2020年3月28日(土)と29日(日)に開催が予定された『NieR』シリーズ10周年を記念したコンサート“NieR:Theatrical Orchestra 12020”東京公演は、新型コロナウイルス感染症が拡大している現状を踏まえ、開催が中止された(4月末の大阪公演も同様に中止)。

公演中止をアナウンスする公式サイトより。

 だが、同じく中止になった“舞台 ヨルハVer1.3aa”と“NieR:Theatrical Orchestra 12020”、そしてトーク編の3番組を計10時間にわたって、ニコニコ生放送で配信する“【ニーア】で無理やり10時間やっちゃう生放送”が3月29日に実施。生放送は、10時間どころか翌30日の早朝まで配信される、という10周年らしいお祭り的な放送となった。
※“舞台 ヨルハVer1.3aa”は無観客での収録配信、“NieR:Theatrical Orchestra 12020”は無観客での生演奏配信。

 本稿では、その放送の中から“NieR:Theatrical Orchestra 12020”の模様をリポート。記事にネタバレが含まれるので、もし興味のある人はいまからでもニコ生で視聴してから、本リポートをご一読いただけると幸いです。

ニコニコ生放送配信ページ(有料:5,000ニコニコポイント、プレミアム会員は4,500ポイント)
『NieR:Theatrical Orchestra 12020』東京公演
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv324824125
※販売は2020年4月22日(水)23時59分まで

 ちなみに、配信当日は、ウイルス拡大の状況下、東京では春の雪まで降り、いろいろな意味で「NieRらしさ」と感じざるを得ない日に。

 コンサートの生放送は、無人のステージ、観客席を捉えたステージ後方のカメラアングルからスタート。やがて、オーケストラが入場してチューニングを行い、それが終わると、『NieR』シリーズ コンポーザー岡部啓一氏による挨拶があり、続いて指揮の大井剛史氏が入場した。通常であれば大きな拍手で迎えられるはずのふたりだが、東京国際フォーラムのホールAはシーンとしたまま。その様子が特殊な状況ということを改めて実感させられることに……。

 だが、今回、スタッフの方々は無観客ということを逆手に取り(?)、23台のカメラを使って、いままでにないコンサート映像を撮ることに方針転換。ふだんのコンサートでは見ることができない角度や演奏者の近くにカメラを設定したりと、臨場感溢れる映像になっていた。

9Sと2Bの異質な純愛

 幕開けは、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の楽曲で構成された第一部から。スクリーンにはディレクターのヨコオタロウ氏が本コンサートのために編集した映像、物語が流れる(文字が多めなので、ここに関してはニコ生で確認できてよかったと言えましょう)。

 1曲目は『崩壊の虚妄』。弦の響き、コーラスの迫力、音もいい! 今回のコンサートはスゴくよさそう、という予感を感じさせるに十分な1曲。

 『崩壊の虚妄』の演奏が終わると、2B役の石川由依さん、9S役の花江夏樹さん、ポッド042役の安元洋貴さんによる朗読。

 機械生命体の前哨基地を訪れた2Bと9Sは、そこで複数のアンドロイドの遺体を発見する――。

 このシーンでは花江さんがナレーションも務め、3人による朗読が終わると、再び花江さんのナレーションへ。すると、そのナレーションに合わせるように2曲目の『複製サレタ街』のイントロがスタート。今回は、曲中朗読も演出として採り入れられたコンサートになっていた。

 3曲目は『美シキ歌』。エミ・エヴァンスさんとジュニーク・ニコールさんが登場し、オーケストラをバックに歌いあげる。コーラスもパワフル。

 『美シキ歌』が終わると、再び朗読へ。ここでポッド153役のあきやまかおるさんが加わり、物語は9S視点で進み、次第に不穏な展開を見せていく――。アンドロイドなのに感情を持っているかのような花江さんの9Sと、機械的なあきやまさんのポッド153。その好対照ないつものやり取りを堪能しつつ、曲は物語の展開にふさわしいレクイエムのような『追悼』へ。『追悼』の途中でも曲中朗読があり、そこでは9Sの深層願望、秘めた欲望が暴かれ――花江さん悶絶(の演技)。

 『追悼』で9S同様、観る者の心をズタボロにした後は、激燃えの『双極ノ悪夢』という緩急。朗読の後にスクリーンに表示されるヨコオ節の文章が畳みかけ、映像と音楽、朗読、文章とさまざまな形で『NieR:Automata』の世界が語られ、まさに“Theatrical”なコンサートが展開される。

 瀕死の9Sが「最後の賭けに出る……」という朗読劇が盛り上がるなかで、『終ワリノ音』という怒濤の展開。

 9Sの最後の告白が終わるとエミさんとジュニークさんが歌う『Weight of the World』。

 『Weight of the World』の余韻も冷めやらぬなか、最後に朗読劇の最大の、そしてこれは生で観たかったと思わせる演出が!(コロナ許さん! 許さんぞおおおお!) この演出は、ぜひ配信で見てほしいところ……。

