岡田、西野、中村の3選手が子どもたちに伝えたこと――千葉ロッテマリーンズ×ネクソン野球教室リポート

公開日時:2016-01-26 12:00:00

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 2015年はe-sportsが大きな盛り上がりを見せた年だった。トッププレイヤーたちには世界を目指してがんばってもらうとして、今年は裾野を広げる努力をしていくべきだろう。

 そのヒントをプロ野球に求め、僕と千葉ロッテマリーンズ(以下、マリーンズ)好きのライター・戸塚さんは一路、幕張のQVCマリンフィールドに向かった。

 要は何だかんだと理由をつけてプロ野球選手を見に行きましたという話である。

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▲来ちゃった。

★★★プロ野球選手は子どもたちに何を教えるのか★★★

 2015年12月、プロ野球チームのマリーンズはネクソンとの共催で、小学生を対象に野球教室を開催した。この野球教室は2014年にも見学させてもらっていて、益田選手からピッチングのコツを習ったりした。

里崎! 伊志嶺! 益田! ネクソン×千葉ロッテマリーンズの野球教室で興奮

 記事タイトルに“!”が3つも並んでいることから分かるとおり、講師陣が豪華ですごく興奮した。2015年の講師は岡田幸文選手、西野勇士選手、中村奨吾選手と、こちらも主力・スタメンクラスである。うおお。

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▲2014年に野球教室に参加したおかげで、僕もストレートのコントロールがよくなった気がする。

 2014年の取材では僕も練習を体験させてもらったが、2015年は遠慮した。選手の教えかたを客観的に見たかったのだ。小学生に混じるのが恥ずかしいというわけではない。

 ゲームの世界でも、たまにトッププレイヤーによる講座イベントがある。参加者の実力を引き上げることはもちろん、身近に感じてもらうことで、もっと自分たちやそのゲームを好きになってもらいたいのだと思う。この辺は野球も同じなのだろうか。

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▲会場はマリーンズの屋内練習場。子どもたちの球速を測るため、私物のスピードガンを持参。未来のスター選手を探す。

 そもそも、人を指導するのってめちゃくちゃ難しいと思うのだ。プロとアマでは感性も能力も競技との接しかたも異なるから、自分の練習方法が参加者のためになるとは限らない。今回はプロとアマだけでなく、大人と子どもという違いもある。

 近い将来、ゲームのプロプレイヤーが子ども相手に講習会を開く可能性もある。そんなときのために、プロ野球選手のやりかたをしっかりと目に焼き付けておきたい。

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▲まずはウォーミングアップを兼ねた○×クイズ。

 ○×クイズの第1問は「ネクソンはゲームの会社である」。バツに走った子もけっこういて、担当者さんは「もっとがんばります」と決意を固めていた。2016年、ネクソンさんがすごいことをやったとしたら、それはきっと野球少年たちのおかげだ。

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▲脱落してもチームメイトを応援する。みんないい子だ。

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▲キャッチボールやノックで体を動かしていると、講師陣が登場。子どもたちに以上に保護者サイドが色めき立つ。

 指導は守備、打撃、投球の3グループに分けて行われ、それぞれ岡田選手、西野選手、中村選手が担当。時間が来たらローテーションで別の先生のもとに移動するという流れだ。

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▲左から岡田選手、中村選手、西野選手。

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▲岡田選手に連れられて守備練習スペースに移動する。

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▲西野選手はブルペンへ。

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▲中村選手はヒアリングからスタート。

★★★スポーツを積極的におもしろがる★★★

 いよいよ野球教室がスタート。写真を撮りつつ、指導の仕方や内容をチェックさせてもらう。

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▲並んでノックの順番を待つ。

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▲岡田選手がフィールディングの動きをチェック。

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▲ほほう。なかなかいい肩をしているじゃないか。

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▲ティーバッティングで中村選手がスイングを確認。

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▲西野選手の球筋をじっと見つめる参加者たち。

 選手たちがやっていたのは、だいたい下記の3つ。

・お手本を見せる
・子どもたちのフォームをチェック
・質問を受けたり談笑したり

 気になったのは3つめ。よく話してるなーと感じた。2014年の講師陣もよく話していた気がするが、自分が体験するのに手いっぱいであまり見ていなかった。

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▲気のいい親戚の兄ちゃんみたい。「ちゃんと宿題やってるか?」とか言ってそう。

