ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始におすすめゲームを語る連載企画。今回取り扱う作品は、Nintendo Switch、PC(Steam)用ソフト『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音』です。
【こういう人におすすめ】
- 宗教的な哲学が絡む尖ったシナリオが好きな人
- 魔獣図鑑の収集や強敵とのバトルを楽しみたい人
- 前作を遊んで感銘を受けた人
まさんのおすすめゲーム
『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音』
- プラットフォーム:Nintendo Switch、Steam
- 発売日:
- Nintendo Switch版 2022年9月29日
- Steam版 2022年12月13日
- 発売元:ジー・モード
- 権利元:アトラス(“アトラスWeb-i”、“アトラスWeb-EX”、“アトラスWeb-EZ”2007年~2008年配信作品)
- 価格:1800円[税込]
- パッケージ版:なし
- ダウンロード版:あり
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心を削り取る展開でファンの心に深く刻み込まれた伝説の名作がついに復刻!
神話や伝承に登場する神や悪魔との戦いに巻き込まれながら、己の選んだ道を歩む『真・女神転生』シリーズ。心の力・ペルソナを呼び出す能力に目覚めた者たちが、現代を舞台に戦う『ペルソナ』シリーズ。日本はもちろん、海外でも人気が高いシリーズを展開し続けているメーカーがあります。それが、アトラス。『ペルソナ5』の大ヒットによって、いまや日本を代表するJRPGのメーカーとして海外でも有名になりました。
そんなアトラスが当時の携帯電話・フィーチャーフォン、俗に言うガラケーで展開していたモバイルコンテンツがあったのです。おもに、docomoのFOMAシリーズを中心とした“メガテンα”というサイトで展開していたタイトルは、家庭用機に移植されていないオリジナル作品ばかり。
ですが、そのクオリティは当時のアトラスのコンシューマータイトルと比較してもそん色ないレベルだと個人的に思いますし、コアなアトラスファンのあいだでいまでも語られています。
G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音 紹介動画
しかし、スマートフォンが全盛となったいまの時代。残念ながら、当時の携帯電話で配信されていたゲームを遊ぶことはできません。そう、ひと昔前なら。いまでは“できませんでした”が正しいですね。令和になって、ついに携帯電話の名作や良作が家庭用機やSteamで遊べるようになりました!
それが“G-MODEアーカイブス”。これは、ジー・モードが手がけているガラケーのゲームをコンシューマ機に復刻するプロジェクトです。“G-MODE アーカイブス”のおかげで、ついにアトラスの携帯電話作品が家庭用機で遊べるようになりました。え? また、G-MODEアーカイブスの話をしている? しつこい? これで4回目の記事ですって?
あ、はい。すみません……。いやいや、ちょっと待ってくださいよ。いいじゃないですか。今回だけ。今回だけ、ですから!
そもそも私、G-MODEアーカイブスが発表されたときから、なんとしても『探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10 永劫会事件』と『女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音』(以下、『新約LBII』)だけは復刻してもらいたいと思っていたので、むしろこの記事が本番なのです。
それだけ、『新約LBII』は携帯電話のゲーム史において重要なゲーム。だから、ね? どうか、今回だけは許してください。とかなんとか書いてはいるものの、もし『真・女神転生if...ハザマ編』が復刻されたら、また書いてしまいそう。
それほどまでに興奮して語りたくなる『新約LBII』。本作はタイトルからもわかるように、以前に紹介した『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』の続編であり、ゲームボーイで発売された『女神転生外伝 ラストバイブル』のリメイクではない、まったくの別物です。
続編と言っても、前作とはキャラクターも舞台となる惑星も別。だから、本作から遊んでも大丈夫です。むしろ、本作のあとに前作を遊んでも驚ける内容になっていると思います。
なぜ、本作をそれほどまでに語りたいのか。それは、前作でもあった衝撃の展開を越えるシナリオ。脳に深く刻み込まれる物語と演出が、メガテンファンとして大好きだから。メディアの記録として、残しておきたいからです。
とはいえ、ネタバレになるので詳しくは語れないのですが……。自分がアトラスの作品に求めているものをたっぷり吸収できるんですよ。精神的にきつい展開も多いので心が弱っているときにはオススメできないのですが、しかしこれこそが『新約LBII』。どこまでお伝えできるのかはわかりませんが、そんな本作について語らせてください。
シナリオライターの本領発揮。携帯電話で遊べる最高のメガテンのひとつがコレだ!
