ユーザーとゲーム音楽家が直接触れ合えるユニークなイベント

 ノイジークロークが2017年5月6日、大田区民ホール アプリコにて開催するゲーム音楽イベント“東京ゲームタクト2017”(以下、ゲームタクト)。参加型ゲーム音楽フェスティバルというコンセプトを掲げる同イベントは、単にゲームミュージックが演奏されるだけではなく、多くのゲーム音楽家・アーティストが指揮や演奏をする形でフルオーケストラのコンサートに参加。さらには、小編成のコンサート、トークショー、さらにはファン参加型のパーティーが開催されるなど、ユーザーとゲーム音楽家が直接触れ合えるユニークなイベントとなっている。

参加型ゲーム音楽フェスティバル“東京ゲームタクト2017”が5月6日に開催! 豪華な顔ぶれとなる出演者が意気込みを語った_01

 そんなゲームタクトの出演者が集った懇親会にて、演奏される曲の説明やイベントにかける意気込みを聞いてきたので、どんなイベントなのか気になっている人は、ぜひチェックしよう。3年前に開催された前身イベント“沖縄ゲームタクト2014”のレポートも併せて読んでいただくと、イメージがより伝わりやすいだろう。

 なお、前売りチケットはイープラスにて販売中。前売り期間は2017年4月25日18時までなので、興味を持った人は早めにゲットしよう。

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 ここでは、公開されたばかりの植松伸夫氏、後藤正樹氏、坂本英城氏の対談動画とゲームタクトのプロモーションムービーをお届けする。

作曲家と奏者、来場者がいっしょになって作り上げるコンサートを目指して 主催者に聞くイベントの趣旨

 まずは、イベント全体をプロデュースする、音楽監督の坂本英城氏(代表作:『無限回廊』シリーズ、『討鬼伝』シリーズ)と総合ディレクターの後藤正樹氏(琉球フィルハーモニックオーケストラ指揮者、那覇ジュニアオーケストラ指揮者、アレグレット交響楽団常任指揮者)に、ゲームタクトというイベントのコンセプトをうかがった。

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▲坂本英城氏(右)と後藤正樹氏。

――まずは、ゲームタクトを開催される目的とコンセプトをお聞かせください。

坂本 根底の発想は“ゲーム音楽を文化として後世に残したい”ということです。いまは本当にたくさんのゲーム音楽のコンサートが開かれていますが、チケットを売るためにどうしても人気のあるゲームに偏った選曲をしていると思うんです。一方で、これだけ世の中にゲームがあるということはその数だけゲーム音楽が存在するということなのですが、ゲームの売れ行きや運営期間といった事情で、その音楽があっさり葬られてしまっている現実もあります。往年の人気タイトルにばかり頼り、最新のゲーム音楽がどんどん忘れ去られていくのは文化の浪費だなと思っているんです。この状況を打開してより幅広く作品を取り上げ、“ゲーム音楽を文化として後世に残す”きっかけになれればと考えています。
 ゲームタクトがほかのイベントと一番違うのは、作り手側が主体的にイベントに関わっているところです。具体的には、作曲家が指揮をしたり、演奏をしたり、コーラスで加わったり。譜面とは別に、その曲の本当の音の出しかたや大きさは作曲家の頭の中にしかないわけなので、それを作曲家自身の言葉で演奏家に伝える、もしくは自分が演奏することでそれを伝えられたときに、出来上がったものが作曲家の頭の中にある“本物の音楽”だと思うんです。クラッシック音楽とは違って作曲家が生きているのに、なぜ音楽が最終出力されるところまで作曲家が責任を持たないかという疑問をひとりの作曲家として強く持っているので、“作り手側が主体的に関わっていくこと”にはこだわっています。

後藤 ゲームは自分で主体的にプレイするものですから、そこで流れてくる音楽も経験と紐付いてすごく自分の中に入り込んできます。主体的な経験と音楽が融合しているメディアはほかにはないので、ゲーム音楽は本当におもしろいです。音楽教育の観点でも「オーケストラは難しそう」、「長くて眠くなりそう」と言われがちなんですが、ゲーム音楽はそういった人たちに音楽の楽しさを伝えるのにすごく適しているとも思っています。それと、作曲家というのは僕ら演奏者からすると“神様”なんですけど、その神様に対して意見が言えるのがゲームタクトのおもしろさです。いっしょに作っていくという感覚がうれしいです。

