ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウイークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、Nintendo Switch用ソフト『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』です。

【こういう人におすすめ】

  • ミスリード満載のミステリーが好き
  • 心にグサッとくる印象的な物語を読みたい人
  • フィーチャーフォンの名作ゲームを遊びたい人

まさんのおすすめゲーム

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』

  • プラットフォーム:Nintendo Switch
  • 発売日:2022年4月28日
  • 発売元:ジー・モード
  • 開発元:And Joy(2006年配信 And Joy(旧社名:元気モバイル)作品)
  • 価格:1500円[税込]
  • パッケージ版:なし
  • ダウンロード版:あり

G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」 紹介動画

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いまの時代にも刺さる重い内容。伝説の『永劫会事件』が復刻

 え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、え、『永劫会事件』だあぁぁぁ! あの『永劫会事件』が復刻したぞぉぉぉ!! うひょおおおおおお! きしゃぁぁぁ! ちょっと、キリモミしながら喜ばないでください! はぁはぁ……。ゲフー。うれしすぎて『癸生川』シリーズっぽく喜んでしまった。くふふ。

 知らない人には突然なんなのかと驚かれるかもしれませんが、これは本当にスゴイことなのですよ。何がスゴイって、当時の携帯電話・フィーチャーフォン(ガラケー)で出ていた名作ミステリー『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズが復刻したことだけでも喜ばしいのですが、歴代最高傑作と呼ばれる『永劫会事件』まで復刻できたことが本当にスゴイ。よくやった! 素晴らしい! 僕は寝る!!

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』

 では、なくて! なんだか記事のテンションが冒頭からおかしいのですが、仕方がないのです。それだけ『永劫会事件』は現代に復刻すべき作品だったから。それが、なんと“G-MODE アーカイブス”のおかげで遊べる! うれしい! 最高! うひょー! ということで、またテンションが戻っていますが、本当に感謝感激としか言いようがないのですよ。なに? ガラケーのゲームを復刻しても需要がない? そんなことはない! ガラケーには、まだまだ知られない名作が多数眠っているのです。遊べばわかる! 

 もともとは、いまから10年以上も前の携帯電話・フィーチャーフォン(ガラケー)アプリですから、疑うのも無理はありません。しかし、それは遊んでいないからです。良さに気づいていない! でも、遊べない! そんな悩みを解決してくれたのが“G-MODE アーカイブス”。“失われゆく、すべてのアプリを救う”をテーマに、現代では遊べないガラケーのゲームを復刻する“G-MODE アーカイブス”のおかげで、いまではガラケーアプリの良さも少しずつ見直されてきました。個人的にも『癸生川』シリーズだけではなく、ガラケーの復刻事業自体がここまで続いたことが本当にうれしいですね。

 そして何より、今回『永劫会事件』が復刻されたことが歴史的に偉大なのです。シナリオの尖り方からミステリーとしてのギミックまで練られた内容かつ、携帯電話で出ていたことが驚くほどの重いテーマを扱った、あの問題作にして傑作『永劫会事件』。いまの表現規制では厳しいかもしれないと思っていた作品が、当時の内容そのままに復刻できたことに意味があります。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』

 正直なところ、ここまで“G-MODE アーカイブス”が続かないかも……という危機感すらありました。

 名作とはいえ、携帯電話のゲームを今の時代に復刻して遊んでもらえるかわからない。だからこそ、自分は去年のGWにもG-MODEアーカイブスと『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズをプッシュしていたのです。復刻が決まっていない作品まで含めて猛プッシュ。シナリオも重い物が多く、人を選ぶような推理ゲームではあるかなと思うものの、この機会を逃すわけにはいかなかった。

 去年の記事タイトルも、わざと「10割損している」なんてイヤな犯人みたいな書き方(こういう場合は、本来損ではなく10割得すると言うべきです)にして、ちょっと煽ってしまったのは反省しているのですが、そんな必要もありませんでした。だって『癸生川』シリーズ、隠れファンが多かったんだもの! そして、新規に入った人もファンになってくれているじゃないですか。やっぱり、名作は携帯電話だろうとなんだろうとハードなんて関係なかったのです。だから、今回はあらためてこう言っておきます。癸生川シリーズを遊ばなくても10割損しませんが、遊ぶと100割も得しますよ! バカの数値になってしまった。それはいい! それはいいので、そろそろ『永劫会事件』の話をしましょう。

 今回みなさんに紹介する『永劫会事件』は、去年紹介した『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズのシーズン1(非公式な分類)集大成。内容はこれまで以上に凝っていて、良質なミステリーをガッツリ遊びきった満足感と、後味は良くないものの考えさせられるゲームを遊んだ満足感が得られます。

 というわけで前置きが長かったのですが、具体的に『永劫会事件』の何が良いのかを語らせてください。なお、ストアの画像と公式の紹介文でわかる程度までしか語りませんが、ミステリーなのでなるべく情報を入れないで遊んだほうがいいです。だから、もう読まなくても大丈夫。いますぐ、遊ぶべきだ! さあ! そこに座って遊びたまえ!!

