2019年8月29 日、『龍が如く7 光と闇の行方』(以下、『龍7』)の記者発表会が行われ、そこで同作の概要が発表。キャストや物語の舞台となる街(横浜・伊勢佐木異人町)のほか、バトルシステムが従来作とは大きく変更されることが明らかになった。新たに採用されたのは“ライブコマンドRPGバトル”で、その名の通りコマンド入力式に。その衝撃的な発表を受け、ネットやSNSには、いまもなお賛否両論さまざまな意見が飛び交っている。

 本記事では、上記の理由から現在話題沸騰中の『龍7』について、龍が如くスタジオのトップであるセガゲームス・名越稔洋総合監督にインタビューを実施。記者発表会で明かされた情報について、気になる事柄について聞いた。

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8/29記者発表会へのリアクションを、名越総合監督はどう捉えたのか

――『龍7』の記者発表会後は、ネットやSNS上でかなり大きなリアクションがありました。

名越そうですね。ある意味予想通りのものでした。皆さんの意見は大きく分けて、「桐生が出ないと『龍が如く』と言われてもピンと来ない」、「ゲームシステムを変えたのはなぜ?」という2点に集約されていたと思います。

――賛否両論ありつつも、ネットではややネガティブな意見が目立ったような気がします。こうした場合には、否定的な方の声のほうが大きく響きがちということはあると思いますが。

名越今回の変更ほどではないにしろ、いままでも否定的な意見というのはたくさんありました。賛否いずれにしてもリアクションをいただくのはありがたいのですが、最終的には“ゲームとしておもしろいか”、“ドラマとして納得できるかどうか”がすべてだとも思っていて。正しい決断だったかどうか?は、発売してからでないとわからない部分があって、龍が如くスタジオとしては、「きっと皆さんに喜んでもらえるに違いない」と信じて開発を進めていくだけです。

――話題になった部分でやはり大きかったのは、バトルシステムの変更だったと思います。一定の批判があることを覚悟したうえで、この方針を採用した理由というのは?

名越『龍7』に限らず、新作を作る際には「変化させるべきところはどこなのか?」という問いがつねにあります。俺たちはずっとアクションバトルの『龍が如く』シリーズを作ってきましたが、この方向性でバトルを突き詰めていくと「どんな場所で、どんな敵に対してプレイヤーキャラクターにどんな行動をさせるか」というパターンは、ある程度、形が決まってくるんです。そこをより深化させていくことも可能ではあります。でもその結果、バトルが複雑化したり、難度が上がってしまったりする懸念もある。

――それは本意ではないと?

名越ええ。皆さんに「爽快だけど、基本的に難しいよね」と言われるようなゲームにはしたくなかった。これは、10年以上『龍が如く』シリーズを作ってきたなかで、ずっと変わらない想いとしてありました。ただ、今回はシリーズも刷新されるわけですから、当然のことながら「アクションがどう生まれ変わるんだろう?」と注目されるのは予想できたことで。そこで前述の“アクションバトルをどう進化させるべきか”という議論になるわけですが、スタジオ内でいろいろな提案があったものの、今回については『龍が如く』の新シリーズとしてピンとくるものがなかなか出なかった……というのが正直なところだったりします。

――そうだったんですか。

名越いままでのシステムから部分的に踏襲する……言いかたは悪いですけれど、“お茶を濁す”こともできなくはなかったのですが、それだと新シリーズというわりにはチャレンジをしていないことになってしまいます。

――確かにそうかもしれません。

名越「バトルをどうするべきか?」については、これまでと同じという安易な決断はできないですし、そういう決断をしてはダメだろうと。ほかに何ができるかを模索していくなかで出てきたのが、RPG的なバトルシステムだったんです。

――なるほど。

名越振り返ってみると、初代『龍が如く』はもともとあったアクションアドベンチャーというゲームシステムに、当時はあまり取り扱われていなかった現代劇や裏社会という題材を乗せたタイトルだったわけです。そう考えると、RPGという皆さんが慣れ親しんだシステムに、いままでに体験したことのないような題材を乗せるという挑戦は、この時点において、苦し紛れのアクションゲームを作るよりも、ずっと価値があることだし、結果としておもしろくなる可能性があるんじゃないかと。熟慮の末、コマンドRPGという形を採ることを決断しました。正直なところ、開発の途中で何回か挫けそうになったりもしましたけれど(笑)。

――(笑)。具体的に、どんなところで挫けそうになったのでしょう?