 一部のラストはプレイヤーが何度も聞いたであろう、廃墟都市で流れる『遺サレタ場所』。映像にはイメージボードなどが映り、『NieR:Automata』の開発初期からこれまでを振り返っているかのような、『NieR:Automata』の歴史を感じさせる映像に……。

儚く美しい『NieR』の原点

 第二部は、“バージョンアップ版”とされる『NieR Replicant ver.1.22474487139...』の原点となる『NieR Gestalt / Replicant』の楽曲から。いきなりエンディング曲『Ashes Of Dreams』というだけではなく、エミさんとジュニークさんのデュエットという、『NieR Replicant』と『NieR:Automata』の世界観のつながりを強く感じさせる演奏でスタート。続いて『夏ノ雪』 、『イニシエノウタ』へ。『イニシエノウタ』では再びエミさんとジュニークさんが歌い、途中、『イニシエノウタ/運命』のようなビート強めで疾走感あるアレンジに。

 第二部の朗読パートはニーア役の遊佐浩二さん、ヨナ役の野中藍さん、そして『NieR Replicant ver.1.22474487139...』では白の書を演じる安元洋貴さんが登壇。遊佐さんと野中さんは、『NieR』関連イベントの参加は初めて。生で演じられるニーアとヨナの会話は新鮮で、それでいて懐かしく、『NieR Gestalt / Replicant』の景色が蘇ってくる。

 朗読劇では、ニーアはヨナを守るため、新宿でマモノと戦うという『NieR Gestalt / Replicant』冒頭のシーンが。だが、朗読が進んでいくと、ニーア視点と思われたものが、じつは……という悲しい展開。それが明らかにわかるとこで流れる『カイネ』のヴァイオリンソロは切ない。『NieR Gestalt / Replicant』をプレイした人ならグッとくる展開になっており、未見の人はオススメです。

 コンサートは『オバアチャン』、『深紅ノ敵』、『カイネ』、『魔王』、『エミール』と名曲が連発。それぞれに盛り上がるポイントがあり、朗読劇で兄妹の絆が描かれるエピソードのあとに演奏される『エミール』は途中からガラッとアレンジが変わり、コーラスも入ってきて……という流れは鳥肌モノ。スクリーンには、『NieR Replicant』から『NieR:Automata』へとつながる歴史が綴られていき、10周年の集大成的な映像で幕を閉じた。

 その後、ステージには演者の皆さん、歌い手のおふたり、そして岡部氏が登壇し、視聴者に感謝の意を述べた。

「海外ツアーは参加できなかったけれど、今日は参加できて、超うれしかったです。今は大変な時ですが、皆さん、気をつけてくださいね」(ジュニーク・ニコール)

「これまで支えてくれてありがとうございました。自分は10年前に『NieR』の世界に出会えて、本当に恵まれていると思っています。自分も『NieR Replicant』の曲は愛しく思っていて、それを10年歌い続られたことに感謝しています。これからも皆さんに『NieR』の歌を届けれらたらと思います」(エミ・エヴァンス)

「無観客ということでしたが、画面の向こうにお一人お一人の顔が見えるような気持ちです。ご覧いただききありがとうございます。Twitterのトレンドにも上がったようですし、今日は朝までNieR10周年をお祝いできたらと思います」(あきやまかおる)

「朗読ではたくさん叫びました。9Sの性癖もバレてしまいまして、ちょっと恥ずかしかったですけど(笑)、久しぶりに9Sを演じられて、本当に幸せでした。また、『NieR Replicant』の皆さんと共演できて、いちファンとしてもとてもステキなイベントになったと思います」(花江夏樹)

「本当は皆さんの顔を見ながら音楽を聴いたり、朗読できたら最高だったと思うんですけど、悔しい思いを抱えながら、スタッフの皆さんがファンの方々の声に応えたいとがんばってくれて、23台のカメラとともに同じ時間を共有できたことは幸せです。『NieR』シリーズは10周年で、『NieR:Automata』はまだ3年ですが、この作品に携われて私自身、幸せな気持ちでいっぱいです。『NieR Replicant』のバージョンアップ版もあるということで、これからももっともっと『NieR』を盛り上げていけたらなと思います」(石川由依)。

「今日はこういう形になりましたが、僕は『NieR』に関してはファンであり、演者でもあるということで、僕自身も今日のイベントを楽しみにしていました。第一部の朗読の出番が終わった後、PCでコメントなどで盛り上がっている様子を見ていると、無観客という意識がなくて、現代ってスゲェなと思いました(笑)。新作も発表されましたが、『NieR Gestalt / Replicant』からは10年、『NieR:Automata』からは3年、応援してくださった皆さんの力あってのことなので、こういう状況ですが、楽しいことや感動することを忘れず踏ん張っていきましょう」(安元洋貴)。

