スクウェア・エニックスよりNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)、プレイステーション4、PC(Steam)用ソフトとして2021年10月28日(Steam版は10月29日)に発売された『Voice of Cards ドラゴンの島』。その『Voice of Cards』シリーズ最新作となる『Voice of Cards できそこないの巫女』が本日2022年2月17日(Steam版は2月18日)に発売される。本稿では、同作のプレイレビューをお届けしよう。
※本稿ではネタバレには配慮していますが、プレイするまで何も知りたくない! という方はご注意ください。
『Voice of Cards』シリーズとは
テーブルトークRPGをモチーフに、すべてがカードで表現された『Voice of Cards』。ダウンロード専売で、プレイ時間は10時間余りという、気軽に遊べる作品だが、メインスタッフにクリエイティブディレクターはヨコオタロウ氏、エグセクティブ・プロデューサーは齊藤陽介氏、ミュージックディレクターは岡部啓一氏(MONACA)、キャラクターデザイナーは藤坂公彦氏といった豪華メンバーが名を連ねる。
前述の通り、テーブルトークRPGをモチーフにしているため、ボイスはプレイヤーを導くゲームマスター(GM)のみ。『ドラゴンの島』のGMは安元洋貴さんが務め、『できそこないの巫女』では速水奨さんがGMに。本作でもイケボでプレイヤーを導いてくれる。ちなみに前回同様に、実際に部屋でTRPGをプレイしているようなうな臨場感を出すため、ふだんはNGになる声を整えたり言い直している部分も、あえてOKテイクとして使っている。
バトルはボード上で行われるターン制バトル。カード内の赤い石はHP、左下が攻撃、右下が防御を表している。1ターンごとに溜まるジェムを消費してスキルを使い、敵を倒していく。
『できそこないの巫女』の物語の概要
本作の舞台は美しい海に囲まれた、精霊が住まう諸島。“巫女”と呼ばれる女性と、巫女を守る“従者”が組んで、代々、島を維持するために精霊を生き永らえさせてきたという。だが、諸島のとある島には巫女がおらず(正確には巫女になれなかったラティがいる)、滅びの日を待つのみとなっていた。
主人公のバランは、島を救うため、そして巫女になれなかった少女ラティを巫女にするため、周辺諸島にいる4人の巫女(青ノ巫女、赤ノ巫女、黒ノ巫女、白ノ巫女)へ会いに行くことにする――といった物語となっている。
『ドラゴンの島』との違いは?
フィールドにはカードが敷き詰めれており、1マス1マスカードをめくり、進んで行く。カードを切る音やめくる音が何気に心地いい。たまにハプニングカードが出たり、敵と遭遇してバトルになったり、といったところは『ドラゴンの島』と同様。バトルルールも同じく大きな変化はない。
だが、『できそこないの巫女』には『ドラゴンの島』とはまた異なる魅力に溢れている。以下ではそれらを紹介しよう。
エグ味を増した(?)物語
『ドラゴンの島』はシリーズの第1作目ということもあってか、いま思えば王道路線。今回の『できそこないの巫女』は憎悪と狂気、悲痛といった要素が、より濃く表現された内容になっている印象(主人公バランも少しサイコパス)。でも、たちの悪い(?)ことに、美しく神々しい音楽が悲しい、苦しい展開も、より儚く美しいものにしてしまい、またつぎの悲劇を求めてしまうんですよね……。
『ドラゴンの島』のプレイヤーなら気になっていたであろう、ヴァルツと『できそこないの巫女』のブライトの瓜ふたつ問題は、驚きの関係性が明らかに。『ドラゴンの島』をやり直してみたい気持ちが芽生えてくるほど。『できそこないの巫女』で始めて触れた方は『ドラゴンの島』をプレイすると、楽しみが増えると思うのでぜひ。
戦略性が上がったバトル。緊張感と爽快感もアップ
『できそこないの巫女』では、巫女と従者というペアがひとつのポイントで、バトルでは巫女と従者の力を合わせた連携スキルが使用可能。連携スキルの発動には必要となるジェムも多いが、その分、大きな効果が得られるスキルとなっている。
連携技を使うためにジェムを温存し、いつ使うか、といった戦略性のほか、習得するスキルによってパーティ内での役割も変わったりするのも本作のおもしろいところ。たとえば、ラティは基本的に回復スキルの習得が多いサポーター的なキャラなのだけれど、あるタイミングで覚えるスキルとその属性が、後半の敵の一部の場所でかなり有効でアタッカー的な役割として活躍できたり。
『ドラゴンの島』ではあまり苦戦した記憶はないけれど、あまり寄り道せずに進めていくと、けっこうギリギリの戦いになることも多く、バトルの歯応えも増している印象だ。さらに、闘技場もあって腕試しもできる。
フィールドの仕掛けや遊びもさらに豊富に
フィールド上でも、連戦が終わるまでセーブができないエリアや、ステルスゲームのように敵に見つかったら入り口からやり直し、といった遊びもあり、カードでしか表現できない制約の中で、あの手この手で楽しませてくれる。
高速化機能
ゲーム設定を“高速”にするとゲーム速度が上昇(一部適用されない個所があります)。フィールドで特定のボタンを長押しすることでも設定の切り替えが可能。本作は大海原に浮かぶ諸島が舞台、さらにダンジョンも広くなった印象で、バトルする機会も多くなっている。その分、とくに雑魚戦はこの高速化がうれしい。
やっぱり音楽がいい
『ドラゴンの島』ではアイリッシュっぽいフィドル(バイオリン)による陽気な音楽だったり、岡部啓一氏らしい儚くてメロディアスなボーカル曲が印象的だったが、『できそこないの巫女』では大海原が舞台ということもあって、海のスケール感を感じさせる音楽に。もちろん、儚く美しいボーカル曲もあり。
ゲームデザインはそのままに、新たな物語と新たなキャラクターで楽しめる『Voice of Cards できそこないの巫女』。すべてをカードで表現するアナログゲームっぽさと、デジタルならではの演出が加わり、テーブルトークRPGを体験したことがない人もその魅力が味わえるのが魅力のひとつ。十数時間で楽しめる手軽さもいい。『ドラゴンの島』をプレイしていなくても物語はつながっていないので(世界観的なつながりはあるかも?)、この機会にぜひ『Voice of Cards』シリーズをプレイしてみてはいかがでしょう。