52時間ぶっ通しイベント“C4 LAN”はゲーム業界のフェスだった

公開日時:2017-05-07 12:40:00

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 2017年5月3日14:00から5月5日18:00にわたって、52時間ぶっ通しで開催されていたゲームイベントがあったのだ。ずっとゲームやれるって、それはつまり桃源郷ってことだろう。

 そのイベントの名は“C4 LAN 2017 SPRING”。見学に行ったら、そこは想像以上にいい空間だった。三蔵法師一行も天竺なんか目指さずにここに来ればよかったのだ。

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▲せっかくだからネタを用意しようと思い、僕はプロゲーミングチーム“DeToNator”所属のストリーマー・YamatoNくんのコスプレ(石油王)で参加しました。

※石油王についてはこちらの記事を参照
カッコいいゲームをカッコよくプレイする方法をプロに訊く

★★★イベント形式はどこまでもシンプル★★★

 C4 LANは“LANパーティー”という形式のイベントだ。

 LANパーティーは日本より海外で先行している文化である。持ち込んだPCをLAN(Local Area Network)で接続して遊んでいたことから、この呼び名が誕生した。昔はネット回線が太くなかったので、みんなで集まってPC同士を直接つなぐのが効率的だったのだ。

 マルチプレイのゲームを遊ぶために、わざわざ自宅のタワー型デスクトップPCを友だちの家に持っていく。いちばん慣れている環境で遊びたいし、愛機をみんなに自慢したい。そこまでしてゲームがしたい。遊びにかける熱意がすごい。

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▲会場は東京・浅草橋のヒューリックホール。秋葉原から一駅で、しかも駅近の好物件。

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▲全体のMCを担当したStanSmithくん(左)と運営のtaharasanさん(右)。

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▲聖火RUNNERならぬLANNERがPCにLANケーブルを挿す演出で、C4 LANは幕を開けた。

 ネットカフェなどに集まって遊ぶこともLANパーティーと呼ばれたりするが、C4 LANは海外と同じくゲーム機の持ち込みが基本(レンタルもある)。はっきり言って、機材を持ち込むのはたいへんだ。そもそも、ネット環境が整っているいま、ゲームを遊ぶだけなら集まる必要はない。

 だが、それを言うのは野暮ってもんだ。同じ趣味の人間が集まると気分が高まり、妙なグルーヴや突発的なコミュニティーが生まれる。

 根底にあるのは「みんなでゲームやったらおもしろいじゃん」というシンプルな発想だ。みんなゲームをやりたいから、有料のチケットを買って集まっているのだ(チケットは発売間もなく完売)。

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▲機材を持ち込むスタイルを“BYOC(Bring Your Own Computer=自分のコンピューターを持ってきなよ)”と言う。

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▲PC以外に、コンシューマー機やアナログゲームを持ち込んでもいい。

★★★石油王が会場内をふらふらします★★★

 LANパーティーとは、だいたいこんな感じのイベントである。会場内にはPCやPS4などがずらりと並び、それぞれが思い思いのゲームを遊ぶ。有名PCゲーム、格闘ゲーム、インディーゲーム、何でもありだ。

 さて。偉そうに説明してきたが、じつは僕はこの手のイベントにはあまり参加したことがない。ほかの参加者に話しかけたりできるだろうか。少しでも取っ掛かりがほしいと思い、石油王の衣装を持ってきた次第である。

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▲石油王「Twitchいいよね。買おうかな」。

 会場内をふらふら歩いていると、100人バトルロイヤルFPS/TPS『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』を遊んでいる人が多い印象を受けた。わいわい騒ぎながら遊べるので、LANパーティーとすごく相性がいい。

 僕が行けなかった5月5日にはメインステージで大会も行われており、これはちょっと見たかった。人数が減るほどに観客は盛り上がるだろうし、演出次第で番組的にもなる。

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▲DeToNatorのYamatoNくんもゲーム好きモデルの佐藤かよさんと『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』をプレイしていた。

 加えて、やっぱり多かったのが『Overwatch』。プレイしている人が目立っただけでなく、12人の実力派プレイヤーが2チームに分かれて戦う“ゆるだらオーバーウォッチ会 ドラフトピック紅白戦”も実施。

 これはGreen LeavesのNoanoa選手とUnsold Stuff GamingのVader選手がチームリーダーとなり、順にメンバーを指名して組んだチームで試合を行うという企画だ。野球好きとしては、こういう仕組みはたまらない。

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▲ドラフトの部分はいろいろ工夫できそう。

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▲ラジコンカーでサッカーをする『Rocket League』の大会“Rocket League Skylanders Cup Grand Final”も実施。スーパープレイ連発。サッカーの試合を見るときみたいに、ふつうに「お~、すげえ」とか口に出しながら観戦した。

 C4 LANは夜を徹して行われる。とはいえ、会場内にずっといる必要はなく、再入場も可能。休憩スペースで雑談したり、ご飯を食べに行く姿も多く見られた。夜間もゲームをしている人はさすがに少なく、いったん帰宅する人が大半である。近くのホテルに宿泊する人もいたかもしれない。

