中国のゲームクリエイターの支援を目的として展開されている、China Hero Project(チャイナヒーロープロジェクト)。中国の情熱溢れる若者たちを幅広くサポートして、プレイステーション用ゲームを開発してもらおうという、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海(SIE上海)による取り組みだが、先日、中国・成都にてChina Hero Projectのカンファレンスが行われ、第3期のタイトルを募集することが発表。合わせて、『Lost Soul Aside』と『Convallaria』がワールドワイドでリリースされることも明らかにされた。
グローバルで力を入れていくというChina Hero Projectだが、当然のこと『Lost Soul Aside』と『Convallaria』に対する期待値も高い。ちなみに両作は、パブリッシングをSIEが担当するという。
ここでは、『Lost Soul Aside』を開発するUltizero Gamesの杨冰(ヤン・ビン)氏と、『Convallaria』を開発するLoong Force の徐敏(シュウ・ミン)氏にお話を聞いた。
杨冰(ヤン・ビン)
Ultizero Games 『Lost Soul Aside』クリエイター
(写真左)
徐敏(シュウ・ミン)
Loong Force 『Convallaria』プロデューサー
(写真右)
※本記事はプレイステーションの提供でお届けしています。
『Lost Soul Aside』日本のコンテンツに影響を受けたハイスピードアクション
――2017年にChina Hero Projectの第1期タイトルとして発表されて、今回満を持しての発売ということになりますが、改めて『Lost Soul Aside』はどんなゲームなのか教えてください。
ヤン『Lost Soul Aside』に関しては2017年に発表して、長く続いているプロジェクトなのですが、それから方向性は大きくは変わってはいません。ハイスピードアクションゲームで、RPG要素もあって……。いまはいろいろとバージョンアップをしているところで、もっと華麗なアクションができるように、かつ、操作はもっとシンプルにできるようにしていきたいというところです。
――どういうところで華麗さを演出しているのですか?
ヤンデザインの部分になりますが、味方キャラクターと敵キャラクターのデザインをなるべく華麗にしています。言ってみれば、『ファイナルファンタジー』シリーズに出てきそうな感じのファンタジー系のキャラクターですね。髪型もそちら系に寄せています。かつ、アクションはなるべく過剰で、ハイテンポになるように作っています。なるべく、実際の人間ではできないような動きを出したりとか。エフェクトのほうでも華麗さを感じられるようにしつつ、作っています。
――『ファイナルファンタジーXV』(『FFXV』)のビジュアルに影響を受けたアクションゲームとのことですね。
ヤンはい。主人公のキャラクターデザインは『FFXV』にインスパイアを受けています。
全体的なデザインの方向性、テーマとしては、日本のアニメとゲームのキャラクターの融合を念頭に置いています。ファンタジー要素がありつつリアルに髪の表現や服装の表現をしたいと思っているんです。僕が受けた印象としては、その代表的な作品が『FFXV』ですね。『Lost Soul Aside』も同じテーマを掲げていて、なるべくファンタジーとリアルのスタイルを融合していきたいという目標がありました。
――『FFXV』以外にも影響を受けた作品はありますか?
ヤンデザイン上は『ファイナルファンタジー』シリーズ全体に影響を受けていますが、アクションというところでは、いろいろな日本のタイトルから刺激を受けています。『ベヨネッタ』や『忍者龍剣伝』だったり、『デビル メイ クライ』などにも影響を受けています。これらは、自分がプレイした印象深いタイトルでもあります。
――2017年から時間をかけて作っていますが、とくに時間をかけているところとはどこでしょうか。
ヤン当初は大まかに方向性を決めていて、発表するときにデモも出していたのですが、具体的なゲームの流れだったり、詳細なところ、敵のデザインだったり、どのくらいのステージ数にするかという規模感は、そこからいろいろと試行錯誤を続けてきました。言ってみれば、アセットを増やすところに時間をかけています。
――本作には、ストーリー性はあるのですか?
ヤンあります。ストーリー性も兼ねつつRPG要素も入れてあります。そこはわりと注力しているところです。さきほどお話しした流れという部分も、ゲームステージのデザインだけではなくて、ストーリーを兼ねて調整しています。
――どのようなストーリーになるのですか?
ヤンPVを観ていただいたらある程度はわかると思いますが、主人公と龍のような生き物の出会いのストーリーでもあります。出会ってからいろいろな冒険の旅が続いていくので、そこでのいろいろな出会いもありますし、チャレンジもあります。
――ストーリーのテーマは何ですか?
