2023年8月25日、フロム・ソフトウェアより、『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』(アーマード・コアVI ファイアーズオブルビコン)が発売となる。プラットフォームはプレイステーション5(PS5)、プレイステーション(PS4)、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)。
発売に先駆けてPC版をプレイさせていただいた。プレイするほどに無数の感情が渦巻いて止まらなくなった、その模様をお伝えしていきたい。みなさんの楽しみを奪うわけにはいかないので、範囲は序盤のチャプター2まで。
『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』(PS5)の購入はこちら(AMAZON.co.jp) 『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』(PS4)の購入はこちら(AMAZON.co.jp)正直に言うと、筆者が『アーマード・コア』シリーズのなかでいちばんプレイした『アーマード・コア フォーアンサー』(2008年発売)は、機動性がシリーズ作品内でもずば抜けて高く、遊びやすい部類のタイトルだった。
そんな時代に生きたおっさんでも粗製と呼ばれずに、最新型の機動兵器“アーマード・コア”(以下、AC)を乗りこなすことはできるのだろうか。期待と同じくらいに不安も抱えつつ、いざゲームスタート。
本作のストーリーにはプレイヤー自身に驚いてほしい事実が満載だ。今回のレビューでは基本部分以外の世界設定面にはほぼ触れないでおく。気になる人はぜひ自分の目で確かめてほしい。
また、弊誌編集者のヘイ昇平による動画のレビューも用意。合わせてチェックしよう。
【AC6レビュー】『アーマード・コア6』クリアー後の感想。シリーズの伝統的要素とフロム・ソフトウェアらしいアクションゲームの設計思想が融合した渾身の力作【※Chapter2までのネタバレあり】
最初のボスからけっこうえぐい、と思いきや……。
ゲーム開始直後、わりと違法な強硬手段で惑星ルビコン3へと降下する主人公機。シリーズを通してプレイしてきた人にはあまりに懐かしすぎる起動シークエンスを経て、さっそく簡単なチュートリアルを受けつつACを動かし、建物内を進む。
概要を説明する前に始めてしまったが、『アーマード・コア』は機動性や拡張性、そして高火力を誇る人型兵器を駆るのが醍醐味のアクションゲームだ。興奮のままに整理せずに書いてしまっているので、初心者さんを置いてけぼりにしている気がする。本当に申し訳ない。止められないんです。
そんな筆者が開始直後の段階で感じたのが、とにかくACの挙動が素直で、レスポンスもいいという点。
空を飛ぼうとするとエネルギーの消費がかなり激しいものの、地上に降りればすぐ回復。エネルギー切れを起こしていなければ、着地時の硬直もなくスムーズにブースト移動に移行できる。
主人公は機体に神経を接続しているとは聞いていたが、これがその成果か。よくある「直感的に操作できる」という言葉がしっくりくる。武器の切り替え操作をせずに、手に持っている武器と肩のミサイルを同時に発射できるのもいい。
古い記憶を残したままゲームを進め、最初のミッションでいちばん驚いたのが、“リペアキット”なるものがあるということ。1ミッションで3個しか持ち込めないが、機体のAP(耐久力)を即座に回復できる。ミッション中にAPを回復しちゃって本当にいいんですか。
なお、従来のシリーズ作品と同じく、ミッション中にダメージを受けると修理費が課せられ、クリアー時の評価がすごい勢いで下がる。リペアキットでAPを回復すれば評価ダウンを回避できるのでは、などと思ったが、そんなことはない模様だ。
