クラウドやソラ、ライトニングが生まれた経緯とは? 野村哲也氏がキャラクターデザイン秘話を語る講演会をリポート【MAGIC 2017】

モナコで開催されたイベント“MAGIC 2017”にて、スクウェア・エニックスの野村哲也氏が講演会を実施。“HOW TO CHARACTER DESIGN”をテーマに、貴重な開発エピソードを交えながら、自身が手掛けたキャラクターがどのように生まれたのかを語った。

●歴代タイトルの主人公が生まれるまで、どのような試行錯誤があったのか?

 モナコのグリマルディ・フォーラムにて、2017年2月18日(現地時間)、エンターテインメントのイベント“MAGIC 2017”が開催。同イベントに、スクウェア・エニックスの野村哲也氏が出演し、トークイベントとサイン会を行った。

 トークイベントのテーマは、“HOW TO CHARACTER DESIGN”。野村氏は、貴重な開発エピソードを交えながら、自身が手掛けたキャラクターがどのように生まれたのかを語った。

▲野村氏が講演会を行うのは、じつは初めてのこと。この機会に立ち会えた喜びを、スタンディングオベーションで表すファンの皆さん。

▲冒頭では、野村氏のプロフィールが語られた。野村氏が旧スクウェアに入社したのは1991年のこと。当時は『FF4』のマスターアップ間近で、デバッガーとして入社したわけではない野村氏も、デバッグに駆り出されるほどの忙しさだったとか。その後は皆さんもご存じの通り、数々の『FF』タイトルに携わり、2002年に初ディレクション作となる『キングダム ハーツ』を発売。現在にいたる。

 まず野村氏が紹介したのは、自身のデザイン環境。スクリーンに映し出されたのは、紙とシャープペンシル、消しゴムの3つだ。最近は下書きをデジタルで行う人も多いが、手書きの濃淡を出せるように、野村氏はいまもアナログで紙に書いているのだという。

 紙はA4サイズのカラーコピー用紙を使用。その種類にはこだわっていて、気に入った紙が廃番になったりして困ることもあるとか。また、鉛筆ではなく、シャープペンシルであることもポイントのひとつ。A4サイズという、あまり大きくない紙に描く以上、細かいところまで描くには、線の太さを一定に保てるシャープペンシルが適しているのだそうだ。なお、筆圧に耐えられて(野村氏は筆圧が強い)、望みの濃淡が出るシャープペンシルの芯はHBとのこと。

▲画面には四角い消しゴムが移っているが、実際に使用しているのはペン型の消しゴムで、大きさが違うものを3種類くらい使っている、と野村氏。

 続いて野村氏は、キャラクターの具体名を挙げながら、誕生にいたるまでの経緯を紹介した。

◆クラウド(『FFVII』)

 クラウドがいまの形になるまではいろいろとあったそうで、我々がよく知るクラウドは、デザインの段階で言うと、5段階目に生まれたもの。じつは『FFVII』発表時のクラウドは4段階目で、発表後に描き直したのだそうだ。ちなみに6段階目も描いていて、それはもっとリアルな様子のクラウドだったというが、世に出ることはなかったとのこと。

 『FFVII』は、シリーズにおいて、キャラクターが初めてポリゴンになったタイトル。当然のことながら試行錯誤することも多く、モデリングを行った後、違和感があったらまたキャラクターをデザインし直して、またモデリングする……という手順を踏んでいたそうだ。

 また野村氏は、開発初期のクラウド(名前もついていないころ)はいまより年齢が高めで、大人っぽいキャラクターだったことを明かした。しかし途中でストーリーに変更があり、それまで考えられていたキャラクター設定もなくなってしまったため、野村氏があらすじや設定を考えながらキャラクターを作っていき、野村氏がクラウド・ストライフと名前を付けるにいたったのだという。その後、シナリオに野島一成氏が参加し、野村氏といっしょに物語とキャラクターに肉付けをして、現在の『FFVII』のストーリーが完成したというわけだ。

◆スコール(『FFVIII』)

 『FFVIII』開発当初、野村氏は『パラサイト・イヴ』の制作でロサンゼルスにいたため、スタッフと離れた状態で取り組むことに。いまほど便利なツールがない時代ゆえ、基本的には野島氏とメールのやり取りをしながらキャラクターを固めていき、最終的には帰国後に、野島氏と企画を合わせていったとのこと。なお『FFVIII』までは、キャラクターの名前をすべて野村氏がつけていた。

