E3 2019の会期中に実施した、マイクロソフトID@Xbox ディレクターであるクリス・チャーラ氏へのインタビューの模様をお届けしよう。クリス・チャーラ氏にお話をうかがうのは、昨年末にID@Xboxプロジェクトが1000タイトルを達成した折に来日したとき以来およそ7ヵ月ぶり。Xbox E3 2019 ブリーフィングで映像が流れて、記者が思わず興奮してしまった『RPGタイム! ~ライトの伝説~』の話題を入り口に、気になるタイトルやXbox Game Passのことなどを聞いてみた。

ID@Xbox トップ、クリス・チャーラ氏に聞く。『RPGタイム! ~ライトの伝説~』は、ゲームで子ども時代の感覚を思い起こさせる特別なタイトル【E3 2019】_04

クリス・チャーラ氏

マイクロソフト ID@Xbox ディレクター

――Xbox E3 2019 ブリーフィングで、『RPGタイム! ~ライトの伝説~』が紹介されたときはとてもうれしかったです。このタイトルをブリーフィングで紹介しようと思った狙いを教えてください。

クリス私もこのタイトルが紹介されて嬉しかったです。子どものころ、ビデオゲームが出て絵を描くことを覚えたころを捉えた、とてもすばらしいタイトルだと思います。見た途端に特別なものだと感じました。Xboxファンには絶対に見てほしい、全世界と共有したいとすぐに思いました。

――クリスさん自身はこのタイトルをどう評価していますか?

クリス大好きです! トレーラーの中で、消しゴムが出てきて、クルマが列車になって橋を渡って村へ行くシーンがあります。子どものころ、よくクルマや消しゴムを描いて机の上で遊んでいたので、見ているだけでワクワクします。クリエイティビティがすばらしいですし、ゲームで子ども時代の感覚を思い起こします。

――最近の日本のインディーゲームシーンに対する感想を教えください。

クリス大きな成長を遂げていると思います。残念ながら今年はBitSummitには行けなかったのですが、私のチームから何人か見にいきました。彼らは「とてもすばらしかった」と言っていました。ここ5年間くらいの成長を見ると、本当に成熟してきているのがわかります。日本の市場はモバイルゲームにフォーカスしているので、クリエイターたちはほかの地域とは違う難しさを感じていると思います。コンソールのプラットフォーム側として、日本のインディーシーンが成長しているのはとても嬉しいです。

――日本のID@Xboxタイトルは、以前20本くらいだったと聞いていますが、今後さらに増えていく感じですか?

クリスもちろんです。日本のクリエイターが作ったタイトルを全世界に提供できるよう、鋭意努力していて、それは成功しています。ケムコさんからリリースされた『アスディバインディオス』などはその一例です。日本のクリエイターは才能に溢れています。まだまだ名前を知られていないクリエイターや独立スタジオにとっては、ID@Xboxはすばらしい機会だと思います。世界中のXboxプレイヤーが、日本からのすばらしいコンテンツにアクセスできるようにしたいです。

ID@Xbox トップ、クリス・チャーラ氏に聞く。『RPGタイム! ~ライトの伝説~』は、ゲームで子ども時代の感覚を思い起こさせる特別なタイトル【E3 2019】_01
ケムコから6月5日にID@Xboxタイトルとして配信された『アスディバインディオス』。やりこみ要素満載のRPGだ。

――今年のXbox E3 2019 ブリーフィングに出展したID@Xboxタイトルのなかで、とくに印象的なのは?

クリスお答えするのが難しいのですが……。ID@Xboxタイトルではないのですが、『サイバーパンク2077』がすばらしいと思いました。大型スタジオからの超大型タイトルです。キアヌ・リーブスが登壇しましたが、みんなとても興奮していましたね。そしてその後に、『Spiritfarer』が登場しました。これはカナダのスタジオが作ったタイトルで、とても落ち着いた心地よい静かなゲームです。Xboxは『サイバーパンク2077』のような超大型AAAブロックバスターから、小規模なスタジオの特別なゲームまで幅広く提供しているわけです。

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『Spiritfarer』はThunder Lotus開発によるインディーゲーム。プレイヤーは、死者を船で運ぶ船頭のStellaとして、友人たちを死後の世界に導くことになる。「大切な友人に別れを告げる方法を学びつつ、畑を耕し、採鉱し、魚を釣り、収穫し、料理し、神秘的な海を航海します」とのことで、相当独自色の強そうなゲームだ。

