2019年4月27日~28日、東京国際フォーラム ホールAにて、『キングダム ハーツ』シリーズ3回目となるオフィシャルコンサート“KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-”がスタート。

 2019年4月27日~28日、東京国際フォーラム ホールAにて、『キングダム ハーツ』(以下、『KH』)シリーズ3回目となるオフィシャルコンサート“KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-”が幕を開けた。今回のコンサートは東京公演の後、シンガポール、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、ブラジル、イギリス、メキシコと多数の国で開催。今後、日本では、2019年11月30日に大阪公演も予定されている。

 本稿では、『KH』シリーズのコンポーザーである下村陽子氏・石元丈晴氏・関戸剛氏はもちろん、ディレクターの野村哲也氏など豪華ゲストも登壇したツアー初日の夜公演の模様をリポート。なお、コンサートでの演出面などに触れているため、大阪公演に行かれる方でネタバレを避けたい方はご注意ください。

(Photo by Shinjiro Yamada)

過去作をメドレーで辿る1部

 今回のコンサートは、おもに過去のシリーズ作をそれぞれメドレー曲で綴る1部と、2019年1月25日に発売された最新作『KHIII』の楽曲をたっぷり堪能できる2部で構成。20分の休憩を挟み全体で約3時間という大ボリュームの公演だった。
 
 Part1の冒頭を飾ったのは、シリーズを象徴する楽曲のひとつである『Dearly Beloved』の『KHIII』バージョン、『Dearly Beloved from KINGDOM HEARTS III』。『KHIII』のオープニングなどを交えた映像とともに、リアルタイムで弾いているとは信じがたい超絶技巧のピアノの旋律が、コンサートの始まりを告げる。
 
 曲が終わると下村陽子氏が登壇し、指揮者のジャン・ドロワイエ氏、演奏を行う神奈川フィルハーモニー管弦楽団、コーラスを担当する洗足フレッシュマン・シンガーズ、そしてピアニストのヴィンセント・ムサット氏を紹介。『KHIII』発売の年にツアーを開催できるのも「ファンの皆さんのおかげです」と、会場へ向けて感謝の言葉を述べた。

『KH』シリーズのコンポーザー・下村陽子氏。

 ここからは、過去のシリーズ作のメドレー曲が流れていく。たとえば、1作目をモチーフとした『Music from KINGDOM HEARTS』では、目覚めの園、デスティニーアイランド、トラヴァースタウン……と各地を巡っていき、『Dearly Beloved』の旋律を含む『Friends in My Heart』に戻って来ることでストーリーを辿り、作品のテーマを表現。続く『Music from Re: Chain of Memories』や『Music from KINGDOM HEARTS II』、『Music from 358/2 Days』なども、それぞれストーリー中の要所で流れる曲がメドレーになっており、スクリーンに流れる映像とともにプレイの記憶を克明に蘇らせてくれる。映像も名シーンが目白押しで、思わず目頭が熱く……(涙)。

 合間には、少し趣向を変え、明るめの曲を集めた『Pretty Pretty Abilities from coded』、時系列的に特殊な扱いとなる『KH アンチェインドχ』と『KHχ バックカバー』、『KH0.2』をテーマとした『Music of Another Time』といった楽章も。さらに、“下村節”の真骨頂となるバトル曲の中でも、ボス戦の楽曲がメインの『Diabolic Bash』が流れると、盛り上がりに盛り上がりを重ねていく構成にテンションもクライマックス! 曲が終わると、大きな大きな拍手とともに1部は終了となった。

『KHIII』の冒険を再体験する2部

 休憩を挟んでの開始となった2部は、『KHIII』の楽曲がメイン。宇多田ヒカルさんによるオープニング曲をオーケストレーションした『Face My Fears -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』は、ソロバイオリンで紡がれていく主旋律が叙情的でとても美しいアレンジ。そして、オリンポスでのヘラクレスたちとの再会や、トワイライトタウンでのリトルシェフとの出会い、グミシップでの大航海を経てトイ・ボックスへと降り立つ、ソラの旅立ちから序盤までの物語で構成された『Symphonic Suite: The Worlds of Tres I -Of Gods and Toys-』から冒険がスタート。トイボックスのフィールド曲で挟まれるフィンガースナップ(いわゆる指パッチン)のパートでは、演奏していない奏者たちがその動作をするなどの楽しげな演出も。

