意外と低い!? 操作のハードル
オープンワールドのアクションアドベンチャーゲームって、そのほとんどがファンタジー(もしくはそれに類する世界)が舞台になっているように思う。
特殊なのは……『龍が如く』シリーズと『グランドセフトオート』シリーズ、あと『レッド・デッド・リデンプション』シリーズくらいか?(けっこうあるなオイ)
そんな中にあって鎌倉時代の日本、それも対馬という小さな島(ゲーム中だとメチャクチャ広いけどなw)が舞台の『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)』は、極めて異彩を放っていると言えよう。
が、舞台設定こそ独特ではあるものの、“ゲームプレイ”という点においては非常に硬派というか……王道を行っているように思う。どんな操作も腑に落ちる感じで、複雑なゲームになればなるほど体験しがちな、
「……あれ? このやり方、すげえ面倒なんだけど……!」
とイラつくシーンがほとんどないのがすばらしいのである。散策中も、そしてバトルでもそう。本当に、よく考えられていると思う。
なんでこんなことを書き始めたのかというと、新規のゲーム……それもオープンワールドのような規模の大きなタイトルを前にしたときに感じてしまう“気おくれ”のようなものを、『Ghost of Tsushima』の場合は忘れてほしいと思ったからだ。
ホラ、よくあるでしょう。
発売をすんごく楽しみにしていたゲームなんだけど、情報を追えば追うほど、
「なんか……覚えることが多そうで、イヤだな……」
なんてモードになり、さらに発売直前情報なんかを読んで、
「あ……! やっぱり、コントローラーのボタンを全部使うのに加え、瞬時に武器を持ち替えたりリロードしたりスキルを切り替えたり……なんて作業が必要みたいだぞ((((;゚Д゚))) あ、あかん……。わしもう、そんなに覚えられない……><」
↑こんな感じで、遊ぶ前から絶望することが……w
まあこれ、完璧に俺のことなんだけど。
歳を取れば取るほど新しいことにチャレンジするのが億劫になり、しかも予想通り操作を覚えられず、
「やっぱり……俺には向いてなかった><」
と人知れず傷ついてゲームから遠ざかってしまう……。
これ、若い人が読むと、
「うはwww ダッサwww」
と容赦なく笑うかもしれないけど……いつかわかるから!!w
「あ、あのとき角満が言ってたのって……コレのことだったのか!!((((;゚Д゚)))」
そう痛感するときが必ず来るからな!!w
さて、そこで『Ghost of Tsushima』である。自由度の高いオープンワールドのこのゲームも一見、操作が煩雑そうに見える。俺もプレイ前に、
「だ、大丈夫かな……」
と身構えてしまったことは事実だ。
しかし前述の通り、『Ghost of Tsushima』の操作は腑に落ちた。
たとえば、バトルの流れ。これはあくまでも一例だが、以下のような感じになる。
ストーリーをちょっと進めると、主人公の境井仁は飛び道具(弓とか“てつぱう”(鉄砲玉のことかな?))を扱えるようになる。なのでまずは、敵の大群(蒙古軍はたいてい、5、6人からなる団体さんで行動している)を遠目に見つつ、物陰からこっそり遠距離攻撃をする。
遠距離武器は、コントローラーの左手側(正確にはL2ボタン)でメニューを開いて使うものを選択し、R2で発射だ。この際、「左の“ひ”は飛距離の“ひ”」と覚えるといいらしい。
遠距離攻撃で敵軍にダメージを与えたら、十字ボタンの上を押して、堂々と“一騎打ち”を申し出てもいいし、さらに物陰に潜って“闇討ち”に走ってもいい。この忍のような戦い方を“冥人(くろうど)”という。
おもしろいのが、対照的な侍としての立ち回りと冥人としての立ち回りを、自由に織り交ぜられること。つまり、正々堂々と敵を斬り伏せたのちに物陰に身を隠し、残りはこっそりと仕留める……なんてこともできるわけだ。
このへんの流れが、目まぐるしく状況が変化する戦場の中にあって、じつに自然に、違和感なく展開することに驚かされる。もちろんその中に主人公もいて、リアルな風景に溶け込みながら敵を斬り刻んでいくんだけど……その流麗とも言える体捌きに使うボタンは、剣を振る□と△ボタン、相手の攻撃を防いだり、弾いたりできるLボタン……ざっくりこれだけでいいのだ。覚えることなんてほとんどないので、プレイヤーは前知識もなく裸で飛び込んでも余裕で戦えると思う。
それでいて薄っぺらいわけではなく、“侍+日本刀”という一撃必殺の緊張感を完璧に表現しているし、装備に優れる蒙古兵の怖さも前面に押し出されているので、戦場では1秒たりとも気が抜けない。正直、脱兎のごとく敵の前から逃げ出して、山間の温泉(対馬のあちこちに美しい温泉があるのだw)でのんびりと傷でも癒したいと思ってしまうよ(苦笑)。
『Ghost of Tsushima』を遊ぶ上で、操作に対する懸念は忘れてもらっていい。きっとすぐに手に馴染み、まるで自分がその世界に入って走り回っているかのような、そんな錯覚すら覚えるようになると思う。
大塚角満(おおつか かどまん)
元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。2017年に独立。編集部時代から現在に至るまでゲームエッセイを精力的に執筆し、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』、『折れてたまるか!』など、多数の著作がある。