テーブルトークRPGをモチーフに、すべてがカードで表現されたRPG『Voice of Cards』シリーズの第二弾『Voice of Cards できそこないの巫女』。対応機種はNintendo Switchとプレイステーション4、PC(Steam)。本日2022年2月18日(金)にはPC版も発売、ということで『ドラゴンの島』に引き続き、開発スタッフの方々へのメールインタビューの内容をお届け。

『Voice of Cards できそこないの巫女』配信ページ(マイニンテンドーストア) 『Voice of Cards できそこないの巫女』配信ページ(PSストア) 『Voice of Cards できそこないの巫女』配信ページ(Steam)

ヨコオタロウ(よこおたろう)

クリエイティブディレクター

齊藤陽介氏(さいとうようすけ)

エグゼクティブ・プロデューサー

岡部啓一氏(おかべけいいち)

ミュージックディレクター

藤坂公彦氏(ふじさかきみひこ)

キャラクターデザイナー

和田侑樹(わだゆうき)

シナリオライター

三村麻亜沙氏(みむらまあさ)

ディレクター

「藤坂さんにムダにたくさんイラストを描いてもらう、というのがコンセプト」(ヨコオ氏)

――『ドラゴンの島』の発売後、プレイヤーからさまざまなフィードバックがあったと思いますが、どんな意見が印象に残っていますか?

ヨコオ「ソーシャルゲームじゃなくてよかった」というご意見をいただくかと思いましたが、そういう意見はほとんどなかった事が印象的でしたね。

――担当した中で注目してほしいポイントは?

ヨコオ今回、メインシナリオはプロットの段階から和田さん(シナリオチームのホープ)にお任せしていました。若手のあふれるパワーを味わっていただけるとうれしいです。え? ヨコオが担当したパート? なんだろうな……ぼんやり後ろで見てただけなのでよくわからないです。

――シナリオ担当の和田さんは『ニーア リィンカーネーション』の“太陽と月の物語”にも関われていますが、ヨコオさんからは和田さんはどういったタイプのシナリオが得意だとお考えですか? また、今回の『できそこないの巫女』のシナリオで何かオーダーしたことは?

ヨコオ和田さんは“優しい世界”という謎のニックネームを持つ人で、その名の通り本人は優しい人なのです。が、シナリオの内容は、なんというか薄暗いテイストが得意のように見えますね……。シナリオに対して何かヨコオはオーダーを出したような記憶がありますが、何を言ったかは忘れてしまいました……なんだろうな……セクシーなキャラを出せ、とか言ったかな……違うな……

――『ドラゴンの島』はすべてがカードで表現され、TRPG風のアナログ感もこだわったところだと思います。『できそこないの巫女』も同様だと思いますが、シリーズ第2弾として、それ以外にこだわったところはありますか?

ヨコオ「藤坂さんにムダにたくさんイラストを描いてもらう」という重要なコンセプトがあるので、そこだけはがんばってやってもらいましたね……。

――『できそこないの巫女』は“Voice of 速水”となっていますが、速水奨さんにお願いした決め手は? (『ドラゴンの島』の裏コンセプトは「安元さんと付き合って3年目の彼女が、安元さんのGMでTRPGをやっている感じ」だったとのことですが、今回も何か裏コンセプトがあれば教えてください!

ヨコオさまざまな努力をした貴方は、速水奨さんの奥さんの地位にたどりつく事が出来ました。それから10年。忙しい日々が続いたので、あなた方ご夫婦は温泉宿に行くことにしました。ゆったりと体も温まり、山の贅を尽くした食事も大満足。あとは寝るだけ、というところで、夫の速水さんがカードを取り出します。そう、速水さんがゲームマスターとなり、テーブルトークRPGを遊ぼう、というのです。貴方はゆっくりとうなずき、少しばかりのお酒とともに、最高の夜を過ごすのでした……。

『Voice of Cards できそこないの巫女』メールインタビュー。キーワードはキングオブ重低音、タンゴ、ラブコメ成分、巫女と従者の関係、効果が強く演出も独自の連携スキル、そしてセクシーなキャラ!?

