『アトリエ』シリーズ最新作『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』の開発者インタビューをお届け。最新作の見どころや、シリーズの誕生秘話などをうかがった。

 2017年に20周年を迎えた、コーエーテクモゲームス ガストブランドの『アトリエ』シリーズ。その最新作『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』が、2017年12月21日に発売される。

 本記事では、『リディー&スールのアトリエ』の総合プロデューサーを務める細井順三氏と、メインプランナーの吉池真一氏のインタビューをお届け。吉池氏は、シリーズ第1作『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』の生みの親でもある。『アトリエ』の誕生秘話、いまにいたるまでの変遷、そして最新作の見どころなど、たっぷりとお話をうかがった。

コーエーテクモゲームス
細井順三氏(左)
吉池真一氏(右)

『リディー&スールのアトリエ』ついに完成! 手応えは?

――『リディー&スールのアトリエ』がいよいよ発売となりますが、手応えはいかがですか?

細井開発は紆余曲折ありましたけど、非常にクオリティーの高いものができたかなと思っています。近年のガストブランドのタイトルは、発売を延期したりと、ユーザーさんに対して本当にご迷惑をおかけしてしまいました。ですので、『リディー&スールのアトリエ』では、開発体制を抜本的に見直したんです。その甲斐あって、ゲームとしておもしろいものになったと思います。

――具体的には、開発体制をどのように変えたのですか?

細井若手も含めて、各スタッフの個々の力が活きるような、並列の体制を整えました。ディレクターに一極集中させるのではなく、パートごとにリーダーを設けて、そのパートの仕様を各自で決められるようにしています。

吉池見通しがよくなって、スムーズに手堅く進められたと思います。

――今回、東京ゲームショウでは専用の体験版を用意し、さらにユーザー向けのクローズド体験会を実施するなど、いままでの『アトリエ』シリーズになかった試みを実施されていましたよね。それも、開発が順調に進んだから実現できたことなのかな、とお話をうかがって感じました。

細井これまで体験版を作らなかったのは、1年に1本『アトリエ』を出すためには、用意している時間がなかったというのもありますが、RPGは長く遊ばないと魅力が伝わりづらいかなと思っていましたので。とはいえ、東京ゲームショウでもたくさんの方に遊んでいただけましたし、クローズド体験会でも皆さんから「期待以上におもしろい」とおっしゃっていただけたので、実施した意義や価値はあったなと思いました。

※このインタビューの実施後、PS4版の体験版の配信が決定。PlayStation Storeにて、2017年12月15日より無料配信されている。

――体験会では、具体的にどのような声が印象的でしたか?

細井クローズド体験会で驚いたのは、皆さん、“不思議”シリーズをプレイしてきた方なのかと思っていたら、意外と未体験の方もいて。それでも応募してくださる方というのは、新しいゲームへのモチベーションがとても高いので、そんな方にも「おもしろい」と言っていただけて安心しましたね。『リディー&スールのアトリエ』は、シリーズ20周年記念作品ということもあって、“シリーズが初めてでもおもしろい”ことを意識しているんですよ。

調合は、くり返すうちに自分の成長が実感できる

――体験会を通じて、バトルのおもしろさは皆さんにも伝わったと思います。ただ、調合については未知の部分が多いので、改めて、今回の調合の魅力を教えていただけますか?

吉池今回は、プレイを進めることで、自分の成長が実感できるようなシステムになっていると思います。最初のうちは、釜のマスの数に対して、材料のピースのサイズが小さいので、深く考えず「とりあえず入れればいいや」という感じで進められます。触媒を使うと、ボーナスマークが出るのですが、それも「全部のマークは押さえられないし、このマークを押さえておけばいいや」くらいの気持ちで捉えていただけばいいかと。

――それが、後半になると……?

吉池マスが余るどころか、足りなくなって、「どうやってはめていこう?」と、自然に試行錯誤できるようになっていると思います。

――自然とプレイヤーを成長させていくようなバランス調整は、どのように行っているのですか?

吉池ひたすら試行錯誤ですね。調合担当のプログラマーも、「これはぜったいに、試行錯誤して開発しないとうまくいかない」と話していました。要素が多岐にわたるので、「ここさえ押さえておけばいい」という話にはぜったいにならないんです。

――今回、活性化アイテムというものが新たに登場しますが、これの使いどころについて詳しく教えていただけますか?

