2019年4月27日の東京国際フォーラムでの公演を皮切りに、シンガポール、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、ブラジル、イギリス、メキシコと多数の国で開催された『キングダム ハーツ』(以下、『KH』)シリーズのオフィシャルオーケストラコンサート“KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-”。そのツアーの終盤戦となる大阪公演(昼公演/夜公演)が、2019年11月30日、大阪国際会議場メインホール(グランキューブ大阪)にて開催された。

<公演情報>
KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres- 大阪公演
2019年11月30日(土)開催
【昼公演】 11:30開場 / 12:30開演
【夜公演】 17:30開場 / 18:30開演
会場:大阪国際会議場メインホール(グランキューブ大阪)
演奏:大阪交響楽団
コーラス:キングダム ハーツ大阪公演特別合唱団
主催:La Fee Sauvage
主管:Disney Concerts

サインは、上段左から橋本真司氏、野村哲也氏、間一朗氏、下段左から石元丈晴氏、下村陽子氏、関戸剛氏のもの。
展示物も。左は『KH』の台本(声優陣のサイン入り)、右は野村哲也氏によるコンサート用の直筆イラストの複製。
ファン有志の祝花も凝ってる!
大阪公演で先行販売されたキングダム ハーツ デジタルUSBクロックなど、売り切れるグッズも。

 本ツアーは4月の東京公演、6月のアメリカ・ロサンゼルス公演でリポート済みなので(セットリストは東京公演のリポートを参照)、本稿では、夜公演の登壇者のコメントや公演後のミニインタビューを中心にお届けします。

 今回のコンサートツアーでは、おもに過去のシリーズ作をそれぞれメドレー曲で綴る1部と、2019年1月25日に発売された最新作『KHIII』の楽曲を堪能できる2部構成。スクリーンでは、各曲にちなんだ名シーンが出し惜しみなく流され、まさに『KH』シリーズを追体験できる内容となっている。

 筆者はこの大阪公演が2回目。1回目はスクリーンに流れる映像に釘付けだったのだけれど、メドレーで転調も多い本コンサートの演奏は、まさに圧巻。各曲が情緒豊かに、ときに激しく演奏され、感情が揺さぶられっぱなしの3時間だった。

 『KHIII』の楽曲を中心とした第2部では、下村氏とともに『KHIII』の楽曲を手掛けた石元丈晴氏(おもにザ・カリビアンとサンフランソウキョウ、そしてバトル曲を数曲担当)と関戸剛氏(グミシップのほか、レミーの料理やラプンツェルのダンスといった各ワールドのミニゲームまわりなどを担当)が登壇。

 石元氏は『KHII』でおもにマニピュレーターとして、関戸氏とは『KH バース バイ スリープ』でアレンジジャーとして参加して以来、『KH』シリーズの音楽に関わっており、下村氏とは『KHIII』だけではなく、長いつき合いになるとのこと。

 曲を作るときは部屋に引き籠もってPCのモニターを見ているという石元氏は、演奏している音、空気が伝わる会場で、ファンとともに過ごせる本コンサートの開催に感謝の意を述べた。

 昼公演はもちろん、昨日と一昨日のリハーサルも聴いたという関戸氏は、大阪交響楽団の皆さんの演奏の素晴らしさを絶賛し、地元・大阪での開催にうれしそうな顔を見せた。

写真左から関戸剛氏、石元丈晴氏、下村陽子氏。

夜公演にはソラ役の入野自由さんがサプライズ登場

 コンサート第2部は『Face My Fears -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』で幕開け。さまざなワールドの曲が奏でられ、バトル曲『Overture to the Decisive Battle』で感情の高まりはピークに。そしてエンディング『光 -KINGDOM Tres Orchestra Instrumental Version-』、下村氏がピアノを担当する最後の曲『Rhapsody in Tres for Piano, Chorus and Orchestra』へと続く流れは、壮大な『KH』の音楽の旅を体験した充実感と同時に終わってしまうという寂しさを観客全員が感じているかのように、演奏後は拍手が鳴り止まず。