速水さんのGMは「キングオブ低音!」(齊藤氏)

――『ドラゴンの島』の発売後、プレイヤーからさまざまなフィードバックがあったと思いますが、どんな意見が印象に残っていますか?

齊藤やはりいちばんは“ゲームのテンポ”についてのご意見でしょうか……。よかれと思った調整が、じつはお客さんの目線で見るといろいろな考えかたがあるんだなぁと、考えさせられました。しかしながら、オンラインでパッチがあてられる時代になったのはよかったなぁと思います。その分、たいへんではあるんですが(汗)。

――本作で注目してほしいポイントは?

齊藤シリーズ作品ではありますが、前作とも違う点もたくさんあります。『ドラゴンの島』を遊んだ方にも完全な初見の方にも楽しんでいただけるはずです!

――『ドラゴンの島』のリリースから4ヵ月も満たず、『NieR:Automata』の5周年、『NieR Re[in]carnation』の1周年とも近い時期という話題の多い時期での発売となっていますが、このスパンでリリースするというのは企画当初から考えていたことなのでしょうか? また、今後の展開も期待しちゃっていいですか?

齊藤粛々と開発を継続していました。今後は……秘密です……。

――『できそこないの巫女』に関して、齊藤さんからオーダーした部分は何かありますか?

齊藤うーん。スケジュール的な優先順位くらいで内容に関しては、ここをオーダーしたって話はないですね。懐かしくも新しいゲームデザインのタイトルではありますが、それくらいゲームシステムとしては完成していると考えていただければ。

――TRPGはゲームマスターの違いで雰囲気も変わりますが、速水さんのGMにはどんな感想を抱きましたか?

齊藤キングオブ低音!

『Voice of Cards できそこないの巫女』メールインタビュー。キーワードはキングオブ重低音、タンゴ、ラブコメ成分、巫女と従者の関係、効果が強く演出も独自の連携スキル、そしてセクシーなキャラ!?

「今回の音楽はタンゴのような哀愁を帯びたラテンのテイストに、前作からあるファンタジー的な要素をミックスさせたイメージ」(岡部氏)

――『ドラゴンの島』の発売後、プレイヤーからさまざまなフィードバックがあったと思いますが、どんな意見が印象に残っていますか?

岡部ゲームの世界観と音楽が合っていて気に入ったという意見を聞いてうれしく思っています。

――本作で注目してほしいポイントは?

岡部音楽面では、歌唱者は前作と同様にKOCHOさん、折田さん(折田雪乃氏)にお願いしたのですが、それに加えてギターの後藤くん(後藤貴徳氏。『NieR』シリーズのレコーディング演奏やコンサート演奏などでおなじみ)やバイオリン島田さん(島田光理氏)の演奏も収録させていただいたので、そのテイストが前作よりさらに音楽的な深みを出していると思います。

――『ドラゴンの島』では岡部さん、瀬尾さん、オリバーさんのお三方が楽曲作りを担当されていましたが、『できそこないの巫女』も?

岡部前回と同じ3人で担当させていただきました。

――『ドラゴンの島』では、アイリッシュっぽい、ケルトっぽい音楽のイメージ、というオーダーがあったとのことでしたが、『できそこないの巫女』はどんな音楽のイメージになっていますか?

岡部今回はラテンのテイストを入れてほしいというオーダーがありました。サンバのような陽気なラテンではなく、タンゴのような哀愁を帯びたラテンのテイストに、前作からあるファンタジー的な要素をミックスさせたイメージになっています。

――『ニーア オートマタ』に引き続き、『ニーア レプリカント ver.1.22』でもThe Game AwardsのBest Score & Music賞を受賞した“世界のOKABE”さんですが、『できそこないの巫女』の音楽の手応えはいかがでしょうか?