物語の舞台は、重い疫病と魔獣がはびこる絶望の星、ホルス。圧政を敷いて世界に絶望をもたらす狂王カインと、疫病の薬を開発してカインに抗う聖王アベル。ふたりの王が存在する星を舞台に、冒頭から衝撃の展開が続きます。
現実でもコロナ禍によるパンデミックを経験した我々にとって、疫病を題材にした物語は身近に感じるでしょう。舞台はファンタジーですが、取り扱っているテーマやエピソードは現代にも通じる重いものです。
だからといって、ずっと厳しいゲームというわけではないのでご安心を。仲間たちとの明るく楽しいやり取りやギャグイベントもあり、辛い展開と楽しい冒険のバランスが絶妙です。
各地で起きる悲惨な出来事によるシリアスな展開と、仲間たちとの微笑ましいギャグを交えながら語られるエピソードは、尖った表現が多かった時代のRPGを思い出すかもしれません。
とくに衝撃的なのがラストダンジョンからのラスボス戦。当然ながらネタバレなので何も書けないのですが、それまでの旅を通して経験してきたテーマを端的に表現するラストダンジョンになっています。
前作の聖書+クトゥルフ神話に加えて、本作ではどの思想をモチーフにしたのかが、ラストダンジョンで明確に表現されているのです。中盤から匂わせ続けてきたものをガツンとぶつけてくるうえに、メガテンらしいアレンジ。神話や宗教をモチーフとした、ほかのRPGでは味わえない個性的なダンジョンを探索できるのも、アトラスの作品が持つ魅力のひとつですね。作品のテーマが結実する本作の終盤は、一度遊べば忘れられないでしょう。
前作は、ゲームボーイ版の旧約『ラストバイブル』に似た展開をベースにしつつも、最終的にメガテンらしさを叩きつけてくる内容でしたが、本作はさらに『真・女神転生』的な感覚に寄せられています。
神話や宗教的な哲学をベースにしつつ、アトラスでしか出せない物語を構築したアトラス作品に相応しいシナリオ。ガラケーで展開していた『女神転生』系列作品のなかでも、1、2を争う内容です。尖ったテーマ性は、コンシューマーのメガテンにも匹敵すると思っています。『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー』のように、もととなる宗教や哲学にしっかりと向き合って取り入れているシナリオの作り方が好みです。
直接的なゴア表現や欠損などの痛々しい描写ではなく、テキストの力で生々しい苦しみをぶつけて精神をエグってくるので、心が疲れているときではなく元気なときに遊んでほしい作品。ですが、クリアしたときにはきっと忘れられない何かが残ると思います。やはり、これは『ラストバイブル』であり『真・女神転生』なのです。
昔の携帯電話専用ゲームだからと、侮ってはいけません。このような素晴らしい作品が、ガラケーにはまだまだ眠っているのですよ……(ジー・モードさんの本社がありそうな方角を見ながらつぶやく)。
能力値の振り直しアイテムと、仲魔のアクセサリー装備でやり込みも楽しい!
辛いけれど目を離せないシナリオが気になってグイグイ先を見たくなる本作ですが、ゲームの難易度も少々辛口。味方側の強力な技や魔法、防御手段が増えて前作よりも優しくなってはいるのですが、能力値の振り方によっては苦戦することも。
逆に、クリアー後はインフレに継ぐインフレと育成のしやすさ。それに見合う裏ボスのおかげでやり込みが非常に楽しくなっています。ただ、シナリオが魅力的なのに、バトルの難易度で最後まで見られないのはもったいない。というわけで、『新約LB』の記事で書いたポイントに引き続き、覚えておくといいことを書いていきましょう。
悪魔(魔獣)と交渉して仲魔に加え、ともに冒険できるのが『女神転生』シリーズや『ラストバイブル』シリーズの特徴。管に封じ込めたり、オークションで競り落としたりと作品によっては会話が存在しないこともありますが、悪魔との会話が楽しみな人も多いでしょう。
本作でも、悪魔会話は健在。魔獣たちは、相変わらず独特のハイテンションで応えてくれます。前作と異なる点としては、仲魔にした魔獣にもアクセサリを装備できるようになりました。これにより、戦力としても使いやすくなっています。
とくに、途中で手に入る“韋駄天ダスキ”で先行を取れるようになると戦法が大きく変わるはず。仲間をかばうスキルなどもあり、前作よりも遊びやすい難易度になりました。メガテンファン基準ではありますが……!
