『ヒットマン2』はダンディなおじさんたちが作った、大人の魅力溢れるゲームだった。クリエイターや担当声優を直撃

『ヒットマン2』の開発元であるIO Interactiveへのスタジオツアーを敢行。クリエイターや47の声優さんに聞いた。いずれもダンディなおじさんばかり!

 ファミ通ドットコムでは、2018年10月に『ヒットマン2』の開発元であるデンマーク・コペンハーゲンのIO Interactiveへのスタジオツアーを敢行。ここでは、その取材時に取材した、キーパーソンへの秘蔵インタビューをお届けしよう。

 お話をうかったのは、エグゼクティブ・プロデューサーのマーカス・フリードル氏とアソシエイト・ゲーム・ディレクターのエスキル・モール氏、そして主人公であるエージェント47の声優を務めるデヴィット・ベイトソン氏の3名だ。ベイトソン氏に関しては、「スタジオに鎮座している圧倒的に恰幅のいいあの男性はスタジオヘッドかなあ……」と想像していたら、エージェント47の声優さんだったというちょっとしたエピソードがある。エージェント47役だけあって、圧倒的な存在感でした……。

 何はともあれ、スタジオツアーの復習はすでに公開済みの以下の記事でご確認を。

『ヒットマン2』スタジオツアー【1】コロンビアの密林を体験。ここはまさに“暗殺の箱庭”だ

『ヒットマン2』の開発元であるIO Interactiveへのスタジオツアーを敢行。コロンビアのステージをひと足早く体験した。プレイ動画を交え、その模様を紹介する。

『ヒットマン2』スタジオツアー【2】“ゴーストモード”は暗殺を見事にマルチプレイに落とし込んだ注目のモードだ

『ヒットマン2』注目のオンラインマルチプレイモード“ゴーストモード”のプレイリポートをお届けする。

エスキル・モール

(アソシエイト・ゲーム・ディレクター)

『ヒットマン』らしいマルチプレイを求めて――

――gamescom 2018でのプレゼンで最後にジャングルが出てくるというのを今日ようやく体験させてもらったのですが、コロンビア(サンタ・フォルチューナ)の特徴や遊びどころを教えてください。

エスキルひとつめは初期の『ヒットマン』ゲームへの回帰です。中でもとくにデルガド・カルテルは『ヒットマン:ブラッドマネー』で知られていたわけですが、今回その一家に再び会いに行くことになります。さらに、『ヒットマン:ブラッドマネー』より派手に立ち回るという(笑)。サンタ・フォルチューナは、物語の全体のテーマに合うということと、木陰や草むらに身を隠すという新しい機能を披露するのに最適のステージでした。そのひとつまえのレベルはマイアミでは、構造や建築といったものがすべてですが、サンタ・フォルチューナはそれと相反するものであり、プレイヤーによりソフトで異なる色彩、異なる匂いすら体験してほしいと思っています。

【関連記事】

『ヒットマン2』のプレイの幅をさらに広げる“World of Assassination”、「暗殺の手段はいくらでもある」【gamescom 2018】

ワーナー ブラザースのプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『ヒットマン2』の、gamescom 2018で行われたセッションの模様をお届けしよう。

――匂いですかあ……。たしかにジャングルが匂いたつような感覚はしますね。『ヒットマン2』には6つのロケーションがあるのですが、それぞれテイストが違った感じになるのですね?

エスキルはい、今回はとくにそうだと思います。いや、前回もそうでしたね。我々のゲームにとってレベルというのは非常に重要で、それぞれに特有のアイデンティティーがあるのです。とくに『ヒットマン2』はいくつかのエピソードからなる物語ではありません。それぞれのレベルがつぎつぎに展開していくので、レベルの規模を若干調整していくことが可能で自由がありますから、そうやってゲームのバランスをうまく取ることができるのです。すべてのレベルをプレイしているとき、私は一生懸命それぞれを見ていこうとします。それはまるでコース料理を食べて、「これは美味しい前菜だ」とか、「このメインコースは美味しいな」などと感じているようなものです。少し変わった見かたなのかもしれませんが、前作では少し限界がありました。つぎのレベルに到達するまで、長いあいだずっとプレイしなければならないため、各レベルは特別な規模である必要があったのです。今回は、プレイヤーのためにメニューを改善する機会がありました。

――コースメニューというのは、とてもおもしろい比喩ですね。『ヒットマン2』では。最初が前菜でだんだんメインディッシュになっていくということですか?

エスキルいいえ、必ずしもそうではありません。ただ、6つのコース料理だとすると、まずは……。うーん、あるものは小さくてもよいですし、別のものは大きくてもよいのです。甘いものがあって、酸っぱいものがあって、という風に展開しますが、このゲームではとてもダークなものや明るいものがあります。このように色で遊ぼうとしているのです。

――まあ、前菜やメインディッシュという区分けではなくて、メイン級のものが6皿並ぶという感じのようですね(笑)。そうすると、サンタ・フォルチューナはどのような料理です?