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▲野球の話になると真剣な表情に。僕ら人類はいつだってギャップに弱い。

 中村選手との談笑のなかで、「小学生の頃はどれくらい素振り(練習)をしていましたか?」という質問が出た。中村選手は、

「野球の練習だけだと飽きてしまうと思うんです。小学生くらいのときはとくに。そういうときはサッカーやかけっこなんかをしていました。楽しいことをやって、体を動かして、体力をつけるのも大事ですから」

 と、回答。野球には基礎体力も大切だ。それに、やみくもに反復練習をするだけでは技術は身につかないし、反復練習をつらいと感じて野球を嫌いになったら元も子もない。

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▲指導に熱が入る西野選手。

 ゲームのトッププレイヤーは、ファンから「どんな練習をしていますか(していましたか)」と質問されたらどんな回答をするだろう。真正直に厳しい練習メニューを説明するのもいいが、「もっとゲームを好きになってもらうには、どういう答えが適切なのか」と、いったん考え直すのもいいかもしれない。

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▲中村選手の打撃コーナーでは、ティーバッティングからフリー打撃に移行。

 中村選手は子どもたちをバッターボックスに立たせた。自身はマウンドのほうへ。中村選手が打撃投手をやってまでフリー打撃の機会を作ったのは、子どもたちに広い体験をしてほしいからだろう。過剰なまでのホスピタリティ。

 少しでも楽しんでもらって、もっと野球を好きになってもらいたい。裾野を広げ、競技人口を増やすために活動するのもプロの役割のひとつである。

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▲子どもたち以上にうきうきした様子の保護者のみなさん。

 そう言えば、打撃や投球はフォームをチェックしやすいが、守備グループはどうなんだろう。守備の名手の岡田選手と言えども、さすがに短時間では教えにくいのではないか。

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▲ファインプレイのやりかたを教えてるっぽい。

 遠くから見ていたので判然としないが、ダイビングキャッチしてないか。うしろの子たちは笑ってるし、岡田選手もフライ捕球のお手本で横っ飛びしていたので、たぶん正解だと思う。

 遊びの要素を取り入れれば小学生たちのテンションも上がるし、記憶にも残る。僕だったら大人になっても「昔、岡田(選手)にダイビングキャッチのやりかたを教えてもらってさー」と、飲み会で自慢する。

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▲僕がこの輪の中にいたら、岡田選手の好プレーをテレビで見た後に「おれが教わったやりかたと一緒だわ」とか言う。絶対。

★★★参加者が楽しんだ時間の価値を高める★★★

 ゲームのプロプレイヤーには、“もっとそのゲームを楽しむ、おもしろがる”感覚を伝えてほしい。e-sports関連の報道が増えるのがうれしいが、ストイックで厳しい世界であるという、いかにもかっこいい部分が独り歩きしている気がする。それはゲームの本質とは少し違うだろう。

 僕としては、彼らの口から「たいへんです」とか「これくらいの練習量をこなすのはふつうです」よりも「このゲームが好きなんです」というひと言が聞きたいのだ。とはいえ、プロとして生き抜くのはたいへんだ。きれいごとを言う余裕はたぶんない。

 うまくなるには必死で練習に打ち込む必要があるし、禁欲的に専念しなければならないというか、楽しいと言えない空気ってあると思う。プロの世界はつらく厳しい。それは分かっている。それでも、好きな気持ちを前面に出すプレイヤーほど僕の目には魅力的に映る。演出的なことを言えば、そういう人が負けたときに涙をにじませるほど悔しがったら勝ち負けの重みも伝わるだろう。

 厳しい部分だけを見ると「うまくなるのはたいへん」と刷り込まれる。「自分には無理だ」と諦める人もいるかもしれない。でも、プロから遊びを提案されると「遊んでいいんだ」と気持ちが軽くなる。やっぱり、野球やゲームはおもしろいものであってほしい。そういう一面がプロ野球選手からも感じ取れてうれしかった。

