北陸最大のeスポーツイベント“ToyamaGamersDay2019”から見えた、地方とゲームのすてきな関係

公開日時:2019-10-16 11:25:00

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 こんにちは。ファミ通.comのミス・ユースケです。富山県に来ています。
 

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 私事で恐縮ですが、足の骨が折れています。

 2019年9月28日~29日に富山県で“ToyamaGamersDay2019”というイベントが開催された。前から興味があってわくわくしていたところ、開催の5日ほど前に骨が折れた。

 骨折してるけどまあいい。富山県に行きたいから行った。知人によると骨折には富山県の魚が効くらしいし。
 

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ToyamaGamersDay2019を見たい気持ちが骨折の痛みを上回った。

 その知人とは、富山県eスポーツ連合の会長を務める堺谷陽平さんのこと。ゲームのイベントで知り合い、何となく世間話をするくらいの仲になった。

 ToyamaGamersDayは堺谷さんが2016年から始めたイベントだ。初回の会場は地元の貸し会議室。参加者から機材を持ち寄ってもらうなどして、手作り感覚でその歴史がスタートした。

 いわゆる地方のコミュニティーイベントを出自として、規模は徐々に拡大。8回目にあたる今回の会場・高岡テクノドームは、展示会やプロレス興行などが行われる大ホールだ。すごい。
 

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堺谷さん(右)は会場内を視察したり取材を受けたりゲームやったりしてました。

 とはいえ、会場が大きいからすごいと感じたわけではない。

 もちろん、“地方で大規模なゲームイベントが開催されたこと”自体もすごい。ただ、着実にステップアップさせながら続けてきたことには、それ以上の価値がある。

 継続は力なり。たしかにそれは大切だが、漫然と続けるだけでは進化は起こらない。手を変え品を変え、自分がやりたいことを模索し続けたからこそ、その道は高岡テクノドームにつながったのだと思う。

 しみじみしてしまった。関係者でもないのに。
 

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楽しそうにゲームやってる人がいると写真を撮ってしまう。

 僕が会場に着いたのは1日目の夕方頃。その日のピークを過ぎ、わりと落ち着いた時間帯。

 会場内をふらふらしていると、日本最大のLANパーティー“C4 LAN”ブースを発見した。ここ最近、C4 LANは地方イベントによく射的ブースを出展しているのだ。主催会社ニチカレの社長・小林さんが的屋のおじさんをやっていた。
 

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小林さんは会うたびに的屋のおじさんとして成長している。

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射的ブースは行列ができるほどの大人気(これは2日目の写真)。

 「昼間はけっこうな賑わいでしたよ。小学生くらいのお子さんも多かった」と、小林さん。地方のゲームイベントは親子連れ率が高い。

 大きなゲームイベントの珍しさもあるだろうし、たぶん車社会の影響もある。車でやってきて夕方まで遊び、外食して帰るという行動パターン。3月に参加した“別府おんせんLAN”でも似たような傾向があった。

 僕がよく見る都市圏のイベントとは客層が違う。人の流れも考慮してイベントを作るべきなのだろうな。現場の空気を肌で感じて気付くこともある。おもしろい。

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 さて、今回の旅の目的は取材ではない。富山県を満喫することだ。

 「取材するぞという意気込みは遊びにとって邪念」という信念にもとづき、この日はC4 LANの小林さんたちと魚を食いに行った。ありがとう富山県。
 

★★★富山県を満喫する★★★

 
 2日目。

 富山県を満喫してやろうと思い、朝から同僚の堅田ヒカル(富山県出身)からおすすめされたスーパー銭湯“陽だまりの湯”に向かう。路面電車ですぐに行けるとのこと。

 そう言えば、3月に行った大分県のイベントでも、6月の広島県イベントでも、時間を見つけては温泉に入った。温泉好きという自覚はあったが、そこまでとは。地方のゲームイベントは新しい自分に出会わせてくれる。

 路面電車に揺られていると、停留所に描かれたドラえもんが目に留まった。富山県は藤子不二雄先生ゆかりの地。写真を撮っていたら運転士さんが「うまく撮れました?」と気を使ってくれた。やさしい。
 

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温泉の効能欄に骨折はなかったが、たぶん効く。牛乳飲んでカルシウムを摂ったし。

 湯治を終え、バスで高岡テクノドームへ。道すがらPINK HOUSE(カントリーテイストのブランド。ロリータ・ファッションの源流とも言われる)の路面店を見つけて興奮する。

 会場には昼頃に着いた。いい感じの賑わいだ。昨日と同様に会場内をふらふらして、ステージイベントを見る。

 スマホゲーム『ブロスタ』の日本一決定戦につながる地区予選を「ほほー」と眺め、2020年2月6日に発売予定のPS4用格闘ゲーム『グランブルーファンタジー ヴァーサス』のエキシビションマッチで「よくできたゲームだなー」と感心する。
 

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グランブルーファンタジー ヴァーサス』は演出が派手なので大スクリーンで見ると迫力がすごい。

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グランブルーファンタジー ヴァーサス』は試遊コーナーもあった。ローアインが出ることをいまさら知ったので買うと思う。

 合間にはブースを見て回った。自治体や地元企業も出展している。こういうところが来場者を呼び込むための仕掛けに凝り出したら楽しそうだなと、勝手な期待を抱く。変な方向に思い切りよくなってほしい。
 

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グランツーリスモSPORT』体験コーナーの横に、

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アルミホイールの製造・販売を行うBBSジャパンブースがあった。

