自身がディレクターを務める『FFVII リメイク』や『キングダム ハーツIII リマインド』(DLC)に関する発表が大きな話題となった野村哲也氏。2019年6月10日の“SQUARE ENIX LIVE E3 2019”後、超多忙な同氏にムリを言ってお時間をいただき、この催しで発表されたばかりの『FFVIII リマスタード』も含めた各タイトルについてお話をうかがった。
『FFVIII リマスタード』&『キングダム ハーツIII リマインド』について
――“SQUARE ENIX LIVE E3 2019”では、『FFVII リメイク』や『キングダム ハーツIII リマインド』のほか、突如発表された『FFVIII リマスタード』の反響も大きかったですね。
野村海外ではとくに支持が厚いこともあって、大きな反響をいただけましたね。オリジナルのデータが消失していることなどからいままでなかなかリマスターできなかったのですが、今回ようやく発表できました。
――かなりキレイになっている印象です。キャラクターモデルの差し替えもしているとか。
野村プロジェクトの開始前にテクスチャをキレイに直したものを見せられたんですが、それがかなりきびしい出来だったんです。3Dモデルになって以降のナンバリングタイトルのリマスターは、『FFVIII』を除いて出揃っていることを考えると、もう少し踏み込んで手を入れるべきだろうと仕切り直しを提案しました。主要キャラのモデルの差し替えを決め、当時のメインモデラーにも参加してもらい、できる範囲ではありますが手を入れています。
――“SQUARE ENIX LIVE E3 2019”に先駆けて発表された『キングダム ハーツIII リマインド』も、たいへんな反響でした。タイトルの“リマインド”にはどのような意味が?
野村自分が宣伝担当からよく「リマインドです」という連絡を受けていて。“再確認”というような意味合いですが、同時に返事を催促されるんです(笑)。それがちょうど考えていた内容とダブルミーニングで意味も合うなと。意味はそのまま、“思い起こさせる”、“再確認”、“心の再生”といったことです。
――ロゴでは、“Re”と“MIND”のあいだに見慣れないマークが入っていますね。
野村そのあいだを繋げるか切るかで意味も変わると思います。これまでも“Re”を使うことは多かったのですが、その後ろをさらに意味のある記号で切りたいと思い、ひとつの記号で何かを伝える場合、音楽記号が適正だと考えて“vide(ヴィーデ)”、“coda(コーダ)”の記号を選びました。そこに含まれる意味をもとに、いろいろと考察していただけたらと思います。
――リク、アクア、ロクサスの操作が可能というのはうれしい驚きです。あれはリミットカットのボス戦ですか?
野村いえ、違います。今回の映像は追加シナリオの要素がメインで、リミットカット関連は出していません。映像の最後に出てきたソラのキーブレード“約束のお守り”と新フォームは、有料DLCと同時配信の無料DLCになります。
――では、リクたちの操作も追加シナリオの中で?
野村本編でもリクやアクアを操作できましたが、それと同じように追加シナリオを進める途中で操作キャラを選べる場面があります。
――本編終盤のバトルに近いシチュエーションに見えましたが……。
野村そうですね(笑)。追加シナリオ自体は独立していて、本編のクリアー後に楽しんでいただく内容になっています。
――マスター・オブ・マスターとヤング・ゼアノート、ルクソードとシグバールのイベントも、追加シナリオのワンシーンなのですね。
野村そうです。ルクソードとシグバールの会話は追加シナリオの冒頭になります。“追加シナリオ”と言うくらいですから、今回カットシーンが多くて。シナリオを2回ほど書き直し、最終稿では結構増えてしまって、想定以上のボリュームになりました。
――ところで、デミックスは……。
野村一応、出てきます(苦笑)。
――よかったです(笑)。リミットカットでも出てきてくれたりするとうれしいのですが。
野村リミットカットボスについてはまだ言えることは少ないのですが、前回(『KHII ファイナルミックス』)くらいの数を目指してはいます。
――え、そんなに!?
野村意外とガッツリあるんですよ。全体として追加シナリオ、リミットカットエピソード&ボスのほかにも、シークレットエピソード&ボスもありますし、DLCとしてのボリュームは十分かと。
――そのあたりの情報も今後出てくると期待しています。配信は今冬とのことですが、年内と年明け、どちらになりそうでしょうか。
野村CEROの審査が改めて入ったりする都合もあるのでまだ見えないところもあるのですが、『FFVII リメイク』に近づけたくないという意見もあるので、できるだけ早く出したいと思っています。
オリジナルを踏襲しつつシナリオの追加もある『FFVII リメイク』のストーリー
――『リマインド』発表翌日に『FFVII リメイク』の発売日が突如発表され、こちらもまたものすごい反響がありました。
野村皆さん、驚いてくれるだろうと思っていました。リークがあるとその後の段取りが狂ってしまうので、ひた隠しにしてきた甲斐がありましたね。
――今回公開されたPVやストーリーのテキストには、『FFVII』オリジナル版にはない要素が含まれています。PVのセフィロスは、本来あのタイミングでは登場しないですよね。
野村はい。あれはストーリーのテキストにある通り、八番街に現れる幻影で、追加されているシーンです。
――ストーリーのテキストには“運命の番人”という記載もあります。これは、映像でクラウドとエアリスを取り巻いていた霧状のものですか?
野村そうです。行く先々で現れる謎の存在で、『FFVII リメイク』で新たに追加されています。“運命の番人”というのは何なのか、過去作をプレイされた方にも新しい要素で楽しんでいただきたいと思っています。
――『FFVII アドベントチルドレン』に出てきた、モンスターが登場するときなどに現れる黒いモヤとは違うのでしょうか。
野村違います。すごく深いところでは、繋がりがあるかもしれませんが……。
――その“運命の番人”が出現するエアリスとの出会いのシーンは、オリジナル版では花を買うかどうか会話の選択肢がありましたよね。そうした要素は?
野村選択肢はありますよ。けっこう出てきます。そのため、選んだ答えに応じたキャラクターの反応やちょっとしたイベントをそれぞれ作っているので、ボリュームが増えています。
――それはまた大変な量になりそうです。ちなみに既存のイベントは、オリジナルに忠実に再現しているのでしょうか。
野村ものによります。たとえば蜜蜂の館の女装イベントはありますが、施設としては現代風に大幅なアレンジをしています。一度あの空間をそのまま再現して作ってみたら、違和感がものすごくて、総じて意見として「これはダメだ」となり……。このように、今回のビジュアルや世界観に合わない部分などは調整していることもありますね。
――なるほど。お話を聞いていて、思った以上に新しい要素や調整がたくさん入っている印象を受けます。
野村オリジナルを踏襲していますが、シナリオの追加はけっこうありますよ。もちろん、本筋のお話は変わらないのですが、PVにあったジェシーといっしょにバイクで逃げるシーンなど、ああいったオリジナルにはなかったイベントがたくさん入っています。そうじゃなければBlu-rayで2枚組にはなりません(笑)。