『Monument Valley』が最多の3部門を受賞

 2015年3月2日~6日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のカンファレンス、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2015が開催。3日目の夜にあたる3月4日の夜には、恒例となる第15回GDC(ゲーム・デベロッパーズ・チョイス)アワードと、インディペンデントゲームを対象とした第17回インディペンデント・ゲーム・アワードが行われた。

坂口博信氏がGDCアワードの生涯功労賞受賞で千両役者ぶりを発揮!? 最優秀ゲームは『シャドウ・オブ・モルドール』に【GDC 2015】_04
▲司会を担当するのは、おなじみダブルファインスタジオの社長、ティム・シェーファー氏。芸人をやったほうがいいのでは……と思われるくらいしゃべりの立つお方。

 開発者自身が選ぶ賞ということもあり、認知度が極めて高いGDCアワード(⇒ノミネート作品はこちら)。2014年を代表する“Game of the Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)”に見事輝いたのは、モノリス・プロダクション/ワーナー エンターテインメントによるプレイステーション4/Xbox One用ソフト『シャドウ・オブ・モルドール』。名作ファンタジー『指輪物語』の世界観を元に、オークの勢力図がダイナミックに変更する“ネメシスシステム”などの斬新なゲームシステムを盛り込んだことが、高い評価を獲得したようだ。授賞式ではモノリス・プロダクションの大勢のスタッフが登壇。代表者が「まずはInternational Choice Awards Network (ICAN)のメンバーの皆さんに感謝する。プロダクションに関わった人たち、いまここには40人ほどいるが、ゲームを完成するために2年間縛ってきてやっと解放できました。理想の親会社であるワーナーにも感謝しています。ファンの皆さん、ライセンス元、すべての人たちに感謝の意を表したいです」とあいさつした。なかには壇上でハイタッチ交わすスタッフもおり、喜びもひとしおといったところだった。“Game of the Year”にノミネートされていたWii U用ソフト『ベヨネッタ2』は、惜しくも選から漏れることとなった。

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▲『シャドウ・オブ・モルドール』で“Game of the Year”に輝いた、開発元のモノリス・プロダクションの皆さん。写真左の右端の方が、本作のデザイン・ディレクター、マイケル・デ・プラター氏。
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▲『Monument Valley』を開発したUstwoの皆さん。スマートフォン向けアプリがGDCアワードで3冠を制するとは、これも時代の流れか……。

 もっとも多くの賞を獲得したのは、“Best Handheld/Mobile Game”、“Innovation Award”、“Best Visual Art”の3部門で受賞した、UstwoのiOS/Android用ソフト『Monument Valley』。“2014年のベストアプリ”との呼声も高い同作が、GDCアワードも席巻した形だ。登壇した代表者は「まったく期待していなかったので、びっくりしています。この1年間は本当に気が狂いそうになるくらい仕事をしましたが、その経験を通して謙虚な気持ちになれました。3つもアワードをいただいて、光栄に思います」と感慨深げだった。

 会場が大いに盛り上がったのは、坂口博信氏が“生涯功労賞”の受賞のために登壇したとき。「英語で“ライフタイムアチーブメント”というと、何やら引退しないといけないような気にさせますが……」と前置きして会場を笑わせた坂口氏は、「北米で昨年10月に『テラバトル』というアプリを配信しました。まだ生きています!」と、自身の健在ぶりと最新作をしっかりとアピール。「いまここで(『テラバトル』を)ダウンロードしてもいいんですよ? ダウンロードなう!」とコメントし、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。

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 そのうえで坂口氏は「30年もやってきたのですが、スクエア時代に仲間に会えたり、いろんな人に支えられてきました。その中でも、集英社に鳥嶋さんという方がいらっしゃるのですが、僕が『ファイナルファンタジーIII』を作ったときに、初めてお会いしたにも関わらず、1時間も会議室に閉じ込められて、いかに『ファイナルファンタジーIII』がおもしろくないかを説教されたんですね。そんな鳥嶋さんや、その後のミストウォーカー時代の仲間に支えられて、今日この場で賞をいただくことができました。まだ引退はしませんので、いっしょにいいゲームを作っていきましょう」と語り、拍手を浴びた。

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※GDCアワード・生涯功労賞を受賞した、坂口博信氏のコメントをお届け

 以下、第15回GDCアワードの結果をお伝えする。坂口氏以外は、日本関連の受賞がなかったのが、いささか残念と言える。

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▲珍しい坂口氏のサングラス姿。サングラスをつけたのにはワケがありまして……。
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▲GDCアワードでは、英国のテレビ番組“Mega64”が、毎回楽しい映像を提供してくれるのだが、今回は“生涯功労賞”を受賞した坂口氏が登場! その内容はと言いますと、あまりシリーズモノを作りたくなくなっていた坂口氏に対して、会社が続編を求め続けるので、坂口氏がどんどんイライラしていくという内容。最後に作らなくてもいいことになり(ここでクリフ・Bが友情出演!)、坂口さんが開放されて、なぜかラッパーになるという内容。GDCアワードの最後にサングラスをつけたのは、“Mega64”に敬意を親愛の情を示して。それにしても、坂口さん千両役者です!