世界のOKABEもちろん世界を唸らせる出来になっていると思います!! 私の曲は今回は少ないですが、何と言っても“世界を震え上がらせるセンスのSEO”(瀬尾祥太郎氏)と“世界を驚愕の渦へ巻き込む才能のOliver”(Oliver Good氏)との3人のチームから生まれた音楽ですから(笑)。

『Voice of Cards できそこないの巫女』メールインタビュー。キーワードはキングオブ重低音、タンゴ、ラブコメ成分、巫女と従者の関係、効果が強く演出も独自の連携スキル、そしてセクシーなキャラ!?

「結果、関係が出ちゃったものもあったりなかったりです」(藤坂氏)

――『ドラゴンの島』の発売後、プレイヤーからさまざまなフィードバックがあったと思いますが、どんな意見が印象に残っていますか?

藤坂操作がまったりしているという意見が多くて、思った以上にプレイのスピード感を重要視されるユーザーが多いことをあらためて実感いたしました。今後に活かさねばと身が引き締まる思いです。

――本作で注目してほしいポイントは?

藤坂今回、前作に比べて主要キャラクターまわりのカードが多めなので、その辺は見ていただけるとありがたいです。敵キャラクターも特殊な奴らがいたり、ボスまわりも描くのたいへんだったりしたので、要注目していただきたい!

――巫女の武器には集中線(?)のようなものが描かれていますが、これはどういう意図があるんでしょう?

藤坂すみません。なんか、かっこいいかなと思って。。。特別なものなので目立つように?

――『ドラゴンの島』に登場する道具屋の女の子と『できそこないの巫女』のフィーラ、同じくヴァルツとブライトの外見は似ていますが、何か関係が?

藤坂物量が多くて描くのがたいへんだったので、スター・システム(著作者自身が生んだキャラクターを複数の作品に登場させること)的なこともしているのですが、結果、関係が出ちゃったものもあったりなかったりです。

――筋肉成分が少ないようですが、今回は何成分が多めですか?

藤坂ラブコメ成分が多めです。

『Voice of Cards できそこないの巫女』メールインタビュー。キーワードはキングオブ重低音、タンゴ、ラブコメ成分、巫女と従者の関係、効果が強く演出も独自の連携スキル、そしてセクシーなキャラ!?

「“巫女”と“従者”というペアとしての関係性や、その関係が物語でどう変化していくか……に注目していただけると」(和田氏)

――『ドラゴンの島』をいちプレイヤーとしてどう見ていましたか?

和田“ドラゴンを求めて旅をする勇者”という王道的な物語に、RPGのお決まり事のオマージュ……そして、それらをひっくり返すようなギミックのあるお話がおもしろいです。昔からテレビゲームに親しんでいる方がより楽しめる作品なのかなと感じていました。

――シナリオで注目してほしいポイントは?

和田本作では、“巫女”と“従者”というペアのキャラクター達を中心に物語が進んでいきます。個々人のキャラだけでなく、ペアとしての関係性や、その関係が物語でどう変化していくか……に注目していただけるとうれしいです。藤坂さんが描く魅力的なイラストとともに、お気に入りキャラを見つけてもらえるといいなと思います。

――物語について、ヨコオさんからは何かお題のようなものはありましたか?

和田1作目の『ドラゴンの島』と、パッと見で分かるような違いを出してほしい、という要望がありました。なので、本作では大陸でなく“海を渡って島々を巡る”体験になっています。物語の内容に対するお題はなかったと思います。フェイズ毎にヨコオさんに確認いただきつつも、けっこう自由に書かせていただけたなと感じています。

――『できそこないの巫女』には『ドラゴンの島』に登場したキャラクターと似ている人物もいます。続編ではありませんが、『ドラゴンの島』と世界観や時系列的につながりなどはありますか? まったく別の世界線のような物語なのでしょうか?