 その万雷の拍手を受けて再び下村氏が登壇。感謝を述べるとともに、「今回は特別なゲストがお越しくださいました。ソラ!」と呼び掛けると、「繋がる心がオレの力だ!」という生セリフが会場に響き渡る。その直後にソラ役の入野自由さんがサプライズ登場すると、観客から大歓声が挙がった。

 入野さんが挨拶を終えると、少しのあいだ下村氏と入野さんとの思い出トークに。下村氏はソラについての思い出深いシーンとして、『KHII』のアトランティカのワールドで『アンダー・ザ・シー』を歌うシーンを挙げた。「ソラがなぜか“ダーリン わたしの~”と歌うパートがあって。制作サイドからの指定だったんですけど、なぜ男のソラに“ダーリン”と歌うパートを!?」と戸惑いを感じたという。「でも、実際に入野さんの歌を聴いてキューンときました(笑)」(下村)

 入野氏は『KH』との出会いを語り、『KH』の存在を知ったのは中学生のとき。少年週刊誌の紹介記事を見て、「そのときは、“発売されたらこのゲームを買おう”と思っていて(笑)。それから気づけば人生の半分はソラをやらせてもらっています」(入野)。

長く続くシリーズだからこその苦労も

 『KH』に携わって長い期間が経つ下村氏と入野さんだが、これまであまり会う機会がなったそうで、「せっかくなので、もっと話を続けたいんですけど、さらにゲストが来てくれていますので」(下村)と一旦、トークは中断し、さらなるゲストを招き入れた。大きな拍手で迎えられたのは、今年から『KH』のエグゼクティブ・プロデューサーを務める間一朗氏、そしてシリーズのディレクター・野村哲也氏。

 今冬にはDLC『KHIII リマインド』のリリース、さらに2020年3月3日には『ファイナルファンタジーVII リメイク』の発売も控え、多忙を極める野村氏は、「皆さんはどうせ来るんだろうと思っていたと思いますが(会場笑い)、大阪公演は本当に行けない予定でした。ですが、入野くんが来るということで、急遽、行くことにしました」と述べると、入野さんも「ありがとうございます!」と感謝。まるで師弟関係のような微笑ましいやりとりに会場からはクスクスと笑いが漏れた。

 そこからは4人を交えてのトークに。『KH』の収録当初のころは中学生だったという入野さんは、「楽しかった思い出しかない」とふり返り、そんな入野さんを野村氏は「無邪気な子どもだな」と見ていたという(会場笑い)。

 そんな“無邪気な子ども”だった入野さんがいちばん苦労したと語ったのは『KH Re:コーデッド』。『KHII』(2005年発売)の後に発売された『KH Re:コーデッド』(2010年発売)だが、ゲームの大部分を『KH』(2002年発売)時代のソラに遡って演じる必要があった。「『KH』のころは何も考えず、演じたものがソラになっていたんですけど、『KHII』以降は、ソラになるのが難しい時期もありました」(入野)。そこで、野村氏から『KH』当時の音源をずっと聞かされ、『KH』当時のソラの声を思い出していったという。

 その後、(当時の声を思い出してもらうため)過去の音源を聞かせる、というのは『KH』シリーズ収録時の「儀式みたいなもの」(野村)に。だが、そうした儀式(というか訓練?)の甲斐あって、「いまはソラになるエンジンのかかりが早く」(入野)なり、さまざまなソラを完全に自分のものにできたようだ。ちなみに、双子のように激似で、しかも時代も前後したりするロクサス、ヴェントゥス役を演じる内山昂輝さんも同じように毎作ごと儀式を受けているという。たしかに、ロクサス、ヴェントゥスを演じるのはたいへんそうだ……。