名越そこはまさに現段階で皆さんが心配されているところと同じ……つまり、「コマンドRPGのバトルでは爽快感がなくなる」とか「ゲームとしてのテンポが悪くなる」という部分ですね。爽快感やテンポのよさが失われることは、俺も嫌なんです。ただ、実際問題、従来のやりかたでRPGを作ろうとすれば、その問題は出てきてしまうんですよ。単純にバトルのスピードを上げてみたりもしたのですが、そうするとせっかく3Dの街で展開するバトルなのに何が起きているかサッパリわからない(笑)。

――そうなりますよね(笑)。

名越コマンドバトルとは言いつつも、“ドラゴンエンジンで物理制御を行いつつ、街の状況を利用できる”という作りをベースに、さらに敵味方のAIが賢く動いて戦闘自体のテンポはいい。これが『龍7』のバトルを作るうえでの課題だったんですが、試行錯誤の結果、その答えを出せたと思っています。

――おお! どういう手触りになっているのか、遊ぶのが楽しみです。

名越敵に攻撃をするとその敵が飛んでいって、飛んでいった先には道路があって、その敵がクルマに轢かれる……なんてことが起きたりするんです。そういうシーンを実際に見ていただけると「なるほどな」と思っていただけるはずです。そもそも、いまあるコマンドRPGの大半は、2Dのゲームシステムで構築したものを3Dに置き直しているだけなんですよ。だから、やっていることは2Dでもできることなんですね。

――ああ、確かに。

名越でも、『龍7』で目指したのは、3Dで構築された世界でしかできないコマンドバトルなんです。ある意味、RPGというゲームジャンルから踏襲しているものは、「コマンドを与えて実行する」という部分だけにして、それ以外は3Dの世界でしか表現できないものでありたかった。俺たちが3Dでコマンドバトルをやる意味はそこだと思っているので。

――なるほど。具体的には、どんなシーンでそういう表現がわかるのでしょうか?

名越たとえば、味方がAという敵に攻撃をするとき、近くにBという敵がいれば、ついでに攻撃してくれたりするんです。でも、それは味方とA、Bの距離をつねに計測しているからできるんですよ。そして、街にあるものも含め、戦闘状況は時間が進むに連れて変化していくんです。……まあ、実際に見て、やってもらわないとわからない部分は大きいので、ぜひ東京ゲームショウ2019で触っていただければと思います。

――これまでのRPGとは手触りがぜんぜん違いそうですね。

名越そうですね。だから願わくば「コマンドRPGになった」というところで立ち止まらずに、どういうコマンドバトルになったのかを見てほしいです。俺たちもつねにいろんなチャレンジはしていきたいし、消極的な提案をすることのほうがファンの皆さんに対して失礼だと思っているからこそ、今回の決断に至ったので。そこだけはご理解いただきたい、という気持ちはあります。

いったいどうなる? 『龍7』のドラマ

――ところで、『龍が如く』シリーズというのはドラマに軸足をかけて制作されてきたタイトルだと思うのですが、今回のドラマの手応えはいかがですか?

名越新鮮味を感じられるドラマだと思いますよ。今回は春日一番を新たな主人公に据えたわけですが、生い立ちも含めて主人公がどんな人物なのかを丁寧に説明できるのは、どんなタイトルであっても1作目しかできない。その意味での気合いの入りかたは久しぶりですね。もちろん、同じ主人公のタイトルを続けていくことで、厚みのあるドラマを描く、あるいはいい意味で期待を裏切るということをしたいという気持ちもあるのですが、まっさらな状態から新しい物語を語れるというのは、正直うれしかったですね。

――先日の『セガ生』では「『龍7』のドラマは、『龍が如く0 誓いの場所』や『龍が如く2』に近い」と仰っていました。それはどんなところにかかる文脈なのでしょうか。

名越うまく伝わるのかわかりませんが、切ない話が何かをきっかけにとんでもなくスパークする……といったようなストーリーってありますよね。『龍7』の物語は、それに近い雰囲気です。すべての話にオチがしっかりあって、それがフリになっていたりもする。俺自身は、とても美しい形で物語が収束できたと思っています。そういう意味で、『龍が如く0 誓いの場所』や『龍が如く2』を引き合いに出したんですね。さらに言えば、その2タイトルよりも『龍7』はスケールの大きなフリとオチになっていると思うので、俺はとても好きですね。