 続く『Symphonic Suite: The Worlds of Tres II -Tangled with Scares-』はキングダム・オブ・コロナとモンストロポリス、『Symphonic Suite: The Worlds of Tres III -A Frozen Fracas-』はアレンデール、『Symphonic Suite: The Worlds of Tres IV -A Pirate's Tale-』はザ・カリビアン、『Symphonic Suite: The Worlds of Tres V -A Hero's Journey-』はサンフランソウキョウとキーブレード墓場の序盤までをフィーチャー。それぞれフィールド曲とバトル曲、ボスバトル曲などが織り交ぜられ、メインストーリーだけでなく脇道のちょっとしたイベントなども挟み込まれた映像とともに、冒険をしっかりと再体験できる内容になっていた。

 また、合間には再び下村氏が登壇し、ともに『KHIII』でコンポーザーを務めた石元丈晴氏と関戸剛氏を紹介するひと幕も。石元氏はおもにザ・カリビアンとサンフランソウキョウの曲を、関戸氏はグミシップのほか、レミーの料理やラプンツェルのダンスといった各ワールドのミニゲームまわりや汎用のエリア楽曲を担当している。お三方はこれまでも、『KH バース バイ スリープ』など複数のシリーズ作でともに作曲を行ってきた。
 
 下村氏から、楽曲がフルオーケストラで演奏されることについて聞かれると、石元氏は「これだけ特別な演奏を、皆さんが集まって同じ空気を味わえる機会はなかなかないので、思う存分楽しんでほしいです」、関戸氏は「自分の曲ではないようで、天にも昇る気持ちです。今回はメドレーが多く、テンポとキーが頻繁に変わるので、生で演奏するのは相当な技量が必要。そういう点でもとても興味深く楽しんでいます」と語った。

写真左から関戸剛氏、石元丈晴氏、下村陽子氏。

 キーブレード墓場からラストバトルへ向かう、一連のボスラッシュが思い起こされる『Overture to the Decisive Battle』が流れると、いよいよストーリーは佳境へ。映像も真XIII機関との戦いやキャラクターたちの再会と涙、“キングダムハーツ”への扉を開こうとするマスター・ゼアノートとつぎつぎに移り変わっていき、曲はときに激しく、ときにメロディアスなパートを挟みながらクライマックスへと向かっていく。そしてスカラ・アド・カエルムでの激闘を制し、長い長い戦いの楽章はついにフィニッシュへ。『Destati』を始めとする、これまでのシリーズ曲それぞれの象徴的な旋律がそこかしこに散りばめられた壮大な構成に、心拍数は上がりっぱなし!
 
 戦いを終えた後は、宇多田ヒカルさんの『光』をアレンジした『光 -KINGDOM Tres Orchestra Instrumental Version-』でしっとりと。バトル曲で畳み掛けられた後ということもあり(笑)、明るく希望を感じさせる曲調に安心感が湧く。下村氏の楽曲とともに、やはり宇多田ヒカルさんによるこちらの曲もまた、シリーズを象徴するテーマ曲として外せない。

 するとここで、再度下村氏が登場。ゲストとして『KH』シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーであり、ブランドマネージャーも務める橋本真司氏を招き入れた。
 
 昨年還暦を迎えた橋本氏は、「つぎの世代にバトンを渡したい」と『KH』シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーを後任に譲る意向を発表。なお橋本氏は、ブランドマネージャーとして今後も『KH』シリーズ全体を統括し、コンサートビジネスの担当者としても活動していく。「辞めるわけではないのでご安心を(笑)。引き続きこの歳でも粘って仕事します!」とのこと。
 
 橋本氏から『KH』シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーを引き継ぐのは、「ハザマでございます」という挨拶で一部のファンにはおなじみの間一朗氏。同氏はスマホアプリ『FFレコードキーパー』や、アーケード・PS4・Steam版『ディシディアFF』などのプロデューサーを務めている。

エグゼクティブ・プロデューサーであり、ブランドマネージャーも務める橋本真司氏(写真左)
新たにエグゼクティブ・プロデューサーを担う間一朗氏(写真左)。

 さらにステージには、間氏から呼び込まれる形で『KH』シリーズディレクターの野村哲也氏も登場!

