2017年11月18日(土)、サンパウロで開催された“レインボーシックスシージ プロリーグ シーズン3ファイナル”。世界大会のファイナルステージで、日本から進出した“eiNs”は初戦で登場した。大会では惜しくもTeam Fonttに敗れてしまったが、定石にもこだわらない変幻自在な戦術を見せたTeam Fonttから一体何を学んだのか。大会後に“eiNs”ShiN選手を直撃した。
――お疲れ様でした。今回アジアの1位として挑んできましたが、結果として負けてしまいました。振り返っていかがでしょうか?
ShiN選手 一番の敗因は、国際舞台での経験が乏しかったことかと思います。
――前回のオーストラリアでの試合を含めて、まだ2回目ですよね。
ShiN選手 その通りです。
――いまの実力で、国際舞台での経験を積んだら、少しは本領を発揮できたと。
ShiN選手 負けるかもしれませんが、いい試合を見せられたのではないかと思います。
――試合では、なかなか立て直せなかった印象を受けました。なにか理由があるのでしょうか?
ShiN選手 1マップ目ははこちらのミスが多かったのが悔しいです。2マップ目は、単純にTeam Fonttの強さが際立っていたので、こちらが立て直す暇すらありませんでした。
――Team Fonttの戦術やオペレーターのピックアップ内容はいかがでしたか?
ShiN選手 ほぼ予想通りでした。それでも、全体的にこちらのチームが浮足だったというか、いつも通りのプレイをできなかったので、それは国際試合の経験不足からかと痛感しています。
――とはいえ、ポイントを取り返したシーンもありました。
ShiN選手 ポイントを取り返すことはできましたが、結局また押されてしまいました。同じポイントに相手と同じ戦術で攻めに行くことはできないので、対抗策を練らないといけないのですが、銀行マップではこちらのミスが多く立て直せなかったのが目立ちました。
――一番の反省点とすると、やはり経験不足というところでしょうか?
ShiN選手 『レインボーシックス シージ』というゲームは、奇抜な作戦が功を奏すというわけではなく、戦術が何パターンがあるだけです。撃ち合いに関してもTeam Fonttと戦っていてそこまで差はないと感じました。ですから、本当に経験値やメンタル面での調整が必要かもしれません。
――対戦中は、いくつか作戦変更などは行ったのでしょうか?
ShiN選手 小さな変更はいくつか加えました。しかしあまり刺さらなかった印象です。
――試合直後、ShiN選手が1キル取ったのですが、40分間の試合中断が挟まりました。あれでペースが崩れることはありました?
ShiN選手 あの場で僕が取り乱してしまうと、チーム全体が乱れてしまうので、いたって冷静を装いましたね(笑)。「俺別に気にしてないから、普段通りやろう!」と声かけしました。1マップ目が終わったあと、「普段通りプレイして、ミスを減らそう」と励ましあいました。
――今回の対戦相手はプロチームで、一方のeiNsはアマチュアチームなので学生が勉強の傍ら大会に参加していたりと、活動は大変かと思います。現状の環境で、今後Team Fonttに勝つことは可能だと感じていますか?
ShiN選手 正直な話、いまの環境では勝てないでしょう。今回の試合を経て、日本チームにベストな環境を作らないと世界には通用しないと感じました。
――ちなみに、ベストな環境というのは?
ShiN選手 まず、各チームに戦術面などをサポートするコーチを付けること。兼任してもいいのですが、分析するアナライザーがひとり、さらにチームのメンタルを管理するマネージャーがひとり欲しいです。先ほど述べたことをいまは僕ひとりで取り仕切っているのですが、限界を感じています。海外のチームにはすでにそういった環境があるので、日本にもそういった環境をぜひ作るべきだと思います。
――なるほど。今回、時差があるにも関わらず日本の視聴者数はすごく多く、注目度は高かったです。「世界に通用するチームになって欲しい」という激励のコメントもいくつか見られました。eiNsとしては、今後どういったチームになりたいと思っているのでしょうか?
ShiN選手 今大会に限れば、一回戦のTeam Fonttに勝てれば上々だと思っていました。絶えず、一勝を取るという目標しかなかったです。今大会で一番悔しかったのは、クラン戦で圧倒されることもありますが、そこは新しい戦術のテストを兼ねているのであまり気にしていません。しかし世界大会で、練習を積んで本気で立ち向かったのですが、それでも僕たちの力は及ばなかったので、それが本当に一番悔しいです。
――本番前と試合を終えたいま、心境の変化があったと。
ShiN選手 あれだけ圧倒されてしまうと、練習方法や環境がよくなかったと痛感しています。その点は、日本に帰ってから考え直さないといけないと感じました。
――ShiN選手は現在学生ですよね。プロゲーマーになりたい気持ちはあるのですか?
ShiN選手 いまの日本の環境では、正直プロゲーマーになるのは厳しいかなと考えています。まずAPACで賞金がもらえなかったのですが、海外だと賞金で食べていける。いまの日本では高い賞金金額は設定できないので、プロゲーマーでもストリーム配信で副業のようなことをせざるをえない。今後法律が変わって賞金を頂けないと、日本のeスポーツとプロゲーマーは成長しないと思います。
――APACを勝ち抜いて、はるばるブラジルまで来ました。ここまでで一番大変だったエピソードはありますか?
ShiN選手 国際大会では、言語の壁が大きいです。どのチームにも英語を喋れるスタッフがいたので、意見交換などできますが、僕たちはなかなかできませんでした。各チーム、世界を目指すのであれば英語は必須です!!
――世界を目指すプレイヤーに向けて、プレイ面でアドバイスはありますか?
ShiN選手 『レインボーシックス シージ』において、一番大事なのは連携と、それを築くためのチーム内のミーティングだと思います。あらかじめ、チーム内で方針づけて練習していくことが重要です。ほかのチームのなかには社会人の方もいますし、限られた時間のなかでいかに効率よく練習できるかも大切ですね。ほかには、強いチームと交流することも大切です。
――いまさらですが、大会は楽しめていましたか?
ShiN選手 もちろん! 有名な選手と対面できて、とても楽しかったです!
――では最後に、今後の意気込みを聞かせてください!
ShiN選手 負けてしまったのですが、世界舞台での経験は必ず糧になると感じました。世界トップレベルの選手と対戦、交流もできました。この経験を日本に持ち帰って、先ほど述べた理想のチームを作れるように頑張ります。次回出場予定のSix Invitationalまであと3ヵ月あるので、次は勝てるように練習していきます。