サイゲームスより配信中のiOS、Android、PC(DMM GAMES)対応ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』で、2021年10月11日に新たな育成ウマ娘“カワカミプリンセス”が実装された。その能力や、ゲームの元ネタとなった競走馬としてのエピソードを紹介する。

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『ウマ娘』のカワカミプリンセス

公式プロフィール

  • 声:高橋花林
  • 誕生日:6月5日
  • 身長:154センチ
  • 体重:増減なし(に決まってるでしょ!)
  • スリーサイズ:B91、W57、H87

庶民からプリンセスを目指すおてんば少女。
手に余る元気娘だったが、とあるアニメから『王子さまと手を取り、戦うお姫様』という前向きな将来像を得る。以来、プリンセス道を邁進しながら、自分にとっての王子様と出会う日を夢見ている。
キングヘイローを師と慕う。

出典:『ウマ娘』公式サイトより引用

【ウマ娘】カワカミプリンセスが『プリファイ』好きなのはなぜ? 壁に穴を開けたパワー系お姫様について、ゲームの元ネタを紹介
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カワカミプリンセスの人となり

 気高くありつつもおしとやかなプリンセスを夢見るウマ娘。勝負服のデザインがドレス風だったり、口調がお嬢さまっぽいので最初は勘違いしそうだが、じつは庶民の出なので言動の端々にお嬢さまらしからぬ素顔が垣間見られる。

 そんな彼女だが、本物のお嬢さまのキングヘイローに師事して立派なプリンセスを目指そうと努力している。しかし、困ったときは鍛え上げたパワーで解決しようとする脳筋な一面も……。

 イベント“花咲く乙女のJunePride”では、

「知恵と勇気。そして“剛腕”があれば!」
「王子様はとっ捕まえてナンボですわね!」
「(岩をひとりでぶっ飛ばして)1人では越えられない壁も2人でぶっ飛ばせば、この通り!」

と、想像の斜め上を行く豪快な言動で、同行するメジロドーベルの目を点にさせていた。

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 彼女がこんな感じになったのは、少女たちが拳で戦う女の子向けアニメ『プリファイ』(『プリンセス☆ファイター』)全49話を観たかららしい。なお、カワカミプリンセスを尊敬しているウオッカとダイワスカーレットらもこのアニメを観ており、『ウマ娘』の世界では人気作品のようだ。

 また、勝負服にはリアルの“カワカミ”のデザイン(桃、緑菱山形、袖緑二本輪)が意匠として盛り込まれている。基本カラーがピンク、服とハイソックスの飾りボタンに緑の菱山形が使われている。また、競走馬のカワカミプリンセスは全部の脚に白いバンテージを巻いていて、ハイソックスにはそのデザインが取り入れられているように感じられる。

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カワカミプリンセスの能力

 カワカミプリンセスはオークスと秋華賞で中距離GIを2勝しているということもあり、中距離適正がA。また戦法も差しのみがAとなっている。アオハル杯シナリオおいては、適正が広いことがスキルのヒントを得る際にマイナスに働くこともあるので、中距離のエキスパートを育てたいときには向いているキャラクターだろう。

 成長率はパワー+10%、根性+20%。俗に言う根性育成をしてみるのもいいかもしれない。

 固有スキル“姫たるもの、勝利をこの手に”は、最終直線を走行中に中団で競り合うと、可憐にぶっ飛ばして速度を上げる、という効果。加速スキルと組み合わせるのがいいかも。

 そのほか固有スキルとしては、垂れウマ回避の上位にあたる“ノンストップガール”や、外差し準備の上位にあたる“昇り龍”などを習得可能だ。

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競走馬のカワカミプリンセス

カワカミプリンセスの生い立ち

 カワカミプリンセスは2003年6月5日、北海道日高郡新ひだか町にある三石川上牧場で生まれる。父はキングヘイロー(父ダンシングブレーヴ)、母はタカノセクレタリー(父シアトルスルー)。『ウマ娘』でカワカミプリンセスがキングヘイローを尊敬しているのは、現実世界のこの2頭が親子にあるからだろう。