『KH』シリーズディレクターの野村哲也氏(写真左)

 野村氏はコンサート前夜に急遽用意したというスライドで、『KHIII』の有料DLCについての情報を解禁し、会場を沸かせた。発表内容は下記の通り。

有料DLC『KINGDOM HEARTS III Re:MIND(仮)』

  • 追加シナリオ/Re:MIND(仮)
  • リミットカットエピソード&ボス
  • シークレットエピソード&ボス
  • 英語ボイスモード切り替え
  • その他
    ※配信時期、価格未定

 野村氏によると、有料DLCは上記コンテンツ群のセットになるとのこと。リミットカットボスについては複数体で、それらに付随するエピソードひとつを配信予定。配信時期の目途は立っているそうだが、明瞭な示唆はなかった。また、同時期に無料DLC(新キーブレード&新フォーム)も配信される。次回の情報公開は、“雨が多くなってきた頃”になるとか。

 情報公開コーナーを終えて野村氏らが降壇すると、「まことに僭越ながら」と前置きしながらピアノの前へ移動する下村氏。コンサートの最後を飾る『Rhapsody in Tres for Piano, Chorus and Orchestra』では、下村氏がピアノを担当し、各ワールド曲のメドレーで『KHIII』のエンドロールを再現していく。楽曲が終わると、やまない拍手に応える形でアンコールが決定! 下村氏が改めてファンや関係者への謝意を伝え、宇多田ヒカルさんによる『KHIII』のテーマ曲をアレンジした『誓い -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』が演奏された。ちなみに、映像には『KHIII』のエンディングの一部や、過去作のソラとカイリにまつわるシーンが。最後には、デスティニーアイランドでカイリがひとり佇むあのシーンも……。切ない余韻を残し、コンサート全演目はこれで終了となった。

 今回のコンサートは前述の通りメドレーが主体で、同時に映像の切り替えも多く、曲と合わせるのはかなり難度が高いはず。しかし、それを感じさせないほどに曲と映像が融合しており、それが没入感と感動を高めてくれたように思う。会場には、号泣してしまうファンの姿も(わかる)。高度な演奏技術と作り手の思いが、ファンの期待に見事に応えたコンサートだった。

“KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-”セットリスト

≪1部≫(※は各メドレーに含まれるおもな楽曲)

1.Dearly Beloved from KINGDOM HEARTS III(作曲:下村陽子/編曲:和田薫)

2.Music from KINGDOM HEARTS(作曲:下村陽子/編曲:和田薫)
※ Destiny Islands
※ Traverse Town
※ Hand In Hand
※ Friends in My Heart

3.Music from Re: Chain of Memories(作曲:下村陽子/編曲:和田薫)
※ Scent of Silence
※ Castle Oblivion

4.Music from KINGDOM HEARTS II(作曲:下村陽子/編曲:亀岡夏海)
※ The Afternoon Streets
※ Working Together
※ Reviving Hollow Bastion
※ Cavern of Remembrance
※ Deep Anxiety

5.Music from 358/2 Days(作曲:下村陽子/編曲:宮野幸子)
※ Critical Drive
※ Sacred Moon
※ Musique pour la tristesse de Xion

6. Pretty Pretty Abilities from coded(作曲:下村陽子/編曲:亀岡夏海)

7.Music from Birth by Sleep(作曲:下村陽子/編曲:マリアム・アボンナサー)
※ The Worlds
※ Dearly Dreams
※ Destiny's Union
※ Night in the Dark Dream
※ Night of Tragedy

8.Music from Dream Drop Distance(作曲:下村陽子・関戸剛/編曲:竹岡智行)
※ Dream Eaters
※ Sweet Spirits▽(編注:▽はハートマーク)
※ Majestic Wings
※ Link to All

9.Music of Another Time(作曲:下村陽子/編曲:亀岡夏海)

