つねに変化してきたことが成功の理由

 2012年1月10日~13日、世界最大規模の家電見本市2012 International CESが、アメリカ・ラスベガスにて開催。昨年に引き続き(⇒記事はこちら)、マイクロソフト グループ マネージャ コーポレート パブリックリレーションズ インタラクティブ エンターテインメント ビジネス、デビッド・デニス氏にインタビューをする機会を得た。以下、その模様をお届けしよう。

マイクロソフトのキーパーソンに聞く「Xbox 360にはまだまだ成長の余地がある」【CES 2012】_04

――まずは、2011年を振り返っての成果と課題を教えてください。
デニス 成果という意味でいうと、まずお伝えしたいのが実績です。先日行われたキーノート(⇒記事はこちらでも明らかにされましたが、全世界におけるXbox 360本体は6600万台まで普及し、Kinectも1800万台販売されました。Xbox LIVEの会員も4000万人を超えています。今年もその勢いが持続するものと思っていますが、とくに期待しているのがKinect。2011年のホリデーシーズンはKinectの売上がよかったのですが、2012年もその勢いはさらに加速するのではないでしょうか。

――Kinectに対しては対応タイトルもけっこう充実してきましたね。
デニス その通りです。本体発売時は17タイトルでスタートしたのですが、2011年末までには対応タイトルは70タイトル以上にまで増えています。サードパーティーの皆様の手厚いサポートは、Xbox 360とKinectの勢いを示しているものと言えます。もちろん、現時点でも多くのパートナーがKinect対応ゲームを開発しています。1800万台という販売台数のスケールメリットを活かしたコンテンツを作ってもらっていますよ。

――たしかに世界的に見ると、実績という意味ではすばらしい1年でした。
デニス 一方で、課題はというと、Xbox LIVEのエンターテインメントにはたくさんのパートナー企業に参加してもらっているのですが、当初昨年中に予定していたいくつかの企業との提携が、今年初めにずれ込んでしまったことでしょうか。コムキャストなどはその1例ですね。Xbox LIVEのエンターテインメントの分野に関しては、今後も継続的にパートナーを追加し、新しいコンテンツを増やしていく予定でいます。

――北米におけるXbox LIVEのエンターテインメントに関しては、現状でも十分すぎるサービスが提供できているように思うのですが、まだこれ以上があるのですか?
デニス 現状、世界で30ほどの企業と提携しているのですが、2012年末までにはこれを100くらいにしたいと思っています。交渉を進めている企業はたくさんあります。

――1年で3倍ですか!? それはどん欲だなあ(笑)。では、日本のパートナーとはいかがですか?
デニス 発表はしていませんが、着々と進めていますよ。ただ、コンテンツを増やせばいいというわけでもないことは認識しています。利用者がほしいコンテンツを探せなくなってしまうくらい数が増えるのでは、本末転倒ですからね。そういう意味では、映画やテレビのパートナーが重複しないようにしています。あとは検索機能の強化も重要な課題でした。検索エンジンのbingと音声認識を使った検索機能を導入したのですが、それは増えていくコンテンツに対する利便性の強化という意味合いが込められています。たとえば、“トランスフォーマー”と音声認識で検索すれば、映画やゲームなど、『トランスフォーマー』関連のコンテンツが一覧で表示されるようになっています。

マイクロソフトのキーパーソンに聞く「Xbox 360にはまだまだ成長の余地がある」【CES 2012】_03

――音声検索でなおかつコンテンツ区切りというのは、いかにもXbox LIVEならではですね。なるほど。ただ、コンテンツを増やすだけではなくて、ユーザーの利便性を高めることに注力していることがキモなわけですね。
デニス そうです。さらに、『トランスフォーマー』の映画を見ようとなったら、Huluで見るか、Zuneで見るか、あるいはNetflixで見るか、自分が契約している企業を表示してくれます。

――なるほどー。では、デニスさんは昨年ここまでXbox 360が受け入れられた理由はどこにあると思っていますか?
デニス いろいろな理由があると思っています。言うまでもなく第一はゲームの充実ぶり。『ギアーズ オブ ウォー 3』や『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』、『Forza Motorsport 4』などのコアゲームから、『Dance Central 2』や『Kinectスポーツ: シーズン2』のようなカジュアルゲームまで、全方位でリリースしてきました。それにさまざまなエンターテインメントが加わって、家族全員が楽しめるゲーム機に成長したと思っています。子どもがNetflixでアニメを見たり、妻が映画を見たりするわけです。以前、Xboxと言えば夫やティーンエイジャーがゲームを遊ぶハードというイメージだったのですが、いまでは家族のみんなで楽しめるゲーム機になっています。

マイクロソフトのキーパーソンに聞く「Xbox 360にはまだまだ成長の余地がある」【CES 2012】_01
▲2011年に発売されKinectの魅力を伝えるタイトルとして好評を博した『Dance Central 2』。

――なるほど。昨年は『Kinect ディズニーランド・アドベンチャーズ』などもリリースされて、ファミリー層へ訴求する姿勢が明確でしたが、それは一定の成果を上げた感じでしょうか?
デニス はい。成果は収めたと思っています。『Kinect ディズニーランド・アドベンチャーズ』や『Kinectスポーツ: シーズン2』のようなファミリー向けタイトルがとてもよく売れました。プレスの評価も高かったですし。いろいろな層で反応がよかったことには、とても喜んでいます。