左から野村哲也氏、間一朗氏、入野自由さん、下村陽子氏。

『KHIII リマインド』新要素――ワンダニャンと戯れるゼアノートの衝撃たるや

 さまざまなトークの後、『KHIII リマインド』の新情報も! 「最初に断っておきますが、12月に『KHIII リマインド』のトレーラーが公開されます。トレーラーはすでに完成しているんですが、ここでは公開できないので、代わりにそのトレーラーPVに収録されていない、3つの要素を紹介します」(野村)と、映像とともに野村氏が解説する形で、以下の新要素が公開された。

・データグリーティング
撮影モードの拡張版。キャラクターやオブジェクト、エフェクトを自由に設置して撮影できる。キャラクターは複数は設置でき、ポーズや表情なども設定可能。会場で公開された、ワンダニャンと戯れるゼアノートの写真の破壊力は衝撃的! 入野さんも「すごい! レアですね!」と大興奮。本編ではあり得ないシチュエーションの写真が撮れるのが魅力的だ。

・スライドショー
設定した音楽を聴きながら撮影した写真をつぎつぎと表示してくれる機能。たくさんの写真をお気に入りのゲーム内楽曲をバックに楽しめる!

・プレミアムメニュー
一撃で敵を倒せるように設定して「オレ強い」感を感じたり、逆に一撃でも食らったら倒されたり、バトル中にHPとMPが徐々に減ったり、ケアルやアイテムの使用を禁止したりと、さまざまな縛りプレイも設定できる。「ケアル禁止!?  どうやったらクリアーできるんだろうって考える修行になりますね……」(入野)。多岐にわたる設定が用意されており、超簡単にも設定できるし、超激ムズにも設定できる。ノーマルやプラウドといった難易度設定ではないため、ゲーム中に設定を細かく変更可能。ただし、設定項目の追加はミッションをクリアーするなど、条件を満たす必要があるとのこと。「『KHIII』では、へいっ、やぁ、とう、などさまざまなバトルボイスを録ったので、さまざまなバリエーションのバトルボイスも改めて楽しんでほしいですね」(入野)

 『KHIII リマインド』の新要素の紹介が終わったところで、トークも終了。ステージには下村氏ひとりが残り、コンサートツアーが開催できたことへの感謝の意を述べ、アンコール曲『誓い -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』が演奏。約3時間にも及ぶコンサートは好評のうちに終了した。

 世界各国で開催された“KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-”もファイナル公演となる12月26日(木)、27日(金)の横浜公演を残すのみ。『KHIII』が発売された2019年を締め括るコンサート、迷っている人は後悔しないように!

※チケットはキョードー東京まで

 ここからは、大阪公演を終えた『KHIII』作曲陣、そして登壇した入野自由さん、野村哲也氏へのインタビューをお届け。

大阪公演を終えて――『KHIII』作曲陣インタビュー

写真左から石元丈晴氏、下村陽子氏、関戸剛氏。

――大阪の昼公演を終えた、いまの感想をお聞かせください。

下村 ワールドツアーで各国を回って、今回、4月以来の日本公演、しかも私の出身地である大阪ということで、すごくホッとした気持ちで迎えさせていただきました。各国のお客様と比べて、日本のお客様は静かに聴いてくださるので、最初はどう受け止められているのか不安になるんですけど、客席を見渡すと、ニコニコして、ときにはうなずきながら聴いてくださっていたので、そんな様子を見てすごく癒やされましたし、いいコンサートになったなと感じました。

石元 ステージに登壇するのは、ガチガチに緊張していまだに慣れないですね。

――そんなふうには見えませんでしたが(笑)。

石元 そう見えないようにがんばっているんです。でも、実際は手汗をかきまくりです。おもしろいことを言おうとも思うんですけど、そういう雰囲気のコンサートではないですし(笑)。

関戸 私も地元は大阪なんですけど、音楽に疎くて大阪交響楽団を存じ上げていなくて。

下村 音楽に疎いって(笑)。

関戸 大阪交響楽団の演奏、表現力がすさまじくて。観客の皆さんにはその素晴らしさをお伝えしようと思っていたんですけど、ステージでは緊張していて上手く伝えられませんでした。ですので、ここで言っておきます(笑)。

下村 たしかに、本当に素晴らしかったですね。

――4月の東京公演との大阪公演で何か違いは感じましたか?

