ファミ通.comの編集者&ライターが2022年夏のおすすめゲームを語る連載企画。今回取り扱う作品は、Nintendo Switch用ソフト『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』です。

【こういう人におすすめ】

  • 往年の濃いアトラス作品らしさが好きな人
  • 印象深い物語と悪魔や神話に興味がある人
  • フィーチャーフォンの名作RPGを遊びたい人

まさんのおすすめゲーム

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』

  • プラットフォーム:Nintendo Switch
  • 発売日:2022年7月14日
  • 発売元:ジー・モード
  • 権利元:アトラス(“アトラスWeb-i”、“アトラスWeb-EX”、“アトラスWeb-EZ”2007年~2008年配信作品)
  • 価格:1800円[税込]
  • パッケージ版:なし
  • ダウンロード版:あり
    • 必要な容量 108.0MB
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携帯電話でも濃さは健在。アトラスの名作RPGが令和の世によみがえる!

 『真・女神転生』シリーズから『ペルソナ』シリーズ、コアな単独作品までバラエティに富んだタイトルが多く、国内外ともにコアな層からの支持が厚いアトラス作品。昔から新作に心を盗まれ続けている多数のファンを抱えており、歴史の長いメーカーなのですが、それ故にシリーズのファンでも遊んだことがないような作品や、現在はプレイする手段がなく新規ユーザーが手に取れないものも存在しています。

 本稿で紹介する『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル(以下、新約LB)』も、そのひとつでした。この作品は、10年以上前のアトラスが携帯電話で展開していたモバイルコンテンツ。おもに、docomoのFOMAシリーズを中心に配信されていた“メガテンα”というサイトで遊ぶことができた完全新作RPGです。

 ゲームボーイで発売された『女神転生外伝 ラストバイブル』のリメイクではなく、まったくの別物。当時のアトラスは、携帯電話のゲームに対して非常に力を入れている節があり、現代では遊ぶ手段が失われてしまっているのですが、いまのタイトルにも負けない名作が多いのです。

G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル 紹介動画

 いや、むしろいまだからこそ遊びたい! たとえば『真・女神転生if...』の敵役、ハザマイデオがはじめて魔界を訪れたときの物語を描いた『真・女神転生if...ハザマ編』は、メガテンファンが遊びたい1作。もちろん、アモンをパートナーにして冒険できます。ファンも思わず全身がアストラル体になり、虹色に輝きそうなほどの「わかってる」スピンオフですね。

 そんなアトラスの携帯電話作品が、なんとNintendo Switchで復活! あのジー・モードがまたやってくれました。ジー・モードが手がけているガラケーのゲームを現行のコンシューマ機に復刻するプロジェクト“G-MODE アーカイブス”で、アトラスの『新約LB』が復活したのです。

 すごい、さすがいつも『空気読み。』を出しているメーカー! 空気が読めている。ゴールデンウィークに特集したAnd Joy(旧社名:元気モバイル)さんの『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズに続き、他社の大型タイトルの復刻ですよ。自分もうれしすぎて全身からマガツヒを漏れ出しながら、マークがやられたときのように「マッジィー!?」と驚きました。百魔問答くらいの勢いでお礼を言いたい。

 今後も自社と他社の両方で、名作タイトルをしっかり復刻してください!

 前置きが長くなりましたが、それだけ「ううっそ!? いやいや、マジで!?」と驚くくらいの出来事なんですよ。バーチャルボーイの『ジャック・ブラザースの迷路でヒーホー!』が復活するのと同じくらいの確率だと諦めていましたからね。いや、『迷路でヒーホー』のほうも諦めていませんけど。アトラスの過去作品、全部よみがえってほしい。

 そんなアトラスタイトルの復刻として、真っ先に取り上げられたのが『新約LB』なのには納得です。“メガテンα”のなかでどれをまず挙げるかといえば、順当ですね。携帯電話のRPGですが、まごうことなき女神転生でありラストバイブルでもあり、そして何よりRPGとして良質。ま~た、G-MODEアーカイブスの話をしていると言われそうですが、それくらいいいプロジェクトはいくらでも推したい!

