版の『World of Tanks Blitz』やコンシューマー版なども盛り上がってきていますが、今後それらの大会を開催する予定は? さらには『World of Warships』などもありますが……。
ビクター eスポーツに関しては、展開にあたってとても重要な要素があります。それはプレイヤーの絶対的な数です。『World of Warships』やプレイステーション4版、Xbox One版『World of Tanks』は、まだ始まったばかりで、作り始めたコミュニティーが、ようやく形作られて、成長してきている段階です。会期の2日目には『World of Warships』のエキジビションマッチが行われます。こちらは、『World of Warships』がeスポーツに適しているかを確認するとともに、同作に対する皆さんのニーズの有無を確認する場でもあります。そのためのトライアルですね。『World of Warships』は非常に美しいゲームです。さまざまな船が出てきますし、グラフィックも美しい。多くのプレイヤーさんに楽しんでいただいていることはわかっているのですが、本作が実際にeスポーツという形式に適しているかどうかというのは、まだ未知数です。そのために明日試してみて、コミュニティーの方々が、実際に求めているかどうかを再認識したいと思っています。
――ということは、『World of Warships』のエキジビションマッチの反響次第で、大会の実施を判断するのですか?
(広報さんの補足) そうですね。私たちとしても試みとして取り組むので、これが大会に適しているかどうかの判断基準になります。これがあまり盛り上がらなかったり、よくなかったりしたら、別のルールで調整するかもしれません。それを検討するためのテストです。
――ちなみに、会場でVRのデモが楽しめたのですが、ゲームに実装される日は来るのですか?
ビクター VRはいま現在世界で注目されている技術です。ただ、VRは出てきたばかりの技術で、世界でこれが主流になっているとは言えません。私たちとしても興味がないわけではないので、ほかのパートナーさんとも協力して、さまざまなテストを行っています。すぐにゲームに実装するかどうかはお答えできないのですが、今後プレイヤーに求められて、支持されるのであれば、私たちとしてもぜひゲームに導入したいです。
――今後の『World of Tanks』で予定している取り組みなどがあれば、教えてください。昨年は、プレスカンファレンスが開催されましたが、今年は開かれませんでしたね。
ビクター 昨年は大きな発表があったので、“The Grand Finals”に合わせてカンファレンスを開催したのですが、今年はそれほどの大きな発表がなかったので、カンファレンスの開催は見送りました。ゲームルール的には、ティアXなどの採用はあったのですが……。プレスカンファレンスはなかったのですが、せっかくの機会なので、私の中で考えていることを皆さんにお話しましょう!
これはeスポーツだけではなくて、『World of Tanks』全体に関わることなのですが、“コンペティティブゲーミング”いわゆる競争心を育てていきたいと思っています。それは『World of Tanks』の楽しみかたのようなもので、ユーザーさんに対して何かしらの“道筋”を提供するつもりでいます。
――“道筋”ですか?
ビクター ゲームには幅広い楽しみかたがあります。たとえば、“The Grand Finals”に来るのはプロプレイヤーが多いのですが、一般のプレイヤーとはプレイのしかたに大きな違いがあります。今後はそうした垣根は取り除いて、『World of Tanks』というゲームを始めたときに、“The Grand Finals”にたどり着けるような道筋を提供したいと思っているんです。プレイヤーの皆さんは、いろいろな目標をお持ちだと思います。世界大会に出たいという方もいらっしゃれば、楽しみたい方もいらっしゃる方もいます。
ゲームを始めたばかりの方は、基本的におひとりで遊んでいらっしゃいますよね。それがつぎのステップになって、友だちと遊んだり小隊を組んだりする。さらには、仲間と集まってチームバトルを楽しむようになります。7対7のランクバトルや15対15の対戦もあります。クランに参加して大規模戦も可能になっています。最終的にはeスポーツがあり、“The Grand Finals”という到達点があります。
いままでは、それらはゲーム外からアプローチしていたのですが、今後はゲーム(クライアント)内で集約できるようにしたいと思っています。それによって、実際にゲームをプレイされている方が、「自分がどこまでやりたいか?」を判断して、楽しめるようになるんです。たとえば、クランまで楽しみたいならそこで終わらせてもいいわけですし、“The Grand Finals”まで到達したいというのであれば、そこまでの道筋を提供します。ゲームを遊びながら、ゲームクライアント内で処理ができるように道筋を1本化するということですね。
――どのような感じの取り組みを?
ビクター 近いうちに取り組みたいと考えているのは、ゲームクライアント内にブロンズとシルバーのリーグのシステムを組み込むことです。いままではホームページ内の別のセクションでトーナメントなどの申し込みをしていたのが、直接ゲーム内でできるようになるんです。これまでバラバラだったシステムをひとつにして、新規の方も従来からのプレイヤーの方も、目標を立てて、より簡単に目標に向かえるようにしたいですね。
――ブロンズやシルバーをゲームクライアントに入れるのはいつくらいを予定しているのですか?
ビクター “The Grand Finals 2016”が終わることで、ひとつのシーズンが終了しますので、その結果などをフィードバックしつつ、つぎのシーズンまでには導入したいです。そして、これはテスト中なので、まだ確定ではないのですが、15対15のeスポーツ戦を予定しています。将来は大規模なeスポーツ戦をお見せできるかもしれません。
――ところで、“The Grand Finals”はなぜポーランドで開催するのですか? ほかの地域、たとえば日本などで開催する予定はありますか?
ビクター 現在ワルシャワで“The Grand Finals”を行っているのは、経済的な理由だったり、運営がしやすかったり……とさまざまな要素があります。『World of Tanks』はポーランドはもちろん、ドイツやロシア、ベラルーシなどでとくに人気が高く、その中央にワルシャワが位置するという地の利もあります。一方で、“The Grand Finals”が……というわけにはいきませんが、さまざまな大会を世界各地で開催していて、たとえば日本でも“The Pacific Rumble”を昨年11月に東京で開催して、好評をいただきました。ワルシャワでしか開催しないというわけではありませんよ。今後はほかの地域でも大会が行われると思うので、楽しみにしていてください。
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