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僕は車には詳しくないのだけど、こちらのホイールは世界的にも評価が高いらしい。ほほー。

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高岡市ブースではペットボトルの水を配布。ミネラルウォーターではなく水道水である。品質にそうとうの自信がある模様。

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2020年2月16日から開催される“とやま・なんと国体2020”のスキー競技をアピール。富山県ご当地キャラ・きときとくんがかわいい。

 NTTドコモは次世代通信システム“5G”関連の展示をしていた。5Gは高速・多量接続や低遅延などの特徴があり、普及すればオンラインゲームにとっても恩恵が大きい。

 新しい通信システムが消費者に向けてアピールされるときの売り文句と言えば「大容量コンテンツが快適に楽しめますよ」。以前なら動画や音楽が占めていた場所に、いまはゲームもあるのだ。何だか感慨深い。
 

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遠隔地と5Gで接続し、シューティングゲームを通してコミュニケーションを図れるシステム。このほかにもふたつのシステムを展示していた。

★★★地方ならではの光景★★★

 
 富山県はおもしろかった。ゲームが僕と富山県をつなげてくれた。ゲーム好きでよかった。
 

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試遊台やフリー対戦スペースでひたすらゲームにはげむ。『デュエル・マスターズ』勢もアツかった。

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コスプレイヤーさんもいた。『シャドウバース』のルナと『グランブルーファンタジー』などに登場するヴァンピィ。

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記念写真をお願いされている様子を見るとほっこりしますね。

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親子でゲームを楽しむ人も多かった。

 さて。

 ゲーム(eスポーツ)を使った地方の取り組みが増えていると聞く。プレイヤーも自治体も地元企業も一丸となって、その土地ならではの魅力を活かすのなら楽しそうだ。

 ただ、勝手ながら心配な点もある。C4 LANの小林社長との世間話で話題に挙がったのだが、どうも地方の人は東京みたいなことをしたがるらしい(小林社長は全国を飛び回って多くのゲーマーや関係者と話している)。

 要は“東京ゲームショウみたいな大型イベント”を開催することこそ正解と考えてしまうのだ。大きなイベントや枠組みを作れば人が集まる。地元が活性化する。華やかな部分に目を奪われて、地道な積み重ねをすっ飛ばそうとしてしまう。

 なるほど。ゲームに限らず、そういう傾向はありそうだ。僕なんかはその土地ならではのものが見たいのだけど。

 大型の施策をどかんとやって成功するならすばらしい。だが、そんなに簡単な話ではない。入念に下準備をして、そこに参加したくなる空気を作ってほしい。そうしたほうがゲーマーたちも参加しやすい。

 漠然と「大きなイベントを開催したい」で終わらず、明確な目標は必要だと思う。たとえば、地元の人を楽しませたいのか、外から人を集めたいのか。それだけでも方向性は変わってくるはず(両方と言い出す人もいそうですね)。
 

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難しい話が続いて恐縮なので、うまかった白エビ刺身の写真をどうぞ。

 堺谷さんはTwitterで、

・地方創生や活性化はあくまで結果
・目指すべきはその地の強みを取り入れた王道
・(ゲームイベントをやるのなら)地方創生を本質にした道は邪道

 という旨の発言をしている。“ゲームを楽しむ場を作ったら結果的に地方創生の一助になった”くらいがちょうどいい。

 それでもゲームで何かを成し遂げたい人は、土台を作ることから考えてほしい。大きな枠組みを作ったとき、そこに入る人がいないとさみしいので。まだまだ土地を耕して種を植えるターン。収穫期は来ていない。

 極論を言えば、誰もがゲームを活用して利益を得たいのである。それは間違ったことではない。ぜひ潤っていただいて、今後もどんどんゲームに投資してほしい。そうすれば僕らの遊び場が増える。ありがたい。

 ゲームで利益を得たい人の中にはゲームに詳しくない人もいると思う。そういう人がやるべきことはシンプルだ。儲けるには消費者が求めるものを提供するのが基本。それならゲーマーたちの輪に加わり、消費者の声に耳を傾ければいい。彼らは答えを持っている。

 どんな施策でも、何となくふわっとやるよりは、きちんとリサーチしたほうが成功率は上がるんじゃないの? という話だ。ものすごくふつうのことを書いてしまい震える。
 

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カニも最高でした。もはや軽くエロい。

 “ToyamaGamersDay2019”は一定の成功を収めた。偉い人たちが客入りやクオリティに満足したかは不明だが、少なくとも僕は富山旅行も含めて楽しかった。

 成功の影にあるのは堺谷さんと地元の良好な関係だ。堺谷さんはもともとゲーマー。彼には天然の人たらしなところがあって(もちろんいい意味で)、地元のおじいさんたちに気に入られ、ずいぶん助けてもらったそうだ。ゲーマーの感覚を中心に、周囲の力を借りられる環境が整っている。

 これはゲーム(eスポーツ)を広めるうえで重要なポイントなのではないか。当事者以外からすると、ゲームってよくわからないものだと思う。その盛り上がりやコミュニティーの大切さを説いても、なかなか正しい姿を理解してもらえない。

 それでも理解を得るために必要なのは信頼関係ではなかろうか。あいつが言うんだから悪いものじゃないだろ、あいつのやりかたを信じてみるか、みたいな。

 地元の名士の皆さまにおかれましては、変にマウントを取ろうとせず、

「若者が地元でがんばれるように、いっちょ助けてやるか!」

 みたいな姿勢がかっこいいと思いますよ。
 

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

『PCオンラインゲームのブログ まいにちがβテスト』ブログ