アームチェアトラベル
何度も言うように『ゴースト・オブ・ツシマ』は、家庭用ゲーム機史上最高の映像美を誇る作品なので、ついつい寄り道をして景色を堪能したくなる。物語の進行とは関係ないとわかりつつも、ついついワールドマップで未開拓の地点を目的地設定し、
「あそこにはどんな景色があるのかな~♪」
なんて鼻歌を歌いながらホイホイ足を運んでしまうのだ。
だって……↓こんなに美しいんだよ!?
『ゴースト・オブ・ツシマ』でツーリング(馬だけどw)をしているだけで、日本の四季を旅している感じがするわ。今年は新型コロナウイルスの影響で旅行やレジャーを楽しめず、家でモンモンとしている人が多いと思うけど、そんなときこそぜひぜひ、『ゴースト・オブ・ツシマ』で風景を眺めて欠けたパーツを取り戻してほしい。
作家の故・開高健がエッセイの中で、
「大好きな釣りに行けないときは地図を広げて“やった気”になる、“アームチェアフィッシング”を楽しんでいる」
と書いていたけど、それにならって『ゴースト・オブ・ツシマ』を使った“アームチェアトラベル”を提唱したいと思うね。
遠くに見えた、あの場所に
さて、そんなアームチェアトラベルを楽しんでいたある日のこと。俺は↓こんな風景に出会った。
見ての通り、キツネに誘われてお稲荷さん参りをしたあとのスクショなんだけど……向こうに広がる広大な風景のあちこちに、紫色の絨毯のようなものが見える。あれは……どう見ても、花だよな。
俺はうれしくなった。
これまで見てきた景色は美しいことは間違いないのだが、どちらかというと水墨画のような風情に満ちていて、原色のイメージはほとんどなかったのだ。あっても、上のスクショにあるイチョウの木の黄色くらいで、眼下の紫色は……うん、初めて見るものだわ!
こうなったら居ても立っても居られないのが、境井仁という男。いや、大塚角満という男かw 俺は見た目的にはイカついヒゲメガネの四十肩だが(四十肩関係ないけど)、何気にお花が大好きで、つねに自宅の庭には季節の花が植えてある。そんな俺が紫花の群生地を見てしまったら……速攻で駆けつけるしかないだろう!!w
さっそく俺は高台から降りて、紫の花が咲いていたあたりに目星をつけた。ワールドマップで確認するとどうやら未踏の地のようで、そのまわり一帯には近寄ったことがなかった。つまり、未踏地の探索と紫花の捜索をいっぺんに行えるというわけで、これは願ったり叶ったりの流れになってきたというわけだ。
でまあ、その地点まで馬と徒歩で近寄っていったんだけど……これが意外や、道が険しい。進めないことはないんだけど、大きな岩を登ったり、隙間を縫ったりしてようやく、その近くまでたどり着くことができるありさまであった。
でも、なんとか着きました^^
おお……! なんだこの、いかにも、
「岩と森に囲まれた場所に隠しておいた秘密の地です!」
という雰囲気はww これはきっと……重要なイベントが起こるに違いないぞ!!
というわけで、さらに近づいてみる。
もちろん、『ゴースト・オブ・ツシマ』のイベントごとは8割がたが刃傷沙汰なので、いつでも刀を抜けるように慎重を期してな。
でも……。
わりとすんなり、近くまで来れてしまったんですがww
ご覧の通り、粗末ながらもいわくのありそうな鳥居と祠がある。もしかしたらここは……お稲荷さんの流れを汲む施設なのでは??
そう確信し、「じゃあきっと、手を合わせられるのだろう」と思って近づいたんだけど……。
シーーーーーーン……w
……って、お参りできないんかい!!www
あ、わかった。ここで何も起こらないってことは、奥に見える家とお墓っぽい場所で、ヤバい事件が発生するのだろう!
「そう考えると……この静けさが、余計に緊張を誘うぜ……」
コントローラーを握る手にじんわりと汗を感じながら、俺はあばら家とお墓をくまなく調べたのだが……!!
シーーーーーーーーーーン……www
……って、何もねえのかよ!!!www
そう、何もないのである。
これほど思わせぶりな場所でいかにもな花を咲かせつつ、霊障がありそうな鳥居と墓、死体が眠ってそうなあばら家まで設えておいて……何もないってのはどうなっちょんねん!!!w 心霊現象のひとつも起こしてくれよ!!!w
……と、このときは思ったんだけどね。
じつは……この土地にからむ話には、続きがあったのである。
大塚角満(おおつか かどまん)
元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。2017年に独立。編集部時代から現在に至るまでゲームエッセイを精力的に執筆し、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』、『折れてたまるか!』など、多数の著作がある。