思えば、Xbox E3 2018 ブリーフィングにおける『Forza Horizon 4』のプレゼンテーションは印象的だった。開発元であるPlayground Gamesのラルフ・フルトン氏登壇のもと、本邦初公開となる映像が公開。「季節の移り変わりがダイナミックに描かれる」との同作の特徴をアピールすべく、秋の場面になると天井からハラハラと落ち葉が落ちてきて、ブリーフィングに彩りを添えたのだ。なぜ秋だけこういった演出をするのだろうか……といったちょっとした疑問はさておき、ブリーフィングにアクセントを加えたことは間違いなく、『Forza Horizon 4』は印象深いタイトルとなった。

『Forza Horizon 4』は“ライフ”を満喫できるゲーム、季節の移ろいがオープンワールドでの没入感をさらに高める【E3 2018】_03
空から落ち葉が……。「なぜ秋だけ?」と思ったのは記者だけではないはず。まあ、いいアクセントになったど。

 その後実際に試遊した『Forza Horizon 4』は期待に違わぬデキで、秋→冬→春→夏と季節の移り変わりを体感できる体験版は、本当に気分爽快であった。そもそも、アイルトン・セナをこよなく敬愛する記者は、メインにフィーチャーされているクルマにマクラーレン・セナが採用されているだけでもポイントが高いのであった。

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E3会場のMixerブースではマクラーレン・セナが出展。メインにフィーチャーしたクルマが展示ブースに華を添えるのは『Forza』シリーズのならわしなので、もしかしたら……と思っていたが、実際に目にするとテンションが上がる。

 そんなわけで、マイクロソフトのBCD(ビハインド・クローズド・ドア)セッションで『Forza Horizon 4』が行われるとあっては、参加しないわけにはいかないのだった。プレゼンを担当したのは、Playground Gamesのアートディレクターであるベンジャミン・ペンローズ氏。

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『Forza Horizon 4』のアートディレクター、ベンジャミン・ペンローズ氏。バックにあるゲーム中で再現された背景がリアルなこと!

 プレゼンでまずペンローズ氏が強調したのが、『Forza』シリーズの好調ぶり。「2017年には前年を30%上回る2200万人が全世界で『Forza』タイトルをプレイした」という。言うまでもなくこれは、昨年リリースされた『Forza Motorsport 7』の効果によるもので、『Forza Horizon 4』がリリースされる今年は、それをさらに上回るユーザーがプレイすることが想定される。ちなみに、2016年にリリースされた前作『Forza Horizon 3』は、これまでに900万人がプレイしているらしいが、これも予想を大きく上回っているそうだ。「人数だけでなく、幅広い層のさまざまなスタイルのプレイヤーが『Forza』シリーズをプレイしてくれています」とペンローズ氏。リアルシミュレータよりの『Forza Motorsport』シリーズと、オープンワールドで爽快さを重視した『Forza Horizon』シリーズを1年おきに交互にリリースするという流れは、『Forza』シリーズの訴求に相当効果的だと思われる。

 わけても『Forza Horizon』シリーズの価値は、「楽しさ、自由、コミュニティーの楽しさですが、よりシンプルな言いかたをすれば、『Forza Horizon』は“友だちとクルマを楽しむゲーム”です。言ってみればシンプルなアイデアですが、世界中で何100万人ものプレイヤーが共感してくれています。その分同時に責任も重いわけで、さらに魅力的なブランドでなければならないわけです」とペンローズ氏。つまりは、人気IPゆえの責任感の重大さということであろうか。

 そんなわけで、前作での大成功を受けて、さらに期待の高まる『Forza Horizon 4』だが、本作を貫くのは、3つのポイントだという。“舞台をイギリスにしたこと”、“ダイナミックな季節の移ろい”、“『Forza Horizon 4』でのライフを生きる”だ。以下、ポイントごとに見ていこう。

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舞台はイギリス

 『Forza Horizon』シリーズのファンならば、最新作の舞台がどこになるか大いに気になったことだろう。1作目がアメリカ・コロラド州、2作目が南ヨーロッパ、3作目がオーストラリアときて、4作目の舞台となるのは、イギリス。「へー、自分たちのホームグラウンドを選んだのか……」というのが、記者の率直な感想だが、ご存じのとおりPlayground Gamesの所在地となるのがイギリス。「自分の住む土地への理解が深く、当然のことクオリティーに対するこだわりも強いです。私たちが作った中でもっとも美しく本物に近い世界になっていると思います」とペンローズ氏も自信のほどを見せる。

