「Kinectが支持された理由、それはシンプルだから」マイクロソフトのキーパーソンが語る【2011 International CES】

ゲーム Xbox 360 インタビュー
CESの会場でマイクロソフトの担当者を直撃。Kinectの話題を中心にインタビューする機会を得た。Kinectの現状の成果と今後の展望を聞いた。

●今後もすぐれたエンターテインメントを提供していく

 2011年1月6日〜9日(現地時間)の4日間、アメリカ・ラスベガスにて2011 International CESが開催。ファミ通.comでは、世界中から2700以上の出展社が集まる、この世界最大規模の家電見本市の模様をリポートする。

 CESの会場で、マイクロソフト グループ マネージャ コーポレート パブリックリレーションズ インタラクティブ エンターテインメント ビジネス、デビッド・デニス氏に取材をする機会を得た。Xbox 360全般を担当するというデニス氏だが、今回はKinectの話題を中心に、2010年の感触と今後の展望について聞いた。なお取材は、海外取材陣数社との合同インタビューという形で行われた。

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▲マイクロソフトのデビッド・デニス氏。

 インタビューの冒頭で、まずはデニス氏はXbox 360に対する現状を語ってくれた。その内容は以下の通り。

 「基調講演(→こちら)で説明があった通り、Xbox 360はワールドワイドで5000万台という販売台数を記録しました。これは初代Xboxの倍にあたる数字です。Xbox LIVE の会員数は3000万人を超えています。また、Kinectの発売60日間の販売台数も800万台を達成し、大きな成果を挙げました。そういった意味で、2010年はXbox 360にとって非常に大きな年、史上最大の年になったと思います。ゲーム機の寿命はふつう5年と言われていますが、Xbox 360はこの慣例を打ち破って飛躍し続けており、これはすばらしいことだと思います。その背景には、Kinectの成功に加えて、さまざまなエンターテインメント経験を全世界に提供し、市場を拡大してきたことにあります。ソーシャルな経験を提供できるようにしたこともビジネスに成功をもたらしました。今後もできるかぎりこの努力を継続したいと思っています。
 Kinectに関しては、基調講演でも紹介したように、今春よりAvatar Kinectを導入します。これにより、これまで以上に友だちとの会話が弾み、ソーシャルな経験が楽しめるようになります。2011年は引き続き、幅広いラインアップのタイトルを予定していますので、期待してください」

 引き続き行われたインタビューの模様は以下の通り。

Avatar_Kinect_UI_01

――Avatar Kinectの詳細を教えてほしい。

デニス 現状のKinectでは、個人を確認するために表情を認識していますが、Avatar Kinectはそのテクノロジーを進歩させたものです。顔に複数のポイントを置いて、顔の動きを追跡し、アバターとして認識します。認識するのは胸から上の部分ですね。その場合は、座って表情や手振りを行うので、立ち上がっての認識はできません。

――ということは、アバターが歩く……といったことはできない?

デニス 技術的には可能ですが、現段階ではその機能にフォーカスしていません。いまは、表情を認識して、友だちとしゃべったりするといったソーシャルな環境を作ることに全力を上げています。そういった意味ではPlayStation Homeとは単純比較はできません。Avatar Kinectは数人の友だちと楽しむための限定された経験なのです。バーチャルワールドを作って歩き回ったり、アパートにインテリアを作ったり、アイスクリームを食べたりするというのとは違います。

Avatar_Kinect_Tailgate_12
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――アメリカのユーザーには、Kinectのどのような点が魅力的だったのか?

デニス ひとつに絞るのは難しいですね。Kinectはとても不思議な魅力のある技術で、オープンでアクセスしやすく、使いかたも簡単です。パーティーなどでも子どもから大人までいっしょに遊べてすぐに参加できます。従来のボタン式コントローラへの恐怖なしに単純に身体を使えることが大きいです。身体を使ってすぐに楽しめるようになるので、恥ずかしい思いもしないで済みますし。

――Kinectの登場により、Xbox 360がよりカジュアル層に広がった?

デニス まだ判断するデータがないので何とも言えませんが、個人的な感触としては「イエス」です。私の周囲では、主婦層が「娘がKinectを遊びたいので、Xbox 360を買いたいと言っている」ということをよく話題にしているようです。こんなことは以前はありませんでした。

――今後、Xbox 360にとってカジュアルゲームはより存在感を増す?

