日本のデベロッパーが、これからも画期的で創造性溢れるゲームを作ってくれたら嬉しい
E3 2018の会期に合わせて行われたXbox E3 2018ブリーフィング直後に取材させてもらった、マイクロソフト コーポレート・バイス・プレジデント グロース&エンゲージメント ディビジョンのマイク・イバラ氏へのインタビューをお届けしよう。マイク・イバラ氏が取り仕切るグロース&エンゲージメント ディビジョンは、ゲームのサービスに特化した部署のようで、フィル・スペンサー氏の右腕のような存在だと思われる。ちなみに、そのフィル・スペンサー氏は、最近ゲーミングのエグゼクティブ・バイス・プレジデントに就任し、マイクロソフトのすべてのゲーム事業を統轄する立場に立っている。マイクロソフトスタジオのコーポレート・バイス・プレジデントに就いたのが、マット・ブーティー氏で、この3者でXboxのソフト戦略の舵取りをするのではないかと思われる。
というわけで、マイク・イバラ氏に聞いた。
デベロッパーがXbox One Xというハードを非常によく理解してくれている
――今年のXbox E3 2018 ブリーフィングでのラインアップは、とても充実していましたね。
マイク 私がE3に来るのは今年で10年目ですが、10年前には展示タイトルは50本くらいだったと思います。今年はステージで50タイトルを披露できて、とてもよかったです。2年前にXbox One Xの開発を表明したときは、リビングルームでもっともパワフルなコンソールを作り、ゲームのベストバージョンがプレイできるようにしたいと思っていました。いまはデベロッパーが実際にそうしてくださっていることがわかっています。彼らのほうからアプローチがあり、「ゲームを見せるにはベストなハードウェアなので、あなたのステージでゲームを披露したい」と言われました。
披露するゲームの数という意味だけでも、世界初お披露目タイトル15本というのは信じられない数字です。ファーストパーティーの投資として、ファーストパーティーのスタジオが倍の数に増えたことを発表し、ワールドクラスのスタジオのオーガニゼーション(組織)になり、またゲームのベストバージョンをステージで見せることができたことに、とてもワクワクしています。
――マイクロソフトの取り組みが着実に成果を上げているということですね?
マイク 現在この業界で起きていて、とても嬉しく思うのは、デベロッパーがXbox One Xというハードを非常によく理解してくれていることです。デベロッパーが新しいハードウェアを最適化するには時間がかかります。ベセスダ・ソフトワークスの『Fallout 76』やユービーアイソフトの『ディビジョン2』は、ハードウェアを最大限に活用して経験を生き生きとさせることに成功しています。
サービスの面では、ゲームはMixerやXbox Game Passをビークル(乗り物)として使い、新たに何百万人もの人たちを引き込んでいます。ビジュアル、サウンドなどゲームのベストバージョンをリビングルームで見ることができるんです。
――今年のブリーフィングでは、多くの日本のタイトルがお披露目されましたね。
マイク とてもワクワクしています。日本にはここ2年ほど何度も足を運びました。それはゲーマーの意見を聞いたからです。彼らからもっと世界で通用するタイトルが必要だと言われました。ちなみに私はフロム・ソフトウェアさんの大ファンなので、彼らの作るものは待ちきれない気持ちです。
――この2年間、なぜ日本メーカーに対して積極的に動いたのですか?
マイク もっともクリエイティブなゲームの一部が日本で生まれているからです。フロム・ソフトウェアやプラチナゲームズなどを始めとする数々のデベロッパーが作るリッチで素晴らしいタイトルがもたらす奥深いゲーム経験は、ぜひともXbox Oneで提供したいと思いました。
――日本のクリエイターのクオリティーが、マイクロソフトがいっしょに仕事をしたいと思わせたということですか?
マイク まさにそのとおりです。Xbox Oneというハードをさらに充実したものとするために、日本のデベロッパーは大きなものをもたらしてくれると思ったのです。
――さきほどファーストパーティーのスタジオが倍に増えたとおっしゃいましたが、その目的は?
マイク 多様なラインアップが提供できるワールドクラスのスタジオを組織するためです。間もなく世界で20億人がゲームをプレイするようになります。世界中にいる20億人サポートするには、多様なラインアップ、そして多くの種類のゲームが必要になります。このふたつを提供できるデベロッパーを求めていました。こちらからはマイクロソフトのリソースのすべてを使って、彼らが作りたいと思っているものを可能にする創造性の自由を提供し、さらに幅を広げてもらうことができます。デベロッパーに自由を提供し、創造性を伸ばしてもらい、できる限りベストなファーストパーティースタジオを構築することが私たちのゴールです。
――スタジオの数が倍増したということは、単純にタイトルも倍期待できそうですね。
マイク 彼らが何を作りたいのかがわかるには、まだ時間がかかると思いますが、当社のプラットフォームにはより多くのタイトルが必要ですし、ユーザーさんが参加してくれることが必要です。
――エクスクルシブタイトルを充実させるために、スタジオを増やしたという一面はありそうですね。
マイク そうですね。ファンの皆さんがエクスクルシブタイトルをお求めになるがゆえにスタジオを増やしています。
――今後もスタジオの充実化は続けるのですか? 日本のスタジオへの興味はありますか?
マイク ゲーマーが何を求めているのかは、つねに聞いています。要望がさらに出てくれば、もちろん検討します。
――ブリーフィングでは、Xbox Game Passに力を入れていることがうかがえました。日本ではまだサービスが提供されていませんが、いかがでしょうか?
