ここでは、会期中に行ったWargaming.net CEOビクター・キスリー氏へのインタビューの模様をお届けしよう。

●7周年を迎えた『World of Tanks』は、さらにコンテンツを充実させる

 2017年8月22日~26日(現地時間)、ドイツ・ケルンメッセにて開催されたヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2017。ここでは、会期中に行ったWargaming.net CEOビクター・キスリー氏へのインタビューの模様をお届けしよう。大きなイベントごとにメディアへの取材に積極的に対応してくれるビクター・キスリー氏だが、驚くべきスピードで変化し続けるWargaming.netにあって、そのときどきの同社の展望をうかがう、絶好の機会となっている。

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――この1年間だけをとってみても、Wargamingさんは急速に変化していると思いますが、その手応えを教えてください。

ビクター 『World of Tanks』は今年で7周年を迎えましたが、私たちとしても、つねに新しいものを提供していきたいと考えています。直近では近々アップデートを予定しています。このアップデートでは、“Grand Battle”が導入されて、いままでの15対15を超えた、30対30の戦いになります。また、新しいモードの追加だけではなくて、いまのゲームに見劣りしないように、マップなども大幅に改良します。いま『World of Tanks』では、40数種類のマップがあるのですが、そのすべてを新しくします。私たちの中では“HD化”と呼んでいるのですが、まったく新しいものに作り変える予定です。よりグラフィックの向上を図り、より細部のディテールにこだわって作り込んでいます。2018年のゲームにも負けないように、どんどん改良していくつもりです。

――(映像を見ながら)これはすばらしいですね。これは一気に変えるのですか?

ビクター いまどんどん増やしていっている段階で、“サンドボックスサーバー”というテストサーバーでは、いくつかプレイできるようにはなっています。ゲーム内には、可能な限りエンジンの組み換えをそのまま入れたいので、全部変えていきたいとは考えています。7年前と比較すると、いまどれだけ変わったかが、おわかりいただけると思います。ちなみに、『World of Tanks』がリリースされてから、7年間で90回のアップデートが行われています。

――『World of Tanks』を大切に育てている感じですね。

ビクター そうですね。私たちの大きな違いとしては、数々の開発スタジオがあることだと思います。たしかに、この7年間『World of Tanks』を育てていってはいますが、その間ほかのスタジオでは新作の開発やリリースなどもさせていただいています。

――さきほど、『World of Tanks』で30対30を導入するとおっしゃいましたが、『World of Tanks』から想像される、eスポーツとはまた、違った流れのようにも見受けられますね。

ビクター 『World of Tanks』は、たしかにeスポーツで有名にはなっていますが、メインとして大事に扱っているのは、一般のプレイヤーの方です。eスポーツの流れはもちろんあるのですが、それとは別にeスポーツとは関係なくプレイしている人もたくさんいらっしゃって、そういった方々から「30対30をやりたい」という要望がありましたので、開発をしました。また、私個人もプレイヤーとして30対30がほしかったというのもあります。こういうふうに、どんどん新しいチャレンジであったり、試みというのをしています。

――『World of Tanks』はeスポーツユーザーだけではなくて、幅広い層に支持されているのですね。

ビクター そうです。eスポーツはあくまでも、『World of Tanks』の中の一部です。

――今年7周年を迎えた『World of Tanks』の今後の展開は?

ビクター 私たちとしては、『World of Tanks』は新たなジャンルだと考えているんです。日本だと『ファイナルファンタジー』がJRPGというジャンルを生み出したように、この『World of Tanks』というのは、戦車ゲームにおけるひとつのジャンルだと考えています。さらに私たちとしては、『World of Tanks』をしっかりと“サービス”として提供していきたいと思っています。『World of Tanks』では、今後“さらなるサービス性の向上”を、目標として考えています。私たちのタイトルはグローバル展開をしていますので、特定地域だけではなくて、アメリカやヨーロッパ、ロシアなどさまざまな地域でサービスしていますが、その中でも、アジアのマーケットは非常に重要視しています。これらすべてのマーケットに対して、今後よりよいサービスの向上を考えています。

――サービスの向上ということ、具体的にはどのような施策を考えているのですか?

ビクター たとえば、インフラはそのひとつです。私たちのゲームはオンラインゲームなので、サーバーに接続する必要があります。アジアという地域を例に出しますと、アジアには日本を含め、シンガポールや台湾、オーストラリアなど、さまざまな国が広範囲にわたって存在します。私たちはこれを“APAC(アジア太平洋)”として考えているのですが、APACのサーバーをどこに配置するかによって、近いところはいいのですが、離れてしまったところはプレイに支障が出たりします。そのため、より快適にプレイできるような環境の実現を考えています。新しいモードの追加も、サービス向上に向けての施策です。たとえば、『World of Tanks Console』では、ストーリーモードの“War Stories”を収録する予定でいます。これは、PvEモードで、協力プレイでも遊べるものです。これは、とくにアジアのプレイヤーの方の「AIと戦いたい」とのご要望に応えたものです。

――『World of Tanks』はものすごいスピードで変化していますが、これだけの変化を促すパワーの源はどのへんにあるのですか?