吉池イメージとしては、シューティングゲームで言うところのボムのような、お助けアイテムです。マスの色を欲しい色に変えたいときに使うもので、種類はいろいろとあるのですが、たとえば『アタック25』のパネルをイメージしていただけるとわかりやすいと思います。『アタック25』の終盤に、「5番です!」と言って色を決めると、パタパタパタッと、ほかのパネルの色が変わりますよね。あのような形で色を変えられるものもありますし、ほかにも、特定の色のマスを、すべてほかの色に変えてしまうものなどがあります。活性化アイテムは、種類によって効果が決まっているんですよ。

――活性化アイテムは、頻繁に手に入るものなのでしょうか?

吉池ものによりますね。何個も手に入るものもありますし、数個しか手に入らないものもあります。

細井誤解していただきたくないのですが、活性化アイテムは、ぜったいに使わなければいけないものではないんです。あくまで、調合をかなりやり込みたい方向けのもので。触媒に関しても同様です。私は、あまり使わないですよ(笑)。誰でも簡単に調合できる“手軽さ”を損なわないよう意識していますので、ご安心ください。

吉池触媒に関して言うと、今回は、入れる触媒によって、釜のマスの数が変わるんですよ。ほかにも変わる要素はもちろんあるんですけど。コアユーザーではない方は、まずはマスの大きさを見て、どの触媒を使うか判断していただくといいと思います。

――使う釜を選ぶようなイメージで、触媒を投入するということですね。それはわかりやすいですね。

吉池後半になると、材料のピースが大きくなるので、「もっとマスが欲しい」という状況になります。そのとき、いい触媒を使うと、マスが増えて、たくさんのピースをはめられる。ほかのことは深く考えずとも、それくらいのスタンスでも、十分に調合は楽しんでいただけますよ。

記念すべき第1作『マリーのアトリエ』誕生の経緯

記念すべきシリーズ1作目『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』のパッケージ。

――先ほど、『リディー&スールのアトリエ』はシリーズ20周年タイトルであるというお話が出ましたが、改めて、20年前に吉池さんが『マリーのアトリエ』の企画を立ち上げたきっかけを教えていただけますか?

吉池もともと、旧ガストに入社する前から温めていた企画で、就職する際の応募書類にも、その企画について書いていました。

――入社してからも、その企画をずっと温め続けていた?

吉池はい。そんなあるとき、桜瀬琥姫さんからイラストの持ち込みがありまして、「いっしょにゲームを作ろう」となりまして……。

――満を持して企画を提出したんですね!

吉池いえ、最初は「シミュレーションRPGを作ろう」という話だったんです(笑)。でも、どう考えても某シミュレーションRPGにしかならなくて……「シミュレーションRPGより、こっちの企画にしませんか」と言って、ついに実現にいたったというわけです。

――錬金術士を題材にしたのはなぜですか?

吉池もともと、材料を集めて何かを作るというシステムにしたいと思っていて。学生のころ、錬金術に興味があって、本を買い漁ったりしていたので、「このシステムと錬金術を組み合わせてみよう」と思ったんですね。最近の『アトリエ』の錬金術は、魔法のような扱いですが、初期はかなりこだわって、錬金術の仕組みを考えていました。

――『アトリエ』の錬金術と言えば、やはり中和剤の存在が印象的です。『マリーのアトリエ』では、色の違う属性の材料を調合するときは、必ず中和剤が必要というのは、プレイ当時、理解するまで少し時間がかかりました。

吉池『マリーのアトリエ』では、違う色の属性を混ぜるのに中和剤が必要で、しかも、2色でしか組み合わせられないようになっていました。そういった設定は自分のオリジナルだったのですが……本来組み合わせられない色を組み合わせるのが“賢者の石”ということで、賢者の石の調合のときだけ、4色の属性の材料を使うようにしました。

当時、中学生だった記者には“中和剤”という概念はかなり新鮮なものだった。

――確かに、賢者の石だけは全色の材料を使っていましたね! 賢者の石と言えば、昔から気になっていたことがありまして……『エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~』で、金を作る際の材料を、“賢者の石”と“産業廃棄物D”にしたのは、どういった理由から?

吉池理由はふたつありまして、ひとつは『マリーのアトリエ』を遊んだ方から、「失敗したとき、材料が全部台無しになってしまうのは不満」というご意見をいただいたからです。調合の失敗をなくすという案もあったのですが、ちょっとヒリヒリするゲームバランスにするためにも、失敗という要素は残したかった。そこで、失敗したときにしかできないアイテムとして、産業廃棄物が生まれまして、これを活かす手として考えたというわけです。

――なるほど。では、もうひとつは?