石元 緊張で感じませんでした(笑)。

下村 東京公演のときより会場がコンパクトだったので、お客様との距離感が近く感じましたね。

――『KH』の音楽が世界中のファンを惹き付ける要因はどこだとお考えですか?

下村 ゲームについては、物語的にはスケールが壮大で、少し複雑なところもあるんですけど、根底にあるのは絆だったり愛だったり、誰しもが感じるわかりやすいところが魅力だと自分なりに解釈しています。私が作った曲も、楽しい曲はとことん楽しく、悲しい曲は終始悲しい感じに振り切っている曲が多く、割りとシンプルだと自分では思っているので、ストレートに伝わりやすいところが皆さんに受け入れられているのかなと感じています。

石元 僕はワールドの多さだと思います。ワールドごとに雰囲気がガラッと変わって、ゲームの中ですごく抑揚があって飽きさせない。その抑揚が音楽を含め、ゲーム全体にあることが魅力だと思います。

下村 そのワールドの多さが曲を書くうえではたいへんなんですけどね(笑)。

石元 バリエーションが豊富なので、明るいだけのゲームではないし、暗いゲームでもない。人間の喜怒哀楽がすべて詰まっているのが、人を惹き付けるんじゃないかな。

関戸 僕は今回、グミシップの曲やミニゲームなど、比較的明るめの曲をやらせてもらったんですけど、グミシップは前に進もうとするプレイヤーにエールを贈るような曲になるように、というつもりで書きました。各曲にそうしたいろいろな思いやメリハリがある曲が、どんどん鳴るというバラエティー豊かなところが魅力かなと思います。

――下村さんは各国のツアーに帯同されたとのことですが、どの国の公演もそれぞれ印象的だったと思いますが、とくに印象に残った公演はありますか?

下村 どの公演でも感極まって思い出深かったんですけど、11月のメキシコ公演は初めて“陽子コール”をいただきまして(笑)。照れくさかったですけど、そういう意味で印象に残っています。

――どのタイミングで“陽子コール”が?

下村 アンコールのタイミングでいただきました。

――海外の観客はやはり熱いですね

下村 1曲目から立って拍手してくださったり、賑やかなお客様が多くてこちらの緊張も解けますね。もちろん、日本のように静かに聴いてくださる国もあって、お国柄の違いを感じました。

――4月の東京公演から約7ヵ月が経って、演奏的には何か変化はありますか?

下村 各国で演奏してくださる楽団も違うので、一期一会みたいなところはあるんですが、指揮者の方はこなれてくると言いますか、音楽への理解も深まってますます完成度が上がっている実感はあります。

――最後にツアーのファイナルとなる12月の横浜公演に向けて意気込みをお聞かせください。

関戸 よくゲームは総合芸術だと言われますが、このオーケストラコンサートも作曲家、編曲家、指揮者、演奏家の皆さん、そして映像が高い次元で力を発揮している、高品質な音楽イベントになっていると思います。これを機にオーケストラコンサートに興味を持ち、演奏された楽団の定期コンサートに足を運ぶといった広がりにもつながればいいなと思います。会場では耳で聴く以外に、音を肌で感じられると思いますし、ぜひ会場で体験していただければと思います。

石元 ふだんコンサートに行かない人でも、足を運んでいただく価値があるコンサートになっていると思います。いまは、わざわざチケットを買って、足を運ぶコンサートやライブは人が集まりづらいと言われています。なぜならYouTubeなどで簡単に映像を見る手段がたくさんあって、行った気になれますから。でも、演奏する方が出す音が空気を揺らして耳に入る、というのは会場でしか体験できません。しかも、今回のコンサートは映像に残すわけではないので、会場でしか味わえない貴重なコンサートというところも魅力だと思います。

