クリス・チャーラ氏にID@Xboxプログラムの5年間を聞く「世界中のすぐれた開発者との“すばらしい旅路”だった」

というわけで(何がというわけだか知らないが)、マイクロソフトのID@Xboxプログラム シニア・ディレクターであるクリス・チャーラ氏のインタビューをお届けする。

 既報のとおり、マイクロソフトのID@Xboxプログラム シニア・ディレクターであるクリス・チャーラ氏が来日。国内メディアを対象としたプレスセミナーを、2018年11月20日に実施した。いうまでもなくID@Xboxは、マイクロソフトによるインディーデベロッパー支援の取り組み。2013年にスタートしたID@Xboxが、先般通算1000タイトルを達成しており、今回のクリス・チャーラ氏の来日は、1000タイトルの達成を記念してとの意味合いもあるものと思われる。

 プレスセミナーの詳細に関しては、以下のリポート記事を参照していただきたいのだが、当日は『アルバスティア戦記』(ケムコ)、『サリーの法則』(Polaris-x)、『フォーゴットン・アン』日本語版(コーラス・ワールドワイド)のXbox One版の発売がアナウンス。さらに、『ドラゴンファングZ 竜者ロゼと宿り木の迷宮』(トイディア)、『BackSlash (バックスラッシュ)』(Skeleton Crew Studio)、『ライバル・メガガン』(Spacewave Software)、『LA-MULANA 2』(PLAYISM)の4タイトルに関しては、「発売開始に向けて着々と開発が進んでいる」とのアナウンスもなされた。

『The Good Life』の新情報も! 新配信タイトルも3本発表されたID@Xboxプレスセミナーが開催

2018年11月20日、日本マイクロソフトはID@Xboxプレスセミナーを開催。マイクロソフトのビジョンやID@Xboxの現状、新作タイトルの発表などが行われた。ここでは、その模様をリポートしよう。

 ファミ通ドットコムでは、会場にてクリス・チャーラ氏への単独インタビューを実施。以下にそのやりとりをご紹介しよう。クリス・チャーラ氏に対しては、通算1000タイトル達成に合わせて10月末に電話インタビューを実施しており、今回の取材はそれを受けてのものとなった。下記リンクの以前のインタビューをご参照しつつ、どうぞ。

ID@Xboxプログラムが通算1000タイトルを達成! クリス・チャーラ氏に聞く「開発者がゲームをリリースしやすいように最大限注力した成果」

ID@Xboxプログラムが、この10月で1000タイトルを達成。クリス・チャーラ氏に1000タイトルを達成しての感想や今後の展開について聞いてみた。

――先日の電話インタビューで、ID@Xboxの1000タイトルを達成したときにお話しをお聞きしたので、若干重なる部分もあるかと思うのですが、せっかくの機会ということで、1000タイトル達成について、改めてご感想をお聞かせください。

クリス本当にすごくいい気分です。“すばらしい旅路”を開発者とともに歩むことができて、そして大きなインパクトをコミュニティーに与えられているのを見ることができて、本当に素晴らしかったなと思います。

――旅路(Journey)という言葉が非常に印象的なのですが、素敵な旅路ができた理由はなんでしょうか?

クリスやはり根本的な理由としては、独立系デベロッパーの方たちが、Xbox 360やXbox Oneで、とてもインパクトのあるタイトルを作っていたことでした。それを見たときに、「考えかたを変えなくてはならない」と思ったんです。私たちマイクロソフトとしては、インディペンデントゲームは一過性の現象ではなくて、ゲーム業界全体を揺り動かすような動きであると認識しました。
 そこで生じた質問は、「どういうふうにしたら、開発者を支援できるのか」というものでした。さらに「開発者が必要なものを手にするためにはどうすればいいのか」と悩みました。そこで、直接インディーゲームデベロッパーとお話して、彼らからのフィードバックをもらったんです。

――ゲーム開発者が「好きなものを出したい」という流れが必然の道としてあって、それを花開かせるために最大限のサポートを惜しまなかったというID@Xboxの方針が、1000タイトルに結びついたということですね?

クリスはい、そうです。わたしたちがそのときを台なしにしなかったということは言えるかもしれません。

――最大限のサポートをして、インディーゲームをさらに上昇気流に乗せたということはあるかもしれませんね。

クリスそうですね。

――そこから本日のプレゼンに話をひきつけてしまいますが、その段でいうと、いまデベロッパーさんが求めているのはプラットフォームの垣根をなくす“Project xCloud(プロジェクトXクラウド)”のような施策であり、それで今回のプレゼンでも“Project xCloud”を紹介したということでしょうか?