 と無茶苦茶なテンションで推したいところですけど、ただ1つだけ注意点が。散々、ふざけたテンションで喜んできた手前申し訳ないのですが、本作は内容自体が社会派でシリアス。無茶苦茶に重いです。真面目に辛い場面も多い。笑えて楽しい場面もありますが、全体的に答えを出せない重いテーマを扱っています。人によっては、すごく傷ついてしまうかもしれません。何がどうなのかを語るとネタバレになるので書けないのですが、それでも遊ぶ価値のある物語だと思っています。ミステリーとしても秀逸でアドベンチャーとしても読み応えがありますが、やはりキツイ話でもあります。その覚悟を持ったうえで、遊んでいただけると幸いです。

型破りの天才探偵が活躍する癸生川シリーズの集大成にして原点

 『永劫会事件』は、フィーチャーフォンで展開していたコマンド選択式の推理アドベンチャー『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズのVol.10(正確にはVol.9なのですが、移植にあたって順番が入れ替わったので10番目になりました)に当たる作品です。

 このシリーズは、天才型で他人の300歩先を行くような型破りの探偵・癸生川凌介(きぶかわりょうすけ)が主役……ではなく、その友人でゲームシナリオライターの生王正生(いくるみまさお)と癸生川探偵事務所の助手を務める白鷺洲伊綱(さぎしまいづな)のふたりが、事件を調査していくのが主な流れになっています。『永劫会事件』はいつものシリーズとは異なり、過去に起きた事件ということで主人公たちが一新。

 新米エリート刑事の工藤貴樹(くどうたかき)。フリーライターの石上雅人(いしがみまさと)。女子大生の妹浦澄佳(いもうらすみか)。そして、謎の情報通。立場も目的も異なる4人の視点を切り替えながら、世紀末思想に荒れる1999年7の月に起きた事件を追う、これまでとは違った物語になっています。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』

 複数主人公によるマルチサイトシステムは『Vol.6 対交錯事件』でもあったのですが、今回は4人ということで視点も複雑。思惑や事件が交錯しながら、ひとつの結末に向かって進んでいく良質なミステリーを満喫できます。

 さらに、本作ではプレイヤーの手で犯人を当てるパートも存在。プレイヤーが推理して、全問正解しないと“解決編”を見られません。そう書くと難しそうですが、じつはギブアップもできるので安心。どうしても解けない人でも、最後まで物語を見られます。もちろん、ヒントは物語の中に散りばめられているので、自力で解決するのも良し。読み物としても“推理ゲーム”としても、完成度が高くなっています。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』
選んだ選択肢や行動次第では途中で未完に終わってしまいます。別の主人公で取った行動が、ほかの人の物語に影響することも。

 単体のミステリーとしても非常に出来が良いのですが、本作はあくまでも『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズ。作品を通して貼られてきた伏線もありますし、そもそも生王正生と癸生川凌介の出会いを描いた“はじまりの物語”でもあります。先にほかのシリーズを先に遊んでおいたほうが、より楽しめるのは間違いありません。

 え? 10作もあるから難しい? う~ん、確かに言われてみるとそうですね。1作目から全部遊んでもらうのが望ましいのですが、ムチャは言いません。初期2作はまだ荒いところもありますしね。そうですね。『永劫会事件』の前にひとつだけ遊ぶなら、オススメはシリーズ恒例のノリがわかりやすい『Vol.8 仮面幻影殺人事件』かな?