――わかりました。では、そんな2011年を踏まえて、2012年はどのような方針を考えていますか?
デニス ある意味それは非常に明確で、これからも映画やテレビ、音楽、さらに未発表のサービスも含め、広範囲にエンターテインメントパートナーと提携していきたいと思っています。さらには、ファーストパーティー、サードパーティー両面から、期待作、コアゲームにフォーカスしたタイトルラインアップを展開していく予定でいます。あとは、Kinectのサービスの拡大ですね。つまりゲームだけではなくて、KinectをXbox 360の体験すべてに関わるようにしていきたいと思っています。

――とくに、“ここは変えたい”といったようなところはありますか?
デニス 昨年から継続している方針は変わらないですね。

――サッカーで、勝っているのであえて選手を変える必要はないみたいな感じでしょうか(笑)。
デニス これまでやってきて成功しているので、同じ路線を継続していくつもりでいます。ゲームやエンターテイメントは、この価格で提供してユーザーに価値を感じてもらい、それだけの反応をいただいています。現在アメリカでもっとも売れているハードはXbox 360なわけですから。ただし、さきほども言いましたが、サービスの内容はどんどん充実させていきますよ。Xbox LIVEのエンターテインメントは毎年つねにアップデートしてきたわけですが、これはつねに変化をしているということなんです。私たちはつねにグローバルでパートナーを導入してきた。この変化は継続的なものであり、さきほどのご質問にあった“Xbox 360が受け入れられた理由”の一端は、ここにもあるのかもしれないです。サービスを更新することで、新しいハードではなくても、つねに“新しい”と感じられるわけです。

マイクロソフトのキーパーソンに聞く「Xbox 360にはまだまだ成長の余地がある」【CES 2012】_02

――ちなみに、昨年導入された“Metro UI”に対するユーザーの皆さんの反応はいかがですか?
デニス とてもいいですよ。前のインターフェースを使っていた人は慣れるまでに少し時間がかかるかもしれませんが、おおむね、ユーザーの皆さんの反応はいいです。Windows PhoneやWindows8とインターフェースが共通で一貫性があること、見た目がいままでよりもアクティブで活き活きとしていること、画面が変化に富んで停滞感がないこと、などが好感触のようです。

――いまマイクロソフトさんでは、“Metro UI”を軸に、PCとテレビ、そしてモバイル端末のスリースクリーンを統合する戦略を推し進めていますが、今後、Xbox 360の果たす役割はさらに大きくなりそうですね。
デニス はい。Xbox 360は、リビングルームで楽しむ経験ということで、テレビにフォーカスしています。そういった意味でも、Xbox LIVEで映画やテレビ番組、音楽などを提供することは重要な意味があったわけです。

――ゲームに関してはいかがですか? 昨年はファミリー層に訴求する戦略を取ったわけですが、今年フォーカスするところは?
デニス あえて言うなら、すべてのゲームファンといったところでしょうか。基本Xbox 360は一貫してベストなコアゲームを提供してきたわけですが、そこから離れることは絶対にありません。加えて、ファミリー向けタイトルも増やしてゲーム体験を充実させていく。『Kinect スター・ウォーズ』、『Halo 4』、『コール オブ デューティ』シリーズ、『Mass Effect 3』、など、今後もファースト&サードパーティーからたくさんのタイトルを予定しています。

――この2月から、PC向けKinectの発売が明らかにされましたが、Kinectは今後どのようになっていくのでしょうか?
デニス 2010年にKinectを発売したときに、健康産業や教育産業、製造業界などから大きな反応がありました。Windows版を導入するにあたり、こういったKinectに興味を抱いてくれているパートナーをサポートして、Kinectを使った新しいものを作ってもらおうと考えています。たとえば、トヨタさんや健康産業企業とも話をしており、今後Kinectを使ったいろいろなプロダクトが出てくると思います。現時点では、ユーザーがKinectをPCにつないですぐに何かができる……というものがあるわけではないのですが、いずれは、おもしろい動きが出てくると期待しています。

――では最後にせっかくの機会なのであえて伺いますが、一部で今年のE3でXbox 360の次世代機が発表されるというウワサがあるのですが、そちらはいかがでしょうか?
デニス (笑)。Xbox 360はまだまだ寿命があります。2011年末までの販売実績を見てもらえば、まだまだ成長していることがわかります。現状、ユーザーの皆さんが望むことでXbox 360で実現できないことはない。3D立体視も可能で、HD画質での映像も体験可能で、ゲームもすばらしい。現状は、新しいハードを出す理由がないです。ソフトウェアアップデートや新しいパートナーの追加で、Xbox 360はつねに新しい状態にあります。Xbox 360の発売から7年目を迎えるわけですが、毎年のように更新しているので、つねに新しいハードだと感じられる。まだまだXbox 360には成長する余地がありますよ。

 最後の次世代機のウワサについての質問は、当然のことはぐらかされてしまったとの印象だが、Xbox 360がつねに変化するハードであり、まだまだ成長する余地があるのは紛れもない事実。2012年Xbox 360がどのような方向性に進んでいくのか、注視したい。

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