『マインクラフト』広がる教育用途の可能性を、ふたりのキーパーソンに聞く

『マインクラフト』教育用途の可能性を日本マイクロソフトの原田英典氏と宮城教育大学の安藤明伸准教授に聞く。

●『マインクラフト』は大きな可能性を秘めたコンテンツ

 2011年に正式版がリリースされて以降、世界累販売本数が1億本を突破した、Mojang開発によるモンスターソフト『マインクラフト』。その根強い人気はとどまるところがなく、年末年始の家庭用ゲーム機向けソフト販売ランキングを見ても『マインクラフト』が存在感を発揮している。たとえば、2016年12月19日~12月25日の販売ランキングでは、プレイステーション Vita用『Minecraft: PlayStation Vita Edition』が40157本を販売して7位に、Wii U用『Minecraft: Wii U Edition』が33263本を販売して10位に、それぞれランクインしている。両ソフトの発売日が、プレイステーション Vita版が2015年3月19日、Wii U版が2016年6月23日ということを考え合わせると、いかに同作が長いあいだユーザーに支持されているかがわかるだろう。ちなみに、『Minecraft: PlayStation Vita Edition』は2017年1月22日までの段階で累計販売本数が93万915本と、ミリオン突破が目前だ。

 そんな『マインクラフト』にあって、近年注目されているのが教育用途。『マインクラフト』を導入することで、プログラミングの学習はもちろんのこと、“問題解決能力を身につける”や“協調性を養う”ことなどにも有効だという。『マインクラフト』を独自に教育に導入する例も増えてきており、スウェーデンの学校では必修科目に『マインクラフト』を採用する動きもある。世界40ヵ国7000の学校のクラスで使用されたとの報告もあるほどだ。

 国内でも教育用途で『マインクラフト』を活用するケースは増えている。ソニー・インタラクティブエンタテインメントが小学生を対象としたワークショップを積極的に行っているほか、大学などの教育機関もイベントを熱心に行っているのだ。


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 そんな状況を受ける形で、マイクロソフトでは、教育目的に特化した『Minecraft: Education Edition』(以下、『マインクラフト:EE』)を2016年11月2日に正式にリリース。同コンテンツを“教材”として、小学校や中学校などに展開しようとしている。広がる『マインクラフト』の教育用途での可能性とは? ここでは、日本マイクロソフトの原田英典氏と、『マインクラフト』の教育への導入を積極的に進めている宮城教育大学 安藤明伸准教授にお話をうかがうことにした。

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日本マイクロソフト
パブリックセクター 統括本部
文教本部 ティーチャーエンゲージメントマネージャー
原田英典氏(左)

宮城教育大学
技術教育講座 准教授
安藤明伸氏(右)


■『マインクラフト』は教育に画期的な変化をもたらす

――まずは、『マインクラフト:EE』をリリースするに至った経緯を教えてください。

原田 『マインクラフト』が教育で使われていることはわかっていました。『マインクラフト』の教育用途に注目した有志の方が、MOD(PCゲーム用の改造・追加データ)を作っていたくらいですから。そこで、開発会社のMojangが2014年にマイクロソフトの関連会社になったときに、マイクロソフトでは“教育用途での活用を積極的に進めていく”方針を立てたのです。ファーストパーティーで正式に教育用途をサポートしようということですね。

――『マイクロソフト: EE』の開発にあたっては、どのような方針があったのですか?

原田 まずは、『マインクラフト』自身にはあまり手を入れないということです。たとえば、教材だと、“1+□=3で、□に入る数字は何ですか?”となるわけですが、同じことを『マインクラフト』でやっても意味がない。“ブロック3個を使って何かを表現しなさい”という教材風にしたら、それは『マインクラフト』ではないですよね。子どもたちが『マインクラフト』を楽しむのは、決められたものを与えられたからではなくて、あくまで子どもたち主体だからです。生徒中心で問題や課題の解決が行えるというところが、そもそもの『マインクラフト』の大前提です。そこは、『マインクラフト』のDNAとも言える部分で、そこには絶対に手を入れない。ただ、そのままだと好き勝手に遊んでしまって学校での教育に合わないという側面もあるので、“授業に使えるための支援機能”というのが、主眼のひとつ。子ども中心でありつつも、先生が見守ることでできることにするというのが、『マインクラフト』の教育版のコンセプトですね。

