『キングダムハーツIII』の情報は、ワールドツアー中のどこかで公開
2017年3月10日、東京国際フォーラム ホールAにて、『キングダム ハーツ』のオーケストラコンサートツアー“KINGDOM HEARTS Orchestra -World Tour-”がついにスタートした。本コンサートは、2002年に第一作が発売された『キングダム ハーツ』シリーズ初のオフィシャルオーケストラコンサート。3月10日の東京公演を皮切りに、欧州、アジア、北米を含むワールドツアーが行われる。
本稿では、そのツアー初日となる東京公演の模様をリポートする。これからツアーに参加される方、ネタバレを気にされる方は、ご注意ください。



本公演は、指揮者と編曲に夏の吹奏楽公演と同じく和田薫氏、編曲に宮野幸子氏、亀岡夏海氏、鹿野草平氏が担当。演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。
オープニングを飾ったのは、『キングダム ハーツ』シリーズを象徴する名曲『光』のオーケストラアレンジ『HIKARI -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』。この曲は、昨年行われたオフィシャルブラスバンドコンサート“KINGDOM HEARTS Concert -First Breath-”(リポート記事は→こちら)のアンコールで演奏された(その時はもちろん吹奏楽のアレンジ)。前回の最後の曲でスタートする、という演出が心憎い! また、ステージ上のスクリーンでは、曲に合わせて編集されたゲーム映像も流され、思い出のシーンと楽曲が合わさって、1曲目から、心わしづかみに。
続いては『Dearly Beloved -KINGDOM HEARTS II Ver.-』。この曲の冒頭には、カイリ役の内田莉紗さんが登場。カイリの視点から、キーブレード使いになるため、いっしょに修行をしているアクセルの印象などが語られる朗読が行われた。
3曲目は『Destati』。コーラスが入ったこの曲の迫力は圧巻。『Destati』のあとは、XIII機関のテーマ曲と言える『Organization XIII』。この曲のあと、『キングダム ハーツ』シリーズの作曲を担当した下村陽子氏が登壇し、「今回の公演は私もずっと待ち望んでいました。今日は存分に『キングダム ハーツ』の世界を楽しんでいただければ幸いです」と挨拶した。
その後は、ほのぼのとした『Twinkle Twinkle Holidays』、デスティニーアイランドでかかる『Treasured Memories』、『キングダム ハーツ』のワールド曲がメドレーになった『The World of KINGDOM HEARTS』へと続き、第一部の最後の2曲は『キングダム ハーツII ファイナルミックス』のシークレットエンディング曲『Fate of the Unknown』と、『Threats of the Land: KINGDOM HEARTS Battle Medley』で、ドラマチックに締められた。
ここで20分間の休憩。第二部開始の5分前のアナウンスを担当したのは、なんとシリーズのディレクターを務める野村哲也氏。このサプライズに会場は一気に和やかな雰囲気に。野村氏は5分前アナウンスだけではなく、『キングダム ハーツ』シリーズ初のスマホアプリ『キングダム ハーツ アンチェインド キー』の大幅バージョンアップにともない、同作を新タイトル『キングダム ハーツ ユニオン クロス』として再始動することを明らかに。会場先行でトレーラーも公開された。トレーラーには、髪を短くしたヴェンらしきキャラクターとエフェメラが触れ合うという意味深なシーンも……(会場から「キャー!」という歓声)。現在、事前登録がスタートしている。なお、タクトを振るソラがモチーフの、“ソラ オーケストラVer”メダルが、現在『キングダム ハーツ アンチェインド キー』をプレイしているプレイヤー全員にプレゼントされるので、『キングダム ハーツ アンチェインド キー』プレイヤーはぜひログインを。
最後に野村氏は、「『キングダムハーツIII』については、このワールドツアー中のどこかで情報を公開します」とアナウンス。会場からは大きなどよめきが挙がっていた。
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第二部は、シリーズのメインキャラクターのテーマ曲がメドレーになった『Heroes and Heroines: Characters' Medley』からスタート。続いて、黄昏感が漂う『Lazy Afternoons~At Dusk, I Will Think of You…』、シオンの曲『Vector to the Heavens』が演奏。なお、第二部でも朗読劇が用意され、シオン役も務める内田莉紗さん、そしてアクア役の豊口めぐみさんによって、本コンサートのために書き下ろされたエピソードが披露された。
豊口さんの朗読劇のあとには、『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-』に収録されていた『Wave of Darkness』、『キングダム ハーツ アンチェインド キー』プレイヤーにはおなじみの『Daybreak Town: The Heart of χ』と続く。
終盤はロクサスの悲しさが思い出される『The Other Promise』、壮大なボスバトルの曲がメドレーになった『Let Darkness Assemble: Final Boss Battle Medley』、ラストの1曲は『Passion - KINGDOM Orchestra Instrumental Version』。
アンコール曲は、ここでは書けないが、オーケストラコンサートのラストにふさわしい曲。全体を通じて、ゲーム開始からエンディングまでを見た気になる構成に。