 これは、もともとニンテンドーDSで出ていた作品の移植版なので、単体でも遊べる作品になっています。キャラクター辞典なども収録されていますし、シリーズでもボリュームが多い長編。遊び応えもたっぷりです。なお、1作目の『Vol.1 仮面幻想殺人事件』とタイトルが似ていますが、こちらは“幻想”ではなく“幻影”。値段も1800円[税込]と、シリーズでもっとも高いのでご注意を。とはいえ、2022年5月12日まではセール中で半額の900円だったりします。これは本当にお得なので、いまのうちに買うべし。べしべしべし。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』
『癸生川』シリーズらしさがありつつ、長編でガッツリとしたボリュームがある『仮面幻影殺人事件』。これも衝撃的なストーリーです。衝撃的じゃない作品のほうが少ないけど。

 あとは『永劫会事件』と同じ過去編である『Vol.4 白鷺に紅の羽』『Vol.9 五月雨は鈍色の調べ』を遊んでおくと、より理解が深まると思います。シナリオとシステムの完成度的にも集大成的ですし、なるべくなら『永劫会事件』は2番目以降か、10番目に遊んでほしい作品なのですよ。

 とはいえ、どうしても『永劫会事件』を最初に遊びたいなら、仕方ないです。単体でも楽しめるし……本作から遊んでも大丈夫ってよくいろんなゲームで言いますからね。大丈夫です。ああ、だけど、あれとか、それとかに気づいてほしいし、やっぱり先に別の作品を遊んでほしい……。いや、でも……(テンションを抑えた)。

 実際に、このシリーズは作品を重ねるごとに進化していきました。グラフィックも演出も物語も、ミステリーとしての仕掛けもパワーアップ。どんどん携帯電話の限界を超えていった作品なので、最初から遊ぶとその進化を実感しやすいのです。

 とくに『永劫会事件』は、進化の果てが見られる作品。『対交錯事件』で導入したマルチサイトを、より巧みに利用したミスリードと驚きに満ちた物語。『白鷺に紅の羽』から本格的になってきたシリーズを通しての伏線。『仮面幻影殺人事件』に匹敵し、現代でも通用する普遍的で重いテーマ。それまでの良いとこ取りです。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』
『癸生川』シリーズならではの衝撃展開に、キャラクターの気になる行動。グイグイと読み進められるうえにプレイヤーが考える要素もあります。

エンターテインメントにするには重く、辛いテーマの社会派ミステリー

 冒頭でも警告しましたが、本作は推理ゲームとして高品質。本来なら絶対に遊んでほしいと言い切ってしまうのですが、とても難しいテーマを取り扱った作品でもあり、オススメしにくい部分もあります。もちろん、テーマを真摯に取り扱ったゲームでもあるので、やるべき価値があるのですが扱いが悩ましい。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』
物語の始まりは、1999年に起きた、とある新興宗教の幹部を狙った殺人事件から。世紀末という舞台も相まって重苦しい雰囲気です。

 重い内容ではあるのですが、あくまでも本作は推理ゲーム。そこは、エンターテインメントのゲームとして読める絶妙なシナリオになっています。4つの視点で事件を追っていくシステム自体が楽しいですし、ミスリードや伏線だらけの物語に翻弄されます。もう、先が読めなくてドッキドキ。

 工藤パートは、いわゆる警察側からの視点。石上パートは、癸生川先生の奇行と天才っぷりを思う存分見せつけられる探偵パート。いつも別行動ばかりの癸生川先生ですが、本作では冴えわたる天才探偵としてのスゴ技を冒頭から見せてくれます。有能さがわかりやすい!

 そして、妹浦パートは……と、マルチサイトならではの視点の切り替わりが物語に深みを与えています。遊び始めたら、クリアするまで一気にプレイしてしまうでしょう。

『G-MODEアーカイブス+ 探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10「永劫会事件」』

 このシリーズは毎回現代的なテーマに切り込んでいて、明るく楽しいミステリーというだけではありません。犯人を当ててスッキリと終わるよりも、後味が良くない事件ばかりです。そのなかでも、本作はとくに暗く、重く、切なく、人によっては大きく傷つく可能性もあります。それでも、そこには闇だけではなく光や希望も描かれている。フィクションだからできる描かれ方があるシリーズでもあります。

 だからこそ、やはり遊んでみるべきです。ゲームとしての完成度も高いですし、ミステリーとして素晴らしい作品ですから。クリアーしたあとに深く考えさせられつつ、この作品が当時の携帯電話で出ていたことに驚き、そしてあらためて、現代に復刻できたことを感謝したいと思います。ありがとう、G-MODEさん! ちゃんと『永劫会事件』まで移植してくれてありがとう……。そして、シーズン2とシーズン3の移植もよろしくお願いします!!

まさん
 フリーランスで、インディ―ゲーム関連の記事を担当するライター。メジャーなゲームではアトラス作品を深く愛しており、『真・女神転生』シリーズの話をし始めると、延々と止まらなくなる。愛が深すぎて怖いと言われ、記事を担当していないときも多い。
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