下村 今回のオーケストコンサートには『KH』シリーズの内容を知らない両親だったり、親戚だったり、友人も来てくれているんですけど、みんな「楽しかった!」と笑顔で言ってくれるので、ゲームを知らなくても楽しんでもらえるのかなと。私の前で「つまらなかった」とは言えないと思うんですけどね(笑)。身内だけではなくて、「付き合いで見に行ったらハマってしまった」といった話や、『KH』のコンサートを見たことで、ほかのコンサートにも興味を持つようになった、といった話を聞くと、ひとつのコンサートとして、誰でも楽しめる形になっていると感じることができますし、音楽が『KH』の世界や音楽を好きになるキッカケになっていることをすごくうれしく思います。ちょっとでも興味がある方は、2016年のブラスバンドコンサート“KINGDOM HEARTS Concert -First Breath-”を含めると、約3年の『キングダム ハーツ』コンサートの集大成となる横浜公演をぜひご覧いただければと思います。

「ソラといっしょに旅をしているかのようなコンサート」――入野さん(ソラ役)インタビュー

――まずは、大阪公演をご覧になった感想をお聞かせください。ちなみに、4月の東京公演はご覧になったのですか?

入野 いえ、東京公演どころか『KH』シリーズのオフィシャルコンサート自体、じつは今回が始めてなんです。生で『KH』シリーズの音楽が聴けて、いちファンとして、ただただ感動しました。『KH』に関わらせていただいてから17年くらい経ちますが、初期の作品の音楽を聴くと、当時のいろいろな記憶や感覚が呼び起こされました。『Music from KINGDOM HEARTS』では、目覚めの園、デスティニーアイランド、トラヴァースタウン……と各ワールドのダイジェストになっていますよね? 序盤から思い出が溢れ出てきて、今回のコンサートは本当に貴重な体験だなと思いながら聴いていました。

――ステージでも仰っていましたけれど、人生の半分以上の期間、『KH』シリーズに関わられていることになりますが、シリーズの中で思い出深い曲は?

入野 それぞれにありますが、1作目のエンディングの『光』と、それに続くスタッフロールでかかる『March Caprice for Piano and Orchestra』ですね。初めてスタッフロールに自分の名前が出てくるのを見たときの感動と相まって、とくに思い出深いです。

――『KH』の1作目は強く思い出に残っているんですね。

入野 そうですね。シリーズにはほかにも素晴らしい曲がありますが、1作目というのはいまでも自分の中でも特別な作品なんだなと、コンサートを見て改めて実感しました。

――生で聴いたことで、印象が変わった曲などはありましたか?

入野 バトルの曲ですかね……。プレイ中は戦うのに夢中で、音楽がなかなか耳に入ってこないじゃないですか(笑)。なので、今回生演奏で、しかも映像ともに集中して聴けたことで、バトル曲の魅力を改めて実感できました。

――そんな思い入れのある1作目から続いたダークシーカー編が『KHIII』でひとまずの結末を迎えましたが、『KH』シリーズを振り返ってみていかがですか?

入野 『KH』のころのソラは、島にいるただの少年で、これからどんな戦いが降りかかってくるのかも知らずに、日々楽しく過ごしていましたよね。僕も、劇団に入って仕事はしていましたが、当時はまだ、役者になろうといった目標はとくになく、ソラのようにそのときを楽しく過ごしていた少年でした。それからソラはキーブレードを手にして、僕は『KH』のソラという役を手に入れて……。ソラとはいっしょに進んで来たという感覚があります。ソラがいろいろなキャラクターたちと出会って、そのキャラクターたちに支えられているように、自分も同年代の仲間や大人の方々と出会って、支えられてきました。ソラといっしょに旅をして来たような。付き合いも長いので、ソラは特別な存在ですね。

――『KHIII』は先日体験版が配信され、これを機にプレイしてみようかと思っている人もいるかと思います。入野さんご自身も『KHIII』はクリアー済みとのことですが、入野さんから見た、『KHIII』の魅力とは?

