使い勝手のよさが本作の何よりの魅力

 ワーナー ブラザース ジャパンの2017年タイトルをお披露目する、“ワーナーゲーム 2017 ラインナップ発表会”が、2017年3月14日に開催された。同イベントにおいて、メインで取り上げられていたのが、発売日を4月6日に控えたプレイステーション4用ソフト『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』だ。本作の概要を簡単に紹介すると、“レゴブロックを自由に使って、好きなものを作れるゲーム”といったところ。2016年8月にドイツ・ケルンで行われたgamescom 2016でSteamのアーリーアクセス版を試遊したときは、「実際のレゴユーザーにはたまらないゲームだろうなあ」と思ったものだ。さらに言えば、皆さん容易に想像がつくとおり、サンドボックスとレゴの相性は抜群で、そういった意味では“レゴファンの夢を叶えた1本”と言えるだろうし、“サンドボックス型ゲームの決定版”みたいな言いかたもできるかもしれない。

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 そんな期待の『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』だが、“ワーナーゲーム 2017 ラインナップ発表会”に合わせて来日を果たした、開発元であるTT Games エグゼクティブプロデューサー、ロズ・ドイル氏に単独インタビューをする機会を得た。イベントの後に行われた合同取材の模様を交えつつ、内容を適宜再構成して、インタビューという形でお届けしたい。

『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』の開発元TT Games ロズ・ドイル氏単独インタビュー 『マインクラフト』に負けない楽しさを_03
▲TT Games エグゼクティブプロデューサー、ロズ・ドイル氏。

――レゴとサンドボックスの組み合わせは、非常に相性がいいように思うのですが、そもそも本作の発想が生まれたきっかけを教えてください。

ロズ これまで私たちが開発したゲームの中でも、いわゆる“ビルド”の要素が含まれるタイトルはあったかと思います。2008年にリリースした『LEGO Indiana Jones: The Original Adventures』などは、その代表格ですね。ただ、当時のテクノロジーでは、やれることが限られていたことは事実でした。いまは、パワフルになったので、私たちのやりたいことが実現できるレベルまで来ています。実際のレゴを箱から出してどんどん組み立てるような、すごく自由度の高いものができるようになりました。

――マシンスペックがやりたいことに追いついてきたわけですね?

ロズ そうですね。それまでのハードではきびしかったかもしれません。

――スペックということでいうと、ブロックが無限に使えるというのも驚きですね。

ロズ はい。無限に! 簡単に言えば、そういうふうにプログラムされているからとしか言いようがないのですが(笑)、ワールドのすべてがブロックでてきています。もしユーザーさんが希望すれば、すべてのブロックを1個1個組み上げて、いちからワールドを作ることもできますよ。これだけ複雑なので、開発に3年かかったんです(笑)。

――開発にあたって苦労したポイントなんてあります?

ロズ すべてです! 本作はコード志向というか、コードが中心になっているんですね。ゲームのほぼ全部がプログラマーによって作られたもので、アート的な要素はそんなに多くないんです。通常だとシンプルな変更はデザイナーが行うところですが、本作では全部プログラマーの仕事になります。それも、ひとりのプログラマーというわけにはいかずに、複数で取り組まないといけない。その過程でバグが発生したりして……といった具合です。

――本作は、何人くらいのプロジェクトになるのですか?

ロズ 増減がありますが、プログラマーは常時25人くらいですね。全員コードを書いています。そのほか、社内にサポートチームもありまして、いちばん忙しいときで、スタッフ合わせて100人くらいかなあ。

――苦労だらけとのことですが、本作はTT Gamesが手掛けた『レゴ』ゲーム関連作の中でも、ひときわ難易度が高かったと言ってもいい?

ロズ 私はそう思います(笑)。なにしろ3年間かかっていますから(笑)。

――サンドボックス型のゲームというと『マインクラフト』という巨人がいますが、開発にあたって意識しましたか?