 「湖や海岸線、城、スコットランドの山々、ウェールズの谷、イングランドの田舎など、歴史を感じられるイギリス特有の風景が広がりはゲームにユニークな環境を提供しています。前作のオーストラリアとはまったく異なる背景になっています。『Forza Horizon』シリーズのいいところは、道路を離れてふだんは踏み入らないような予想外の場所にも行けるところです」(ペンローズ氏)

 ちなみに、『Forza Horizon 4』の舞台にイギリスを推薦したのは、別の開発チームだという。それが、作業を進めるうちに、『Forza Horizon 4』にはイギリスしかないと思うようになったのだという。

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ダイナミックな季節の移ろい

 「季節の変化は時間の経過を感じさせる上でとても重要なポイントです」とペンローズ氏。「オープンワールドが時間の経過とともに変化していくさまを表現するのは、これまでとはまったく違う方法論。より没入感を高めてくれます。季節の移ろいとイギリスというロケーションの組み合わせを逃す手はないと思いました」とペンローズ氏は経緯を語る。これは技術的には容易ではなかったようだが、開発陣がやりきってくれたという。季節の移り変わりを語るときのペンローズ氏の口ぶりはとてもなめらかで、さながら詩でも歌っているかのよう。いかに季節の移ろいにこだわっているかがうかがえる。無粋を承知でかいつまんでご紹介すると以下の通り。

 「夏から始まって秋になると、木々の色が変化し、車輪と走行面の静止摩擦も変わります。季節ごとに音声を録音しました。冬になると木々のあいだを通る風の音などが聞こえて、寒いと感じます。さらに雪、霜、氷に覆われるようになると風景は一変します。氷が張ればクルマはスライドしやすくなるんです」
 「春はイギリスでもっとも雨が多く、水たまりができてクルマはスリップしやすくなります。野生の花が彩りを添えています。そして再び夏に戻るというサイクルです。チームのほかのメンバーとも、四季の移ろいによって、いかに見た目や感じかた、ムードが変わるかを共有しました」
 「季節の変化はすべてを変えます。オーディオやビジュアルだけでなく、瞬間瞬間のドライビング経験も異なるため、さまざまな条件のもとでの運転をマスターしなくてはいけません。走行面は数百種類になり、タイヤの温度も変化します。もちろん、操縦にも影響を与えます」
 「オープンワールドでのゲームプレイも季節によって変化します。たとえば湖に浮かぶ島には、冬になって氷が張れば行けるようになります」
 「季節の変化はゲーム内でのイベントにも影響します。季節は現実時間の1週間ごとに変わり、これはすべてのプレイヤーに共通します」

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『Forza Horizon 4』でのライフを生きる

 さて、ペンローズ氏が、「本作の大きなアイデアであり、ほかのゲームと大きく異なる」と言うのが、“『Forza Horizon 4』でのライフを生きる”ということ。「その地で仕事と家を見つけて住み、フェスティバルを楽しみ、『Forza Horizon 4』でのライフを満喫する。そして多くのユーザーと、オープンワールドでのライフを共有すること」とペンローズ氏。と、書いている記者もじつのところはあまりピンときていないのだが、おそらくはフェスティバルのような『Forza Horizon 4』での生活を満喫して、オンラインで共有できるのではないかと想像する。

 「世界の共有は経験の共有でもあります。時間や天候、季節はプレイしているすべての人に対してシンクロしています。ほかのプレイヤーと世界を共有すれば、楽しさも倍増して相乗効果が生まれます。これはAIでは実現できないことでしょうね」とペンローズ氏は語る。6人が参加しての協力プレイ的な要素もあるようだ。一方で、『Forza Horizon 4』はオンラインプレイを強制するものではないという。「本作はオンライン専用ゲームではありません。誰もがオンラインでプレイしたいわけではないので……。ソロでプレイするオフラインゲームにもスムーズに移行できて、ライバルは“ドライバター”に置き換えられます」という。さまざまな改善により、『Forza Horizon 4』ではオンラインプレイでの体験はより楽しいものになっているそうだが、“オンラインプレイに参加しない”という自由が確保されていることを、ペンローズ氏は強調する。

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 “プレイヤーは遊びたいように遊べる”という『Forza Horizon 4』。“没入感のある世界を構築する”という意味においても、四季の移ろいを再現することは必須だったようだが、本作のスケールの大きさは、1回のプレゼンだけではすべてを理解しきれないようだ。何はともあれ、発売が楽しみなタイトルだ。『Forza Horizon 4』は10月2日発売予定だ。

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