――ちなみに、ドラマとは切っても切れない俳優さんのキャスティングですが、今回はどんな方針で起用を検討されたのでしょうか。

名越主要キャストとして起用している俳優さんは中井貴一さん、堤真一さん、安田顕さんの御三方だけです。今回は、キャスティングする俳優さんを絞って、そこに集中させたいという想いがありました。大御所である中井貴一さん、堤真一さんがいて、そこにコントラストをつける形で安田顕さんがいるのは非常に美しいですし。それぞれの世代を代表する役者さんが揃い踏みした感じもあって、個人的には「いいな」と思っています。それに今回の場合、春日を筆頭に、出てくるキャラクターはみんな初登場ですからね。その中にたくさんの役者さんが混じるというのも、ちょっと違うんじゃないかな、と。

――確かにそうですね。

名越フェイスも含めた芸能人キャスティングを始めてからは『龍が如く』史上最少になるかもしれませんが、3人のキャスティングは適材適所で、演出としても効果的なものになっているかなと。おそらくドラマを最後まで観ていただけると、皆さんにもそう感じていただけると思います。

――ちなみに、収録はスムーズに?

名越ええ。皆さん上手ですし、なにも言うことはなかったです。こちらが理想としていたものを見事に演じていただけました。さらに、グラフィックの技術がどんどん上がっているので、表情の多様性であるとか、表現の質はかなりよくなっています。いい意味で、ゲームの中になじみつつも、俳優さんの芝居だからこそ生まれる空気感のようなものは引き立つ演出ができていると思います。

――記者発表会に併せて公開されたPVには、ハン・ジュンギ(『龍6』の登場人物。韓国系マフィア・ジングォン派の生き残り)が映し出されていました。これまでの『龍が如く』シリーズファンからすると「あれ? 過去に登場したキャラクターも出てくるの? そもそもハン・ジュンギって死んでなかったっけ?」みたいなところがあったのですが、彼をPVに出した狙いはどんなものだったのでしょう?

名越『龍7』には、日本の極道、韓国組織、中国組織という、3つの組織の縄張りで仕切られているという設定があるのですが、彼が顔を出すのもおもしろいんじゃないかな? と思いまして。そもそも、ハン・ジュンギってどういう人物だったの? というところはあまり深掘りしていない部分ですからね。『龍7』では、彼にまつわる話があってもいいんじゃないかな、と。過去の『龍が如く』を知らないと楽しめないものではないけれど、知っていればより楽しめる。そのバランスを考えながらドラマを作っていくときに、彼のようなキャラクターはいい感じだったんですよ。

――なるほど。

名越あと、ハン・ジュンギというのはクールに描かれていた人物なのですが、『龍7』ではちょっとユニークな描きかたをしていて。ちょっと笑えるような場面もあると思います。

――それは意外です(笑)。

名越じつは、ハン・ジュンギに限らず、『龍7』のドラマでは、笑えるシーンを増やしたかったんです。主人公の春日一番を始め、登場人物たち同士の相性が生み出す掛け合い的なおもしろさみたいなものを、たくさん取り入れたくて。

――これまでの『龍が如く』シリーズでも、メインストーリーの一部に〝笑い“の描写はありました。『龍7』ではそうした描写がより多く出てくると?

名越そうですね。今回は、メインストーリーにもけっこう笑いの要素が入ってきます。桐生と違って、春日はよくしゃべるキャラクターですからね。『龍7』には敵味方含めて、いろいろな個性の人物が登場します。そういった人物たちとの会話劇の妙は、我々が挑戦したかったところです。

――なるほど。ちなみに、『龍7』では多くの人物が春日一番の仲間として行動をともにすることが明かされていますが、メインストーリーを進める上でも、これまでよりも一画面に出てくる人物の数も多くなってくるということですか?

名越そうですね。仲間がつねにいますので、多くなります。さらに、春日にはつねにいろいろな人間関係がつきまとってくる。それはそれで楽しいですし、ストーリーの見えかたというのも、これまでと少し違って見えるかもしれませんね。

――バトルシステムだけでなく、主人公が変わることでドラマの部分も雰囲気の変化がありそうですね。ソフトの発売を期待しています。ありがとうございました。