『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』の開発元TT Games ロズ・ドイル氏単独インタビュー 『マインクラフト』に負けない楽しさを_02

ロズ もちろん、こういったゲームを開発するにあたっては、『マインクラフト』は意識しました。私も、私の息子も『マインクラフト』が大好きですし。ただ、私たちとしては『レゴ マインクラフト』を作ろうとしたわけではありません。クリエイティブなゲームにしたいとは思っていましたが……。レゴ自体が“作るおもちゃ”ですから、それを突き詰めていきたいと考えていました。「私たち自身のユニークなゲームを作りたい」という発想でいました。結果として似た部分もありますが、決定的に違うところも多いです。たとえば、『マインクラフト』では道路を作っても、自分で乗り物に乗って走らせることができません。でも、本作ではそれができます。それどころか、レースコースを作って、そこで競争させることもできるんです。

――ちょっと乱暴な質問ですが、『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』と『マインクラフト』の違いを簡単に言うとなんですか?

ロズ そうですねえ……。ゲームそのもののバラエティーの豊富さと、そして、使い勝手のよさでしょうか。たとえば、本作ではツールを使って土地を更地にしたり、山を作ることもできます。ブロック単位で自由に積み上げていくこともできれば、すでに出来上がっている建物を配置することもできます。時間がない人や面倒くさがりの方のためのコピー機能もあります。ぱっとできる機能が充実しているんですね。“より早く、より簡単に”を実現しているんですね。

――敷居を下げているということですね?

ロズ 一方では、先ほど言ったように、いちから組み上げていくことも可能なので、幅広い方に満足していただけると自負しています。

――『レゴ』シリーズでは、ユーモアの要素が欠かせませんが、本作では?

ロズ 随所に盛り込まれていますよ。いちばんは、ひとりひとりのキャラクターや動物などのアニメーション(動き)ですね。発表会では、キャラクターがギターを弾いて、サメが踊るというシーンをお見せしましたが、それはその一例です。楽器や動物によってダンスがそれぞれ違うんです。サックスを吹いたら、らくだが独特な踊りをしますし、ゾンビは頭を投げつけてきたりとか……。

――アーリーアクセス版から大きく変わった点は?

ロズ クエストですね。本作では、与えられたクエストをこなして“ゴールドブロック”を集めていくことで、機能をアンロックしたり、徐々にアイテムを集めていくことになるのですが、アーリーアクセス版では、このクエストはありませんでした。アイテムなどがほしいと思ったら、そのキャラクターに向かってボタンを押せばすぐに入手できたんです。ただ、それだとあまりに簡単過ぎて、「もっとチャレンジ要素がほしい」というユーザーさんからの要望があったんですね。それで、クエストを導入しました。いろいろなクエストをこなすことで、新しいキャラクターや、クリーチャーがアンロックされていくんです。最終目的は、“マスタービルダー”になることです。

――本作を開発するにあたっては、事前にレゴユーザーにプレイしてもらって、フィードバックを受けているのですか?

ロズ はい。テストは頻繁に行いました。子どもたちに集まってもらってステージごとに遊んでもらって、「このステージは遊びやすいのか?」といったことは検証しましたし、大人のレゴファンにも遊びやすさはテストしています。

――ファンから指摘を受けて、ゲームに反映されたといった部分は?

ロズ そうですねえ……。一例を挙げるとすると、私たちの用意していたコントローラーの操作方法は、子どもたちにはフィットしませんでしたね。遊びにくかったみたいで、完全に根底から変えないといけませんでした。

――どんなところですか?

ロズ たとえば、当初はブロックを置いたときに、「つぎはここに置くであろう」と予測して、自動的にカーソルが動いていたんですね。ところが、それを見た子どもが、「なんで動くんだろう」と混乱してしまったんです。そのため、自動的に動かすのをやめて、プレイヤーが自分で操作するようにしました。

――なるほど。コントローラーでの操作には相当注力しているということですね。キーボードとマウスに負けない快適さを実現している?

ロズ 私はコントローラーでの操作のほうが好きですね。ここ数年はコントローラーの操作性を洗練させることに取り組んでいたこともありますし、そういう意味ではコントローラーでたくさんプレイしていて、ラクということはあります。まあ、PCゲーマーのほうはマウスとキーボードのほうがいいという人もいますね。

――本作はオンライン対応でふたりプレイが可能とのことですが、どのような形に?

ロズ マップの共有ができます。プレイヤーまたは、プレイヤーの友だちがホストとなって、それに共有する形です。一度あるワールドを作った後に、お城を作ったとしますよね。それで友だちを呼んでいろいろなものを破壊しても、それが保存データに影響されないといった設定もできます。

――自分が作ったお気に入りのマップをアップロードして、自由にほかの人が見られるといった要素はあるのですか?