 というわけで『新約LB』について語らせてください。

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』

女神転生にしてラストバイブル。アトラスの魅力がギュッと詰まった作品

 神話に登場する神や悪魔を仲魔に加え、価値観の揺らぐ崩壊した世界を渡り歩く『女神転生』シリーズ。アトラスが誇る人気シリーズの外伝作品として、当時の携帯ゲーム機・ゲームボーイから始まったのが『女神転生外伝 ラストバイブル』シリーズでした。
 
 『ラストバイブル』が女神転生を名乗りながらも外伝として大きく異なるのが、現代を舞台にしていた本家シリーズとは違って、ファンタジー世界が舞台という点。3Dダンジョンものだった本家とも違う2D見下ろし型の王道的なスタイルで、本家とはまた違ったファンを獲得していました。スーパーファミコンの3作目『ラストバイブルIII』まで家庭用機のシリーズが続いており、当時のアトラス作品でもなかなかの長寿。『III』もいいキャラが多くてキャルル先生が……と脱線するところでした。いけない、いけない。

 『新約ラストバイブル』は、携帯電話で久々に復活したシリーズの新作。タイトルがリメイクみたいに見えますが、れっきとした新作です。魔獣のグラフィックや交渉のシステムなど、初代の『ラストバイブル』がベースになっている部分はありますが、シナリオや登場キャラクター、世界観はまったく違います。3作目までで完結した家庭用機版とも異なり、舞台も物語も完全オリジナル。実質的に『ラストバイブルIV』といっても差し支えありません。

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』
使用できる魔法や、魔獣との会話。コンバック(魔獣同士を合体する魔法。本家シリーズにおける悪魔合体)といった初代『ラストバイブル』のシステムをベースに、新たな物語を融合。懐かしさもありつつ、当時としては意外な新作として楽しめました。

 物語の舞台は、百年周期で魔王が復活するという惑星・レガイア。魔王を倒す“ガイアマスター”の候補生として育った主人公のルイ(名前は変更可能)は、レガイアの人々を救うために冒険の旅に出ます。

 王道なRPGの始まり方をするのですが、そこはアトラス作品。冒頭から、すでに何かがおかしい。普通のRPGじゃない感じがプンプンします。

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』
ファンタジー世界になぜか存在する魔獣召喚COMP(コンピューター)。これを手に入れたときから、主人公は魔獣と交渉して仲魔にする力を得ます。

 冒頭からいきなり出てくる魔獣召喚COMP。クトゥルフ神話が元ネタと思われる大魔導士エイボン。夢で出会う謎の人物。さまざまな要素が、本作の王道RPG的なシナリオのなかに見え隠れし、どこか不穏な影を落としています。

 旅先で出会うガイアマスター候補の仲間たちとともに人々を救いながら、魔獣や魔王、そして世界の秘密を追いかけていく主人公。クリアすると「ああ、これは確かに女神転生だし、ラストバイブルだ!」と思うでしょう。なぜ、本作が当時のアトラスファンのあいだで話題になっていたのか。その理由が満足感とともにわかるシナリオが魅力です。

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』

 神話や聖書をベースにしたオカルト(クトゥルフ神話の要素も少しアリ)に、現代でも通じるテーマ。そういった『女神転生』らしさを、ファンタジーな『ラストバイブル』のシステムと、王道RPG的なシナリオに乗せて展開する本作。

 携帯電話でもガッツリと人の心に残るRPGが作れることを証明する内容であり、あらためて遊んでみても復刻してほしいという声が多かった理由がわかるタイトルです。

後半戦から難度倍増! 状態異常とクリティカルを頼りに戦うバトル

 シナリオが魅力なので最後まで遊んでほしいのですが、本作は当時としても難易度は高め。わかっていれば問題なくクリアできるのですが、中盤辺りからボスの強さがなかなかエグいです。当時のRPGらしい割り切った難易度とも言えますが、わかっていないと戦えないので少しアドバイスを。