坂本 ゲームタクトのもうひとつの目的は、ゲーム音楽をもっと一般に開かれたものにしたいということです。子どもからお年寄りまでがふらっと遊びに来てみたらスマートフォンでよく遊んでいる曲を聞けたとか、作曲家本人から曲について教えてもらったとか、そういう感じでゲームの音楽ってもっと身近なところにあるんだよ、という伝えかたをして文化として残していければと思っています。

後藤 ゲームを知らなくてもいろんな体験ができる場にしたいですよね。

坂本 ゲームタクトは今後も継続的に開催したいと考えています。ゲーム音楽の素晴らしさを知っていただけるよう、メーカーという枠やゲームの人気だけにとらわれず、より幅広くゲーム音楽を聴いてもらえる機会を提供していきたいです。

――それでは今回の大ホールの選曲は坂本さんがされているのでしょうか?

坂本 基本的には作曲家の方々に“オーケストラで演奏したい曲”を挙げていただいて、ある程度は僕のほうで調整させていただきました。『スペースハリアー』もあれば『モンスターストライク』もあるといった、新旧のタイトルが同居しているのを意識しました。

後藤 植松伸夫さんというと『ファイナルファンタジー』の印象が強いですが、今回はご自身が好きだというフォークソングテイストな『アナタヲユルサナイ』の“遠くからあなたを”を選んでくださっています。それを僕らがいかに表現していくかというのがおもしろいところですね。

――坂本さんは大ホール公演で自身が作曲された曲を指揮されますね。

坂本 私が指揮をする曲は、大ホールの昼公演では『文豪とアルケミスト』の同名タイトル曲と、『予言者育成学園 Fortune Tellers Academy』の主題曲でサラ・オレインさんがボーカルを務める“Glory”の2曲。夜公演では、『討鬼伝2』のラスボス曲“トキワノオロチ - 時輪大蛇 -”、そして『TIME TRAVELERS』より“The Final Time Traveler”の2曲です。
 選曲の理由としては、“The Final Time Traveler”はサラ・オレインさんに出ていただく以上は絶対に歌っていただきたい、と思い選びました。同じくサラさんにボーカルを務めてもらった“Glory”も歌ってほしくてチョイスして。“トキワノオロチ - 時輪大蛇 -”は作曲の時点で東京ゲームタクトの開催が決まっていたので、「ここで絶対に演奏したい!」という気持ちで当日にオーケストラ編成までイメージしながら書いた曲でした。『文豪とアルケミスト』は準備期間中にゲームの人気が出てきたということで急遽演奏リストに加えたもので、5月発売予定のサウンドトラックCDに収録されているオーケストラアレンジからの初演となります。
 4曲それぞれが、テンポもテイストも異なる曲で、バランスのよい選曲ができたかなと思っています。それだけに指揮をするのがたいへんですけど、がんばって指揮をします(笑)。

――今後の抱負をお願いします。

坂本 老若男女問わずふらっと足を向けてもらえるような身近なイベントであると同時に、ゲームに興味のある人も行きやすくて心地のいいイベントにしていきたいですね。コンサートという形だけではなく、作曲家が曲を語る機会や、みんながいっしょになって演奏するような、参加型の取り組みを設けて、間口を広げていきたいです。

後藤 クラッシックコンサートの堅苦しさといった固定概念を取り去った、新たなゲーム音楽コンサートのフォーマットが作れたらいいなと思います。

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▲作曲家どうしの仲のよさもあり、イベント開催に向けて大いに盛り上がった懇親会。共催となる大田区文化振興協会の職員からの挨拶がなされるなど、成功への本気度がうかがえた。

作曲家自身が指揮や演奏で参加する大ホールコンサート

 大ホールで昼夜2回公演のあるオーケストラコンサートで指揮や演奏を行う、川越康弘氏(代表作:『ポケモン不思議のダンジョン ~マグナゲートと∞迷宮~』)、大久保博氏(代表作:『リッジレーサー』シリーズ、『アイドルマスター』シリーズ)、桑原理一郎氏(代表作:『モンスターファーム5』『モンスターストライク』)、谷岡久美氏(代表作:『ファイナルファンタジーXI』『ファイナルファンタジー・クリスタル・クロニクル』)、なるけみちこ氏(代表作:『ワイルドアームズ』シリーズ)、岩垂徳行氏(代表作:『グランディア』シリーズ、『逆転裁判』シリーズ)に話をうかがった。