【第15回GDCアワード】

■Game of the Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー/大賞)
『シャドウ・オブ・モルドール』(モノリス・プロダクション/ワーナー エンターテインメント)

■Innovation Award(革新賞)
『Monument Valley』(Ustwo)

■Best Debut(デビュー賞)
Stoic Studio (『The Banner Saga』)

■Best Design(ゲームデザイン賞)
Hearthstone: Heroes of Warcraft』 (ブリザード)

■Best Handheld/Mobile Game(ハンドヘルド/モバイルゲーム賞)
『Monument Valley』(Ustwo)

■Best Visual Art(美術賞)
『Monument Valley』(Ustwo)

■Best Narrative(物語賞)
Kentucky Route Zero: Episode 3』 (Cardboard Computer)

■Best Audio(音響賞)
ALIEN: ISOLATION -エイリアン アイソレーション-』(Creative Assembly/セガ)

■Best Technology(技術賞)
Destiny』 (Bungie/Activision)

■Audience Award(オーディエンス賞)
Elite: Dangerous』(Frontier Developments)

■Lifetime Achievement Award(生涯功労賞)
坂口博信氏

■Pioneer Award(パイオニア賞)
デビット・ブラベン氏

■Ambassador Award(アンバサダー賞)
ブレンダ・ロメロ氏

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坂口博信氏がGDCアワードの生涯功労賞受賞で千両役者ぶりを発揮!? 最優秀ゲームは『シャドウ・オブ・モルドール』に【GDC 2015】_06
▲“Ambassador Award”を受賞したブレンダ・ロメロ氏。「この業界に入って33~34年になるが、信じられない。ここにいられてとてもうれしいです」とのこと。家族といっしょに喜びを分かち合った。
▲“Pioneer Award”を受賞したデビット・ブラベン氏。「30年ゲームを作ってきたが、いまのゲーム業界はいままででもっともエキサインティングなときを迎えている」とのこと。自身もご結婚したり、『『Elite Dangerous』がヒットしたりと、いろいろなことがあったようだ。

『Outer Wilds』を始め注目作が各賞を受賞

 一方の第17回インディペンデント・ゲーム・アワードでは(⇒ノミネート作品はこちら)、大賞にあたる“Seumas McNally Grand Prize”に輝いたのは、Team Outer Wildsの『Outer Wilds』。登壇した代表者は「このような賞をもらうとはとても信じられません。チームに感謝しています。ファンの皆さんがゲームを通じてそれぞれのストーリーを共有してくれた結果です。このワールドを探索してくれてありがとう!」とコメントしている。そのほか、『Outer Wilds』は“Excellence in Design”も受賞している。

 賞自体は、昨年のようにルーカス・ポープ氏の『Paper, Please』が5冠を制するといったようなことにはならず、注目作が各賞を分け合うと結果に。それだけいずれ劣らぬクオリティーの高い作品が揃ったと言えるのかもしれない。結果は以下の通りだ。

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▲昨年賞を総ナメにしたルーカス・ポープ氏もゲストとして登壇。“ルーカス・ポープ賞”なるものを創設して、クリエイターに贈呈したのだが、そのクリエイターは欠席して、けっきょくポープ氏が登壇……というネタ。このへんの遊び心も、クリエイター主導のイベントならではかも。
▲大賞にあたる“Seumas McNally Grand Prize”を獲得した『Outer Wilds』を開発したTeam Outer Wildsの皆さん。

【第17回 インディペンデント・ゲーム・フェスティバル・アワード】

■Seumas McNally Grand Prize
『Outer Wilds』(Team Outer Wilds)

■Student Showcase
Close Your』 (Goodbye World Games - University of Southern California)

■Nuovo Award
Tetrageddon Games』 (Nathalie Lawhead)

■Excellence in Narrative
80 Days』 (inkle)

■Excellence in Visual Arts
Metamorphabet』 (Patrick Smith of Vectorpark)

■Excellence in Design
『Outer Wilds』 (Team Outer Wilds)

■Excellence in Audio
Ephemerid: A Musical Adventure』 (SuperChop Games)

■Audience Award
This War of Mine』 (11 bit studios)