入野 長く続くシリーズだと、最新作からやってみよう、という気持ちにはならない方もいるかもしれません。でも、各ワールドの物語はすごくわかりやすいですし、誰もが楽しめる世界観だと思うんです。アクションも簡単ですごく爽快感もありますし。たしかに、シリーズから続く物語は掘っていけばいくほど複雑にはなっていくんですけど、ソラ自身もよくわかってなくて、その場その場で起こっていることに対して反応しているだけなので、仮にソラに疑問に思っていることを聞いたとしても、彼も答えられないと思います(笑)。初めての人もソラといっしょに冒険をして、追体験をしていけば、物語は自ずとわかってくると。過去に起こったことをもっと詳しく知りたくなったら、そのときは過去作をプレイしてみてください。

――では最後に、大阪公演を見て感じた、今回のコンサートツアーの魅力をまとめていただけると。

入野 今回のコンサートは『KH』シリーズのすべてを追体験できる内容になっています。僕自身、いろいろな記憶とともにいっしょに旅をしている感覚で楽しめました。この感覚は実際にコンサートに参加しないと実感できないですし、参加しても後悔はしない内容になっていると思います。12月の横浜公演が最後のチャンスです。ぜひ、生演奏とともにその瞬間にしかない、ソラとの旅を楽しんでください。

「12月のトレーラーですべてが発表されます」――野村哲也氏インタビュー

――大阪公演には来場する予定ではなかったとのことですが、新情報まで!

野村 来場する予定はなかったので、入野君にメッセージを託そうと思っていました。急きょ新情報もお伝えしようと思い、その説明もメッセージとして用意し始めたら入野君にお願いする量ではなくなり、間(間一朗氏)にメッセージを託すことになりました。しかし、映像の用意が前日になってしまい、準備不足ということで自分が直接説明したほうがいいだろうと、前日深夜に来ることを決めました。

――これまでの『KH』シリーズとは一線を画したコンテンツというか、はっちゃけた内容ですね。会場からも笑いが何度も起きてましたし。

野村 12月の新トレーラーは追加されるバトルシーンやイベントシーンなどを盛り込んだ、これまでの路線を踏襲したトレーラーになります。今回、紹介したものは、それとは毛色が違うのでトレーラーには入れなかったんです。プレミアムメニューの設定画面は説明をしないと映像としては伝わり辛いですし、スライドショーをトレーラーに入れても「こんなシーンが追加されるの!?」と誤解されるのも困りますし(笑)。ステージで説明しながらだったら誤解も生まれないかと思い、公開することにしました。

――凝った撮影が可能になっているので、ファンの方の投稿が楽しみです。

野村 カメラ機能が好評で、「このキャラやあのキャラと撮りたかった」といった声もあったので、いっしょに撮りたいキャラクターと撮りたいシチュエーションで撮影できる機能を入れることにしました。

――シリーズを熱心にプレイしている人ほど、ニヤニヤできそうですね。

野村 ただ、保存できる写真の枚数はセーブデータの容量の都合上、これ以上は増やせないらしいんです。

――では、消したくない写真は外部ストレージに保存するなどしたほうがいいですね……。もうひとつ、さまざまな項目を設定して超簡単にもできるし、マゾ的な縛りプレイも可能になるプレミアムメニューも。バトルに関する細かな設定が可能なようですね。

野村 もともとは、クリティカルのさらに上の難度を追加してほしいと言っていたんです。一撃でも食らったら倒されてしまう、『ブシドーブレード』(※1997年3月14日にスクウェア[現スクウェア・エニックス]より発売。一回でも攻撃を食らうと即座に絶命する対戦ゲーム)のような緊張感のあるものとか(笑)。

――懐かしい(笑)。

野村 でも、そこまでやってしまうと、おそらく誰もクリアーできないだろうという意見もあったので、だったら、プレイヤーのほうでいろいろ設定できるようにしようと。

――一撃死の緊張感を味わいたい人は、そういうふうに設定できると。

野村 もともとそういう設計にはなっていないので、そこまで極端ではないですが、かなり腕に自信がないとクリアー出来ないような設定も可能になっています。

――開発スタッフの中でもクリアーするのは困難なのでは!?