吉池もうひとつは、じつは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の影響でして……ゴミを燃料にしてデロリアンが走るじゃないですか。“ゴミから価値のあるものが生まれる”というのが、錬金術っぽいなと思いまして。そこで、賢者の石と産業廃棄物を組み合わせることにしたんです。

――長年の謎が解けて、スッキリしました(笑)。ちなみに、『アトリエ』シリーズで、女の子を主人公にしたのはなぜですか?

吉池『マリーのアトリエ』を開発していたころ(1996年~1997年)って、少女マンガが流行り始めて、男性でも少女マンガを読むようになっていたんですよね。それから、プレイステーションが発売されたことで、女性のゲームユーザーが増えているという状況もありまして。「男性ユーザーが買ってくれて、さらに女性ユーザーも取り込めれば」と思って、主人公を女性にしました。実際、『マリーのアトリエ』では半数が女性ユーザーでしたね。

――『マリーのアトリエ』開発中、シリーズ化することは考えていましたか?

吉池いえ、何も考えていませんでした。ですので、「続編を作って」と言われて、かなり悩みましたね(笑)。ちなみに、『マリーのアトリエ』って、自分の中ではタイムアタックのゲームだったんですよ。シューティングゲームなどといっしょで、制限時間内でハイスコアを競うような。マルチエンディングを採用したのは、決められた期間の中の活動で、どれだけいいエンディングに辿りつけたかを競うというスタイルを意識したからです。

久しぶりに『アトリエ』に帰ってきたユーザーでも、絶対大丈夫!

――『イリスのアトリエ エターナルマナ2』の後、一度吉池さんは『アトリエ』を離れましたが、その後も『アトリエ』が続いて、いまにいたります。ガストの皆さんは、どのように『アトリエ』をつないでいったのでしょうか。

細井“『アトリエ』ってこうだよね”というものが、あるんですよね。だから、たとえ私や吉池がいなくなっても、今後も『アトリエ』は作られていくと思います。ある程度の『アトリエ』らしさを意識したうえで、どうするかというのはディレクターやプロデューサーの志向に委ねられると思いますが。

吉池細かいニュアンスの違いは出ると思いますよ。でも、作る人は変わりながらも続いているシリーズは、ほかにもありますよね。それと同じことだと思います。

――皆さんがいま、『アトリエ』を作るうえで意識していることは何ですか?

細井プレイして「明日もがんばろうかな」と思ってもらえるようなテイストですね。

――確かに、『アトリエ』のほんわかした日常系イベントには、元気をもらえます。

吉池ほんわかした要素と言うのは、以前から存在していましたが、最近の作品ではより多くなっているかもしれません。

細井いまの時代、やっぱりストレスになることが多いじゃないですか。働くにしろ勉強するにしろ、どんどん規制が厳しくなって、その規制が自分たちをラクにしてくれているはずなのに、なんだか窮屈に感じる。そんな中で、ゲームでも窮屈感を味わってもらいたくはないなと思っています。

――ほかに重視していることは?

細井わかりやすいことです。『アトリエ』は何度も“原点回帰”をうたっているんですけど(苦笑)、それは要するに、わかりやすくないと、本当にコアなユーザーさん以外、楽しめなくなってしまうからなんです。『リディー&スール』は、本当にわかりやすいですから、「『アトリエ』は久々」というユーザーさんが帰ってきても、ぜったいに迷うことはないですよ。

吉池自分もクリアーするまで通して遊びましたが、突っかかるポイントはなかったですし、素直に「おもしろいな!」と思いました。新鮮な気持ちで遊べると思いますので、ぜひ触れていただきたいです。

『リディー&スールのアトリエ』の初回特典は、“マリー&エリー なりきりコスチューム”。「(キャラクターモデルを)360度回せるので、「衣装のこの部分は、こんな風になっていたんだ」と眺めるだけでも楽しめますよ」と吉池氏。

細井ほかにも、シリーズ20周年企画はいろいろと実施していますし、隠し玉もあります。ぜひ楽しみにしていてください。

――ところで、“不思議”シリーズは今回でひと区切りかと思いますが、その先は……?

細井つぎの『アトリエ』は、ガラッと印象が変わるタイトルにしたいと思っています。とくに、グラフィックの印象を変えたい。毎作、クオリティーアップはしているんですが、それはユーザーさんにとって当たり前のことですよね。ですからつぎは、単純に開発費をかけて進化させるのではなくて、『アトリエ』としてどんな新しいものを提示できるのかを模索しながら、作っていきたいと思います。

※本記事は、週刊ファミ通2017年12月7日号(2017年11月22日発売)に掲載された内容に、加筆・修正を施した完全版です。