バトルシステムや主人公を変更し、新たな一歩を踏み出した『龍が如く7 光と闇の行方』(以下、『龍7』)。東京ゲームショウ2019の『龍7』ステージイベントでは、9月13日までに2本の新トレイラーが公開され、物語に絡むであろう裏社会の3つの組織“異人三”の存在、ライブコマンドRPGバトルの実機プレイ、中田ヤスタカ×湘南乃風によるタイアップ楽曲収録、新プレイスポットなどがお披露目され、注目を浴びている。

 そんななか、『龍7』開発のトップ、名越稔洋総合監督と横山昌義チーフプロデューサーにインタビュー取材を実施。ステージイベントで明らかになった要素を中心に、さまざまな質問をぶつけてみた。

・ファミ通com”TGS 2019情報まとめ“特設サイト

ステージイベント2日目までに公開された新情報についてぜんぶ聞きます!

――まずは会場で試遊台を遊んでいる方、あるいは配信動画などを見てくれた方々のリアクションを見て、どのような印象を持たれましたか?

名越配信動画へのコメントを見たりすると、当初は懐疑的な意見も少なくなったものが、「これはこれでアリだ」と受け入れていただける空気感に変わったかな、と感じています。そういう意味では、かなり手応えがありましたね。

――風向きが変わった感じはします。

名越そもそも、懐疑的な意見が多いのは当然なんですよ。『龍が如く』シリーズは、長いあいだ愛してくだる方たちがいて続けられたからこそ、いまの結果がある。その中には、アクションバトルを好きだと言ってくださっていた人も当然多くいたのですが、今回はそれを変更するということをしたんですから。「なぜだ?」という悲鳴のような意見が出るのは仕方のないで。ただ、そういった反応が出ることはわかっていながらも、俺たちは新しいステージに進みたかったんだ、ということは理解してほしいと思っています。

――それは、TGSの試遊台やステージ発表などで伝わりつつあると思います。

名越今後、皆さんの手に触れる機会が増えれば、少しずつ変わりつつある空気が加速していくんだろうな、という期待もあります。

総合監督・名越稔洋氏

横山バトルシステムを含め、『龍7』の変化は、今回公開した動画を観ていただけるとわかりやすいと思います。さらに、実際に体験していただければ、より説得力が高まるんじゃないかな、と。だから今回の東京ゲームショウ2019は、これまでのように“シアターで物語を見ていただく”という形でなく、“積極的にゲーム映像をお見せする”ことをプレゼンテーションの手法にしたんです。

――確かに『龍が如く』シリーズでは恒例となっているクローズドシアターはありませんが、そのかわり、ゲーム映像をあちこちで公開していますね。

横山はい。実際のところ、ゲーム映像を見ていただくほどに好意的なコメントの数が目に見えて増えていると感じますね。何より、今回のゲームトレイラーを見ていただいたことで、「いままで通りの『龍が如く』なんだ」ということを証明できたと思うんです。すごいボリュームだし、バカバカしいものも真剣にやっているので、「相変わらず龍が如くスタジオはこうだよね」という部分は伝えられたという手応えはあります。

――まさにその初日のステージイベントを皮切りに公開された2本のゲームトレイラーについておうかがいしたいのですが。まずストーリートレイラーでは、ドラマの舞台となる伊勢佐木異人町を支配するという“異人三”の存在が明らかになりました。その“異人三”について、少し詳しく教えていただけますか?

横山春日一番が荒川真澄に撃たれ、その後、目を覚ました場所が伊勢佐木異人町という街です。そこには街に根付いている裏社会を牛耳る3つの組織があって。それが“異人三”と呼ばれるものなんです。ストーリーを進めると、一番はホームレスから成り上がっていくのですが、その過程でいろいろな事件をきっかけに“異人三”と接触していくことになるんです。

――なるほど。

横山伊勢佐木異人町の裏社会全体を牛耳っているのが、古くからある“横浜星龍会”という極道組織です。星龍会は、異人町にある多くの店のケツ持ちをしていて、異人町では知らない者はいないような存在ですね。残りのふたつの組織は、街の中に勢力の強いエリアというものがあって。中華街に近いエリアには、中華街からこぼれ落ちてきた落伍者たちが集まってできた“横浜流氓”という組織があります。そして、異人町のど真ん中には、窓ひとつないコンクリートの要塞のような場所に巣くっている“コミジュル”と言われる韓国系マフィアもいます。この3つの組織は長らく一触即発のような状態で牽制し合っているのですが、それによって横浜の裏社会のバランスが取れているんです。

――そんな危険なところに春日が来てしまったんですね。

横山そうなんです。一番が彼らに接触してしまうことで、そのバランスが少し壊れてしまい、とんでもない事件に巻き込まれていく……という流れですね。

――その3組織の勢力というのはあくまでも横浜の裏社会だけで、日本全体で見れば近江連合が最大勢力になっているのですか?