そうしてチュートリアルとともに、降下地点からさらに先へと突き進む。その合間の言葉少なな会話で主人公が置かれている状況や、その悲哀などがばっちり伝わってくる。
道中で出会う通常の敵は、ACより旧型の人型兵器“MT”をはじめ、どれもこれも相手にならないほど弱い。ライフル、ミサイル、そして近接攻撃用のエネルギーブレイドと、どの武器を使ってもさくさく倒せる。
ACは個人で所有するレベルを超えた存在であり、戦局にすら影響を及ぼす恐ろしい兵器であると再認識できる流れだ。一方的に蹴散らす優越感に、気分がどこまでも高揚していく。
そんな気持ちいい状態のまま、最初のボス戦に突入。この流れだとボスも見た目こそ派手だけど、さくっと倒せてオレ最強、といった感じだろう。
瞬殺だった。何やらミサイルっぽいものが大量に降り注いだところまでは見えたのだが、何が起こったんだ。
そういえば『アーマード・コア』シリーズを通じて、でかいヘリにはあまりいい思い出がない。油断するべきではなかった。またミッションを最初からやり直しかぁ、とため息をついた筆者だったが、ここでさらにありがたい新仕様が。
最初からやり直さなくていいのである。ここでのチェックポイントはボス戦開始直前。道中をスキップし、APと残弾、さらにはリペアキットの使用回数まで全快した状態でリスタートできる。どうしちゃったんだ『アーマード・コア』開発陣、こんなに優しい人たちでしたっけか。
そしてこのヘリも最初はわからん殺しされたが、盾にできる建物がフィールド内に点在している模様。先ほど瞬殺された爆撃についても、上昇して地表から離れれば食らわないようだ。
わかってしまえば、あとの問題はシンプル。やたら耐久力が高く、戦闘が長引くことでうっかり被弾が増えてしまうことくらいだった。何回かリスタートすることにはなったが、最初の強敵はわりとあっさりと倒せたかと思う。
なるほど。通常エネミーに対する優越感と、その後に待つ手強い敵を攻略することで得られる達成感、このふたつのメリハリというわけだ。飴と鞭ということだろうが、思ったより鞭が激しくないのは、万人に楽しんでもらうための調整なのかもしれない。
ご褒美がえげつなく、高くなった鼻が戻らない
こうして強敵だったヘリを撃墜した達成感を噛みしめていると、ストーリーのほうも進んでいく。傭兵支援システム“オールマインド”に登録したことで、さまざまな支援を受けられるようになった。
機体のパーツを組み替えられる“アセンブル”も可能になったが、まだ所持パーツが少ないので後回し。まずは受けられる“ミッション”をひたすらこなし、あわせて“トレーニング”の項目で基礎も確認していく。
例のヘリが強かったこともあり、ミッションの難度については警戒していたのだが、ほぼ杞憂だった。むしろヘリが出てくるまでの道中に近い展開が続く。
しかも、通信で敵も味方も「やるじゃないか」とめっちゃ褒めてくれる。
敵を気持ちよくなぎ倒しつつ、持ち上げてまでもらって、近年まれに見る気分のよさを味わってしまった。なるほど、『アーマード・コア』と言えば鬼畜ゲームのイメージがあったが、令和の世ではそんなことはないらしい。
途中、悲哀を感じる敵や大型四脚兵器、姿が見えないACなど、驚かされる敵が何度も出現したが、まだまだライフルとミサイルだけでもゴリ押せる。建物や高低差を利用したりと、最初のヘリ戦と基本は同じだ。“ひと工夫”がわかると、難しそうなミッションも道が開けていく。
そうこうしているうちに巨大な武装採掘艦“ストライダー”という大物も出てきて、いよいよリスタートするはめになった。いったん落ち着いて敵の攻撃を防御。あとはかっこよさも誉れも投げ捨てて、物陰から攻撃し続ける。
正直に告白しておこう。この段階で筆者は、本作でもっとも重要な新要素のひとつ“スタッガー”(後述)についてすら、「トレーニングで言われた気がするけどなんだっけ」程度の認識だった。アセンブルは武装や機体パーツを搭載できる限界重量である“積載上限”くらいしか気にしていない。