 まず、素早さは大事です。敵から先手を取れるだけで、かなり変わります。ボスにも何かしらの状態異常が効くので、魔法や状態異常のアイテム(武具)を使って行動を封じることもカギに。状態異常をかけられるアイテムは店で売っていたり、図鑑を埋めるともらえたりするので、しっかり集めて使っていきましょう。

 ステータスを素早さに振って先手を取るのはもちろん、力を上げるキャラか知力を上げるキャラかを考えたパラメータの割り振りや、運を上げてクリティカルを出すことも重要。体力もある程度ないとボスの攻撃に耐えきれません。何も考えずにステータスを振っていても後半までは勝てますが、何も考えていないとラスボスで詰んだと思うかも。

 とはいえ、よほど変なステータスの振り方をしていない限りは、アイテムや仲魔で補える部分もあります。お金を払って仲魔を強化するシステムがあるので、素早さとMPを上げて状態異常で封じるといった戦略も可能です。ボスが手ごわいからこそ、手に汗握って印象に残る。ここら辺もアトラス作品っぽい。

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』
睡眠や麻痺、混乱の魔法が使える仲魔は最後まで重宝します。素早さと知力を上げれば、行動を封じる係としてボス戦で頼りになるでしょう。

 ステータスを振れる人間のほうが魔獣よりも最終的には強くなるので、あまり悪魔会話(魔獣との交渉)はしない……なんてことはありません。

 先ほども言ったように、魔獣図鑑を埋める必要がありますし、仲魔に加えたあとでも“コンバック”という魔法で魔獣同士を合成できます。いわゆる悪魔合体ですね。合成でしか仲魔にできない魔獣もいるので、図鑑を埋めるなら必須です。

 種類の多い魔獣(悪魔)の図鑑を埋めていくのも楽しみのひとつですし、実用的ですからね。ちなみに、ボスと再戦できる要素はありません。ボスは“エンロール”で登録できるチャンスが限られているので要注意。

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』

 あまり語ると驚きが薄くなるのでそろそろやめておきますが、本作は女神転生やラストバイブルを知らない人にもオススメのRPGです。当時の基準ではありますが、単品として楽しめるくらいよくできています。それになにより、いまの時代に携帯電話のアトラスRPGが復活したのは本当に喜ばしい! アトラスのゲームは、昔もいまもおもしろいですからね。

 とくにPS2の時代は脂がのってノリに乗り、オカルトやコアな要素が満載。同じくらいの時代に出たフィーチャーフォン専用の作品も、本家の作品に負けないような熱い作品が多いです。『新約LB』を遊べば、その熱さが少し伝わるかもしれませんし、アトラス作品を好きな人は、いまでも延々と語ってしまう。その理由の一端が垣間見えるかもしれません。

 なお、本作には『女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音』と『女神転生外伝 新約 LastBible ラストバイブルIII 夢幻の英雄』という続編があります。初代である本作も話題を呼んだのですが、当時ファンのあいだで大きな衝撃をもたらしたのが続編の『新約LBII』。

 仏教と聖書をベースに詰め込まれたシナリオは、本作以上に尖っていました。そして何より、尖ったものを求めるのが往年のアトラスファン。ここはやはり、なんとしても『新約LB III』まで復刻していただかないと満足できません。もちろん、ほかのアトラスモバイル作品も。“メガテンα”で展開していたタイトルはどれも素晴らしいものばかりなので、ぜひ復刻してください!

『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』
一番下の行のセリフで何かを思い出した怪盗団ファンの世代にも、こういうゲームがあったと知ってほしい1作。アトラスの幅広さがわかると思います。
まさん
フリーランスでインディ―ゲーム関連の記事を担当するライター。メジャーなゲームではアトラス作品を深く愛しており、『真・女神転生』シリーズの話をし始めると、延々と止まらなくなる。愛が深すぎて怖いと言われ、記事を担当していないときも多い。
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