ヤンひと言で説明すると、“罪ほろぼし”というところでしょうか。
――本作で、日本のゲームファンにとくに注目してほしいところはどこですか?
ヤン僕自身もそうですが、開発スタッフは、すごくアニメやゲームに影響を受けています。中国のこの世代のみんなはおしなべてそうなのですが、『ドラゴンボール』だったり『NARUTO -ナルト-』だったり、『ファイナルファンタジー』だったり……。ゲームやアニメの影響をすごく深く受けているんです。
本作にも、すごくいろいろな要素が入っています。日本のユーザーさんがPVを観ていただいて、もし今後ゲームを触っていただくと、たぶん共鳴できるところがたくさんあると思います。日本のコンテンツの影響を受けた中国のクリエイターが作ったもの、ということを味わっていただきたいです。
――China Hero Projectに参加された理由を教えてください。
ヤン自分自身は2016年からChina Hero Projectの皆さんと仕事を始めています。そのときはまだ中国ではっきりしたコンソールの市場がなく、メインの市場はネットゲームやソーシャルゲーム、MMORPGでした。コンソールゲームのジャンルがまだはっきりできていない状況で、SIEから資金と技術の提供をもらえるのがすごく大きかったので、China Hero Projectに参加させていただきました。
実際にChina Hero Projectに参加して強く感じたことは、中国のこの特別な状況でコンソールゲームを開発するのにとても強いサポートを受けているということです。孤独さを感じさせられないような状況なので、メンタル的にすごく助かっています。
――最初におひとりで作っていたのが、いま会社をお作りになっているんですよね。自分の作りたいものを作るとなったら、会社でやったほうがいいという判断になったのですか?
ヤン個人開発と会社でプロジェクトチームを組んで開発するのとではいろいろな側面がありますので、一概に言えないかもしれませんが、個人的にはチームになるといろいろなメンバーが肩代わりしてくれるので助かっています。
一方で、チームメンバーの意見やアドバイス、考えかたも受け入れなければならないというところで、全体的には個人の時と違って、シェアすることや理解し合うということが大事になります。また仕事のフローも個人のやりかたとチームのやりかたでは違ってきますね。そこを両立するのが難しいのですが……。
ボリュームの小さなタイトルだったら個人でもいいですし、チームで開発するならもっとボリュームが大きくて、詳細のブラッシュアップももっとハイレベルにできるというところで、方向性が変わってくるかなとは思っています。
『Lost Soul Aside』に関しては、「もう少しボリュームのあるゲームを作りたい」ということで、チームで作ろうと判断しました。
――『Lost Soul Aside』はいま何人くらいで開発しているのですか?
ヤンいまスタッフはとしては40人規模です。ほとんどが開発メンバーです。
――China Hero Projectに参加したからこそ、よかった点としては、どのようなことがありますか?
ヤン参加していない状況はどうだったかというのは、実際のところはタラレバの話になるのでわからないのですが、もしChina Hero Projectに参加していなかったら……と想像すると、資金面は相当ツラかったでしょうね。China Hero Projectに参加することで、いろいろなことに立ち向かうときに心強いところがあります。SIEさんは宣伝プロモーションにも協力してくれますし、絶対的な信用度は上がりますね。ちゃんとしている開発だということの証明にもなりますので。
技術的なサポートの面でも心強いです。私たちはコンソールゲーム開発のノウハウがほとんどなかったので、SIEさんから技術面でのサポートをしっかりと受けられて助かっています。
――最後に、『Lost Soul Aside』を楽しみにしている日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
ヤン『Lost Soul Aside』を日本の皆さんにお見せできることを楽しみにしています。リリースされたら、いろいろな人にプレイしていただいて、共鳴していただきたいです。プレイしていただいたときは、新鮮さを感じていただきたいので、もっと開発をがんばりたいです。発売を楽しみにお待ちください。
『Lost Soul Aside』は、2024年発売を目指して開発中とのことだ。
『Convallaria』テーマは“ハイスピードバトル”
――まずは、『Convallaria』がどのようなゲームなのか教えてください。
シュウオープンワールドの世界で展開されるアクションシューティングゲームです。PvEとPvPの両方に対応していて、クエストをしたり、キャラクターをある程度成長させる必要があります。豊富な武器システムといろいろな戦いかたを用意しています。ユーザーの皆さんにはなるべくいろいろな体験をしていただきたいという思いで開発しています。テーマは“ハイスピードバトル”ですね。
――開発にあたってとくに注力したポイントはどんなところですか?