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▲左から川越康弘氏、大久保博氏、桑原理一郎氏、谷岡久美氏、なるけみちこ氏、岩垂徳行氏。

――ご自身が参加される曲の説明をお願いします。

川越 昨年の6月までノイジークロークに所属していた縁で、打楽器チームの一員として参加します。加藤さんといっしょに作曲を担当した『消滅都市』の“世界の終わりと最後の言葉”も演奏します。

大久保 自分が作曲した『エースコンバット04』のエンディングテーマ“Blue Skies”を演奏していただきます。元々この曲はニューヨークのキングストリートサウンズというレーベルで収録をしたものです。ふだんはエレクトリックな曲を作ることが多く、生演奏がどうなるかが不安でしたが、素晴らしいアレンジをしていただいたので演奏が超楽しみです。(ほかの出演者から「指揮はやらないの?」と突っ込まれ)小学校のときの四拍子を振ったことしかないですから(笑)。でも、こんな機会を逃したら一生ないだろうから、振ってみようかな……。
(全員から「やりなよー!」の声が上がる。どうなるのかは本番に期待だ!)

桑原 “モンスターストライクシンフォニー 第6楽章~爆絶~ ゲームタクトバージョン”で指揮をするのと、第二バイオリンとしてコンサートに通しで参加をします。前回のゲームタクトに参加できなかったことが非常に悔しくて、今回はいち早く名乗りを上げました。“爆絶”は合唱の歌詞を難しい言語で書いてしまったものですから、コーラスの皆さんに苦労させてしまったと思うのですが、いい感じに仕上げてくださったので嬉しいです。

谷岡 私が作曲した『ファイナルファンタジーXI』の“Awakening”を演奏してもらうのと、プログラムの中の数曲でピアノを弾くのと、同じく私が作曲した『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』の“約束のうるおい”ではいつの間にか指揮をすることになってました(笑)。“約束のうるおい”は昔からずっと演奏したかった曲でしたが、民族音楽を多用しているため演奏の機会に恵まれませんでした。今回は自分で編曲したオーケストラバージョンとなっているので、楽しみにしている方に喜んでもらえたら嬉しいです。

なるけ 打楽器として演奏に参加しているほか、『ワイルドアームズ』の『1』と『2』から3曲をチョイスした“街曲メドレー”では指揮を振ります。楽曲のテイストとしては、“盛り上がってドーン!”ではなくて、リズムに乗れて楽しいことと、各楽器のパートごとにひと節メロディーがくることを意識しました。自分でアレンジして、かつ指揮まで振るというのはすごくたいへんですけど、自分のスコアに込めた思いを理解してもらえるのはとても勉強になります。
 それともう1曲、『ノーラと刻の工房 霧の森の魔女』の“今あたしがつむぐ日々”を弦楽五重奏にアレンジしました。作曲家たるもの弦楽五重奏ができて一人前みたいなところがあるので、穴が空くほどスコアを見直しています(笑)。演奏中は、ただ聴いてもらうだけではなく、ゲームタクトらしい演出を用意したいと考えています。

岩垂 トロンボーン奏者として参加しているのと、“法廷組曲 逆転裁判6”と『LUNAR2 ETERNAL BLUE』メドレーの2曲で指揮をします。『逆転裁判6』は、“開廷~尋問~異議あり!~追求”をまとめた曲です。
 『LUNAR2』に関しては、ゲームを作っていたときから開発スタッフの皆さんと「オーケストラコンサートをやりましょう」と言っていたので、その夢が20年越しで叶いました。シナリオ担当の重馬敬さんと相談しながら、ゲームの流れに沿ってたくさんの曲を入れるドラマチックな構成にしました。

霜月はるか氏は指揮と歌唱!? コンサートの華・シンガーの方々の意気込みは

 大ホールオーケストラコンサートにボーカルで彩りを加える女性シンガー、霜月はるか氏(代表作:『アルトネリコ』、『サージュ・コンチェルト』シリーズ)、SAK.氏(『消滅都市2』『湾岸ミッドナイト マキシマムチューン 5DX PLUS』などに参加)、エミ・エヴァンス氏(『NieR Replicant』『NieR Automata』などに参加)に意気込みを聞いた。

