襟川恵子氏も新プロジェクトに大きな手応え
今年2月に発表され話題を集めたコーエーテクモグループのコーエーテクモウェーブによる新型VR筐体“VR センス”がついに完成。2017年6月28日に、東京ベイ有明ワシントンホテルにて、“VR センス 完成&新作ソフト発表会”が行われた。
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会場となった東京ベイ有明ワシントンホテルは、東京ビッグサイトに近接するホテル。今回の発表会は、VR センスが“第7回 コンテンツ東京”に出展されることに合わせて開催されたもので、発表会が終わった後は、そのまま東京ビッグサイト移動してVR センスを試遊……という趣旨のもとに実施された。発表会の開始時間は12時で、“ランチミーティング”というスタイルで行われたのは、VR センスのゼネラルプロデューサーであるコーエーテクモホールディングス 代表取締会長 襟川恵子氏らしい気配りと言えるだろう。ちなみに“コンテンツ東京”というのは、“クリエイター EXPO”や“映像・CG 制作展”など、7つの展覧会が同時に開催される、日本最大の商談のためのコンテンツの展示会だ。
まず登壇したVR センスの顔とも言うべき襟川恵子氏は、同ハードがテクモ創立50周年を記念して立ち上げられたプロジェクトであること、ご主人様でもあり部下でもある(コーエーテクモホールディングス 代表取締役社長)襟川陽一氏の理解があまり得られず “マイナスからのスタート”であったことなどを、ユーモアを交えて改めて紹介。VR センスのプロジェクトに取り掛かかるときに、食堂で書いたという貴重なメモを披露してくれた。まあ、要約すると、VR センスは艱難辛苦を乗り越えて、襟川恵子氏が相当なモチベーションとスピード感で取り組んだプロジェクトということだ。今夏発売予定のVR センスの開発は急ピッチで進んでおり、“コンテンツ東京”に出展するバージョンもギリギリで出来上がった模様。ただし、同バージョンを試遊した襟川恵子氏は、安全性などの理由から、それまで採用していたPlayStation Move モーションコントローラーの使用を断念。コントローラーでの操作に変更するという(“コンテンツ東京”の会場で試遊できたのは、PlayStation Move モーションコントローラーのバージョン)。
気になるラインアップに関しては、大型タイトルを開発中で、自社IPタイトルも製作中だという。ただし、“移植”ではなくて、“プラスアルファ”となるようで、たとえば『超 真・三國無双』では、ストーリーもVRコンテンツ向けにアレンジされているという。「小池都知事が豊洲問題をアウフベーヘンしたように、高みに持っていくために高次元に進化させます」と、襟川恵子氏らしい表現を使って説明してくれた。ちなみにアウフベーヘンというのは、ヘーゲルが提唱した哲学の概念で、“ある物事の問題が見つかったときに、その問題を積極的に受け入れて克服し、よりよい状態に導いて解決すること”といった意味。まさに、襟川氏のVRコンテンツに対する姿勢を象徴している言葉なのかもしれない。
記者にとって意外だったのが、VR センスの新色が用意されていることが明らかにされたこと。従来からのシルバーに加えて、パールブルーも発売するという。それぞれの筐体には、3タイトルずつが装備されて発売される予定で、筐体には同時に5タイトルまで搭載可能だという。ソフトが発売されるごとに、入れ替えが可能となっている。また、プレイステーション VRのテクノロジーを使用しているVRセンスだが、独自の仕様としてヘッドフォン付きのデバイスを開発中だというから、VR センスにかける襟川恵子氏のこだわりがうかがい知れる。今回の完成&新作ソフト発表会は、関係者向けということもあり、VR センスの価格も開示された。それによると価格は1体320万円[税抜]。発表会のときは「500万円はいきそう」と発言していたので相当がんばった価格だ。価格設定を抑えることができた要因として襟川氏は、最後に行われた質疑応答で、「生産数を増やしたことと、部材の効率化を図ったこと」と答えていた。ちなみに、発売当初はキャンペーン特別価格が設定されているようだ。金額つながりということで、追加ソフトの価格にも言及しておくと、おおむね30万円程度になるようだ。
おつぎに登壇したプロジェクトマネージャー藤井久徳氏は、VR センスの特徴である“多機能3Dシート”、“香り機能”、“タッチ機能”、“風機能”、“温冷機能”、“ミスト機能”を紹介。VR センスは「分割することで設置・移動が容易、さらにアテンドがほぼ不要」と、オペレーターにも配慮した筐体であることを強調した。なお、藤井氏によると、VR センスのロケテが8月に行われるとのことで、ファンの方にとっては絶好の機会と言えるだろう。
メインプランナーの南達尊氏が紹介してくれたのは、気になるタイトルラインアップ。『ホラー SENSE ~だるまさんがころんだ~』 、『ジーワン ジョッキー SENSE』、『超 真・三國無双』はすでに発表済み。プレイアブルとしては初めて出展される『超 真・三國無双』は、「本家を超えるという開発陣の意気込み」のもと開発中で、吊橋から急降下するというシチュエーションもあるという。
今回発表された新タイトルのうち1本は『超 戦国コースター』で、戦国時代にジェットコースターがあったら……というぶっとんだ設定を現実化したVRコンテンツ。ジェットコースターとVRコンテンツの相性がいいことはよく知られたことだが、そこに戦国時代という設定を持ち込んでくるのがコーエーテクモゲームス。戦国時代らしいさまざまなシチュエーションでのプレイが可能になるようだ。
もう1本は、既報の通りの『デッド オア アライブ エクストリーム SENSE』。当初、襟川恵子氏は同作のVR化に対してはあまり積極的ではなかったようだが、周囲からの「いちばんのキラーコンテンツになる」との意見を受け入れる形で開発を決定。南氏も同作には相当注力しているようで、プレゼンにもひときわ気合いっぱいの様子。「飛び散る水しぶきに香りがただよってきます」とのコメントを聞くだけで、思わず南国のビーチが頭に浮かんできてしまう。ちなみに、コンテンツ東京に出展しているバージョンでは、かすみの姿を眺めることができるだけらしいが、製品版ではいっしょに遊べるだけではなく、満足させるとご褒美があるという。会場で配布されていたチラシには、“ゲームに勝つたびに女の子の水着がグレードアップ!”、“女の子に近づくとほんのり良い香りが!?“、“高得点達成で魅惑の 「鑑賞タイム」がゲットできる!”といった説明文が踊っていましたとも!
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さらに、南氏によると、今後の展開として、女性向けIPや他社IPなども予定しているという。ちなみにだが、これも質疑応答を先取りしてお伝えしてしまうと、VR センス用タイトルは、のちのちプレイステーション VR用にリリースする予定だという。プレイステーション VR版を遊んでもらって、さまざまなギミックが搭載されたVR センスを遊んでみたいという気になってもらうという相乗効果を狙っていると襟川恵子氏は言う。
テクモ50周年を記念したプロジェクトということもあり、認知を広げるためにテレビコマーシャルも予定しているというVR センスだが、取材陣から販売目標を問われた襟川恵子氏は、「3年以内にワールドワイドで1000台が目標です!」と、包み隠さずきっぱり返答。その数字はVR センスに対する意義込みの現れとしても、「現実レベルでは300~500台」(藤井氏)と、目標とする数値は高い。とはいえ、コンテンツ東京での反響ぶりを見ると、反響は相当な雰囲気で、この夏のVR センスの稼動が楽しみです。