エスキル私にとっては野菜ですね。より緑なんだと思います(笑)。ただ、そのたとえを使ってしまったので、100%そうではないかもしれないと少し心配になってきました。「これはこのような食べ物です」と言っているのではないのですが、お分かりになりますでしょうか? そうやって詳細にわたって見ていくことはできませんが、キュウリが入っていて、新鮮でみずみずしいと言っておきましょう。

――おもしろいですね(笑)。その流れで言うと、オンライン要素というのはどうなりますか?

エスキルああ、オンライン。それはキャンディではないでしょうか(笑)。ついつい手が出てしまうスナックのような誘惑ですね。

――詩的な表現でおもしろいですね(笑)。『ヒットマン2』のオンラインでは、“ゴーストモード”と“スナイパーアサシンモード”が実装されていますが、これはそれぞれどのような意図で搭載されることになったのですか?

エスキルこれまでずっとプレイヤーを見ていて分かっていたのは、『ヒットマン』はとても競争心を換気するゲームだということです。つねにお互いに勝とうとしているのですが、その真髄はシングルプレイヤーゲームです。ですので、プレイヤーどうしを対戦させるためにはどうしたらよいのかということを我々が考えるのは自然な流れでした。それでもただ単に“旗を獲得する”というだけのものや、ふたりのプレイヤーが同じレベルでお互いを狙撃するというような一般的なマルチプレイヤーゲームを作りたいとは思いませんでした。そういったものは我々のメカニックではあまりうまくサポートできないのです。そこで自分が暗殺者であるという核となるメカニックは維持しつつ、気付かれないようにしてプレイするにはどうしたらよいかということを考えました。これは我々の最初の試みです。何通りかのやりかたを試してみた結果、「これはいままでのゲームと違う」と感じたのが、これだったのです。もちろん『ヒットマン』だと感じられつつ、とてもめまぐるしく激しいものとなっています。あなたも“ゴーストモード”はプレイしてみられましたか? プレイなさったのですね。どちらが勝ちましたか?

――対戦相手が勝ちました……。でも、とても楽しかったです!

エスキルそれはよかった。ありがとうございます。私もプレイしたとき、これは、「これまでとは違う」と感じました。これまで経験したマルチプレイヤーゲームとは違う形で、私の頭脳が反応しました。ですからそんな経験を取り入れるというのはたいへん興味深いことでした。多くの要素が同じでありながら、ほかのどんなマルチプレイヤーゲームとも違います。これはとても興味深いもので、このゲームで何が可能であるかのほんの始まりに過ぎないと感じています。

――このふたつのモードに落ち着くまでには、やはり試行錯誤などあったりしましたか?

エスキルはい。紙面上設計しただけものや、実際にテストしてみたものもありました。このバージョンほどうまく機能しないものもたくさんありました。このゲームの特質はとてもダークなものですから、それを楽しくおもしろいものにしようとしましたが、試してみた中にはあまりに身の毛もよだつものとなってしまったものもあって、気に入らなかったものもありました。後味の悪いものになってしまったのですね。そうやってさまざまなものを試してみました。

――今日は、マイアミで“ゴーストモード”をプレイしましたが、基本的に6つのステージ全部で、“ゴーストモード”が遊べることになるのですか?

エスキルはい、それこそが我々の意図するところだったんです。それを発展させていこうと思っています。そして“シーズン1”にはマップも搭載することできればと思っています。そうやって展開していくつもりです。(※現段階では、“ゴーストモード”が遊べるのはマイアミのみ)

――ところで、『ヒットマン』シリーズの主人公である47というのは、エスキルさんにとってどのような存在ですか?

エスキル彼はファンタジーの世界では完璧な暗殺者です。ところが私にとって彼は自分の感情を切り離していると感じます。それは、エンターテインメントコンテンツという見地からすると、難しい側面もあります。というのも、物語を作っていく際、主人公はおおむね変化し成長していくことが多いのですが、『ヒットマン』における47は白紙状態の人物なので、プレイヤーにとってなかなか共感しにくいのです。ところが一方で、何も描かれていないキャンバスであると、彼が気の利いたセリフやコメントを言うわけではないので、プレイヤーにとっては入っていきやすいと感じることもあります。ですので、内面をまったく見せないので、ある意味でプレイヤーにとっての完璧なアバターとなりえます。その点は我々にとってやりやすい点ではあります。私が『ヒットマン』をプレイするときは、ゲームでおなじみのキャラクターを動かしているという感覚にはなりません。47だと、「この世界で実際に動いているのは自分の手だ」と実感するのです。この感覚、分かっていただけます?