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▲左から霜月はるか氏、SAK.氏、エミ・エヴァンス氏。

――皆さんが歌われる曲と、ゲームタクトへの意気込みをお願いします。

霜月 私がサウンドプロデュース・作曲をしている『猛獣たちとお姫様』メドレーで、指揮と歌を担当します。同じ楽曲中で指揮というのは前代未聞でしょうけど、いったいどうなるのかを見に来ていただけたら嬉しいです。ゲームタクトは、参加者みんなが熱意を持って作り上げるところが素敵なので、そうしたパワーを感じながら今回もがんばりたいと思います。

SAK. 『エースコンバット04』の“Blue Skies”を歌わせていただきます。光栄なことに、作曲者の大久保さんからご指名をいただきました。今年はシリーズ最新作の『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』が発売されるスペシャルイヤーなので、とても大事な機会に歌わせていただいて光栄に感じています。前回の沖縄ゲームタクトに参加させていただいたときに、作曲家の皆さんとゲーム音楽ファンの距離がものすごく近いのを見て、深いつながりがあることを感じました。それから3年経って、またいろんな方々とごいっしょできることを幸せに感じています。

エミ 『消滅都市』から“世界の終わりと最後の言葉”を歌います。ふだんは英語、もしくは(自分で考案した)未来語で歌うことが多く、日本語で歌うのはあまりないことなので、オファーには戸惑いました。でも、歌ってみたら美しいメロディーがとても気持ちいいのです。昨年末に『消滅都市』のイベントでSAK.さんと小編成のオーケストラ伴奏で歌いましたけど、今回はフルオーケストラで歌えるということでワクワクしています。

――オーケストラと合わせてみていかがでしたか?

霜月 人前で指揮をするのは初めてで、奥深さに日々勉強中です。奏者さんがだんだんまとまっていくのを見るのは、作曲家として嬉しい体験ですし、そこでタクトを持たせてもらうのは貴重な体験です。奏者さんたちの前のめりな姿勢にも影響を受けているので、いいパフォーマンスができるよう、みんなでがんばっていきたいです。フルオケにあわせて歌わせていただく機会はなかなかないことですが、すごくやわらかい曲なので、リラックスして気持ちよく歌えたらと思っています。

SAK. ふだんはバンドやDJスタイルで歌うことがほとんどなので、オーケストラをバックに歌うのは初めての体験です。原曲ではエレクトリックなビートが流れている“Blue Skies”ですが、今回はオーケストラならではの重厚なアレンジとなっています。その分ふだんとは音の感じかたが違うため、練習では試行錯誤していますが、本番ではいい形でお届けできるようがんばります。

エミ オーケストラとあわせたのは2月だったのですが、初めての練習で皆さんの興奮がすごかったです。練習前に撮影で外にいて体が冷えていたのもあって、まるで温泉みたいに心地よかったですね(笑)。“世界の終わりと最後の言葉”は、ふだん子守唄として歌っているくらいに優しい歌です。考えすぎると歌詞が飛びそうだから、リラックスして挑みます。

有名作曲家によるトークショーや『MOTHER』の楽曲が演奏される小ホール公演

 小ホールでは、植松伸夫氏(代表作:『ファイナルファンタジー』シリーズ)による“植松伸夫トークショー(仮)”など、バラエティーに富んだ催しが行われる。ここでは、トークショー“レジェンドコンポーザーズ”に出演する国本剛章氏(代表作:『チャレンジャー』『スターソルジャー』)、慶野由利子氏(代表作:『ゼビウス』)、Hiro氏(セガ・インタラクティブ所属、代表作:『アウトラン』『アフターバーナー』)、そして“MOTHER スペシャルコンサート performance by サカモト教授”に出演するサカモト教授氏(代表作:『勇者と1000の魔王』、『三国テンカトリガー』)に意気込みをうかがった。

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▲左から国本剛章氏、慶野由利子氏、Hiro氏。

――“レジェンドコンポーザーズ”ではどんな話をされるのでしょうか。

Hiro コアな話をします。この3人に古代祐三さん(代表作:『アクトレイザー』『世界樹の迷宮』シリーズ)を加えたメンバーを見に来たいという人は“濃い”でしょうから、昔話が中心になるんじゃないでしょうか。今日も打ち合わせの時点で盛り上がってしまって、あわてて当日のために抑えました。