――『マインクラフト』の本質を維持しつつ、教育用途で使えるようにするためのさじ加減がたいへんそうですね。

原田 そうですね。ある意味で、教育に関しては僕らもわからない部分が多いんですよね。いまって、世界の教育が変わっているじゃないですか。昔みたいに知識優先のやりかたではなくて、ゼロクリティカルシンキング(既成概念をすべて取り払い、ゼロにして物事を考える思考法)を重視して、教育をいちから作りましょうという国もあるくらいで……。教育自体が変わってきていて、将来どのような教育が求められるかは、正直僕にもわかりません。わからないから、世界の教育の変化といっしょに、『マインクラフト』も変えていくというのを、今後していかないといけないと思っています。とはいえ、確実に『マインクラフト』に必要な学校教育向けの機能として、“先生が見守る”という機能から手を付けたというのが現状ですね。

――『マインクラフト:EE』でのおもな追加機能は“教育支援”ということですね?

原田 はい。あとは、細かいところで言うと、カメラ機能です。教育で使うとなると、ただ作ってそれで終わりではなくて、評価しないといけない。評価のためには成果を伝えることが必要なので、『マインクラフト』にカメラを実装して、建物を撮影できるようにしています。セルフィ(自撮り)で、簡単に画像をエクスポートして、プレゼンできるようにしているんです。

――安藤先生とは、教育用途の『マインクラフト』を展開する過程で出会ったみたいな感じですか?

原田 “うるるん滞在記”風に言うとそういう感じかもしれません(笑)。いまどきの学生さんは“うるるん滞在記”は知らないかな……。教育が大きく変わっていきつつあるという現状に対して、安藤先生は極めて先鋭的で、15年も前から授業で携帯電話を活用するなど、いまの時代を先取りした授業にも取り組んでいらっしゃるんですね。だったら、『マインクラフト』の魅力も理解していただけるのかなと。

安藤 僕がおもに取り組んでいるのが、テクノロジーをどう教えるか、教育における問題をどう解決するかという学問領域です。授業の支援や分析をするツール、たとえばスマホのセンサで、のこぎりやかんな掛けの動作を練習する教材を開発したり、生徒の興味をどう喚起するか……など、そのためには使える手段は何でも使う! をモットーにしています。

――子どもたちの学習意欲を高めるために必要な方法は何かということで、幅広い可能性を考えているということですね?


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安藤 そうですね。以前も仮想現実空間を教育環境として利用することを研究していた経緯から、『マインクラフト』自体は、「これは使えるかも」とは、リリースされた当初から思っていました。でも,あまりにも自由すぎるのは、教育になじまないこともあるんです。生徒たちから問題を解決するアイデアが生まれてくるには、先生が条件を適切に制約することが重要になってきます。ですから、教育支援機能が付くとなると、「これは使いやすくなるな」と期待値が高まりましたね。

原田 『マインクラフト』のひとつの側面として、計算論的な思考といいますが、プログラミングっぽい思考を養うというのがコンセプトのひとつとしてあります。一方で、日本の教育が変革していて、プログラミング的な思考に関する教育に力を入れるという大きな流れがあるなかで、安藤先生は中心的な人物ですので、『マインクラフト:EE』にも興味をお持ちいただけるのでは……と判断して、無理やりお付き合いいただいている感じです。

――『マインクラフト:EE』が発表されて、「これは使える!」と?

安藤 たとえば、すべてが自由ですと、奇抜なアイディアであるほどよいといったふうになってしまうことがあります。そうなると“評価”という点でも、難しさが出てきます。それが、『マインクラフト:EE』がリリースされるとなったときに、やっとイメージしたことができる環境が整ったのかなと思っています。

――安藤先生からのフィードバックも適宜受けている感じですか?

原田 本格的にはこれからですが、札幌の学校と連携して、すでに小学生と中学生がいっしょにチームでコラボテーションしながら取り組むワークショップを実施しています。結果については現在分析しているところですが、たとえば、ワークショップの印象には、ワクワク感が強く影響力を与えていました。また、ワークショップには各校の先生にもご参加いただいていて、児童生徒の『マインクラフト』を使った表現やスピードに驚いていただいています。こういったワークショップを通して貴重なフィードバックを頂戴しているところです。

――よく考えてみると、2016年11月に正式版がリリースされたばかりで、教育現場への導入が進んでいるというのも、けっこうなスピード感ですね。

原田 そうですね。『マインクラフト』に興味を抱いてくださっているのは、いい意味で“ユニークな人”が多いので(笑)。“教育現場をよくしていこう”という気概に燃えているので、スピードは早いです。