そんな状態でいよいよ迎えた、チャプター1の最終ミッション。
そこに“あいつ”がやってきた。
騙して悪いが、ここからが『アーマード・コア』だ
チャプター1最後の敵、バルテウス。つねに飛行しており、その機動力はバケモノじみている。そして火力においても、これまでの敵とは比べものにならない。
防御面はどうだ。“パルスアーマー”を展開しているあいだはダメージが通らない。攻撃でこのアーマーを減衰させ、非展開状態に追い込む必要がある。
ミサイルの雨をしのげる障害物もなく、回避に失敗するたびにこちらのAPが一方的に削られていく。反面、相手はほとんど傷を負っていない。そのプレッシャーがさらに回避操作の失敗を招くという地獄が始まる。
だが、それでもミサイルやブレードを当てれば、まとまったダメージは与えられる。さらに、リスタート時にはアセンブルを組み替えられるため、こっそり買っていた強力なグレネードランチャーを装備。
と、ひとまずは壁を越えたつもりでいた矢先。
耐久力がある程度減ったところで、急に攻撃パターンが変化。火炎放射ブレードでなで斬りにされ、爆散。その後も火炎放射でより広範囲になった攻撃を前に、リスタートの回数はあっという間に10回を超える。
リスタート時にはアセンブルこそ変えられるが、パーツの追加購入はできないし、そもそもパーツを購入する所持金がない。そして筆者はなめきって、勝利の可能性を見い出せるパーツを購入していなかった。限界を感じ、いったんミッションを放棄。
そうだ。そうなのだ。これは『アーマード・コア』だった。
口に出したその言葉が重くのしかかって来る気がした。持ち上げられたところから落とす、というやり方を一度やっておいて「この程度か」と油断させてからの、それとは比較にならない高度からのたたきつけ。
心はばっちり折れた。「この精神状態で続けてもいいことがない」とこの日はプレイを中断。寝てからつぎの日に持ち越したほどだ。翌日、まずは純粋に金のため“リプレイミッション”でクリアー済みのミッションをくり返した。
アセンブルもいちから見直していく。アーマー削りにも有効だった連射タイプのミサイル2門は継続して採用。グレネードは有効だったが、リロード時間が長すぎるし足を止めてしまうのが辛い。
また、ここで敵に“衝撃”を蓄積させることで行動を止めて、大きな隙を生み出せる“スタッガー”のシステムも活用しなくてはならないと考えた。敵の行動をスタッガーで止めれば、それだけ敵からの攻撃の頻度が減り、こちらの攻撃チャンスは増えていく。
これらを踏まえて結論として筆者が採用したのは、自分の好みからはかけ離れたアセンブルだった。
四脚、ならびにタンクの足パーツには、グレネードやバズーカなど“構え”で足を止めてしまう武器を使っても動きながら撃てるという特性がある。さらにバズーカはリロード間隔がグレネードより短く、威力と衝撃力にも優れる。
見た目の美学? 武器種へのこだわり? そんなものは勝てなきゃ鉄クズ以下なのだと、シリーズ作品で学んできたことを思い出す。まずは勝ってから誇れ。シリーズの先達もこうおっしゃっている、「要らないわよねぇ、心なんか! それで勝てるって言うんならさ!」と。
本作ではNPCのACと戦う“アリーナ”で手に入るポイントでOSをセッティングすることで、特殊な機能を獲得できる。面倒だなぁと後回しにしていたアリーナも、ここで一気に攻略した。
このあたりで、操作する要素が増えるたびに回避などの基本行動が疎かになっていることに気づく。そのため、バズーカよりも回転率やダメージがいい近接武器は採用を見送った。敵への接近というひと手間が発生するからだ。