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▲講師陣の講評を聞いて野球教室は終了。

 プロ野球選手が自分たちに向き合ってくれた時間は、参加者にとって何物にも代えがたい財産だ。将来、この子たちがプロ野球選手になったとして、「○○選手から教えてもらったから、野球がもっと好きになった」とか言われたら、僕は泣いてしまうだろう。その気持ちを肴にグラスを傾けさせておくれよ。

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▲野球教室の締めくくりはサイン会。

 講師の選手たちが活躍すればするほど、この日の時間の価値は高まるわけで、選手からすれば心地いいプレッシャー&モチベーションになりそうだ。

 僕はたまに知人の若者ゲームプレイヤーに「インタビューを受ける機会があったら、いまの自分があるのはユースケさんのおかげですと言いなさい」と無理強いしているのだが、なかなか首を縦に振ってもらえない。

 僕がすごい人物になったら、彼らは自主的に僕との思い出を語るだろう。彼らが僕と接した時間の価値が高まるように、これからも冗談みたいな記事を書き続けよう。

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▲おつかれさまでした。

★★★3選手に感想を聞く★★★

 イベント終了後、ネクソン&マリーンズのご厚意で3選手から話を伺う時間をもらえた。子どもたちと接してみて、どんな感想を抱いたのだろう。
(インタビュアー:戸塚伎一)


──今回の野球教室は、選手の皆さんも初体験とのことですが、小学生と直接触れ合ってみての率直な感想は?

中村選手 体の小さい子が多かったですね。テレビとかで選手のプレーを見る機会が多いせいか、技術はあるのかなという印象でした。

岡田選手 僕も小学生の子どもがふたりいるんですけど、昔の子供に比べて、家の中で遊ぶ機会が多くなったと思います。僕が子どもの頃は田んぼで走り回っていましたけど、野球をやりたい子はもっと外に出て、鬼ごっこなど野球以外のことでもいいから、思い切り体を動かしてほしいですね。技術レベルの高さは、素直に頼もしいなと思いました。

──ゲームメディアということで食い下がってみますが、インドア趣味の代表格のひとつであるテレビゲームが、野球上達の役に立つことはあるでしょうか?

岡田選手 野球ゲームは、ルールを覚えるには便利ですね。実際に打てる打てない、投げられる投げられないは別として。

──たしかに、遊びながらルールを覚えられるという意味では役に立ちそうですね。ちなみに、みなさんはゲームをされますか?

岡田選手 僕はやらないですね。(中村選手を見て)する?

中村選手 僕もあんまり。

西野選手 僕もやんないです。家にゲーム機、ないですもん。

──まさかの全滅ですか! 何となく移動中にスマホゲームなんかをやっているイメージがあったのですが。

西野選手 キャンプにゲーム機を持ってきている選手は、結構いますよ。

岡田選手 いるいる。周囲に娯楽施設があまりない場所なので、練習が終わると部屋にこもって、みんなで対戦して和気あいあいとやっているみたいですね。

──そういう形なら、ゲームも役に立ちそうですね!

岡田選手 野球は、選手間のコミュニケーションも大事なので。

──最後に、野球をがんばりたいという全国の小学生たちに、現役選手からのアドバイスをお願いします。

岡田選手 子供の頃は技術うんぬんじゃなくて、とにかく楽しくやってほしいですね。

中村選手 僕も同じです。小学生のうちからあれこれ考えて苦しい思いをしたら、続けられないと思います。いまは「野球ってこんなに楽しいんだな」と感じることを第一にして、中学、高校……と、長くやってほしいですね。。

西野選手 以上です!

──ええっ!?

西野選手 いい感じにまとめておいてください!

一同 笑

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▲チームスポーツである以上、選手どうしの仲がいいにこしたことはない。ゲームはコミュニケーションの潤滑油として有益ですって!

<<おまけの4コマ>>

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▲マンガ:戸塚伎一

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ファミ通グループでおもにPCのオンラインゲームを担当。企画記事を作るのが好き。
『まいにちがβテスト』は、ミス・ユースケがPCオンラインゲームで遊んだり考えたりしたことをテーマにしたブログです。タイトルには「つねにβテスト時のわくわく感を抱きながらゲームを遊び、実験的な企画もやっていきたい」という意味を込めていると、後付け設定的に考えました。

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