安藤 どんな教育的な要素があるのか……ということを、私たちのほうで検証しているところです。『マインクラフト』は創ることで学んでいく“場”だと思っているので、その“場”で何をするか、どのようにするか、何を避けたほうがよいのか……。僕がとくに関心を持っているのが、『マインクラフト』という単純化された“場”を使うと、最初に難しい知識を持っていなくても、ブロックを組み合わせながら考えていくことで、“概念”を理解できる点です。そして、あとで理屈(理論)を知って、先に経験したことの意味を深く理解していきます。これって、一般的な学習パターンとは逆のアプローチですよね。

原田 そういう意味では、デジタルカメラが出てきたときに似ているかもしれないですね。フィルムの時代だったら、出来上がりは現像しないと確認できなかったわけですが、デジカメだった撮ったものをすぐに確認できる。それによって“写真を撮る”という行為が爆発的に広がりましたよね。電子回路を学ぶという例にしても、何度でもやり直せるし、試してみることもできる。従来の教育だと、前提条件をたくさん勉強して準備が万端整ったら試しましょうというスタンスでした。それが『マインクラフト』だったら、とにかく最初に試してみて、「なんで違うんだろう?」と試行錯誤しながら学べる。それは、いままでとは違うやりかたです。デジカメによって、撮るという活動を主体に撮りかたを学ぶように変わったことといっしょですね。

――ということでいうと、『マインクラフト』を代表例にして、いま教育現場では画期的なことが起こっていると言えるのかもしれないですね。

原田 はい。画期的なことが起きています。

安藤 僕は、日本は学習の場についてはとても保守的だと思っています。学習の場は、教室もよいですが、基本的にはどこだってよいじゃないですか。もう21世紀なんです。20世紀の発想でアクティブ・ラーニングの視点を入れたところで、すぐに限界がくるんじゃないでしょうか。たとえば、対面でのコミュニケーションが苦手な生徒にとっては、Face to Faceだけの対話的な学びだったら、アクティブ・ラーニングの視点が、学びの前に苦痛でしかないですよ。もちろん、たとえば、人前で見事なプレゼンができることは大切な資質です。でも、プレゼンを目的とした授業でない限りは、プレゼンができないことで学びに参加しにくいというのは、避ける必要があるのではないでしょうか。仮想現実空間を通してコミュニケーションしながら、コラボレーションの結果として、バーチャルであったとしても意味のあるものづくりをする。そういう点でも『マインクラフト』はすごくバランスがよいツールなんですね。そこは、研究の価値があると思っています。

――いま、政府は第4次産業革命に向けての人材育成の一環として、プログラミング教育に力を入れようとしていますが、その観点からも『マインクラフト:EE』が日本で広がる可能性があると、日本マイクロソフトでは分析しているのですね?


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原田 そうですね。技能と発想みたいなところがありまして、両方を養うという意味において、とくに小さなお子さん向けには、『マインクラフト』はいい機能を持っていると思います。ご存じの通り、「なぜ日本でFacebookやGoogle、iPhoneが生まれなかったのか?」という議論があって、いまは存在しないけど必要とされているサービスの発明や提供ができる人材が求められています。その大前提にあるのがアクティブ・ラーニングなわけですが、アクティブ・ラーニングという点で考えたときの『マインクラフト』のよさは、“正解がない”ということです。そもそも人間は正解を求めたがっていて、誰かが「これが正解だ」と言ったら、それに対して批判的なことは言いづらい。それだとどうしてもアクティブ・ラーニングが進まないんです。でも『マインクラフト』には正解がないんですね。メンバーで街を作ったときに、日本風の家屋や西洋風の家屋を作った人がいても、「なぜ、西洋風にしたのですか?」と作り手の主体的な視点で議論できる。みんなで話しあって、新しい価値を生み出していくことになる。いい題材になると思うんです。まあ、第4次産業革命と言いますが、けっきょくはほかの人が思いついていないものを思いついた人が発明家になるわけですし、そういった人的資産を活かした国が豊かになる。そういう既存の常識に捕らわれない発想ができる社会を育んでいくという意味で、正解のないところから自分たちなりの答えをみつけだしていく、そして、それに対して外部からのフィードバックを受けられる『マインクラフト』は、題材としてすごくいいと思います。

――第4次産業革命でのニーズというのは日本独自の話になりますが、世界的に見て『マインクラフト:EE』に対する需要は高いのでしょうか?