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 日高の中規模牧場に生まれたカワカミプリンセス。日本のサラブレッドは3~4月に生まれることが多い中、6月と遅生まれだったため他馬よりも仕上がりが遅く、もともと身体も小さかったため注目もされずにセリでは買い手がつかなかった。そのため牧場が馬主として彼女を所有することとなる。

 そして将来は繁殖牝馬として牧場に戻り、三石川上のプリンセスになってほしいという願いを込めて“カワカミプリンセス”と命名された。デビュー時には身体も仕上がり、馬体重自体は標準レベル(5歳時にはちょっと増えすぎたことも……)になる。

 ただ、気性については父譲りで非常に荒く、所属していた西浦厩舎(2021年2月で引退)でもいつも暴れていたらしい。彼女の馬房には“猛馬に注意”の札がかけられていたほど。また、水飲み場の壁には彼女が蹴って穴を開けた跡が残っていたそうだ。

 この壁に穴を開けたエピソードは、『ウマ娘』でも採用されている。

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カワカミプリンセスの血統

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 父、キングヘイローは正真正銘の世界的な良血馬だった。

 キングヘイローの父は当時“欧州史上最強馬”と呼ばれたダンシングブレーヴ。種牡馬として総額33億円もの巨大シンジケートが組まれるほどだったが、不治の病である“マリー病”に罹患したため、格安で日本に売られてしまったのだ。しかし、数少ない産駒から英愛ダービー馬コマンダーインチーフ、伊ダービー馬ホワイトマズルなどの活躍馬が出ている。

 子はスプリント~クラシックディスタンス(1200~2400メートル)まで活躍、芝なら日本の軽い馬場からドロドロの重馬場まで対応する優等生ばかりだった。まさにキングヘイローは代表的な一頭である。

 キングヘイローの母はアメリカでGI7勝の名牝、グッバイヘイロー。1990年の繁殖牝馬セールで2億円強もの価格で日本人に落札されて来日したが、母国では惜しむ声が後を絶たなかったという。ただし活躍馬はキングヘイローのみであった。繁殖からの引退後は功労馬として余生を過ごし、29歳まで生きた。

 なお、両親ともによく走る馬にありがちな気性難を抱えており、その仔であるキングヘイローもかなりの気性難だった。

【ウマ娘】カワカミプリンセスが『プリファイ』好きなのはなぜ? 壁に穴を開けたパワー系お姫様について、ゲームの元ネタを紹介

 カワカミプリンセスの母タカノセクレタリーは、自身こそ活躍できなかったが、ゴリゴリのアメリカパワー血統の良血馬だった。

 父はシアトルスルー。アメリカで史上初の無敗での三冠馬で、アメリカ史上最強馬と称される名馬。さらに母方の祖父にはアメリカで三冠馬かつ2年連続の年度代表馬にもなったセクレタリアトがいる。

 カワカミプリンセス、血統的には本当にすごいお嬢さまだったのだ。

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カワカミプリンセスの現役生活

3歳(クラシック級:2006年)

 2歳時には出走がかなわず、ようやく年も明けた2006年2月26日、阪神競馬場芝1400メートルの新馬戦でデビュー。雨の不良馬場、鞍上はベテラン本田優。仕上がりが遅かったということもあってあまり評判にはなっておらず、9番人気だった。しかしハナを切ってあっさり逃げ切る楽勝。

 2戦目の君子蘭賞は少し評価が上がって6番人気に。出遅れて後方からの競馬になったが、難なく差しきって2連勝。さらにオークストライアルのスイートピーステークスでも中団から切れ味鋭く差しきって3連勝を飾る。無敗でオークスへの切符を手に入れた彼女は、無名の期待薄から一躍、樫の女王の有力候補になったのである。

 オークスでは桜花賞の1、2着に次ぐ3番人気に支持される。大逃げを打ったヤマニンファビュルから離れた2番手集団の後方、絶好のポジションにつけたカワカミプリンセス。最後の直線でアサヒライジングが早めに抜け出すが、坂を上りきったところで捉え、さらにフサイチパンドラの追撃をしのいで勝利。本田騎手がベテランならではのムダのない騎乗で、見事に樫の舞台をエスコートした。