10.Diabolic Bash(作曲:下村陽子/編曲:山下康介)
※ Destiny's Force
※ Shrouding Dark Cloud
※ The Fight for My Friends
※ Vim and Vigor
※ The Encounter
※ Another Side -Battle Ver.-
※ Unforgettable
※ Rage Awakened -The Origin-
※ L'Impeto Oscuro

≪2部≫
11.Face My Fears -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-
(原曲:宇多田ヒカル/編曲:和田薫)

12.Symphonic Suite: The Worlds of Tres I -Of Gods and Toys-
(作曲:下村陽子・石元丈晴・関戸剛・Disney/編曲:亀岡夏海)

13.Symphonic Suite: The Worlds of Tres II -Tangled with Scares-
(作曲:下村陽子・関戸剛/編曲:亀岡夏海)

14.Symphonic Suite: The Worlds of Tres III -A Frozen Fracas-
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:宮野幸子)

15.Symphonic Suite: The Worlds of Tres IV -A Pirate's Tale-
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:竹岡智行)

16.Symphonic Suite: The Worlds of Tres V -A Hero's Journey-
(作曲:下村陽子・石元丈晴・関戸剛/編曲:山下康介)

17.Overture to the Decisive Battle
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:マリアム・アボンナサー)

18.光 -KINGDOM Tres Orchestra Instrumental Version-
(原曲:宇多田ヒカル/編曲:和田薫)

19.Rhapsody in Tres for Piano, Chorus and Orchestra
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:西木康智)

20.アンコール:誓い -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-
(原曲:宇多田ヒカル/編曲:和田薫)

コンポーザー陣のミニインタビューと開発スタッフのコメント

 最後に、コンサート後に行われた下村氏、石元氏、関戸氏の囲み取材の模様と、野村氏と間氏からのコメントをお届け。

――北米、欧州、アジア、南米を巡るワールドツアーの初日の日本公演(東京)を終えたいまの感想をお聞かせください。

下村 スケジュールがたいへんだったうえに、私がやりたいことと野村さん(野村哲也氏)がやりたいことを合わせた結果、ものすごく盛りだくさんな内容になったので、それをほぼ完璧に近い形で初演をお届けできたことをうれしく思っていますし、正直、ホッとしています。

石元 レコーディングではやったことがあるんですけど、生のフルオーケストラをコンサートで、というのは初めてだったので、筆●ろし的な……(笑)。

一同 (苦笑)。

下村 「大人の階段を上がった」くらいにしておいてもらいましょう(笑)。

石元 音楽の究極ってコンサートやライブだと思うんですよ。楽器や声で空気を揺らして音楽を体験するというのは、会場でしか味わえないですし。お金をもらって目の前のお客様を満足させるには、どれだけインパクトを残せるかというのがすごく大事だと思うんですが、自分自身も感動できるコンサートでした。

関戸 指揮者や演奏者の方々のプロ魂をお客様といっしょに共有できた時間が本当にうれしく、ワクワクドキドキさせていただきました。

――今回は3時間近くにわたるコンサートとなり、メドレーも多いセットリストになっていますが、どういったコンセプトで選曲されたのですか?

下村 多数のものからどれかを選ぶ、というのがすごく苦手な性格なんですね。ですので、たとえば『KHIII』にいたる前のシリーズ作品の楽曲を演奏した前半のパートでは、特定のワールドの曲を選ぶのではなく、比較的、ゲーム中によくかかる汎用的な曲を選ばせていただきました。それとは逆に、後半の『KHIII』のパートでは、すべてのワールドの曲をやりたい、というのは最初から考えていました。しかも、フィールド曲、バトル曲といった分けかたではなく、ワールドごとにフィールド曲とバトル曲をセットにして、そのワールドにいるような、ゲームを追体験しているような気分が感じられるような構成を心掛けました。

――実際にフルオーケストラの生演奏を聴いた感想は?

関戸 いま、会社の前で大きな複合施設の工事が行われていて、その大規模な工事の進捗を毎日「スゴいなあ」と思いながら見ているんですが……何が言いたいかと言うと(笑)、人間の力が結集するとスゴいものができるんだなと。今回のコンサートも、コンポーザーやアレンジャー、演奏者の方々……たくさんのスゴい人たちの力の結晶のたまものだなと感じました。

――石元さんはご自身が手掛けた中では“ザ・カリビアン”のワールドの楽曲がお気に入りだとパンフレットでも語られていましたが、『KHIII』の音楽を初めて担当されてみて、いかがでした?