「『NieR』のイベントとして出演するのは初めてでしたので、今日、朗読で少年ニーアではなく、青年ニーアでもなく、魔王と呼ばれたニーアを演じられてうれしく思っています。また、ヨナといっしょにお芝居ができて非常に楽しかったです。また、バージョンアップされた『NieR Replicant』で、そしてまた違った形で皆さんにお会いできればと思っています」(遊佐浩二)

「(遊佐さんを見ながら)ヨナもそう思う! お兄ちゃん、そして応援してくださってる『NieR』ファンの皆様、ずうっといっしょだよ、大好き!」(野中藍)

「振り返るといろいろなことがあったなと思いながら、皆さんへの感謝を胸にコンサート見ていました。僕にできることは、皆さんに楽しんでもらえるものを作ることだと思っていますので、これからもがんばって作っていきたいと思っています。応援していただけるとうれしいです」(岡部啓一)

 そして「10年の感謝の気持ちをギュッと1曲に詰めました」と岡部氏が紹介して、最後にアンコール曲が演奏された。

 演奏の前には、この日集まった『NieR:Automata』と『NieR Replicant』の演者全員が登壇し、夢の共演とも言える朗読が行われた。そしてここで最後のサプライズも――。また、アンコール曲の映像では『NieR』のイベントやコンサート、出版物の発売などで振り返る10年の軌跡が。これは一層、胸にグッとくる……。

ただでは転ばないエンターテインメントに関わる人たちの気概

 『NieR』の音楽イベント史上、一、二を争う最高の内容だった今回の“NieR:Theatrical Orchestra 12020”。それが無観客で開催せざるを得なかったということは、非常に残念だけれども、中止する選択もあったはずだが、リスクも伴う状況下でこうして配信という形で届けてくれたスタッフの方々に感謝。こうしたやるせなさも、ある意味『NieR』らしい。つぎの10年に向けた、『NieR』伝説の新たな始まりとして記憶に刻まれるコンサートになったと思うことにして、リポートを終わります。次の機会があったときは、今回の分も含めて拍手を送りたい。10周年おめでとうございます!

【出演】
コンポーザー:
岡部啓一

ボイス:
遊佐浩二 / 野中藍(『ニーア レプリカント』より)
石川由依 / 花江夏樹 / あきやまかおる(『ニーア オートマタ』より)
安元洋貴(『ニーア レプリカント』、『ニーア オートマタ』より)

歌手:
エミ・エヴァンス/ジュニーク・ニコール

指揮:
大井剛史

演奏:
東京フィルハーモニー交響楽団

コーラス:
Barzz~鳥の吟遊詩人たち~

<第一部>
M1 『崩壊の虚妄』
朗読 2B(石川)、9S(花江)、ポッド042(安元)
M2 『複製サレタ街』 曲中朗読:9S(花江)
M3 『美シキ歌』 ヴォーカル:エミ・エヴァンス/ジュニーク・ニコール
朗読 2B(石川)、9S(花江)、ポッド153(あきやま)
M4 『追悼』 曲中朗読:2B(石川)、9S(花江)
M5 『双極ノ悪夢』
朗読 2B(石川)、9S(花江)、ポッド153(あきやま)
M6 『終ワリノ音』 曲中朗読:9S(花江)
M7 『Weight of the World』 ヴォーカル:エミ・エヴァンス/ジュニーク・ニコール
朗読 2B(石川)、9S(花江)、ポッド153(あきやま)
M8 『遺サレタ場所』 曲中朗読:2B(石川)、9S(花江)

<第二部>
M9 『Ashes Of Dreams』 ヴォーカル:エミ・エヴァンス/ジュニーク・ニコール
朗読 白の書(安元)、ニーア(遊佐)、ヨナ(野中)
M10 『夏ノ雪』 曲中朗読:ニーア(遊佐)、ヨナ(野中)
M11 『イニシエノウタ』 ヴォーカル:エミ・エヴァンス/ジュニーク・ニコール 曲中朗読:ヨナ(野中)
朗読 白の書(安元)、ニーア(遊佐)、ヨナ(野中)
M12 『オバアチャン』 曲中朗読:白の書(安元)
M13 『深紅ノ敵』
朗読 白の書(安元)、ニーア(遊佐)
M14 『カイネ』 曲中朗読:白の書(安元)、ニーア(遊佐)
M15 『魔王』
朗読 白の書(安元)、ニーア(遊佐)、ヨナ(野中)
M16 『エミール』 曲中朗読:白の書(安元)、ニーア(遊佐)、ヨナ(野中)

<アンコール>
アンコール 『???』 

Photo by Takanori Tsukiji, Kazuhiro Watanabe, Zun