原田 第4次産業革命という言いかたをすると日本独自っぽく聞こえるかもしれませんが、“テクノロジーと人との付き合いかた”という意味では世界共通です。そういった意味では、世界的にも『マインクラフト』の教育面での用途は注目されています。ただし、実際に『マインクラフト』がどこまで貢献できるかはまだわかりません。『マインクラフト』を習熟したからといって、発明家になれるわけではないので……。『マインクラフト』はあくまでもツールです。子どもたちが自由な発想でモノ作りをできるツールなんです。

――『マインクラフト』が、とくに日本において、教育用途が高まりつつあるということは言えますか?

原田 日本がユニークなところは、世界で有数の一斉教育システムを持っているところですね。世界的に見て学力も高い。とはいえ、世界が求める学力に別の観点も出てきていて、“現実社会の問題解決との関連性をを求める”というふうに変わってきているアジェンダ(検討課題)もあるので、アクティブ・ラーニングのくだりで触れたように、学習者主体の教育を行うフィールドとして、日本の教育でも『マインクラフト』が役に立てる部分があると思っています。

――ちょっと強引に話を持っていってしまいますが、そうすると日本がいちばん『マインクラフト:EE』を有効に活用し得る可能性があるかもしれないということですね?

原田 僕はそう信じています。日本の教育は無茶苦茶しっかりしているので、そのなかで『マインクラフト』がどれだけの貢献ができるのか、楽しみにしています。逆に日本で開発された『マインクラフト』を使った教育が世界の教育に影響を与えられると考えています。

――いずれにせよ、検証は着実に進んでいるのですね?

安藤 はい。先ほどお話ししたように子どもたち対象のワークショップが札幌で始まりました。もちろん札幌だけでなく、仙台市でも予定していますよ。僕は札幌出身なのですが、たまたま帰省したときに、中学生のときの恩師の先生と『マインクラフト』の話をして、「これって教育で使えますよね」という点で意気投合して(笑)。仙台と札幌とでコラボレーションしましょう! となりました。

――皆さんけっこう柔軟な姿勢で『マインクラフト:EE』を受け入れてくれているのですね。

安藤 これはたまたまだと思います。教育界では新しいことに抵抗のある方もいらっしゃいますので。そういう意味からも、『マインクラフト:EE』のもたらす効果を、早く検証したいですね。

――現状、『マインクラフト:EE』の導入状況はどのような感じなのですか?

原田 安藤先生の実証が先行的に進んでいますが、実証することに対してコミットしてくれている学校は40校を超えています。先日は、立命館小学校様が2017年1月以降に『マインクラフト』を使った授業を始めるむねのプレスリリースを出されていましたね。ほかの学校でも、今期中に使ってみようということで、準備を進めています。

――親御さんの理解も進む?

原田 僕は、情報教育に関連してPTAなどでも講演をする機会があるのですが、そこで『マインクラフト』の活用を紹介すると、保護者から「講演を聞く前は“『マインクラフト』ばかり遊んでいて!”と怒っていたのですが、お話をうかがっていて、そういうことばかりではないとわかりました」とおっしゃっていただけることがあります。『マインクラフト』だけを遊んでいるのを見ると、そこにどんな効果があるのかなんて、わからないじゃないですか。子どもが夢中になっているだけで……。それをちゃんと伝えてあげることで、親の世代の理解も進むと思います。

――最後に、今後の『マインクラフト:EE』の見据えているものを教えてください。

原田 日本の教育が変化していくなかで、アクティブ・ラーニングやプログラミング的な思考に関する教育というアジェンダがあります。このアジェンダがあるからこそ、『マインクラフト』という、もともとゲームだったものが、教育現場で活用していただける機会をいただきました。『マインクラフト:EE』が、こういった新しい教育の要素を組み上げるいい材料に使っていただけるのが理想です。

安藤 学校の授業で扱われるスポーツであれば、得意な子は体育のときに、絵が上手な子は図工のときに……と、それぞれ脚光を集める機会を与えられます。でも、たとえばプログラムが得意な子はその能力を発揮する余地があまりなくて、むしろ発揮の仕方を間違えてドン引きされることも多かった。「なんだか、よくわからないことを言っているなあ」となってしまっていた。ところがプログラミングが小学校でも必修になるというのは、じつはそうした子たちの居場所ができるということなんです。つまり、『マインクラフト』が授業に導入されることで、プログラミング的な考えかたが上手な子がヒーローになり得る可能性が生まれたんです。『マインクラフト』の教育用途では、いろいろな可能性があるかと思いますが、僕は、これまで“目立たなかった”子たちにとっても、自分たちの力を発揮できる“居場所”が見つかるという意義も大きいのかなと思っています。