オーケストラの生演奏とコーラス、そしてシリーズの全体からピックアップされた名シーンの数々。コンサート後は、『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』や発売されたばかりの『キングダム ハーツ-HD 1.5+2.5 リミックス-』がプレイしたくて堪らなくなりました。
下村陽子氏
「夢にまで見た、『キングダム ハーツ』のオーケストラコンサートが実現できました。このコンサートは私たちだけではなく、皆さんと作り上げられたものだと思います。『キングダム ハーツ』ファンの皆さんの声援なくしては実現できませんでした。ありがとうございました」
内田莉紗さん
「今日はこんなステキな空間に参加させていただけて、幸せです。ありがとうございました」
豊口めぐみさん
「参加できて光栄でした。皆さんも同じ気持ちだと思うんですが、いますぐ家に帰って、発売されたばかりの『キングダム ハーツ -HD 1.5+2.5 リミックス-』をプレイしたいです(笑)。本当にありがとうございました!」
野村哲也氏
「途中の休憩でのアナウンスは今日だけの予定です。明日からはホッとしていると思います(笑)。公開した(『キングダム ハーツ ユニオン クロス』の)映像は、いつものように自分と外部のディレクターの方と編集しましたので、その映像も楽しんでいただけたなら、よかったなと思います。本日はありがとうございました」
<セットリスト
<第一部>
01. Hikari -KINGDOM Orchestra Instrumental Version- (編曲:和田薫)
02. Dearly Beloved - KINGDOM HEARTS II Ver. - (編曲:和田薫)
03. Destati (編曲:亀岡夏海)
04. Organization XIII (編曲:亀岡夏海)
05. Twinkle Twinkle Holidays (編曲:亀岡夏海)
06. Treasured Memories (編曲:宮野幸子)
07. The World of KINGDOM HEARTS (編曲:和田薫)
08. Fate of the Unknown (編曲:和田薫)
09. Threats of the Land: KINGDOM HEARTS Battle Medley (編曲:亀岡夏海)
<第二部>
10. Heroes and Heroines: Characters' Medley (編曲:鹿野草平)
11. Lazy Afternoons~At Dusk, I Will Think of You… (編曲:鹿野草平)
12. Vector to the Heavens (編曲:宮野幸子)
13. Wave of Darkness (編曲:亀岡夏海)
14. Daybreak Town: The Heart of χ (編曲:和田薫)
15. The Other Promise (編曲:亀岡夏海)
16. Let Darkness Assemble: Final Boss Battle Medley (編曲:宮野幸子)
17. Passion - KINGDOM Orchestra Instrumental Version (編曲:和田薫)
<アンコール>
???
コンサートを終えて
以下は、コンサート終了後の囲み取材の模様。
――初日の公演を終えての感想
豊口めぐみさん
「とても緊張しました。リハーサルを別日にやって映像を観て、聞かせていただいたときから、観るたび聞くたびに涙が出そうだったので、今日は出番までに泣かないように心掛けました。オーケストラの一員になれていたらうれしいなと思います」
内田莉紗さん
「私もすごく緊張して、今日はすごく早く起きてしまったんですけど(笑)、オーケストラの皆さまと、コーラスの皆さまと、映像によって、みんなの大好きな『KH』の世界が広がって、心震える幸せな時間でした。参加させていただけて感謝の気持ちでいっぱいです」
和田薫氏
「皆さん楽しんでいただけたでしょうか。なんせ今日が世界初演というわけで、私も重責が……肩が潰れる思いの重責でしたが、なんとか終えられて充実した気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」
下村陽子氏
「あまり緊張しないタイプなんですけど、緊張しました。おしゃべりは好きなのでトークは抵抗がないんですけど、なんちゃってMCとなると重責がね?(笑) これを抜かしてはいけない、お名前を間違えちゃいけないと緊張して、最後にはピアノも……。舞台に出るのは本業ではない中、MCをさせてただき、へっぽこなピアノを弾かせていただき、いろいろな経験をさせていただき、緊張もしたんですけど、ここで失敗したらファンの皆さんをがっかりさせてしまうから、というその思いで一生懸命(自分を)奮い立たせてがんばりました。ファンの方々の涙ぐんでいるところとか、笑顔を見ると、ここにたどりつけて本当によかったなと思います。本当に幸せな、最高の1日でした。ありがとうございました」
――今回のオーケストラアレンジの方向性について
下村 方向性というのは意識しなかったですよね?
和田 今回は4人のアレンジャーで、下村さんのTwitterでは“最高の布陣”と書いていただきましたけど、4人それぞれの個性が表れたんじゃないですかね。
下村 いろいろと話をしながら、このアレンジは女性的だよね、これは男性的、これは男装の麗人だよねと分析しつつ曲があがってくるのも楽しみで。こういう方向性にしようというのを考えていたわけじゃないんですけど、いざ聴いたら皆さんにお任せしてよかったなと。皆さんが『KH』の世界観を大切にしてくださってアレンジしているというのが、いちばんの方向性じゃないかなと思います。
――選曲は下村さんが?