おそらくブレードは最適解のひとつだろう。だが、使いこなせなければ意味がない。理想と現実を突き合わせ、積載上限とにらみ合って少しでも高性能のパーツを積んでいく。そう、これだ。これもまた『アーマード・コア』だ。
そうして迎えた2日目の挑戦。入念に準備し、睡眠で頭をリセットしたことで、前日とは感覚がまったく違う。悩み考え抜いたぶん愛着が湧いたのか、機体の見た目もむしろ気に入ってきた。
行動さえさせなければ、どんな火力も宝の持ち腐れ。あっという間にバルテウスの体力を削り、火炎放射を使用する段階まで持っていくことができた。こいつは本当に、昨日あれだけ苦戦した相手なのか。
そして、ついに。
声が出た。自分のとてつもなく深い未知のところから出た、どす黒くも気持ちいい歓声だった。冗談抜きで脳内をやばいものが駆け巡る。
ここまでの達成感は久々だ。そして恐ろしいことに、こいつはまだチャプター1のボスなのだ。気持ちよさ的には、直近で言えば、同じフロムソフトウェアさんの『エルデンリング』をクリアーしたときに匹敵するレベルだと思うのだが。
さらなる驚きと快感。これが「脳を焼かれる」ってことか
チャプター1の時点でエンディングに到達したくらいには情緒がぐちゃぐちゃになったが、こちらの事情にはお構いなしにストーリーは予想外の展開を迎えていく。
そしてチャプター2を進行していくとパーツショップの品揃えがさらに増加。アリーナの新たな相手も解放されてOS用のポイントも稼げたので、アセンブルとOSセッティングがさらに奥深く。強力な武器はジェネレーターによるエネルギー出力が追い付いていないと使えないので、さらに組み合わせが悩ましくなってくる。
困難を乗り越えたところに、しっかりとプレイヤーへのご褒美を用意してくれている。この仕組みが何ともよくできている。燃え尽き状態から甦り、新たなパーツを試したくて仕方なくなり、ゲームの奥深くに潜っていく。
ストーリー内では、惑星ルビコン3に存在する企業や現地の解放戦線以外とは異なる別勢力も登場。なかにはいわゆる“変態技術者”的な武器商人集団もおり、そいつらがくり出したボスはあまりにもユニークだった。ぜひみなさん自身の目で確かめて、癒されてほしい。
チャプター2の最終ミッションは、チャプター1と比べてかなり早く出現した。新たな協力者も得つつ、目的地へ向かうための移動手段を確保しようとしたところを、またしてもとんでもない無人兵器が襲撃してくる。
強力な砲弾やエネルギー兵器などにやられ、ここでも5回ほどリスタートすることに。だが、チャプター1でかなり『アーマード・コア』について復習できた筆者にとっては、そこまでの強敵でもなかった。無事に怯ませまくりつつ撃破し、チャプター2も突破。
今回のレビュー範囲はここまでとなるが、当然のようにチャプター2クリアー以降も、狂おしいほどの悔しさを覚えたり、それを乗り越えた後の達成感やご褒美がすばらしかったりと、大荒れのくり返しだ。あまりの揺さぶりかたに脳が震える。脳が焼かれたかのようで情緒を抑えきれない。
振り返ってみると、“バルテウス”との死闘が強烈に記憶に焼き付いている。戦ううちに自然とプレイヤーの思考も染まっていき、独立傭兵らしい考え方をし始めることだろう。ヘタなRPGよりも、よっぽどロールプレイしている。
チャプター2までだとまだパーツ数は少なく、従来シリーズ作品でも味わえた無限に時間が溶けるアセンブルはまだ堪能しきれていない。そして今作は、いままで以上に“敵に合わせたアセンブル”がカギになっていると、各種ボスと戦ってみて感じた。
そう聞くと、むしろそうであっても、自分のスタイルや愛用武器を貫き通したいと奮起する古参兵も多いだろう。大いにありだし、得られる達成感も数倍になること請け合いだ。どんな過程でも、勝てれば誇れる。
無情にも思えるが、そんな『アーマード・コア』だから私たちは好きだったんだよなと、10年ぶりに思い出せたのが何よりうれしい。