慶野 お互いの情報を知れば知るほど、驚きと感動があってね。

Hiro ちょっとだけ話すと、国本さんがカセットテープで納品されていたというエピソードが出ましたよね。「それってどういうこと!?」と聞きたい気持ちを押さえて、本番に挑みたいと思います。

国本 フロッピーディスクのサイズが8インチだったという話も出ましたね(笑)。

慶野 こんな感じで私たちにとっての共通言語でお話をするつもりですが……。

Hiro 若い人にはわからない言葉になるかもしれません(笑)。古代くんもいい年齢で大御所扱いをされているらしいんですけど、この面子の中では若造枠としてトークをくり広げられたらと思います。

国本 Hiro師匠とお会いするのは今日が初めてだったのですが、とても素敵な方だなと思ってホッとしました。古代さんとは当日初めてお会いすることになりそうで、いまからドキドキ楽しみにしています(笑)。昔話も、できる範囲でさせていただきます。

――司会がおにたまさん(レトロゲームに詳しい武田寧氏)ということで、オールドファン必聴のトークとなりそうですね。では、サカモト教授のコンサートはどのようなものになるのでしょうか?

サカモト コンサートでは、自分がピアノを弾きながらのピアノ四重奏で『MOTHER』の楽曲を演奏します。現在は、絶賛編曲中です。自分は世間的には“チップチューンの人”と思われていると思うんですけど、実際にはクラシックピアノや管弦楽も通ってきています。自分のできる音楽はピコピコだけじゃないという、いつもと違ったサカモト教授をお見せできると思います。

――演奏はファミコンを頭に載せたいつもの格好なんでしょうか?

サカモト そうですね。ただ、ゴーグルを着けてしまうと奏者とのアイコンタクトができないのが問題ですが(笑)。

――トークゲストとして出演される鈴木慶一さんとはどのようなやり取りを。

サカモト 過去に“ほぼ日刊イトイ新聞”の企画でごいっしょしたことがあったので、ダメ元でオファーをしたら、ご快諾いただきました。じつは鈴木さんは、会場のある大田区出身なんだそうです。僕の演奏のあとに、感想や当時のお話をうかがう予定でいます。ステージは朝10時スタートですが、こんなに早い時間からライブをするのは初めてですね(笑)。

ゲーム作曲家の素顔が見られる!? 展示室にて行われる無料トークイベント

 コンサートの合間には展示室にて、“中條謙自のゲーム音楽家・一斉調査 2017”といった、入場無料のトークイベントが催される。ここでは、“AB型作曲家座談会~坂本英城の『AB’s』~”に出演する坂本英城氏、上倉紀行氏(代表作:『朧村正』『英雄伝説 閃の軌跡』)、高田雅史氏(代表作:『地球防衛軍』シリーズ、『ダンガンロンパ』シリーズ)、そして“佐野電磁の『ど~してこの曲がイイの!?』”に出演する佐野電磁氏(代表作:『リッジレーサー』『ドラッグオンドラグーン』)と加藤浩義氏(代表作:『消滅都市』『クラッシュフィーバー』)に見どころをうかがった。

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▲左から加藤浩義氏、佐野電磁氏、高田雅史氏、上倉紀行氏。

――“坂本英城の『AB’s』”とは、いかなるトークショーなのでしょう。

高田 “AB型至上主義”をテーマに盛り上げていこうという趣旨ですね。

坂本 1時間に渡って、AB型の素晴らしさを語るトークショーです。そもそものきっかけは、細江慎治さんから「ナムコ時代は作曲家にAB型が多かった」という話を聞いたからなんです。細江さんはこのセッションはきちんと事前に打ち合わせをして本番に臨もう、と言っていたんですが、今日の打ち合わせには、その細江さんが来ていないですけど(笑)。

佐野 AB型の人ってどんな人なんですかね?