デニス 私はKinect対応ゲームを単なるカジュアルゲームだとは捉えていません。それ以上の深さがあります。たとえば、『Kinect アニマル』は虎のトレーニングゲームだと思われた方も多いようですが、実際に遊んでみると、ある種のアドベンチャーゲームになっています。メディアの方に披露したときも驚かれました。「隠し要素がたくさんあり、クエストゲームのようだ」と言われました。Kinectを使った、これまでにないゲームになっているんです。そのために、カジュアルゲーマーも「Kinectには何かがある」と感じてくれているようです。今年、来年とさらに市場に提供していけるKinect向けゲームも多く、継続的に楽しんでもらえると思います。フィットネスゲームやハードコアゲーム、カジュアルゲームなど、やりたいことはたくさんあるんです。

――Kinectは、コアゲーマーに対処できるとは思えないが。

デニス コントローラで行っていたような、ボタンやトリガーを使っての複雑な操作はKinectでは難しいと思いますが、Kinectはそのために作ったのではありません。フレンドといっしょにゲームの出入りが楽にできるようになるなど、よりソーシャルな使いかたのために作られたものです。とはいえ、東京ゲームショウ2010ではハードコアゲーマー向けの爆発が炸裂するようなゲームもお見せしました(→こちら)。最初はKinectのことを皮肉っていたコアゲーマーの方もKinectを購入してくださっています。今後もコアゲーマーの方が気に入っていただけるようなすばらしいラインアップが待っていますよ!

――任天堂はユーザー層を広げるために、さまざまなマーケティングを駆使して成功してきたが……。

デニス Kinectのロンチに際して、我々もすでにこれまでとは大きく異なるマーケティングを展開してきました。アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各市場で、料理番組やアニメ番組にKinectのテレビCMを入れたりしました。また、広告だけでなく、食品ブランドやデパートなどとパートナーを組んだプロモーションを行ったりしました。これは、従来のゲームではあまり行ってこなかったことです。マーケティングに関してはこれからも新しい道を模索しつつ、より多くの消費者を取り込むためにさらに拡大していくのを見ていただけると思います。

――ライバルと目されていたPlayStation Moveと比較しての感触は?

デニス 私たちはとてもよくやったと思います。その点には自信があります。Kinectがよく売れた理由、そしてユーザーが受け入れてくれた理由はシンプルだからです。プレイするのもシンプルなら、遊ぶために何を買わないといけないのかを理解するのもシンプル。Kinectセンサー単体で買うか、Xbox 360との同梱版を買うかを選択するだけ。コントローラをふたつ買うべきか、3人の友だちを呼んだらいっしょに遊べるのか、などと悩む必要がないんです。非常に単純明快。そして、設定してプレイするのも簡単です。

――Kinectのテクノロジーを他社にライセンスする予定は?

デニス Kinectに関しては、今回お見せした以上の発表は何もしていません。ただし、ユーザーがKinectに慣れ親しんでいけば、そのようは方向(ライセンス)も考えられます。

――KinectをXbox 360以外でも使えるようにしている人たちがいるが、彼らはKinectの革新性を有効活用していると思うか?

デニス USBというもののありかたを妨害しているだけだと思います(KinectはUSBで接続することからXbox 360以外でも使えるようにしようとする試みが続出していることに対して)。Kinectのテクノロジーがすばらしいので、コミュニティーでそうしたことが起こることは予想していました。問題はないと思います。きっとおもしろいものが出てくるだろうし、非公式にはすでに何か使えるものもあるかもしれません。まだ何も発表していませんが……。一部では、掃除機をKinectで操作することもできるようです。趣味としていろいろやってくれるのは楽しいですが、まだ商業的な使いかたにまで至ってないのではないようです。

――Kinectに対応したゲームがモバイルで出る可能性は?

デニス それはありません。まだ検討するところがたくさんあるので。ただ、モバイル絡みでお話しできることがあるとすれば、基調講演でお見せしたように、コンシューマーゲーム機のソフトはPCやモバイルに移植しています。これはXbox LIVEですべてのデバイスがひとつにつながるからこそ意義のあることです。プロフィールやアバター、ゲーマースコアなどを一元管理できるんです。

――今後のKinectの課題は?

デニス 今後ともすぐれたゲームやコンテンツを提供し、新鮮さを維持していくことですね。新しいゲームやエンターテイメントを提供し続けることです。基調講演では、Zuneビデオに加えて、Hulu PLUSやNetflix、ESPNなどでもKinectが使えるようになることをご紹介しましたが(北米市場にて)、今後はさらにいろいろな経験にKinectが使えるようにしていきます。Kinectがないと使えないというわけではありませんが、Kinectがあれば、コントローラというハードルがなしにシンプルかつ容易に操作できるようになる。これからもそういったKinectの魅力をさらに訴求していきたいです。

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