 なお、来場者にはグループ参加の“BTOゲーム部”さんが作った近所のグルメマップが配布(公式サイトでも公開)。お店によってはC4 LANの名前を出すとチャージ料無料などのサービスを受けられた。銭湯の場所が載っているのもうれしい。

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▲ゲーム仲間への大人の気遣い。

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▲食事と言えば、必要な栄養素がすべて詰まった食品“COMP”もC4 LANに協賛。寝食を惜しんでもやりたいことがある人をサポートしたいのだそうだ。

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▲スムージーみたいな食品なので、風邪をひいたときとかにフルーツと合わせて飲むとよさそう。

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▲ごはん時にピザの配給。数分でなくなった。

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▲すごくきれいなゲームやってる人がいた。「これなんですか?」と聞くと、たいてい丁寧に教えてくれる。

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▲ゲームオンのPC用オンラインFPS『Alliance of Valiant Arms』の日本運営プロデューサー・井上洋一郎さんも視察に来てた。

 会場内をふらふらして、いちばん心配だったのが「このイベント、ちゃんと儲かってるのかな」。企業が運営するイベントである以上、利益が出なければ継続できない。運営のtaharasanさんを捕まえてろいろ聞いた。

【taharasanさんから聞いた話】
・協力企業のおかげもあって、赤字ではない
・企業側からはブランドの好意度を高められる点が喜ばれている
・“ゲーマーファースト”が大前提。企業側から企画を提案されても、それがゲーマー向けじゃないと感じて止めることもあった
・ひとまず1000席規模にするのが目標

 「赤字だけどゲーマーを応援したい。何年か後にペイできたらオーケー」みたいな運営方針だったらどうしようと心配だったけど、そんなことはないようだ。安心。

 少しばかり下世話な話ではあるが、協賛金は決して安くはないと思う。それでも「ゲーマーのためなら」と協力的な企業がたくさんある。少なくとも、ゲーマーが楽しんでくれることが自社の利益になると判断してくれているのだ。こんなにうれしいことはない。

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▲Twichブースはまったりな雰囲気。

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▲msiやSycomと言ったハードウェアメーカーも出展。

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▲Sycomブースの横には足湯があった。なぜ足湯なのかとスタッフさんに聞いたら「何か企画が通っちゃったんですよね」とのこと。石油王も大満足。

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▲Alienwareは休憩スペースとごはんを提供。疲れてきたころにここでアナログゲームをやっていた模様。

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▲ロジクールGブースではデバイスのレンタルが可能だった。そのほか、マウスを振る速度を競う“勝手に全日本マウス速ブリ選手権”などを開催。

★★★無理に輪に入ろうとする必要はない★★★

 LANパーティーはコミュニティーベースのイベントだ。主催側が「これどうぞ、これどうぞ」ともてなしてくれるわけではないので、前のめりに楽しもうとする気持ちを大切にしたい。

 その際、よく「ほかの参加者に話しかけてみよう」なんて意見が出るが、そういうのが苦手な人は無理をしなくていいんじゃないかなと思う。せっかく楽しくゲームしてるんだから、「輪に入らなきゃ」と変にプレッシャーを感じる必要はない。

 「ゲームが楽しい」という意識はすぐに共有できる。そこにいるだけで少しうれしいものである。

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 「輪に入りたいけどなかなか話しかけられない」という人は、コミュニティー単位で参加している人の近くにいるのがおすすめだ。そういう人たちは仲間を増やしたがっているはずので、興味を持ってくれる人は逃がさない。たいていひとりはいる世話焼きの人に身を任せてしまえばいい。

 名作RTS『StarCraft II』ファンの人たちはまさにそうだった。あらかじめ8席ぶんのチケットを購入しておき、一見さん用にプレイ席を開放。そして、画面をのぞき込んでくる人を見つけては声をかける。すばらしい行動力である。

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▲観戦好きのeスポーツライター・スイニャンさんが『StarCraft II』のプロゲーマーも呼んでいた。

 どちらかと言うと、僕も人に話しかけられないタイプだ。だが、コミュニティーの輪に入ったら楽しいだろうなーという憧れもある(今回はYamatoN石油王コスプレのおかげで少し話せた)。

 僕と同じタイプの人は多いと思う。ということは、“輪に入りたい人見知り”と“仲間を増やしたい世話焼き”を見分けられるようにしたらWin-Winの関係を築けるのではないか。機会を見つけて、そういう缶バッジを作って配布したい。

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▲『StarCraft II』勢のキーボードがかわいい。

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▲マカロンもらいました。

 みんなが好き勝手にゲームを楽しむ空間にいるだけで、ゲームが楽しいという感情の波にさらされる。地の底から響いてくるような脈動に心身をゆだねるのが心地いい。

 これはあれだ。フェスだ。LANパーティーとはゲームにおけるフェスなんじゃないか。主催者側は場を提供するだけ。何となくその場にいるだけでも楽しめるし、周囲の人とノリノリになるのも正解だ。

 難しいことは考えなくいい。だってそこにゲームがあるのだから。eスポーツを盛り上げようとか、ゲームの芸術性がどうとか、VRの未来がどうとか、そういうのいったん忘れて、みんなでいっしょにゲームやろうぜ。

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▲次回も検討中もようなので、お楽しみに。

C4 LAN 2017 SPRING公式サイト

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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