 最後の斬れ味の鋭さには、彼女の圧倒的なパワーがいかんなく発揮されていた。デビューからわずか85日での戴冠は史上最短、無敗での制覇はミスオンワード以来49年振りという記録尽くしの勝利となった。

2006年 オークス(GⅠ) | カワカミプリンセス | JRA公式

 なお、上記の動画とは異なる中継局で、レース中に実況アナウンサーが、カワカミプリンセスとテイエムプリキュア(このオークスでは11着)を間違えて読み上げてしまうというハプニングがあった。ゲーム内の人気アニメ『プリファイ』好きの設定は、そんな縁から来ているものと思われる。ハプニング自体はたまにあることだが、名前のインパクトが強かった……。

【ウマ娘】カワカミプリンセスが『プリファイ』好きなのはなぜ? 壁に穴を開けたパワー系お姫様について、ゲームの元ネタを紹介

 秋は前哨戦を挟まず、秋華賞に直行する。遅生まれでデビューも遅れたが、カワカミプリンセスは焦らずじっくりと歩みを進めていた。そんな陣営の期待に応え、レースはオークスと同様に先に抜け出したアサヒライジング(とシェルズレイ)をゴール前できっちり差しきって完勝。ともに追い出したフサイチパンドラはオークスに続いて置いていかれる恰好となり3着に。5連勝、無敗のまま2冠を達成した。

2006年 秋華賞(GⅠ) | カワカミプリンセス | JRA公式

 さらに勢いに乗ってエリザベス女王杯へ。同世代のライバルたちに加え、スイープトウショウら年上の古馬陣が参戦するきびしいレースだ。秋華賞のリベンジを果たすべくシェルズレイがハイペースで飛ばす中、カワカミプリンセスは中団やや後ろでフサイチパンドラをマークするような位置取りに。

 そして最後の直線では、後方の大集団がなだれ込んで壮絶な叩き合いが始まる。そんな中、馬場の中央から“レベチ”の末脚で抜け出したのはカワカミプリンセスだった。オークス、秋華賞よりも強い勝ちかたでゴール板前を駆け抜ける。

 しかし、掲示板には“審議”のランプが点灯していた。約15分にもおよぶ長い沈黙の後、場内に伝えられたのは、カワカミプリンセスの降着だった……。いつもより馬場が悪かったためか、最後の直線の入口で苦しくなってステッキ(ムチ)を入れた際にヨレてしまい、前年の2歳女王ヤマニンシュクルの進路をカットしてしまっていたのだ。「自分からはいくら制裁金を取ってもいいから、馬は勘弁してほしい」と本田騎手は訴えたものの、裁定は変わらず。まさかの形で連勝記録が途切れることとなった。

 カワカミプリンセスの競走馬生活を伝える記事の多くは、この“運命を分けたエリザベス女王杯”で終わっている。結果として、彼女はこの後1勝もできずターフを去ることになったからだ。しかし、パワーとともにもうひとつの武器であった“ド根性”は、ここからが真骨頂だったのである。

【ウマ娘】カワカミプリンセスが『プリファイ』好きなのはなぜ? 壁に穴を開けたパワー系お姫様について、ゲームの元ネタを紹介

4歳(シニア級:2007年)

 じっくりと再起を期したカワカミプリンセスが初戦に選んだのはヴィクトリアマイル。しかし、レースは先行勢も消耗しない程度の緩やかなペースとなったため、前目で競馬をしたコイウタ(カワカミプリンセスの同期で、歌手の前川清氏の持ち馬)が勝利。前が崩れなかったため、末脚が武器のカワカミプリンセスやスイープトウショウは脚を余したまま下位に沈んでしまうのだった。

 まさかの10着という大敗から1ヵ月、雨が降りしきる中行われた宝塚記念に出走。前走の反省からか、ハイペースながらかなり前目につけてレースを進め、有力なライバルたちよりも早めに仕掛ける。しかし最後の直線ではもうひと伸びすることができずに次々と差されて6着に。1番人気に支持された話題のダービー馬ウオッカ(8着)よりも先着できたことだけが救いだったか。