石元 皆さんは映画の音楽の印象が強いと思いますし、たとえば、同じ役柄でも新しい役者が演じるとなると否定されがちじゃないですか? なので、最初はしんどい仕事だなと思いました(笑)。でも、そのプレッシャーを原動力にしたり、「何を言われてもいいや」と開き直ってからは、自分でも手応えのある曲が作れたと思います。

――今回の“KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-”はいつごろから計画されていたのですか?

下村 以前から『KHIII』の発売後に『KHIII』の楽曲を中心にしたコンサートをやりたいね、という話はあったんですが、具体的に動き出したのは言えない時期です(笑)。この規模のコンサートツアーとしては、かなり短い準備期間だと思います。

――今回は、メドレーでさまざまな曲が演奏されていますが、盛り込まれている曲数はどれくらいになるんでしょうか。

下村 ピックアップした曲は77曲でした。そのプレイリストを見ながら、本当にできるのかなと心配したんですが、やってしまいました……。

――編曲はかなりたいへんだったのでは?

下村 そうですね。あと、コンサートはおおよその時間が決まっているので、いかにその時間に収めるか、という問題があって、「どこかであと5分削ってください」とお願いされたりで、そのために編曲をされた方にはたいへんな作業をお願いしたと思います。

――関戸さんと石元さんは、ご自身の曲について、「こうアレンジしてほしい」といったようなオーダーはされたんでしょうか?

石元 提示されたものに対してひと言ふた言返す程度で、もうお任せしていました。

関戸 僕も同じですね。グミシップの曲は自分がオーダーを勘違いしたのか、長尺な曲にしてしまったので、アレンジは相当苦労されたようですが、出来上がったものは非常にバランスの取れた素晴らしいものでしたし。

――さきほど、下村さんがやりたいことと野村さん(野村哲也氏)がやりたいことを詰め込んだと仰っていましたが、それぞれ具体的にはどういったことをやりたいと思っていたのでしょうか。

下村 哲さんは前半は『KHIII』の曲をやらず、『KHIII』にいたるまでの作品の集大成にして、後半は『KHIII』、という構成案だったんです。現在の構成ですね。私は前後半どちらも『KHIII』中心で、過去作の楽曲はメドレーにして、新曲の合間に少しだけ挟む、ということを考えていました。哲さんの案に、私がやりたいことをどう入れていくかと考えた結果、今回のような形になりました。

――下村さんから見た関戸さんと石元さんの楽曲の魅力、逆に関戸さんと石元さんから見た下村さんの楽曲の魅力について教えてください。

下村 関戸さんの曲は、すごく要素が多いんですよ。たくさんのモノがワーッとある感じで、それが出たり入ったりする感じ。とても凝ってるなという印象です。担当されている曲もワクワクする感じの曲調のものが多く、バトル曲でも明るくて元気が出ますね。私は、関戸さんのそういう色彩豊かな曲がすごく好きです。今回のコンサートでも、関戸さんの曲はそういった感じのアレンジが出ればいいなと思っていたんですけど、私が何も言わなくても、そんなアレンジに仕上がっていました(笑)。一方で、石元さんのほうは、ストレートですごくロック。かっこいい曲です。同じギター弾きなのに、関戸さんとは対照的だなと感じているんですが、共通しているところとして、おふたりの曲にはカワイイ部分とカッコイイ部分の両方があって。それが『KHIII』にすごく合っていたなと感じました。
 
関戸 下村さんの曲はピアノがカッコ良くてキャッチーだなと。キャッチーな曲はすぐ覚えられる反面、飽きられる要素も含んでいるんですが、下村さんの曲はキャッチーだけれど飽きさせないんです。僕はほかの作家さんの曲で良いと思ったものは勉強とライバル心のため、飽きるまで聴いて消化しないと悶々とするんですが、下村さんの曲はなかなか飽きない。「これはどういうことなのか?」と悔しい思いをします。じつは下村さんの楽曲を何曲か解析したことがあるんです。『KH』の楽曲はもちろん、『フロントミッション』や『ザ・サード バースデイ』の曲も。

下村 えー!? 怖い(笑)。

――それは、仕事として?