上倉 二面性があるとか、頭の回転が速いとかね。自分で言っちゃいますけど(笑)。

高田 つねに自分を客観視している“もうひとりの自分”がいるというのは共通認識です。

坂本 あと人の話は基本聞いてないですね。今日も“AB型あるある”をネタ出ししようと思ってこの3人で打ち合わせたんですけど、終わるころには誰も内容を覚えてないですからね(笑)。

上倉 「これでOKだな」と思うと、途端にみんなしゃべらなくなる(笑)。

――すでに収集がついてない感じですが、座談会への意気込みをお願いします。

坂本 AB型はあまり表立って意気込まないんですよね……。B、A、O型の方によーし、自分もAB型になるぞ!と思っていただきたいです。

高田 AB型に生まれたからには、AB型ならではの楽曲を作っていけたらいいなと。

上倉 うん、がんばりたいいと思います。AB型は多くを語らないので。

佐野 めちゃくちゃしゃべってたじゃねーかよ!(一同笑)

――さて、“佐野電磁の『ど~してこの曲がイイの!?』”について聞かせてください。

佐野 最近飲みの席でよく言っているのですが“プレイリストは人生の棚卸しである”と。プレイリストを見ると、その人の人生・人となりが見えるということです。
 ここにいる加藤さんに、上倉さん、細江さん、小塩広和さん(代表曲:『グルーヴコースター』シリーズ)たちゲストにお気に入りの1曲を持ってきていただいて、「この曲がなぜ好きなのか」、そして音楽面だけでなく「この曲を聴いていたときに付き合っていた女性」といったところまで、深く掘っていくコーナーです。

加藤 ゲーム音楽ではなく、自分の曲ではないというルールがあるんですが、それでもどの曲にしようかすごく迷いますね。4曲まで絞り込んだんですけど、「なんでこの曲が好きなのか」を考えてみると、言えそうで言えない。

佐野 (満面の笑顔で)でしょ!? ゆくゆくはオンリーでクラブイベントをやりたいですね。ゲーム音楽家だけでなくいろんな職業の人に話しを聞いて、その人の人生を掘り起こしていきたい。

加藤 楽しみな反面、けっこう考えてしまって怖いですね。お客さんウケを狙ったほうがいいのかどうなのか(笑)。

本番に向けて熱の入る練習の様子を独自取材!

 懇親会とは別に、本番に向けて行われている練習の様子を取材させていただいたので、あわせてお伝えしよう。
 昨年中から着々と回を重ねている練習では、作曲家やアーティストの方々が入れ代わり立ち代わり加わって、奏者と直接コミュニケーションを取りながら曲の完成度を高めていっている。そもそもなぜ練習が必要なのかと言えば、坂本氏が言うように「作曲家の頭の中にしかない情報を直接奏者に伝えられる」から。譜面はあくまで記号であって、そこにすべての情報が書き込まれているわけではない。奏者ごとにことなる解釈を、指揮者がまとめ役となってひとつの正解へとまとめていくのが練習の意味というわけだ。その様子はまるで、ゲーム制作におけるバランス調整のようであった。

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▲指揮台の上でタクトを振る坂本氏。よりよい演奏に仕上げようと指導に熱がこもる。

 そうした情熱的な練習がくり返されているだけあって、演奏のクオリティーはすでにかなりのものとなっているように感じた。当日は、より磨き抜かれた選りすぐりの楽曲を耳にすることができることだろう。

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▲数ある自身の代表曲の中から『スペースハリアー』のメインテーマの演奏に加わるHiro氏。コンサートでは、グランドピアノを演奏する貴重な師匠の姿が見られる。

 また、懇親会は欠席だった古代祐三氏、河野暁子氏にも貴重なコメントをいただいたので掲載する。

 “世界樹の迷宮メドレー”を指揮する古代祐三氏。「ゲームタクトはきっと楽しいイベントになるでしょうけど、自分はお客さんの前でいい演奏ができるようにするので目一杯です(笑)。でも練習を重ねるごとに奏者さんとの息があってきて演奏がまとまってきているので、当日が楽しみですね」。

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 植松伸夫氏率いるバンド・EARTHBOUND PAPASでボーカルを務める河野暁子氏(『テラバトル』などに歌唱参加)。「オーケストラの中で歌うのは初めてでしたけど、難しさの中に自分を盛り上げてもらっている気分になれました。当日は『テラバトル』から“High Sky”と植松さんが一番好きという『アナタヲユルサナイ』の“遠くからあなたを”を歌わせていただきます。素敵な曲と歌詞を自分の中に取り込んで、いい表現ができるようにがんばります」。

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