 その後、札幌記念を目指して調教中に骨折をしてしまい、約1年ものあいだ離脱することになる。

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5歳(シニア級:2008年)

 5月、約1年振りのレースとなった金鯱賞では、長いブランクもあってか好位置につけるも勝ちきれずに3着。夏は休んで秋は府中牝馬ステークスから再始動する。デビュー時の476キロから少しずつ増えてきた馬体重は、このレースで最高の508キロを記録。少し緩めだったのかどうかはわからないが、ここでは勝ちきれずに2着となった。そして10キロ絞ったエリザベス女王杯も2着に終わる。

 年末は有馬記念に出走する。最内枠から先行して自分のレースを貫き、最後も失速せずに健闘してはいたものの6着に終わった。

 この大レースを制したのは、1歳下のダイワスカーレット。現在では、芝GI・9勝のJRA記録を持つアーモンドアイや、スペシャルウィークの代表産駒にして芝GI・6勝の実績を誇るブエナビスタなど牡馬を圧倒する牝馬も珍しくないが、その流れを作ったのがウオッカとダイワスカーレットだったのだ。

【ウマ娘】カワカミプリンセスが『プリファイ』好きなのはなぜ? 壁に穴を開けたパワー系お姫様について、ゲームの元ネタを紹介

6歳(シニア級:2009年)

 2月の京都記念4着から始動し、大阪杯(当時GII)を経てヴィクトリアマイルへ。2年前の宝塚記念以来、先行策を連採し続けてきたカワカミプリンセスだったが、大阪杯では差しを採用。しかし上がり3ハロン(600メートル)33秒8の好タイムを記録するもおよばずに3着。ヴィクトリアマイルはウオッカに置いていかれ7着に沈む。

 秋は府中牝馬ステークスから。ファンが復活を期待し1番人気に支持されるも、ゴール前で失速し6着、そして3回目の出走となったエリザベス女王杯で9着に終わり、現役を退くことになった。

 大ケガをしても、どれだけ長く勝てなくても、厩舎ではワガママ女王さまだけれども、一生懸命走る姿勢だけは変わらなかった。17戦走ってふた桁着順に沈んだのは、降着となったエリザベス女王杯と、展開に泣いたヴィクトリアマイルのみ。秋華賞の後は1勝もできなかったが、着実に賞金は稼いでくる孝行娘であった。生涯成績17戦5勝(GI・2勝)。立派な成績である。

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 引退後は繁殖牝馬として三石川上牧場に帰ってきたカワカミプリンセス。これまで9頭もの仔を産んでいて、残念ながらまだ活躍馬は出せていないが、いまも元気に暮らしているのは何よりだ。彼女自身、低評価を跳ね返して無敗の2冠馬となったド根性と溢れるパワーの持ち主であるだけに、これからもまだまだ期待していきたいと思う。

 2021年10月3日には、キングヘイローを父に持つピクシーホロウから生まれたピクシーナイトが、スプリンターズステークスを制している。いまは母系にキングヘイローの血が入っている馬が脚光を浴びていることもあり、カワカミプリンセスの仔がブレイクする可能性も……? 

 なお、ピクシーナイトは祖父のキングヘイローのほか、父方の曾祖父にグラスワンダー、母方の曾祖父(母母父)にはサクラバクシンオーがいるなど、濃いめの“『ウマ娘』血統”でもある。そんなところにも注目してみると、リアル競馬もさらに楽しめるはず!

著者近況:ギャルソン屋城

  リアル競馬&競馬ゲームファンでもある、週刊ファミ通『ウマ娘』担当ライター。誕生日:9月5日、身長:168センチ、体重:微減(左右の奥歯が虫歯に……)。

 微課金勢だがコツコツと貯め込んだジュエルで、先日育成ウマ娘ガチャ200連を引いた。しかし新規★3がたったひとりという悲運(3ヵ月ぶり2度目)。3度目の正直があると信じ、再びジュエルを貯め込み始めている。二度あることは……?

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