関戸 いえ、趣味で(笑)。勉強させていただこうと思って。『フロントミッション』では仕事の要素も少しありましたが。そこで感じたのは、下村さんの曲は短時間にハーモニーが変わっていく。そこが飽きさせない、ひとつの大きな要因のなのかなと。いろいろと自分なりの発見があります。

――石元さんはいかがでしょうか。

石元 作家ってだいたい手癖があったりして、自分と同様、“下村節”をファンの方々もお好きなんだなとコンサートを見て改めて実感しますが、『FFXV』ではまた別のことをやったりしていて、引き出しの多さにビックリすることがありますね。

――では、最後に『KH』ファンの方々へひと言ずつお願いします。

関戸 客席から感極まったのか、鼻をすする音がちょこちょこ聞こえてきて。僕も歴代の『KH』シリーズの楽曲などでコーラスや分厚いアンサンブルを聴くと目頭が熱くなるというか。『KHIII』も含めてこういう素晴らしいコンサートをたくさんのファンの皆さんと共有することが出来て幸せです。

石元 音楽って言葉では表現できないなと思いました。文章で表現できないから音楽があるわけで。音を体感するには会場で生で聴くのがいちばんだなと思いました。

下村 最初の『KH』を制作しているときには、続編が出るなんてことは思っていませんでしたし、まさかオーケストラコンサートができるなんてことも考えもしませんでした。本当に夢のような出来事で、いまだに信じられない気持ちです。今回のコンサートも、前回のコンサートに来てくださるファンの方がいらっしゃるから実現できるわけで、感謝してもし足りない気持ちです。やりたいことをやってきて、それに応えてくださるファンの方々がたくさんいてくださり、それが大きな力になって、こういうコンサートが実現できるのは本当にうれしいこと。ここで、驕ったり、舞い上がったりせず……ちょっとくらいは舞い上がりたいんですけど(笑)、舞い上がり過ぎず、応援してくださっている方々を裏切らない作品作りをこれからもやっていかないといけないなと改めて感じました。これからも『キングダム ハーツ』のゲームも、音楽もよろしくお願いします!

ディレクター:野村哲也氏からのコメント

というわけで、前回来られた方も今回いらっしゃったでしょうか?
自分も来ていました。

さすがに毎回登壇するので、「どうせまた出て来るだろうな」という空気をひしひしと感じました。

自分自身、慣れてしまったせいか、ついついしゃべりすぎ予定を押してしまいました。次回あたりからはあえて登壇を控える回を作り、「出るのかな?出ないのかな?」という感じにしていこうと考えています。次回があればですが。

さて、本題です。コンサートの準備も、実は本番の3週間前から編集が始まり、数日前まで映像の編集がかかってしまい、絵と音をシンクロさせるこのコンサートの形式からいえばオーケストラの皆さんには大変な思いをさせてしまったかと思います。

にもかかわらず、本番では映像にぴったり合わせて演奏していただき、とても感動的なコンサートになっていました。

また次回があれば、今まで来てくださった方も、まだ一度も来ていない方も、ぜひ会場へ足を運んでいただければと思っています。

ただその時、自分は出ないかもしれません。
以上です。

新エグゼクティブ・プロデューサー:間一朗氏からのコメント

担当とは言え日が浅く、正直未だ何のお手伝いも出来ていないのですが…素晴らしいコンサートにございました!
お呼びいただきまして、光栄です。

壇上からもお話しさせていただきましたよう、演奏、映像は勿論、グッズ等の細部に至るまで、会場すべてを以て『キングダム ハーツ』を体感出来たよう思います。
ご来場の皆さんにおかれましても、きっとそうだったのではないでしょうか。

なお自身にとっては、大いに幸せ!であるだけでなく、これからを思うに身の引き締まるひと時でもありました。
心より、この素晴らしい空間にて、また皆さんとお会いいたしたく存じます。