ロズ 現在、その機能はないです。

――本作は、12ヵ月にわたってアップデートが行われるとのことですが、これはとりあえず12ヵ月限定なのですか?

ロズ けっして12ヵ月で終わりというわけではありません。とりあえずの計画は、12ヵ月のスパンにわたっているということです。12ヵ月後が近づいてきたら、また計画を立てることになると思います。

――それって、ひと月に1回くらいの頻度で“ダウンロードコンテンツ”として提供するものなのですか? それとも順次アップデートするスタイルなのですか?

ロズ 頻度については、近日中に発表する予定です。月いち以上の頻度でアップデートしていく予定です。アップデートの詳細についてはお話できないのですが、バラエティーに富んだアップデートにしたいと思っています。クエストやコンテンツのほかにも、いくつかサプライズも用意しておりまして、その中にはもしかして新しいゲームモードや新しいフィーチャーも入ってくるかもしれません。

――なるほど……。海外では3月7日にリリースされて好評とのことですが、どんなご意見がありました?

ロズ いろいろなフィードバックが得られました。ひとつはすべてのキャラやツールがアンロックされた“フリーサンドボックス”モードがほしいという意見がありました。クエストでアンロックしていくのではなくて。『マインクラフト』ですべてが揃っている “クリエイティブモード”みたいな感じですね。そして、乗り物を作れる“ビークルビルダー”も欲しいと。自分のビークルがほしいみたいです。それは、実現しようとしても、少し時間がかかるかもしれませんね。電車と線路で鉄道を作ってみたいというご意見もあります。

――ユーザーのニーズは無限ですね。それをアップデートでかなえるのはたいへんそうですが、できるだけ叶えていく方針でいるのですか?

ロズ そうですね。可能であれば。いつになるかはわかりませんが。アップデートということで言うと、ユーザーさんが作成した建造物をゲーム内にどう反映させるかも、検討していきたい事項のひとつになっていて、じつはいま“モデルシェアリング”をいうのを検討しています。これは、ユーザーさんがいいものを作ったら、それをアップデートして、ギャラリーで閲覧したり、ダウンロードできるという機能なんです。

――ファンにとっては、うれしい機能ですね。ちなみに、遊んでいる方はレゴファンが大いのですか? それともゲームファンの方が?

ロズ 両方いらっしゃいますよ。レゴファンとゲームファンの両方に楽しんでいただけるゲームになっています。

――最後に、日本のファンに向けてひと言お願いします。

ロズ ぜひ楽しんで遊んでいただきたいです。私たちも非常に楽しく開発しましたので。本作は文字通り“楽しむ”ためのゲームです。一部のゲームはシリアスにやらないといけないゲームもあるかと思いますが、本作はそういうたぐいのゲームではありません。笑顔で笑いながら遊ぶゲームです!

 イベント後の合同取材では、ロズ・ドイル氏とともに、レゴ認定マスタービルダーである三井淳平氏もインタビューに応えている。三井氏のコメントは、構成上記事に盛り込むことはできなかったが、レゴファンの視点から、『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』に対して極めて興味深いコメントを寄せていた。

『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』の開発元TT Games ロズ・ドイル氏単独インタビュー 『マインクラフト』に負けない楽しさを_01

 すでにPC版などで本作に触れているという三井氏は、「街や家などを自由に作るのがうれしいです。土地から作れますし、まるで神様になった気分で、天地創造から始められるのが楽しい。ゲーム内に出てくるのは、本物のレゴのパーツと同じなので、実際にそれが使えるのはいいですね」と、本作を大いに楽しんでいる模様。とくに本作の気に入った点として、2点をピックアップ。ひとつ目が“地形の編集”。「“ここの地形を盛り上げたい”といったことが簡単にできるのはゲームならではです。私みたいなビルダーが何時間もかけて作り上げている作業が、簡単な操作ですぐに実現できるのは楽しいです」と三井氏。もうひとつが“コピー機能”。「実際にブロックを使って作るときは、たとえば“同じものを100個作る”となると、膨大な作業時間がかかりますが、ゲーム内ではすぐにコピーできる」(三井氏)。ちなみに、レゴはうまい人の作ったものを真似するのが上達のコツらしいが、ゲームだったらすぐにできるという。レゴ認定マスタービルダーもお墨付きを与える楽しさが、『レゴ ワールド 目指せマスタービルダー』にはあるということだろう。