――えらいものを引き合いに出しますね(笑)。

クリス先ほどもお話した通り、『RPGタイム!』は本当にワクワクしています。『12 Minutes』も楽しみにしています。すばらしいアドベンチャーゲームですが、かなりダークな内容で緊張感があります。いいタイトルになると思います。『Blair Witch』も、ID@Xboxプログラムから出ます。かなり怖そうなので私はプレイしないかもしれません(笑)。このスタジオ(ポーランドのBloober Team)とは、長くお付き合いをしています。
 ID@Xboxは、ゲームも幅が広がっています。現在67ヵ国のクリエイターといっしょにプログラムを進めていますが、ひとりで作っているところから数100人が働くスタジオまで、スケールはさまざまです。ID@Xboxをローンチして以来6年が経ちますが、インディーゲームの定義が幅広くなり、それに従ってパートナーの幅も広がりました。これはすばらしいことです。

ID@Xbox トップ、クリス・チャーラ氏に聞く。『RPGタイム! ~ライトの伝説~』は、ゲームで子ども時代の感覚を思い起こさせる特別なタイトル【E3 2019】_02
12分のゲームプレイをくり返して、バッドエンドを回避するインタラクティブスリラー。捜査官が怖い。
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ホラーゲームには定評のあるポーランドのBloober Teamによるタイトル。映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』をベースにオリジナルストーリーが展開される。海外では8月31日発売。

――2018年10月末で通算1000タイトルを達成したID@Xboxですが、現状のタイトル数をお教えください。

クリス2018年10月以来数字は発表していませんが、もちろん増え続けていますし、これからも多くのタイトルを発表しますよ。そして、多くのゲームがXbox Game Passに追加されます。

――クリスさんが以前ID@Xboxの課題のひとつだと話していた、ディスカバラビリティ(コンテンツを見つけてもらえる可能性のこと)に対する取り組みの最新状況をお教えください。Xbox Game PassにID@Xboxタイトルを入れるのは、チャレンジングな取り組みだったかと思うのですが、調整はたいへんだったのですか?

クリスインディゲームデベロッパーは、ひとつの懸念を持っています。世の中にはすばらしいゲームがたくさんあり、どうしたらプレイヤーを見つけられるか、です。私たちが、『The Good Life』のようなすばらしいゲームを皆さんにお見せする機会を得るというのは、私たちがE3に参加する理由のひとつです。Xbox Game Passを始めた理由のひとつもここにあります。プレイヤーがつぎのお気に入りのゲームを見つけ、デベロッパーはプレイヤーを見つけることができます。プレイヤーはこのお陰で、いま多くのインディーゲームを楽しんでいます。
 実際のところ、Xbox Game PassにID@Xboxタイトルを入れるのは少しもたいへんではありませんでした。もちろん皆さんに主旨をわかっていただくためには説明が必要でした。これまでとは異なるビジネスモデルですから。私たちはデベロッパーがXbox Game Passへの参加に合意した結果、参加しないときより実績が悪くなってしまったという状況は絶対に避けるべきことだと肝に命じています。いまは成功したデベロッパーが2作目、3作目、4作目とXbox Game Passに参加してくださっていて、プログラムはうまくいっていると思います。

――Xbox Game Passへのタイトルセレクトは?

クリスタイトルセレクトはID@XboxチームとXbox Game Passチームが協力して仕事を進めています。デベロッパーがプログラムへの参加を希望してくることもあれば、こちらがよいゲームを見つけて、これをXbox Game Passに入れて紹介したいと思いアプローチすることもあります。『The Good Life』は後者の例ですね。気をつけているのは、すべてのゲームが高品質であることです。ファンの好みはさまざまですが、品のよいゲームを揃えています。

――ゲーマーやデベロッパーからの評価は?

クリスXbox Game Passに参加した人がこれまでプレイしたことのないジャンルのゲームをダウンロードして、つぎにはそのジャンルのゲームを購入するということが起きています。Xbox Game Passは人々にいろいろなゲームを試す機会を提供しているのです。小売価格で購入するとなったら手を出さないゲームにも触れることができます。私は年を重ねていますが、子どものころには購入したどのゲームもすばらしいと思いました。それはまだ、3、4タイトルしか持っていなかったからです。Xbox Game Passは、発見する自由を与えてくれると思います。

――ところで、最後にちょっとだけ小賢しい質問をさせてください。“Project Scarlett”で、ID@Xboxはどのように変わりますか?

クリス(笑)。基本変わることはありませんよ。インディゲームデベロッパーは、“Project Scarlett”のフィーチャーを利用することができます。Xbox OneやXbox One Xの場合とまったく同じです。