ビクター Wargamingには世界中に開発スタジオがありますし、何千人ものスタッフが在籍しています。ただ、頻繁なゲームのアップデートや、ゲームタイトルの発表は、すぐにできることではありません。そのために、これは私の仕事でもあり、各地のマネージャーの仕事でもあるのですが、スタッフが可能な限り全力を出し切れるように、会社の体制を変えたり、構成を変えたりなどで、可能な限り努力しています。私自身が好きな『シヴィライゼーション』にたとえますと、会社というのはこのゲームといっしょで、さまざまな街を作り、その街を管理して、より効率的に、そしてときにはさまざまな手段を取って、自分や会社に取っていい形に導いていくんです。

――ゲームがお好きらしい比喩ですね(笑)。ある意味で、ゲームと同じような感覚で経営にとりくんでいらっしゃるということでしょうか?

ビクター 実際は、『シヴィライゼーション』のように、コマが言ったとおりに動くわけではないので、現実はもっともっと複雑ではありますけどね。いまの例はあくまでも説明のために使った比喩です。ただ、ゲーム感覚がまったくないわけではありません。いかなる状況においても変えていないのは、目的を持つことです。そしてWargamingにおいては、その目的のひとつがプレイヤーの皆さんに満足していただくことです。プレイヤーの皆さんにハッピーになっていただくことによって、結果として“導くためのもの”が、会社としてもしっかりと立ち上がってくる。“どうしたらその結果にたどり着くのか”ということを、会社としてしっかりと議論することで、進むための道筋もおのずから見えてくると思っています。

――事業の核として『World of Tanks』があって、優秀なスタジオを多数抱えているとのことですが、コラボなどを展開するにあたっての方針などはあるのですか?

ビクター 特定のルールというのはないのですが、おもにはご縁でしょうか。各国のオフィスで、協力をしたり話をしているスタジオさんもありますので、その機会が現れたときに、ともに席に座ってテーブルを挟んで話し合うわけです。そして、お互いどういったことを考えているかというのをその都度ディスカッションしながら、考えかたなどが共通しているかだったり、私たちとやっていけるのかというのをしっかりと見極めたうえで、“開発局”として迎え入れています。

――いま、とくに注力しているコンテンツはありますか?

ビクター 誤解のないようにお伝えしますが、とくに優先順位というものはつけていません。たとえば、『World of Tanks Console』はコンソールでいちばんのゲームを作るためにがんばっていますし、『World of Tanks Britz』はモバイルで一番になるゲームを目指しています。とくに、ことさら個別に力を注いでいるタイトルというのはありません。すべての開発局は、すべてのテーマに沿った一番を目指してやっているので、何かをないがしろにするということは一切ありません。

――となると、たとえば『World of Tanks』と『World of Warships』とで食い合うのではという懸念はないのでしょうか?

ビクター 『World of Warships』をリリース前にはそういった意見も一部であったのですが、現実的に戦車と船はぜんぜん違うジャンルですし、結果として食い合うことはありませんでしたね。

――Wargamingでは、WG Labsという興味深い取り組みがありますが、その成果を教えてください。

ビクター WG LabsもWargaming Allianceにしても、すべてWargamingであることに変わりはありません。ただわかりやすいように、部署わけをしている形になります。WG Labsがあったおかげで、今回セガさんとコラボレーションして、Creative Assemblyさんと共同開発している『Total War: ARENA』の展開に結びつきました。『Total War: ARENA』に関しては、Wargamingのほうでもしっかりとアドバイスをしたり、ノウハウを提供しながら“共同開発”という形でやっております。パブリッシングやマーケティングに関しては、全面的にWargamingのほうでやることになっています。WG Labsのおかげで、すばらしいタイトルをともに作っていけるようになったとは言えるでしょうね。

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――VRに関して聞かせてください。Wargamingでは、VRコンテンツにも積極的に取り組んでいらっしゃいましたが……。

ビクター たしかにVRは世に出てから、早いスピードで成長しています。デバイスなどもさまざまな会社から出ています。私たちとしても、それに興味がないわけではなくて、先日はVRTechとの提携も発表させていただきました。ただ、現状のVRにはネックもいくつかあります。たとえば、VRTechのデバイスも、コードはなくなりましたが、いまだに頭にバイザーが必須ですし、背中にパソコンを背負ったりと、さまざまな道具が必要です。現状VRを利用するには、特別な設備や機材が必要なんです。私たちとしては、自社のコンテンツをより多くの方々に提供したいと考えているのですが、VRに関しては現時点ではまだ敷居が高いかな……というのが印象です。ただ、これがいずれGoogle Cardboardやモバイル機器のように、家庭でも気軽にVRが楽しめるようになれば、より一層力を入れたいと考えています。また、これが仮にご家庭になかったとしても、ショッピングモールや映画館など、より身近に触れるところに流通するのであれば、私たちも今後の成長のチャンスはあると思っています。

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