安らぎもある!
『ゴースト・オブ・ツシマ』は、鎌倉時代に起こった蒙古軍の対馬侵攻、いわゆる“元寇”がモチーフとなっている。
テーマがテーマゆえに物語は重く、目を背けたくなるような“リアル”が展開するわけだが、意外や、四六時中ドンヨリとした気分でプレイしているというわけでもない。他のオープンワールド系のゲームのように、ところどころにギャグやズッコケシーンが挟まっているわけじゃないんだけど、ホッとするような現場が皆無かと言われたら、
「決してそんなことはない! 『ゴースト・オブ・ツシマ』にも、安らぎの場は存在するのだ!」
と言下に返したいと思う。
ウマの勘違い
荒んだ戦場に身を置く主人公にとって、密かに心安らぐ存在となってくれているのが“愛馬”であろう。プレイを進めていると間もなく、日常の脚となってくれる馬を手に入れることができるのだ!
具体的には、上のスクショに映っている3頭の中から好きな子を選べる。左から、黒毛、白毛、そしてマダラ毛なんだけど……この選択肢の中から果たして、黒とマダラが選ばれる度合いはどれくらいなんだろう?w これ見よがしに、もっとも目立つところにもっとも目立つ白馬が入っているわけで、なんとなく、
「ホラホラ、いい子がいますよ!! 背が高くて色白で!! ちょっと目つきが悪いですけど……推しにどうですか!?」
↑こんな誘導をされている気がする。それに従って白馬を選んでしまうと制作陣の手のひらの上で転がされている気がしてしまうので、ここは男らしく、
「く、黒かマダラにしよう!! 誰もが白馬を選ぶと思うなよ!!!」
そう思った。
ところが……w
|;・`ω・)……………
やべ……w なんか無意識のうちに、白馬君を選んじまってたわ……w さらに、
「キミは今日から“ソラちゃん”だよ^^ おーおー^^ どうどうどう^^^^」
ニコニコしながら白馬君あらためソラちゃんを慈しんでいる自分がいたわ^^; やっぱ美しくも目立つ白馬だよな。ここはもう、最初から一択みたいなもんだったわ。
どこにいても、ピュウと笛を吹くだけで、ソラは速攻で駆けつけてくれる。
傍らに来たらR2ボタンを押すだけで、主人公は颯爽とその背にまたがるのだ。
これにより格段に、対馬内での行動半径が広がる。
俺はハタチくらいのときにバイクの免許を取り、初めて“自分の脚以外の脚”を手に入れたんだけど、そのときの感動は一生忘れないと思うわ。
前日までヒーコラ言いながら歩いて行っていた場所に、バビュンと一瞬で到着できたヨロコビ。大人になってからいちばんうれしかった出来事は、これかもしれないよ。
『ゴースト・オブ・ツシマ』の馬には、そのときに覚えた感動を思い出させるものがあった。
小さな島のように思っていた対馬も、自分の脚で回るとなると……広大無辺な大陸を思わせる迫力がある。でも、馬がいれば……! ソラがいてくれたら、どこまでも走っていける気がするよ!!
そして実際、俺はソラの背に乗って島中を走り回っている。
いまや完全に、ソラは俺の相棒だ。太刀と並ぶ、我が身の一部となったアイテムである。
さあ、今日もソラの背に乗って、まだ見ぬ地区を探索するぞ。愛しの白馬は、どんな風景を見せてくれるのだろう。燃えるような夕焼けか?? 矢のように降りそそぐ木漏れ日か??
「さあ、ソラちゃん^^ 本日もよろしくね!!」
その背にまたがったところ……。
……って、このウマ誰ぇぇぇえええ!!!?!?
そそそ、ソラがいつの間にか茶ウマに!!? 俺の馬はどこいった!!! なんで色が変わってんねん!!!
暗がりで敵を倒したとき、近くにいたならず者所有の馬をソラだと思って、ずっと乗り回してたらしい((((;゚Д゚))) おおお、俺の白馬は!? ソラちゃんはどこ!?!w
困惑したまま、次回に続く……
大塚角満(おおつか かどまん)
元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。2017年に独立。編集部時代から現在に至るまでゲームエッセイを精力的に執筆し、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』、『折れてたまるか!』など、多数の著作がある。