プライベートディビジョンからプレイステーション4、Xbox One、PC、Nintendo Switch向けに発売中のRPG『アウター・ワールド』。先日、追加ストーリーとなる拡張版の第二弾『アウター・ワールド:エリダノス殺人事件』が配信された(Nintendo Switch版は2021年内配信予定)。
本拡張パックは、ハルシオン・コロニーで起きた殺人事件の謎を解くという推理モノとなっている。プレイヤーは、半知覚デバイス“異常探知機”で手掛かりを集めながら、数多くの容疑者と出会うことになる。新たな発見を行うごとに追加のダイアログパスや異なるクエストルートがアンロックされ……と、ゲームとSFミステリが融合したコンテンツとなっているようだ。
※拡張版をプレイするにはゲーム本編が必要となります。
そして、この『エリダノス殺人事件』を持って、『アウター・ワールド』は完結を迎えるという。『Fallout: New Vegas』などを手がけたObsidian EntertainmentによるRPGとして、発表時から大きな注目を集めてきた『アウター・ワールド』は、記者にとっても発売前から追いかけていたタイトルということもあり、極めて感慨深い。サンタモニカにも取材に行ったなあ……などと、思い出に浸っていたら、開発者へのメールインタビューのご提案をいただいた。
では!ということで気張って13問の質問を用意し、それに対して答えてもらったのが本稿となる。お答えいただいたのは、Obsidian Entertainmentにて『アウター・ワールド』の共同ゲームディレクターを務めるティム・ケイン氏とレオナルド・ボヤースキー氏。『アウター・ワールド』を語るとなると、まずはこのふたりが登場するという、同作の顔ともいうべきクリエイターだ。おふたりの『アウター・ワールド』に対する思いをご確認されたし。
Tim Cain氏(ティム・ケイン)
Obsidian Entertainment
『アウター・ワールド』共同ゲームディレクター
(写真・左)
Leonard Boyarsky(レオナルド・ボヤースキー)
Obsidian Entertainment
『アウター・ワールド』共同ゲームディレクター、クリエイティブディレクター
(写真・右)
目指していたことの多くを達成できた
――『アウター・ワールド』が完結したとのことで感慨深いです。まずは、最終エピソードである『エリダノス殺人事件』について聞かせてください。最終エピソードをなぜ推理モノにしようと思ったのですか? 『アウター・ワールド』の世界観ともまたちょっと違うような……。そんなことはないです?
ティム探索、ユーモア、戦闘など、プレイヤーがもっとも気に入っているゲームの基本要素を、ミステリーという枠組みの中で、エキサイティングなストーリーに包み込んで体験してもらえると考えました。うまくいったと思いますよ。
――『ゴルゴンに迫る危機』と『エリダノス殺人事件』は、『アウター・ワールド』本編の開発中からすでに構想されていたものなのでしょうか? それとも『アウター・ワールド』リリース後に、ユーザーさんからの反応を見て、「こちらの方向性がいい!」ということで、開発されたものなのですか?
ティムベースゲームを完成させる前から、ふたつの拡張パックを作ることは決まっていましたが、計画の大部分はゲームをリリースした後に行われました。ベースゲームでユーザーが気に入ったものに注目し、それらをより多く提供できるようにしましたが、同時に未開拓の場所や使われていないNPC、ストーリーがもっともも少ない企業など、残された課題も検討しました。私たちは、ハルシオンのコロニーの残りの部分に光を当てたかったのです。
――『エリダノス殺人事件』を開発するにあたって、注力したポイントをお教えください。
ティム最初は、“誰がやったかわからない”殺人事件の捜査で、どんなプレイヤーキャラクターでも謎を解けるように、『アウター・ワールド』のスタイルで行われましたが、徐々にハルシオンコロニー全体の大きな脅威が明らかになってきました。
――ゲーム本編を楽しんでいたユーザーさんに対して、「とくにここは楽しんでほしいなあ」というポイントがありましたら、お教えください。
レオナルド『エリダノス殺人事件』では、新たな惑星エリアが開拓され、プレイヤーはベースゲームでしか聞いたことのない“Halcyon Helen”や“Black Hole Bertie”などの有名な入植者と出会うことができます。さらに、『エリダノス殺人事件』ではレベルキャップが引き上げられ、購入できる特典や、“エリダノス”でしか受け取れない新たなフローが開放されます。
――質問をひねりだそうと『アウター・ワールド』の公式サイトを拝見させていただいていたら、本編、『ゴルゴンに迫る危機』、『エリダノス殺人事件』それぞれのメインビジュアルは、人物が後ろ姿でした。これには何か深い意味があるのでしょうか? いまさらながら気になってしまいまして……。
ティムそれぞれの表紙には、プレイヤーを象徴するキャラクターが、世界に向かって、自分の未来や運命に向かっている姿が描かれています。私たちは、プレイヤーがどんなキャラクターを演じるのかわからない状態で、プレイヤーを待ち受ける魅力的な可能性を表現したかったのです。
――さて、『アウター・ワールド』がいよいよ完結となりました。完結しての率直なご感想をお教えください。
ティム私たちのチームは、このゲームで素晴らしい仕事をしたと思います。私は最初から最後まで、何人ものキャラクターを使って十数回プレイしましたが、プレイするたびに楽しくておもしろくて仕方がありませんでした。これは非常に素晴らしいことです。
――以前お話をうかがったときは、“いままでになかったような世界観のゲームを作ってみたい”と開発者の方にうかがったのですが、完結してみて、そのあたりの手応えはいかがでしょうか?