前作同様に状態異常が効きやすいボスもいるので、睡眠や麻痺で相手の行動を封じることも大切です。ある程度ステータスの振り方に失敗していても、人間のキャラクターならアクセサリを2つ装備できるのでなんとかなるかも……?
基本的には魔法系のキャラクターは知力が高いほど魔法の威力が上がり、攻撃系は力が高いと技の威力が上がります。運の数値が高いとクリティカルも出やすくなるので、割と重要です。なお、主人公は魔法も使えるのですが、最終的には力に特化させた最強の必殺技を撃つ係になるので知力を上げなくてもオーケー。
ちなみに、今回はゲーム中盤で倒せるストーリーとは無関係の裏ボス・戦神アレスを倒すことで“新生龍”というステータス振り直しアイテムが手に入ります。クリアーするまではひとつしか手に入らないので、なるべく取っておきましょう。
確実に振り直したくなるときがくると思いますが、ラスボス戦までとっておくのも有効です。どうしてもラスボスに勝てないときは振り直してみましょう。ラスボスはマジで強いので。半端じゃなく強い。
RPGとしてはそこそこ歯ごたえがあり、ボス戦も印象深い敵が多く登場します。シナリオと合わせて記憶に残りますし、自力で乗り越えたときの感覚がたまらない! もちろん、攻略情報を頼ってもいいと思います。昔のゲームですが、当時からコアな人気があったので攻略情報はネット上に転がっています。そうしたものに頼るのもひとつの手です。
なお、『新約』シリーズはどれも単体で遊べますが、3部作になっています。現在、最新作にしてラストとなる『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルIII 夢幻の英雄』も復刻されました。シナリオ部分の尖り方は本作ほどではなく、ファンディスク的な側面もあるのですが、ゲーム部分はさらに進化しています。
『新約LB』と『新約LBII』の両方を遊んで心をボコボコにされた人向けのサービスのようなゲームなので、こちらも遊んでみるといいでしょう。また、アトラス作品ではないのですが、本作を手がけたライターのオリジナルRPG『創世のエル ~英雄の夢の終わりに~』という作品も出ています。iPhoneのみで配信されているのですが、こちらは『新約LB』と『新約LBII』のシナリオが気に入った人向けのタイトル。『新約LB』と『新約LBII』の展開が気に入った方は、ぜひこちらもどうぞ。
『新約LBII』は当時のガラケーで、ドット絵。演出もいまの3Dに比べたら簡素です。それなのに、いま遊んでも作品のパワーに魅了されます。根底にある深いテーマと宗教モチーフとの上手な絡ませ方も、忘れられないキャラクターたちも、間違いなく『真・女神転生』で『ラストバイブル』。手ごたえのあるバトルも作品にピリッと刺激を与えていますし、往年のアトラス作品のような尖り具合が好きな人も、最近のアトラス作品から入門してきた人も、ぜひ前作と合わせて遊んでほしいです。
個人的には、このタイトルが復刻されただけでG-MODEアーカイブスには感謝してもしきれません。最高! もう、満足ですよ!!
あ、いやいや。ウソです。ウソ。まだまだ、復刻してほしいアトラスのガラケータイトルはいくらでもあります。もっとアトラスのモバイルコンテンツが再評価される日がきてほしいですし、まずはコアなファンたちがメガテンとして満足している『新約』シリーズを遊んでみてください。
とくに『新約LBII』は、超オススメですよ! 年末年始に3作全部遊んじゃいましょう!