マイク Xbox Game Passはグローバルなサービスを目指していますので、世界各地の市場を視野に入れて導入できるよう努力しています。現時点で日本での展開について発表できることはありませんが、つねに検討しています。
Xbox Game Passのゴールは、ゲーマーがゲームを手に取りやすくすることです。20億人に当社のゲームを始めてもらうには、価格が壁になってはいけません。私は子どものころ、親にコンソールを買ってもらって、その上でゲームにもう200ドル出してほしいとねだりました。月額9.99 USドルという低価格で、100以上のタイトルにプラスして新タイトルがプレイできるのは、コンソールを家に設置してすぐに手に取れるゲームがたくさんあるだけでなく、まったく新しいIPを発見する機会を提供することでもあります。
デベロッパーのパートナーから見れば、IPのファンになって、将来のタイトルをプレイしてくれる新たなユーザーを獲得できる機会が増えるということでもあります。今年のステージでユービーアイソフトが素晴らしいタイトル『ディビジョン2』を発表しましたが、1作目の『ディビジョン』はXbox Game Passに入っています。ゲーマーはIPについて知ることができるので、『ディビジョン2』への期待が高まります。ユーザーさんは、世界最高のプラットフォームで最高のIPに触れることができますし、デベロッパーは、より多くの人にゲームをプレイしてもらえるというわけです。
――今年とくに楽しみにしているタイトルは?
マイク 1本だけですか? 私は子どものころからゲームを遊んでいるので、Xboxの従業員というよりは、ひとりのゲーマーといったほうがいいくらいです。これからやりたいゲームがどんどん溜まっていって、さらに増え続けています。『ディビジョン』はよくプレイしましたし、『Fallout』の新作にはとてもワクワクしています。トッド(ハワード氏)の仕事は素晴らしいと思います。さらには、私は『Halo』のファンでもあるので、マスターチーフのことはつねに考えています。これから忙しくなりますよ!
――いまお話にでた『Halo Infinite』について、あまりにも情報が少ない感じですが、何か教えてください!
マイク フィルがステージでお話した通りです(笑)。マスターチーフにフォーカスした最新のゲーム体験を提供した、ストーリーラインもエキサイティングなものになっています。私がいちばんワクワクしているのは新しいゲームエンジンです。ステージで見たときは本当に興奮しました。いまお話できるのはこれくらいかなあ……。
――新エンジンのSlipspace Engineの特徴は?
マイク 昨夜遅く、343 IndustriesのチームがHalo Waypointのブログに詳細をポストしました。この中で、リードエンジニアが私がお話できる以上にエンジンについて語ってしますので、ご確認いただけるとうれしいです。
――マスターチーフの物語が描かれるということは、時代設定は『Halo 5: Guardians』のあとになるのですか?
マイク それはまだお話しできません。
――ブリーフィングでは、次世代機のことにも触れられましたが、このタイミングで言及する意義はどのようなものがあったのでしょうか?
マイク フィルがステージで表明したのは、“リビングルームに深く関与していく”という意思です。フィルが強調したかったのは、Xboxはここにあって、これからもつねにゲーマーが何を欲しているかに耳を傾けて、リビングリームを含めて、いかなるストリーミングにも関わっていくということです。
――AIにも注力するとのことでしたが、今後のコンソールの進化の道筋のひとつとして、注力すべきポイントだと考えているのですか?
マイク 幸いなことに、マイクロソフトは大規模な企業として、R&D(研究開発)部門とAI部門を持っていて、ユーザー向けのゲーミングをよくするためのテクノロジーを導入すべく、彼とはつねに連携しています。これはゲーミングのすべてについて継続していきます。
――たしかに、マイクロソフトはKinectやMicrosoft HoloLensといった、新テクノロジーを駆使したデバイスで私たちを驚かせてきました。AIの領域でもそういったことはありえるのですか?
マイク AIはあらゆる業界で画期的なものが作られる大きな可能性を持っています。ゲーミングを含め、マイクロソフトが行なっているすべてのビジネスで可能性を検討しています。インテリジェントクラウド、インテリジェントAI、一般のAIはこうした領域すべてで注目されており、ゲーミングでは一般的にこれまでになかったほどのイノベーションが進んでいます。今後数年は信じられないような素晴らしいイノベーションを見ることになるでしょう。ゲーム、デバイス、スクリーンすべてにおいて画期的なことが期待できるので、ゲーミングにとっても、とてもエキサイティングなときが来ていると言えます。
――ちなみに、今年のブリーフィングは、ライバル陣営に対する大きな一撃になると思いますか?
マイク 私たちはことさら競合を意識しているわけではありません。私たちがやらなくてはいけないのはゲーマーが私たちに何を求めているのかにフォーカスすることです。それは、より多くのエクスクルシブタイトルをコミットすることです。これからも継続してゲーマーの声を聞き、ファンの方が欲しいと思うものを提供することにフォーカスしていきます。
――最後に、日本のゲームファンにひと言お願いします。
マイク 日本のデベロッパーさんが、これからも画期的で創造性溢れるゲームを作ってくれたら嬉しいです。私は『DARK SOULS(ダークソウル)』シリーズの大ファンですが、そのほかのIPも素晴らしいと思います。いっしょにXboxで最適化を目指し、世界中で素晴らしい経験をしてもらえるよう、がんばっていきますので、応援をよろしくお願いします。