レオナルド私たちが目指していたことの多くを達成できたと感じています。『アウター・ワールド』で開発を始めた世界は、独自の感触とトーンを持ったユニークなものであり、時間の経過とともに成長し、進化していくことが期待されています。
――また、こちらも以前お話をうかがったときは、本作では“プレイヤードリブン”に注力していて、そのために、“Flaw System(フローシステム)”などを採用したとのことですが、そのあたりの手応えはいかがでしょうか? “Flaw System(フローシステム)”は、今後御社のゲーム開発において、デフォルトとなる感じですか?
ティムそうですね、フローやそれに類するシステムは、現代のRPGにとって重要だと思います。プレイヤーキャラクターにフローがないことを主張する必要はないし、完璧な存在に成長する必要もないことを示しました。限界があることは、キャラクターに現実味を持たせるために重要なことです。
――そのほか、完結にあたっての“成績表”ではございませんが、『アウター・ワールド』で達成できたと思う点をお教えください。また、逆に「ここは反省が残る」「ここは次回の課題にしたい」といった点などありましたら、お教えください。
ティム娯楽性とユーモアにあふれ、冒険と可能性に満ちた全く新しいIPを創造できたことをもっとも誇りに思っています。
――2019年夏に取材させていただいた『アウター・ワールド』がついに完結ということで、記者としてもとても感慨深いのですが、開発期間中も含めたこの数年間で、もっとも印象に残っている出来事をお教えください。
ティムAIが誤作動したり、アニメーションが誤ってループしたりと、とてもおもしろいバグがありましたが、それらはチーム内でしか共有できないビデオに収めました。私のお気に入りのパブリックイベントは、2018年の“The Game Awards”での最初の公開と、『アウター・ワールド』の開発状況を見事に捉えたNoclipの素晴らしいドキュメンタリーのふたつですね。
『アウター・ワールド』が初公開された“The Game Awards 2018”の映像
Noclip『アウター・ワールド』ドキュメンタリー(英語)
――完結記念の“成績表”ではございませんが、『アウター・ワールド』を100点満点で評価すると、ずばり何点ですか?
ティム数値的なスコアを割り当てることはとても難しいので、スペーサーズチョイスを言い換えてみましょう...「最高のゲームではなく、それは『アウター・ワールド』です!」。
――今後のことを聞かせてください。ずばり『アウター・ワールド』の続編はあるのでしょうか? それとも『アウター・ワールド』のノウハウ(DNA)は次回作に受け継がれる感じでしょうか? Obsidian Entertainment様はXbox Game Studios様のファミリーとなりましたので、『アウター・ワールド』の続編と言いましても、すんなりとは作れないかもしれませんが……。
※残念ながらコメントなし。
――最後に、日本の『アウター・ワールド』ファンに向けてメッセージと、皆さんのファンに向けての今後の展望をお願します!
ティム『アウター・ワールド』を遊んでいただきありがとうございました。そして...”Onakakara Sakanaga Desu!”(※)
※”Onakakara Sakanaga Desu!” は、ティム・ケイン氏が寿司屋でよく使う言葉とのこと。“魚でお腹がいっぱい”という意味だそうです。『アウター・ワールド』を満喫したということでしょうか……。