2023年7月28日(金)~31日(月)までの4日間、中国・上海新国際博覧中心にて、中国最大級のゲームイベントChinaJoy 2023が開催されている。
China Joyを説明するときに、わかりやすいフレーズとして“中国最大規模のゲームイベント”を使用したりするが、実際のところChinaJoyは“China Digital Entertainment Expo&Conference”と銘打たれている通り、会場では、ゲームのみならず、幅広いエンターテインメントコンテンツを取り扱うイベントとなっている(実際のところはデジタル以外のコンテンツも扱っている)。そういう意味では、中国で注目の魅力的なエンターテインメントコンテンツが揃う場所と言っていいだろう(“チャイナジョイ”と言いますし)。
そのためもちろんのこと、中国国内におけるChinaJoyに対する注目度は高く、コロナ禍以前の2019年の来場者合計は36.47万人となっている。コロナがひと息ついた今年は、29日(土)のチケットは売り切れてしまったようで、「待っていました!」とばかりの相当な盛り上がりぶりが期待された。
そんなChinaJoy 2023の会場を見回してみると……。
まず注目すべきは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SIE)ブースだろう。中国で、家庭用ゲーム機の販売が解禁されることが発表された2014年以降、ChinaJoyに出展しているSIEだが、今年もエントランス近くにブースを構え、存在感を見せた。
大々的に展開していたのが、中国のクリエイターを支援するプロジェクトである、China Hero Projectのタイトルの数々。とくに、2022年11月にワールドワイドで展開されることが明らかにされた『Lost Soul Aside』や『Convallaria』が注目を集めていた。
また、映画公開を間近に控えた『グランツーリスモ』の最新作『グランツーリスモ7』がどーんとお目見え、さらに、『ファイナルファンタジーXVI』や『ストリートファイター6』、『THE KING OF FIGHTERS XV』といった中国でも人気の高いシリーズの最新作が出展され、人気を集めていた。
長い行列ができていたのが、プレイステーション VR2の試遊で、『Horizon Call of the Mountain』などがプレイ可能だった。どうやら、「一度試してみたい」というユーザーが多かったようだ。
SIEブースは、ユーザーにプレイしてもらおうということで、試遊台を多く設置しているのが印象的だった。
一方で、クリエイターなどを招いてのステージイベントも充実しており、会期1日目となる7月28日には、バンダイナムコエンターテインメント『鉄拳8』の原田勝弘氏とプロジェクトプロデューサーのマイケル・マーレー氏が登壇して、同作の詳細を解説。さらには、8月25日に発売予定のフロム・ソフトウェア『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマード・コアVI ファイアーズオブルビコン)』のスペシャルステージでは、小倉康敬プロデューサーや山村優ディレクターなどが出演して、実機でのプレイなどを交えつつ、ゲームの魅力を紹介した。
ちなみに、最初に触れた通り、中国では家庭用ゲーム機が解禁されているが(プレイステーション4が中国大陸で発売されたのは2015年3月20日、プレイステーション5の発売は2021年5月15日)、今回のChinaJoyではSIEブース以外では、家庭用ゲーム機向けゲームをあまり見かけなかった。SIEがひとり気を吐いているとの印象だ。中国における家庭用ゲーム機向けタイトルの普及は、これからが勝負ということになるのかもしれない。
ブースの規模的には、ChinaJoy最大だったのではないかと思われるのがバンダイナムコエンターテインメント上海。“ALL BANDAI NAMCO”のテーマのもと、2021年3月に、ゲームとトイ、ホビーなどの部門を統合したバンダイナムコエンターテインメント上海だが、会場ではそんな体制を象徴するかのように、『機動戦士ガンダム』、『NARUTO -ナルト-』、『ワンピース』、“TAMASHII NATION”、“一番くじ”といった具合に、IP、ブランドごとに展開。中国オリジナルの商品なども多く、見どころの多い出展内容だった。
存在感と言えばDeNAブースも相当なもので、同社がスマートフォン向けアプリを配信する『スラムダンク』、『聖闘士星矢』、『キャプテン翼』といった、中国でも絶大な人気を誇るIPを展開。さらには、テンセントやNetEase Gamesといった日本でもおなじみの中国メーカーもさすがの貫禄ぶりを見せていた。
さて、冒頭でChinaJoyを“幅広いエンターテインメントコンテンツを取り扱うイベント”とお伝えしたが、今年は例年以上にその傾向が顕著な印象。そんな印象を強くしている理由のひとつが、今回のChinaJoyが、ChinaJoy Toy Show(CJTS)およびChinaJoy Figure Model(CJFM)というふたつのホビーイベントが同時開催されていること。会場では、人気商品が展示されるのはもちろん、会場限定グッズなども販売されていた。両イベントのエリアは、押すな押すなの大盛況ぶりで、たくさんのバッグを抱えて歩く人たちも多数見受けられた。
じつは、さらにChinaJoyは、eSmart(Global Smart Entertainment Hardware Expo)とCAWAE(Comic & Animation World Amazing Expo)も併催されていたりするから恐ろしい。
ChinaJoyは、ゲームなどのデジタルエンターテインメントを始め、アニメ、コミック、トイ、フィギュアなど、あらゆるエンターテインメントコンテンツ・商品を、より積極的に取り込んでいる傾向が顕著なようだ。そして、そんな状況を何よりも楽しんでいるように見えるのが来場者。イベントに参加するといつもながらに感じることだが、来場者がニコニコうれしそうな顔をして会場を歩いているのを見ると、取材しているこちらもついついうれしくなってしまう。ChinaJoyが、まさに中国の多くのエンタメファンに喜びを与えているのは間違いなさそうだ。
なお、ChinaJoy 2023には“20”のロゴがあしらわれている。ChinaJoyの1回目が開始されたのが2014年のようなので、今回20回目となるようだ。中国の人のエンタメ文化を20年にわたって支えてきたChinaJoyが、これからどのように変化していくのか……楽しみだ。