横山そうです。横浜の異人町という街だけは、いまも昔も東城会や近江連合が入り込めないくらいの危険な地域だったんです。つまり、東城会や近江連合もいない街なんですね。

――興味深いです。現状では比較的、いい意味での『龍が如く』のバカバカしさに振ったような映像が多いですが、ドラマは相変わらず骨太な感じですね。

名越異人町の歴史的な背景は現実に近い雰囲気にはしています。だから、ドラマに関して言えばリアリティがあるんですよ。また、春日の物語を描くためには、この街は欠かせないものでした。

――どのような部分ですか?

名越春日は、「荒川のために」という想いを生き甲斐にしている人間なんです。ところがその荒川に殺されかけてその小さな幸せもなくなり……信じるものも生きる希望も何もない状態になってしまう。そんな彼の生きる目的になるのが、「なぜ自分が殺されかけたのか?」という理由探しです。お金が欲しいとか、自分の組を持ちたいとかじゃなく、本当に切実で小さな願い。そんな春日の願いが、想いもよらぬ大きな話につながっていくのですが、そこに伊勢佐木異人町の勢力が絡まってくることで、ダイナミックな展開が楽しめる物語になっています。

――なるほど! 今後明かされる詳細に期待しています! 続いてはゲームシステムのトレイラーに関していくつか質問です。プレイスポットがかなりの数用意されているように見受けられましたが、その数はどれくらいになるのでしょうか?

横山じつは、正確に数えていないんです。というのも、プレイスポットと名言するような要素ではないけれど、楽しめる遊びもたくさん入っていて。ゲームシステムのトレイラーには会社経営で遊べる株主総会のシーンを入れていましたが、そもそも会社経営というのは、ゲーム内で大きなコンテンツなんですね。ストーリーもあるし、株主総会的なゲームもあるし、そこにいたるまでのシミュレーション的な要素もある。さらに仲間のスタッフを増やすための遊びもあって……というふうに複合させてもいて。だから、正確な数を出すとなると難しい。ただ、そういった大型コンテンツの細部も遊べるもののひとつと考えると、シリーズ史上最多にはなると思います。

――おお! 試遊台を遊ばせていただいたときに、特定の場所に来るとパーティの仲間と会話が楽しめるような要素もあったのですが、ああいったものも遊びのひとつとして考えればいいですか?

横山アドベンチャー中にボタンを押すことで、そのときの状況に応じた会話をするというものですね。あれはどちらかと言えば、遊びというよりウラ話的な内容になっています。仲間の食べ物の好みがわかったりとか(笑)。どうでもいいような話も多いんですが、彼らの日常がより身近にわかるものとして入れています。

――どちらかと言えば、サブストーリーまでにはいたらないショートストーリーという感覚ですか?

横山そうですね。パーティのメンバーが増えていくと、会話の種類が増えたりもしますけれど。ただ、仲間の好みがわかるので、その後に仲間との“絆”をどう上げればいいかのヒントになったりします。『龍7』における“絆”というのは、春日とパーティメンバーの親密度を示すパラメータですね。

――ほうほう。

横山たとえば「足立さんがキャバクラに行きたそうだな」と思ったら連れていくと、足立のモチベーションが上がって絆が深まるんです(笑)。

――おもしろい(笑)。

横山絆が深まると、春日との連携技が強くなるなどのメリットがあるので、アドベンチャーでの仲間との会話はそのヒントにしていただけるといいですね。

――ちょっとした要素もメリットになるのはいいですね! さて、続いてうかがいたいのは、東京ゲームショウ2019初日のステージイベントでも公開された楽曲提供のお話です。中田ヤスタカさんと湘南乃風の皆さんという、異色の組み合わせでした。この組み合わせに至った経緯を教えていただけますか?

名越シナリオもゲーム自体も、いつもギリギリまで考えて作っているんですけれど……最後のピースがハマったときでないと、作品を通じて言いたいことが決まらなかったりすることがある。俺の場合、それが見定まってから始めてお願いしたいアーティストを探すやりかたなんですね。『龍7』は『ドラゴンクエスト』好きというゲームエイジが主人公になっているので、「8bit音源みたいなものもいいな」というイメージはあって。それでいて、音的多彩なアプローチができる人を考えたとき、以前から興味のあった中田さんにお願いしたいなと思ったんです。

――なるほど。

名越ただ、中田さんはコンポーザーなので、歌ったりするわけではない。じゃあ、歌うのは誰なのか? と考えたんですが、『龍が如く』への理解があって器用な人というのはなかなかいない。そこで思い立ったのが、過去にもシリーズに楽曲を提供してくれたこともある湘南乃風だったんです。ただ、中田さんと湘南乃風という組み合わせがいい形でくっつけられるのかということは、俺もまったくわからなくて。