クリスそうですね。私たちの立ち位置としては、プレイヤーとデベロッパーの垣根をなくすことにあると思っています。そのための“Project xCloud”ですね。

――では、その“Project xCloud”がインディーゲームデベロッパーにもたらすものは、端的にいうとどのようなものがあるのですか?

クリス“Project xCloud”は、プレイヤー中心の技術であると思います。プレゼン時の動画でフィルやカリーナがコメントしていたこと以上のことは申し上げることはできないのですが、人々に新しいゲームの遊びかたを提供する取り組みですね。それは、“何が欲しいのか、いつほしいのか”を満たすモノだと思います。インディーデベロッパーは、もちろんのこと、大手パブリッシャーと同じく、“Project xCloud”のサービスを受けられるのです。

――“Project xCloud”のような話をうかがうと、昨今噂になっているディスクドライブなしの新型の話もスムーズに納得できるような気がしますね。クリスさんのお仕事の範疇ではないかとは思いますが、それについて何かお話いただけるようであれば……。

クリス申し訳ないですが、噂についてはコメントすることはできません。お聞きになりたい気持ちはわかりますが(笑)。

――ですよね。では、お話をID@Xboxに戻しまして、このまえの電話インタビューでは、ID@Xboxは、「ディスカバラビリティーに取り組んでいるとおっしゃっていて、それがとても印象的だったのですが、改めて注力しているポイントを教えてください。

クリスそうですね。ディスカバラビリティーは、ID@Xboxのいちばん大きな課題として、開発者さんが挙げているポイントです。今後、どれだけ有効な形でユーザーさんに露出する機会を増やしていけるのかがポイントになると思っています。まず考えているのはMicrosoft Storeでの取り組みです。それまでの嗜好などを判断して、関連性のあるコンテンツを、ファンになってくれる可能性が高いであろう方にサジェストできるように考えています。また、どうフィーチャーすれば、コミュニティーにリーチできるのか……ということも検討中です。
 また、新しいプログラムも考えています。MixerやXbox Game Passを使って、幅広いユーザー層にリーチできるような取り組みですね。

――ちなみに、ふと思いついたのですが、ID@Xboxだけの単独イベントというのは?

クリス既存のイベントに合わせて……ということはやっていますが、単独ではないですね。考えてはいないです。

――プレゼン時のQ&Aでは、E3で出展するタイトルに関しては、希望者を募って審査するとのことで、非常に興味深かったのですが、ほかのイベントも同じような形で?

クリスそうです。ID@Xboxでは、開発者から提供してもらったビデオやビルドを見せてもらって、適宜セレクトしていますね。

――けっこうな応募タイトルがあるのでは? セレクトがたいへんではありませんか?

クリスはい(笑)。応募は何百タイトルにもなることがあります。選考の時期は、ベストの時期でもあり、もっともキツイ時期でもあります。クールなタイトルを一度に見られるので、ワクワクするのですが、あいにくと全員に“Yes”というわけにもいかないので……。そういった苦しさは、ある意味で最悪な時期とも言えるかもしれません。

E3 2018にあわせて行われたXbox Oneイベント会場の模様から。世界中のメディアに触れる機会を誰でも公平に与えられるというのは、夢のあることだ。

――そうですよね……。ところで、前回の電話インタビューで「1000タイトルの中で印象的なタイトルはどれか」というご質問をしたのですが、「みんな思い入れがあって選べない」というお返事でした。では、少し範囲を絞ってE3に応募してきた中で、初めて見て「これはすごい!」と思ったタイトルは?

クリス(笑)。それも難しい質問ですね。今年のE3 2018で……ということで限定させていただくならば、『Sable(セイブル)』ですね。初めて見たときからワクワクしてしまいました。

――ああ! 僕もgamescom 2018でプレゼンを受けてとても印象的でした。クリスさんのプッシュがあって、『Sable』がフィーチャーされている感じですか?(『Sable』の詳細は以下のリンク先をご確認のこと)。

『Sable』は独特なアートワークが異彩を放つ、オープンワールドの探索ゲーム、自分が何たるかを学んでいく物語【gamescom 2018】

ID@Xboxタイトル『Sable』の紹介をしよう。

クリスそうですね。『Sable』は、私にとって特別なタイトルです。社内でもかなり『Sable』を推していますよ。

独特なアートワークが印象に残らずにはいられない『Sable』。クリス・チャーラ氏も大いに注目している1作だ。

――さきほどのプレゼンで、日本のID@Xboxタイトルは20本というお話がありました。正直少ないなあと個人的には思ったのですが、現状のID@Xboxの日本市場への普及ぶりに関しては、どのようなご感想をお持ちですか?

