2018年8月21日~25日(現地時間)ドイツ・ケルンメッセにて開催されたヨーロッパ最大規模のゲームイベントgamescom 2018。ここでは、Wargaming.net CEOビクター・キスリー氏へのインタビューの模様をお届けしよう。gamescomの会期に合わせて、ビクター氏に話をうかがうのも、ここ数年すっかり恒例となっているが、今年、氏の胸の中にある戦略は?

Wargaming.net CEO ビクター・キスリー氏が語る、「『World of Tanks』はこれから20年、さらに20年と続いていく」【gamescom 2018】_04

――主力タイトルである『World of Tanks』が今年8周年となりますが、この1年の成果を教えてください。

ビクター 大きなアップデートである、“1.0”をリリースしました。これによってゲームの技術的レベルが格段に上がりました。それは、グラフィックを見てもらえばわかります。これまでは若干古い感じがありましたが、いまは映画のような感じです。トリプルAタイトルのレベルに上がったと自負していますよ。まあ、アップデート1.0は、会社としてやらなければいけないことをやったまでです。

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――esportsとしての『World of Tanks』は、この1年いかがでしたか?

ビクター 『World of Tanks』にesportsのフォーマットはありますが、正直なところすべてがうまくいったわけではありません。このgamescomでは、個人用プレイの新しい取り組みを行っています。会場に誰でも入れるesportsセクションがありまして、個人戦が可能となっています。対戦は約1時間で、エクスペリエンスポイントが得られます。毎日最高得点を獲得したプレイヤーを選出して、さらに3日間で勝者が決まりますが、賞金は1000ユーロほどです。いまはこのような新しい形式を実験的に行なっています。

――新しいスタイルを試す理由は?

ビクター 以前の形式では、esportsの上のほうにはいけませんでした。『World of Tanks』の通常のプレイは15 vs 15で、おもに個人の戦いです。esportsでは、7 vs 7で、早い決着になります。決勝にはたくさんの人に来ていただきましたが、esportsでは何百万人というビューワーを集めることが重要です。いつも『World of Tanks』を遊んでいる人たちは、esportsのこの早い対戦を理解できなかったようです。自分たちが日ごろ親しんでいるゲームとは違うので、学ぶところがなかったのです。
 いま実験的に取り組んでいる形式は、家庭でプレイするノーマルゲームと同じものですね。

――30 vs 30もありますよね?

ビクター “グランドバトル”ですね。ゲームは9倍の規模になります。ルールが異なり、スペシャルアビリティもあります。ほかとは大きく異なるゲームプレイモードです。プレイヤーの皆さんは気に入ってくれているので、これは今後も開発を進めていきます。

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――『World of Tanks: Mercenaries』が配信されましたが、この意図は?

ビクター 『World of Tanks: Mercenaries』は、私たちが初めて行なったPvEストーリー主導の展開でした。これから結果を分析して、今後このようなコンテンツを作っていくかどうかを決めます。

――これからの『World of Tanks』で、見据えていることは?

ビクター 『World of Tanks』は8年間続いていますが、これから20年、さらに20年と続いていくでしょう。このゲームだけでなく、『League of Legends』や『フォートナイト』、『クラッシュ・オブ・クラン』など、いろいろな人気ゲームがありますが、これらは少なくとも世界の重要ないくつかの地域では、ゲームであり、サービスであり、そして文化現象です。文化現象とは人々の生活の一部になっているということです。軍隊の歴史に興味があれば、『World of Tanks』をプレイしなくても、その話しをしますし、観戦し、ニュースを読みます。文化現象はサポートしなければなりませんが、そのまま自然に維持され、継続していきます。

――昨年お話をうかがったときに、『World of Tanks』はひとつのジャンルだとおっしゃっていましたが、ひとつのジャンルとしてさらに認識させるための努力を行なっていくということですか?

ビクター もちろん今回の“アップデート1.0”のように、ゲームの改善はつねに行います。コンテンツも追加します。実際の世界との繋がりも持たせます。タンクミュージアムに行ったり、ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリを作ったりもします。もちろん、新しいゲームモードを考えます。これまでは15 vs 15が主流でしたが、“グランドバトル”があり、ほかのモードもプロトタイプを作ってテストしています。
 これはシューターと同じなんです。シューターではデスマッチ、チームデスマッチ、キング・オブ・ザ・ヒル、アサルト、ディフェンス、バトルロワイヤルなどのモードがあります。『World of Tanks』もいずれは、同じようなことをやりたいと思っています。

――『World of Tanks』を20年、40年と継続するために必要なことは?

ビクター 私が長いあいだ行ってきたビジネスの知恵ではなくて、実際にゲームを作るチーム、そしてチームを率いるリーダーやマネージャーとして優秀で信頼できる人材を配置することです。プロジェクトをあるスタジオに任せるわけですが、それを実際に運営していくいい人材を見つけるのは大変なことです。適材ではない場合もありますので。

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――わかりました。では、『World of Warplanes』や『World of Warships』など、ほかのタイトルの状況を教えてください。

ビクター 正直なところ、『World of Tanks』ほどのファンは獲得していません。リアルな飛行機のシミュレーターを操縦するのは、なかなか敷居が高いようです。私たちにとっては、『World of Tanks』が最大のゲームで、『World of Warships』はその3分の1くらいです。コンソールの『World of Tanks』は、PC版ほどではないですが、それはインストールベースの兼ね合いもあるかもしれません。

――WG Labsの成果を教えてください。

ビクター WG Labsは別会社のようなもので、「おもしろいF2Pのタイトルを作っていて、何か助けが必要なら来てください」という私たちのメッセージです。ゲームを世に出す、あるいは開発のお手伝いができるかもしれません。とはいえ、小さなチームのゲームは取扱がなかなか難しいとは言えるかもしれません。

――ここ数年積極的に取り組んでいるVRについてはいかがですか?

ビクター VRやARは将来性があると思いますが、明日すぐにどうなるというものでもないです。いずれは世界を席巻するでしょうが、いまはR&Dの努力をするときです。Wargaming.netでは小さなチームが『World of Tanks VR』を作っています。同作では、2 vs 2のバトルが体験できます。コントローラーでタンクを操作しますが、映画の中にいるような感じです。まだデモでお見せしている段階です。
 ARについては、テクノロジーのプロセスに追いついているところで、いまは大きな市場は見えていません。社内の開発のためにデモをやったり学習していますが、シリアスなビジネスとは考えていません。ARは、iPadで『World of Tanks』のデモをやりました。テーブルの上でタンクバトルを見られますよ。

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こちらはARの取り組み。

――最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

ビクター 残念ながら今年は東京ゲームショウに合わせて日本に行くことができないのですが、私のメッセージはシンプルです。『World of Warships: Legends』が2019年にプレイステーション4とXbox Oneでリリースされます。ローンチでは、日本の戦闘艦もでてきますので、期待していてください。