――なるほど。それは素敵な……。

安藤 そもそも僕自身がそうでしたから(笑)。僕自身は、中学生のころからプログラムをやっていて。と言うのも、親にファミコンを買ってもらえなかったので、ベーマガ(マイコンBASICマガジン)に載っていたプログラムコードを打っていたわけですよ。もちろんそれは、自分でゲームが遊びたくてやっていたのですが。それが当時の中学の技術の先生から、「お前プログラミングができるなら、授業で使いたいから、エンジンを設計するプログラムを作ってくれないか?」と言われたんです。エンジン設計と言っても、中学生が分かる程度ですが、エンジンの圧縮比からシリンダの容積やピストンの内径など、エンジンのパラメータとなる仕様を求めるというもので、数式自体は授業で習っていたのです。ですが、組み合わせが膨大にあるので、手でやるにはかなり時間が掛かるものでした。数式が分かっていれば、プログラミングするのはお安い御用でした。いままでは自分がゲームをするためにプログラミングをしていましたが、こうして初めてほかの人のためにツールを作ったところ、その先生が僕の作ったプログラムを公開授業で使ってくれたんですね。「お前のプログラムのおかげで授業ができたよ」と先生にも褒められましたし、自分の作ったプログラムが授業の役に立っているのを見るのはとてもうれしかったですね。初めてそのときに、「モノを作るのはいいなあ」と実感したんです。そういう場がたまたまあったので、僕は「プログラミングで、世の中を変えられるんじゃないか」という期待があるのですが、『マインクラフト』は、同種の“場”を、生徒たちに与え得るのではないかという気がしています。ちなみに、その先生が先ほどお話しした札幌の先生でして、いま自分がこうした立場になって恩師とコラボレーションできるという意味でも、『マインクラフト』には感謝したいです(笑)

――それは、すばらしい話ですね。『マインクラフト』は“気付き”を与えてくれるツールになり得るということですね。

原田 サティア・ナデラ(マイクロソフトCEO)が2016年5月に来日して公立中学校に視察した際も同様のことを話していましたね。活躍できる場があることは、重要なことだと思います。


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■学生さんが語る『マインクラフト』の魅力とは?

 さて、宮城教育大学 安藤研究室では、『マインクラフト』を研究テーマに取り組んでいるふたりの学生さんが在籍している。遠藤祥平さんと熊谷ほのかさんだ。おふたりの『マインクラフト』に対するスタンスは対照的。遠藤さんは子どものころからの『マインクラフト』好きだが、熊谷さんは研究室に入るまで『マインクラフト』は一切プレイしたことがなかったという。熊谷さんは、安藤研究室に入ったあとで、安藤先生いわく“被験者”として、『マインクラフト』に触れ、そのおもしろさに目覚めていったのだという。取材時は、おふたりとも同席して、インタビューをサポートしてくれていたのだが、せっかくなので、『マインクラフト』に関するおふたりのコメントをご紹介しよう。


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▲宮城教育大学 安藤研究室 遠藤祥平さん(右)と熊谷ほのかさん(左)。

――コンストラクション系コンテンツは『マインクラフト』以前にもリリースされていたと思うのですが、『マインクラフト』が世界中のユーザーに受け入れられた魅力の本質って何でしょうね?

遠藤 自由度の高さでしょうか。それに加えて、レッドストーン回路など、拡張するための装置というか、仕組みもいろいろと用意されていて、凝れば凝るほどおもしろいものが作れる。それを誰かから教えてもらうのではなく、自分でネットなどを調べて、ちゃんと理解しながら作るのが楽しいです。

熊谷 私も、自由度の高さはあるなと思っています。子どもだと、頭の中で「これを作りたいな」と想像していても、なかなかアウトプットができない。形にできないんですね。でも、『マインクラフト』だとクリックひとつでブロックを積み上げたり、組み立てられる。自分の頭の中にあるものをそのまま形にして、思うようにでき、成功体験が得られてつぎへのモチベーションにつながるのが魅力のひとつだと思っています。あとは、自分のいまいる場所を超えて、世界中の人たちとつながっていける点。ユーザーが多いだけ発想の広がりがあって、つながることによって幅も広がるし、自分たちが想像できなかったことを、世界中の人たちと共有することで、「こうすればいいんだ」という新たな発想につながる。それが思考の転換につながるんです。