野村 いま絶賛デバッグ中です。やり込みの幅も広がるんじゃないかと思います。また、難易度“ビギナー”でも難しいと感じる方もいらっしゃるようなので、誰でもクリアーできるように、逆にすごく簡単にできるような項目も用意しています。両極端なプレイが楽しめるようになっているんです。

――プレミアムメニューは、ゲーム中にいつでも設定できるんですか?

野村 ストーリー序盤で、プレミアムメニューが追加されるタイミングがあり、それ以降はいつもで自由に設定できるようになります。

――たとえば、クリティカルで始めて、どうしても倒せない敵が出てきたとき、プレミアムメニューで設定をいじって……みたいこともできると。

野村 はい。難易度設定とは切り離されているので。

――新トレーラーは12月に公開されとのことですが、これが『リマインド』の最終トレーラーに?

野村 そうなります。トレーラーで発売日などの情報も出ています。『リマインド』の追加シナリオはこれまでのPVの断片的な映像から『KHIII』本編中だと思われているかもしれませんが、一応エンディング後に位置しているので分けています。『KHIII』の物語としては本編で完結していて、これは敗北と勝利2つのレイヤーとも別の3つ目のレイヤーと言うべきか、確かに『KHIII』本編の時間には来ますが、察しのいいファンの方々ならプレイ後に本編とは違うものを感じていただけると思います。

――『KHIII』も『リマインド』の発売でひと段落ですね。野村さん的には来年3月の『ファイナルファンタジーVII リメイク』の発売も控えているので、まだまだお忙しいとは思いますが。『FFVII リメイク』についてもひと言いただけますか?

野村 『FFVII リメイク』についてはこの場では話せないんですが、ひとつだけ。国内外で軽く物議を醸し出しているモーグリについて。

――11月に公開された召喚獣“チョコボ&モーグリ”についてですね?

野村 「これじゃコアラだ」と言われているようですが、モーグリのモチーフはコアラなので、正解です。

――えっ!?(笑)

野村 『FFIII』で石井さん(石井浩一氏。初期の『FF』シリーズの開発に携わる。現グレッゾ代表)がデザインしたモーグリを、『FFVII』や『FFVIII』では、鼻を小さくアレンジしたデザインで登場させていました。その後、石井さんから、モーグリのモチーフはコアラだから鼻は小さくしないように、と教えてもらったんです。

こちらが『FFIII』のモーグリ。
(C)1990 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.

――なんと(笑)。

野村 『FFVII』や『FFVIII』で自分がモーグリの鼻を小さくしてしまったせいか、それ以降の『FF』関連作品でも、コアラから離れてしまったんじゃないかと気になっていました。ちなみに、目が細いモーグリは、天野喜孝さんデザインのモーグリが元ですね。

――たしかに、猫っぽいモーグリやウサギっぽいモーグリもいますね。そうしたモーグリの印象が強い人には、イメージとは違う印象があったということなんですね。

野村 『FFVII リメイク』では、リアルな世界観に合わせて思い切ってもっとコアラに寄せてみました。出来上がりは笑っちゃうデザインになってしまいましたが、何かじわじわ来るので今回はこれでお願いします。

――そんな経緯が。オリジナルリスペクトのデザインだったんですね。ほかにも『FFVII リメイク』では、『FFVII』のキービジュアルの『FFVII リメイク』版が公開されたり、オリジナルのリスペクトが感じられますね。『KHIII リマインド』ともども楽しみにしています。ありがとうございました。