下村 こういう感じでやりたい、というのは、去年の夏の吹奏楽コンサートと同時にたたき台を作って、それをブラッシュアップして決めたという感じですね。
――どうしてもこれだけはオーケストラでやりたかったという曲は?
下村 どれもかな? かつてオーケストラになっている曲というのは一度聴いているので、それと違う曲をオーケストラでやりたいという気持ちもあるんですけど。ただ、それは私や和田さんは知っているんですけど、私たちしか知らないんですよね。それをファンの皆さんといっしょに聴くというのは、それはそれで(違うので)、すでにオーケストラになっている曲も選曲からは漏らしたくないよねと。やっぱりどれも「これだけはやりたい」という曲になりますね。
――映像と曲のタイミングを合わせることについて
和田 確かに非常に難しいです。ハリウッドなどでは、『スター・ウォーズ』や『バック・トゥー・ザ・フューチャー』など、既成の映画を生演奏でステージ再現するというのをやっていますが、あの方式ですよね。今回はまったく新しいもので、初めて皆さんが聴くもので先入観がないので、ある意味練習のしようがない(笑)。オーケストラのリハーサルといただいた映像で勉強する、という形でした。
――前回と今回のコンサートの会場の違いについて
下村 いちばん大きいのは、今回は5000人規模なので、生音が届かないんですよね。PA(音響拡声装置)を通しているので、生演奏ではあるんですけど、生粋の生音ではないという違いはあります。生の響きに徹するかエンターテインメント性の高いものでやるかというところで、今回はPAを通して、大きなスクリーンの映像を流して、エンターテインメント性の高いコンサートにしようという違いはありました。海外公演もほぼ大きなホールでやるので、大半が今回の形になると思います。
――朗読劇で心掛けたこと
内田 心に響くセリフがいっぱいあって、読みながら泣いちゃいそうで、素敵なセリフをいっぱい言わせていただけてうれしかったですね。今回難しかったと感じたのが、オーケストラの音に合わせる必要があって、合わせようとしすぎちゃうと気持ちがこもらなかったりしたことです。最初は苦労したんですが、今日本番をやらせていただいて、「合わせるんじゃなくて、オーケストラの音に助けていただいているんだ」と。自然と気持ちが乗るというか……オーケストラの力をすごく感じました。
豊口 1月に発売された作品でアクアを演じさせていただいていたので、すごく久しぶりではなかったんですけど、その作品が、その前のタイトルからだいぶ経っていたので、収録の際にアクアが10年闇の世界にいるという感覚を取り戻すのが難しかったんですね。今回もその延長上なんですが、どうしても元気にやりすぎてしまうというか、アクアのテンションにもっていくのが難しかったです。それと莉紗ちゃんと逆で、私はシーンとした中でしゃべらなければならなかったので、それはそれで緊張してしまって(笑)。『KH』は本当に細かく演技指導をしてくださるので、緊張と同時に、たくさん演出していただけることが楽しく、思い入れの強い作品でもあるので、緊張よりも終わったときの楽しい気持ちのほうが強かったですね。
――今回のコンサートでとくにこだわったところ
和田 全部じゃないですか!?(笑) ここまでできるというのはやはり『KH』だからこそですし、オーケストラでこれだけの規模で、ワールトツアーもして、ひとうひとつの楽曲がこの日のためのアレンジで、映像も全部作ってと、かつてない規模の試みですよね。
下村 そしてMCがほぼ皆無っていうのもね(笑)。MCが作曲家がやるっていうのも!
和田 新しいですよね(笑)。そういう意味では、パイオニア的なイベントになるのではないかと思います。
下村 今回、最初から意識してきたことは、ドラマ性を持たせたいということです。楽曲それぞれにもドラマがあるんですが、全体を通してゲームを1本クリアーした感覚になるような、アップダウンがあって、最後はわーっと終わるような、そういう大きな物語のようなものをやりたいというのがあって。なぜMCが少ないかの本当のところはわからないんですが、確かにMCが入ると素に戻されちゃうんですよね。そういう意味では、(MCが少ないことで)ずっと音楽のストーリーの中にいられるという後押しになったんじゃないかなと思います。皆さんがその物語性をコンサートでも感じていただけたらうれしいです。
――最初と最後の曲について
下村 そこは哲さん(野村哲也氏)ですね。吹奏楽コンサートを『光』で終えて、今回のコンサートを『光』で初めて『Passion』で終えるというのは哲さんの提案で、私も素敵だなと思ったので「ぜひそうしましょう」と。アンコールはもっと簡単な曲で(自分のピアノを)賑やかしにしたかったんですけど、「これか」と……。『KH』のオープニングで始まって、アンコールのあの曲で終わるのは、ドラマ性を意識したものになっていると思います。
Photo by Shinjiro Yamada