クリス日本のインディーゲームがまだまだスタートしたばかりであるという印象を受けているので、それを勘案するといい数かなと思っています。私は、毎回日本を訪問するたびに、「かっこいいものがどんどんでてきているな」という印象があります。1年経ったあとのラインアップをご覧になれば、「加速度的にすごいものが出てきているな」ということを実感していただけるのではないかと自信を持っています。

――今後ID@Xbox向けに1500本以上を予定しているとのことですが、その中で日本のタイトルは何本くらいです?

クリスたくさん(笑)。正確な数はお教えできませんが、数十はあると思いますよ。

――ということは、私たちが想定している以上の感触のよさが、日本のデベロッパーからもあるということですか?

クリスはい。来日するごとにたくさんのデベロッパーさんと毎週のように会っていますので、今後良作を続々とご紹介できると思います。

プレゼン時に発表された日本のID@Xboxタイトル。今後さらに増えていくことを期待したい。

――そういえば、前回の電話インタビューの記事で、僕は間違ってしまったんですね。当初、「今後予定しているタイトルは150本以上」と書いたのですが、じつは1500本以上でした。「1000タイトル達成して、今後予定しているのが1500本なんて、バランス的におかしくないか?」ということで間違えたのですが、現状予定しているのが1500本以上ってすさまじいペースですよね。それだけ加速度的に開発するスタジオが増えているということですか?

クリスそうですね。ちなみに、1500タイトル以上が開発中というのは、今年、来年で1500タイトルがリリースされるというわけではなくて、現在動いているプロジェクトということです。今後タイトルは埋もれるほど溢れるように……というわけではなくて、順次リリースされると思います。

――この前の電話インタビューでは、「今後の目標は2000本」とおっしゃっていましたが、すっかり射程に入っている感じですね。

クリスそうですね。

――具体的に何年後くらいに……?

クリスはっきりと申し上げることはできないのですが、3年くらいの時期で考えています。

――なんとなく僕の関心領域でもあり、折に触れてお聞きしているのですが、いまID@Xboxでいちばんアツい国ってどこでしょうか?

クリスすばらしい開発者やたくさんのユーザーさんがいるという意味でしたら、順不同で日本、オーストラリア、スイス、アメリカ、イギリスの五カ国です。とにかくすばらしいデベロッパーさんがいらっしゃいます。

――そのほか、勢いがあって動向を注目している国なんてありますか?

クリス南アフリカから気になるゲームが寄せられていまして……。まだ正式にアナウンスメントされていないので、具体的なこととはお話できないのですが。開発キットはアフリカのデベロッパーにも渡っていますので、斬新なタイトルが続々と出てくると思いますよ。

――「今後こんなことをしていきたい」ということは?

クリスもっとゲームを遊びたい!というのが個人的に今後やりたいことです(笑)。まあ、仕事よりのお話をすると、どんどん開発者を助けたいと思っています。私としては、今後5年でゲーム開発を巡る状況はさらに変化していくと考えていて、未知の領域を開発者とともに歩んでいけるという、ワクワクするような気持ちでいます。とにかく全力で開発者をサポートしていきたいです。

――最後に、日本のファンに向けてのメッセージをお願いします。

クリスふたりあります。ひとつは、“Keep in awesome”。つまり、「かっこうよくいてください」ということですね。ふたつめは、「日本がゲーム文化の中心地であっていつづけていてほしい」と、お伝えしておきます。ところで、日本に来てうれしいのは、量販店やゲームショップなどに行くと、大人もお子さんもみんな楽しそうな顔をして、ゲームを購入されていることです。それを端で見ているだけで本当にうれしくて。来日するたびに量販店やゲームショップに立ち寄ってしまいます。

――その気持ちよくわかります!

クリスID@Xboxでも、皆さんを笑顔にできるようなゲームをリリースしていきたいです。期待していてください。