――47が完璧なアバターだとすると、たぶん悪役と呼ばれる存在に個性を持たせることによって、『ヒットマン2』という世界観を構築しているのだと思いますが、悪役を作ることに関しては、非常に注力されたのでしょうか?

エスキルその通りです。47が無感情なので、彼の暗殺対象であるターゲットは、感情豊かで味のある、不安といった人感情を抱くような、きわめて人間的な存在にしなければなりませんでした。一方で、ターゲットを生み出した中心となるライターは、彼らを古典的な悪役にしたくはありませんでした。「俺はとてつもなく邪悪なのさ」などという存在はこれまでに何度も見てきましたが、我々のゲームの悪役はつねに自分のやっていることは正しいことで、そうすることが必要なのだと思っています。それが違法であると分かっていても、大義名分のためには必要なことだと考えているのです。我々のゲームでは悪役には演技が求められます。

――たしかに映画でも同じで、悪役こそ演技力を求められますね。

エスキルそれからまた、『ヒットマン』はある意味で、覗き見的なゲームでもあります。そのため、他人の生活を観察するので、悪役にもさまざまな特徴を持たせて、興味深いものとしなければなりません。たとえば、前作『ヒットマン』に出てきた科学者であるシルヴィオ・カルーソーは、亡き母親との関係性に大きな特徴がありました。そのため彼は感情面の重荷を背負っており、さまざまな物語があるのです。彼はとても興味深い人物でした。彼の立ち居振る舞いからもさまざまな形で自制しているということがうかがえました。足音だけでも、ホールを通ってやってくるのが彼だと判断できますし、人と話すときのの口調から、恥ずかしがり屋であり壊れた人間であることが分かり、かわいそうにも思えるのですが、それでも彼には死んでもらわなければならないと思わせる必要もあるのです。

――開発を終えてみて、「ここはちょっと誇れる」とか、「ここはうまくやった」みたいな箇所がありましたら教えていただけますか?

エスキルおもしろいもので、鏡がうまく機能するということにとても満足しています。極めて些細なディテールだと思われるかもしれないのですが、前作では大きくてとても美しい鏡があり、人々がそれに映っていたのですが、その後ろまでは見えませんでした。それが本作では見えるようになったのが、とても気に入っているのです。それによってNPC(ノンプレイヤーキャラクター)がよりリアルに見えます。

――神々は細部に宿るといったところでしょうか。

エスキルそれからまた、今回復活ささせたブリーフケースも、うまく機能させるのが難しかったです。前作ではバックパックなのですが、それはプレイヤーが持つ追加のインベントリースロットになります。ところがブリーフケースですと、それとは異なって、ふたつの目的を満たします。まずは、それによって47が引き立って見えます。何か違法なものが入っているブリーフケースを持って歩き回っているということから、よりパワフルに見えるのです。47にバックパックを持たせるというのは、彼のしているネクタイに似合わないのでできません。

――まあ、スーツとの相性はあまりよくありませんね。

エスキルただし、彼はブリーフケースを片手に持たなければなりません。単にもうひとつのインベントリースロットが増えるというだけでなくて、パズル的な要素もあります。持ちたいと思えば選べるのですが、突然もう1本手が増えるわけはないのです。つまり、ブリーフケースを持った状態で雨樋をよじ登ることはできません。その場合は、どこかに置いておかなければならないのですが、向こう側に放り投げると、誰かに「あれはブリーフケースだ」と見つかってしまい、それがどこかに持っていかれたりする。というわけで、物語のためにはうまく機能していますので、これにはとても満足しています。ブリーフケースを持って歩き回り、それを置いたりするのが気に入っています。とても些細なことのように聞こえるかもしれませんが、物語にとって、そして彼の人となりにとっては大きなことなのです。

――最後に、本作に注目している日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

エスキル日本のファンのみなさん、ありがとうございます。『ヒットマン2』をみなさんにぜひ楽しんでいただければと願っています。

【取材後記】

 「(各ロケーションで)プレイヤーによりソフトで異なる色彩、異なる匂いすら体験してほしい」「それはまるでコース料理を食べて、“これは美味しい前菜だ”とか、“このメインコースは美味しいな”などと感じているようなものです」「(47は)ある意味でプレイヤーにとっての完璧なアバターとなりえます」「『ヒットマン』はある意味で、覗き見的なゲームでもあります」など、さすが開発者だと思わせる、『ヒットマン』というIPの本質をつくコメントが溢れたインタビューとなった。詩的な表現も楽しくて、とくに記者が響いたのは、『ヒットマン2』がコース料理という説明のくだり。そういえば、『ヒットマン2』自体は何料理なのかを聞くのをうっかりしていたなあ。豪華なディッシュが並ぶフランス料理かしら? いずれにせよ、私たちは一流のシェフが作る極上の料理を堪能できるわけです!