和田前作『ドラゴンの島』で登場した大陸から、遠く離れた辺境の海が舞台で、少しだけ過去の物語……のイメージで書きました。そのため続編ではありませんが、まったく別の世界線というわけでもありません。前作を知っていると「おや?」と思えるエピソードも入れているので、繋がりを見つけつつ楽しんでいただけると幸いです。

――和田さんは『ニーア リィンカーネーション』の“太陽と月の物語”のシナリオなども手掛けていますが、『リィンカネ』のシナリオ作りとは勝手が違うところ、また、本作のシナリオについてヨコオさんとのやり取りで印象に残っていること、『できそこないの巫女』のシナリオで心掛けていることはありますか?

和田『リィンカネ』のメインシナリオでは、“多くを語らない”ことで雰囲気を演出しています。対して本作では、しっかりテキストで説明しつつも雰囲気を感じてもらえるよう文章表現にこだわりました。テキスト量も多く、こだわり始めると無限に時間が溶けていくことに悩みつつも楽しく書けたように思います。また、コミカルな印象が強かった一作目『ドラゴンの島』と比べて、本作はしっとりした雰囲気になりました。ヨコオさんにもいろいろ相談したり指摘をいただいたりしましたが、最終的にライターの個性を尊重してくださるので、自然と一作目との差別化ができたように感じます。

『Voice of Cards できそこないの巫女』メールインタビュー。キーワードはキングオブ重低音、タンゴ、ラブコメ成分、巫女と従者の関係、効果が強く演出も独自の連携スキル、そしてセクシーなキャラ!?

「連携スキルは効果が強く演出も独自のものになっていますので、“ここぞ!”というときに使ってみてもらえれば」(三村氏)

――『ドラゴンの島』の発売後、プレイヤーからさまざまなフィードバックがあったと思いますが、どんな意見が印象に残っていますか?

三村すでにヨコオワールドが好きな方も、そうでなかった方にも手に取っていただき、さらに声を上げて反応をいただいていること自体にホッとしました。また、おまけ要素として入れていた遊技場のカードゲームに関して、おもしろいといったポジティブな反応をいただけたのはとくにうれしかったです。対面で遊ぶのがいちばんおもしろいだろうという設計になっていたのですが、時勢柄、難しくなってしまったので、開発はたいへんだったけれど、おまけですし、あまり触れていただけないかな…と思っていたので。

――注目してほしいポイントは?

三村ゲーム全体になりますが、今作ならではの表現をいろいろとチャレンジしているので、遊びながら注目していただければうれしいです。

――基本システム、バトルのルールや難易度など、『ドラゴンの島』から変えたところはありますか?

三村基本部分は変えていません。物語を味わってもらいたいので難しくしすぎず、『できそこないの巫女』から初めて遊んでも大丈夫なようになっています。

――連携スキルは巫女と従者で発動できるスキルのようですが、それ以外でどんな特徴があるのか教えてください(必要な魔石は多め? 資料の画像に「サンダーストライク」を習得した、とありますが、事前に何らかの条件を満たして習得しておく必要が?)

三村物語を進めていくと習得することができます。大技になっているので魔石が多く必要になりますが、その分、効果が強く演出も独自のものになっていますので、「ここぞ」というときに使ってみてもらえればと思います。

――“心の世界”のフィールドは、心の声のようなものがマスに書き込まれていて、通常のフィールドとは違う雰囲気ですが、バトルも通常とは違う形になるのでしょうか?

三村遊びかたがいろいろあると複雑になり難易度が変わってしまうと考え、バトルは同じ形となっています。その分、見た目部分には変化を出したいと工夫しました。奇妙な世界が物語にどう関わっているのか、楽しみにしていただければ幸いです。

『Voice of Cards できそこないの巫女』メールインタビュー。キーワードはキングオブ重低音、タンゴ、ラブコメ成分、巫女と従者の関係、効果が強く演出も独自の連携スキル、そしてセクシーなキャラ!?

 メールインタビューは以上。本記事のタイトルに挙げたキーワードの中に、『できそこないの巫女』を言い表したキーワードとして合ってないようなものも、あったりしたかもしれないが、そこはゲームをプレイしてご確認いただければ(セクシーなキャラは出てきません、たぶん。でも何がセクシーかは主観ですよね?)。