シュウ開発の段階によってポイントは変わってきますが、初期段階ではコアとなるプレイルールの設定を、おもに時間をかけてブラッシュアップしてきました。開発後半はアートだったりグラフィックを磨きました。いまは試作段階が終わって、本開発に入っているところです。プレイヤーからのフィードバックをたくさんもらって、さらにどこに注力すべきかを精査する段階に入っています。
――開発期間はどのくらいですか?
シュウプロジェクトを立ち上げたのは2016年8月になりますので、6年経っていますね。プロトタイプの開発は終わっていて、いまはαバージョンまで進んでいます。
――発売時期はどれくらいを想定しているのですか?
シュウリリースのタイミングはパブリッシャーと協議して決める予定なのでいま明確にお話するのは少し難しいのですが、開発自体は2023年中に完成させる目標でいます。
――日本のゲームファンにとくに注目してほしいポイントはどこですか。
シュウまずこのプロジェクトを立ち上げた段階でグローバル展開を考えていて、世界中のユーザーにプレイしてもらいたいという考えがありました。『Convallaria』は、いろいろな文化の方でも楽しんでいただけるように作り込んでいます。
ゲーム内には各地域、国の要素を取り入れていて、日本に関しても鳥居をマップ上に取り入れたり、紅蓮の地獄のステージもあります。そんな感じで、日本の方になじみのある文化や要素も入れているので、プレイしたユーザーの方の実際のご意見も聞いてみたいですね。ぜひ楽しんでいただきたいです。
――今回 China Hero Projectに参加された理由を教えてください。
シュウ参加の経緯に関しては、たまたまというか……。China Hero Projectの第2期の募集が開始されたというニュースを見たんですね。そのとき私はちょうど産休に入っていたのですが、旦那さんから「なぜ参加しないの?」と、後押しされまして……。それで会社の社長にお話したところ、「ぜひ参加しよう!」とのことになりました。会社には全体的にソニーファンが多くて、トントン拍子に進んでいきましたね。エントリーして、幸いなことに選ばれていまに至る……という感じです。
――シュウさん的にはChina Hero Projectのどんなところに魅力を感じたのですか?
シュウまずみんながソニーのファンで、プレイステーションユーザーなので、チャンスがあったらプレイステーション向けのゲームを作ってみたいという気持ちがありました。さらにいろいろなサポートも受けられますので、必ずプラスになると思い、応募しました。
――とくにどのへんのサポートを魅力に感じたのですか?
シュウ最初にファンドから資金提供をしていただけたのですが、そこがすごく大きなポイントでした。また、ゲームエンジンも貸してもらえるのも大きかったです。プレイステーションプラットフォームの技術サポートを受けられたのもありがたかったですね。
パブリッシャーの決定も、China Hero Projectのチームメンバーたちのいろいろなサポートなしにはできないことだったので、そういう面も含めて幅広い領域にわたって、サポートしていただけました。
China Hero Projectでは、開発がぶち当たる問題に関して、とにかくきめ細かくサポートしてくれるんですね。この手の開発サポートのプロジェクトはほかでもあるかと思うのですが、おそらくそこではサポートできないようなレベルだと思います。文字通り、本当に“痒いところに手が届く”ようなサポートを全面的に受けられています。
――それはありがたいですね。
シュウサポートの具体例を挙げると、今回のプロジェクトに参加したことで、まずプレイステーションの技術サポートスタッフに直接コンタクトを取れるようになります。そのレスポンスがすごく早いんです。
『Convallaria』では、ゲームエンジンにエピック・ゲームズのUnreal Engineを使っているのですが、Unreal Engineの技術スタッフとも近い関係になりますので、技術的な疑問点が生じたら、すぐに解決できるのもうれしいポイントです。
――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
シュウ今回こういうインタビューの機会をいただいて、日本のユーザーの皆さんにお話できるチャンスをいただけたのはすごくうれしいです。引き続きもっと日本の方々にもこのタイトルのことを注目していただきたいです。皆さんにいただいたアドバイスだったり、いろいろなコメントだったりはすごく大事にしていますので、ぜひ寄せてください。開発も引き続きがんばりますので、皆さんも期待していてください。あとは、皆さんお元気に、体を大切にしていただきたいと思います。