――そうですね。系統がそれぞれ違う気がします。

名越それゆえに、うまくくっついたらおもしろそうだという感覚もあって。それぞれにお願いをしてみたら、快く受けてくださったという流れなんです。

――そうだったんですか。どんな楽曲になるのかいまから楽しみです。曲調がどちらかに寄るのか、それとも中間に落ち着くのか……という予測も立たないですし。

名越聴いてみるまでわからないところですよね。ある意味で『龍7』は、ゲーム自体も楽曲も、“目の当たりにしてみないとわからない感”の強いコンテンツになりました。ただ、「『龍が如く』というゲームはこういうものだよね」という感覚は、悪く言えばマンネリなわけで。「目の当たりにしないとわからない」というのは、その打破のためにチャレンジした証拠だと思いますし、いいことだと思っていますね。

――実際に触れてみたいという人が多いからこそ、多くの方が試遊台に詰めかけているという状況になっているのだと思います。「触ってみたいけど、行列がすごくて遊べなかった」という方も出てくると思うのですが、この先『龍7』に触れる機会を設けることは考えていらっしゃいますか?

チーフプロデューサー・横山昌義氏

横山何かはやりたいですね。体験会は当然ですし、体験版の配信なども望まれるかもしれない。ただ、東京ゲームショウ2019で遊べるものをそのまま……という形にはならないと思います。というのも、まだ実装されていない要素があるので。

――期待しています。ちなみに、開発そのものは、順調に進んでいるのでしょうか?

横山……え?(笑)。

――えっ?(笑)

名越まあ、いつも時間は欲しいんですよ(笑)。

横山時間はあればあるだけ、いいものになりますから。ただ、『龍が如く』チームは決められた期限内に最大限のものを積むというのは、この15年くり返してきましたし。それに対して自負を持っているので、大丈夫でしょう。いまも猛烈な勢いで開発を進めていますし。

――素朴な疑問なのですが、『龍7』ではバトルや舞台となる街を筆頭に、多くの要素をリニューアルしました。開発スタッフの方々のモチベーション的には、どのような感じなのでしょう。

横山もちろん高いです。モチベーションの話で言えば、この東京ゲームショウもいい原動力になっているんですよ。今日も開発スタッフが会場やステージ配信の反応を見ていますが、自分たちの作ったものをやっとお客さんに見ていただけたので、すごくテンションが上がっていて。とくに今回はイチから作っている感じのタイトルなので、近年まれに見るテンションの高さですね。

名越スタッフという側面で見ても、『龍7』はいい試みでした。というのも、『龍が如く』チームの中でも若いスタッフは、シリーズを作った経験はあっても、本当にゼロから作った経験がないので。今回はナンバリングではありつつも、ほぼ新作みたいなものですから。これまでのシリーズ作を作るときよりも試行錯誤を繰り返して、ひとつずつ正解を探していくような作業でした。しかも、その答えは世に出すことでしか得られないんですよ。「間違ったものを作って、ムダな時間を過ごしたんじゃないだろうか?」みたいな恐怖感に襲われながら開発を続けたりもするんですけれど、うまくいく作品というのは、だいたいはそういう時期を乗り越えていたりするもので。今回、若いスタッフたちにそういう経験をさせてあげられたことは、よかったですね。

横山シリーズ作だと、ある程度の読みが働くんですけどね。たとえば「今回は新しい舞台に焦点が当たるんだろうな」とか。でも、今回は本当に答えがわからない完全新作なようなものなので、ヒリヒリしましたね。ただ、新しい挑戦をすることで、ある種“シリーズのマンネリ”を打破したかったんです。

名越いままでアクションでやってきましたけど、やっぱり、トッピングの限界みたいなものは来るんです。パスタに明太クリームにウニとイクラを乗せて……という工夫もやりようはあるんですけど、なかなか難しいものがる。

――違う料理にはならないですよね。

名越そうなんです。だからこそ、新しい可能性にかけて今回は大きく舵を切ったわけですが……今後の『龍が如く』というIPのためにも『龍7』を成功させたいですね。

――そうですね。では最後に、TGSの試遊台で『龍7』を遊んでみようと思われている方にメッセージをいただけますか。

横山好きなところを見ていただければと思います。バトルが気になる方は、ストーリーを遊んでいただいて、バトルを何戦か遊んでいただければ「あ、思っていたより『龍が如く』のままだな」と感じていただけるでしょうし「でも、新しいことをやっているな」という感覚は持ってもらえると思うので。

名越東京ゲームショウというのは生のご意見をいただけるチャンスです。人知れず、各担当者は自分が手にかけた要素に対して、お客さんがどう反応されているかを見ています。俺たちも100点満点で言えば0.1点でもゲームのクオリティを高くしたいと思っているので、東京ゲームショウに限らず、今後考えている体験の機会で触れていただいて、ギリギリのタイミングまでいろいろなご意見をくださるとうれしいですね。

――わかりました。これから開発の大詰めだとは思いますが、引き続きがんばってください。