◆ティーダ(『FFX』)

 『FFX』を開発するころには、『キングダム ハーツ』の制作が始まっていたため、『FFX』の初期の設定作りには野村氏は参加していない。ゆえに、『FFX』チーム側からキャラクター設定を受け取って、それに合わせて描いていったとのこと。

 ちなみに『FFX』も、途中で大きく設定が変わったそうで、話し合いの結果、直すところは直しつつも、もともと描いていたデザインで作られたいったとか。

 ティーダやユウナの名前は野村氏がつけたものではないが、開発初期からその名前になることが決まっていて、野村氏は名前のイメージからキャラクターをデザインしたという(沖縄の言葉で、ティーダは“太陽”、ユウナは“花”)。ゆえに、ティーダは“明るい主人公”のイメージで、日焼けした肌等、クラウドやスコールには使わない色を使って描いた、と野村氏。また、ユウナという名前は日本的であるため、『FF』初の和装のヒロインにしたいと思い、和風のデザインを提案したそうだ。

◆ソラ(『キングダム ハーツ』)

 『FFVIII』の開発が終わりかけのころに企画がスタートした『キングダム ハーツ』は、内容を固めるための打ち合わせに1年くらいかかった、と野村氏は振り返る。旧スクウェアからは「ミッキーを主人公にしたい」というリクエストがあり、ディズニーからは「ドナルドを主人公にしたい」というリクエストがあったそうだが、野村氏自身は、オリジナルキャラクターを主人公にすると最初から決めていた。

 そんなオリジナルの主人公であるソラは、開発初期は半獣という設定で、獣の耳やしっぽがついていた。しかし、『FFIX』主人公のジタンもしっぽが生えていることを途中で知った野村氏は、設定がかぶることを避けるため、ソラをふつうの少年として描くことに。

 野村氏は当初、ソラを直線的なフォルムでデザインしたが、ディズニーから「ディズニーキャラクターに合うように、もっと曲線のフォルムで描いてほしい」との要望があった。その後、ソラを直線的に描くのか、曲線的にするのか、朝まで話し合いを行って、いまのソラのフォルムができあがっていったそうだ。

 なお、1作目のソラのデザインに使用されている色は、ミッキーのカラーリングから抽出されたもの。それは、物語の中で、ミッキーがいない(捜索されている状態)ことがわかっていたから。いわば、ミッキーの穴を埋めるようなカラーリングだったというわけだ。そして、“『キングダム ハーツ』の新たな世界を作る”という意味を込めて、世界を構成する3つの要素――空、陸、海の意味を持つ名を、ソラ、リク、カイリに与えた、と野村氏。

 また、ソラはディズニーらしい明るくまっすぐなキャラクターだが、野村氏いわく“自分の中の闇が、なかなか素直にそのまま作らせてくれなくて”、闇の要素はリクに注がれたということも語られ、会場を沸かせた。

◆ライトニング(『FFXIII』)

 『FFXIII』で、再び『FF』の開発に参加した野村氏。キャラクターをデザインする段階で、すでにストーリーやキャラクターの設定はある程度できており、「今度の『FF』は主人公を女性にしたい」という、ディレクターの意向があったそうだが、野村氏としては、女性主人公をデザインすることに不安があったという。

 それまで、『FF』シリーズのタイトルで、女性主人公を押し出したものはなかった(『FFVI』のティナは主人公的なポジションではあったが)。そのころには、『FF』シリーズは国内のみならず、世界においても大きな存在感のあるシリーズになっていたため、“初の女性主人公”という挑戦に、どう応えればいいかかなり悩んだと野村氏は振り返る。

 開発チームからのオーダーを聞く限り、ライトニングは、女性らしさを感じさせない、武骨な戦士のイメージだった。その中で、どうすれば人気のある女性主人公になるのか――野村氏は、女性向けのファッション誌をいろいろと読み、そしてピンクブロンドの髪をしたモデルの写真に目を留めた。

 “これだけ強い女性なのに、髪の毛がピンクだ”という点に賭けよう! そのギャップがきっと彼女を人気にさせるんじゃないか――野村氏はそう信じて、ライトニングをデザインした。その結果はどうだったか――それは、この講演会で彼女の姿がスクリーンに映し出されたときの歓声が、すべてを物語っていたと記者は思う。

▲ほかにもたくさんのキャラクターを手掛けてきたが、一度には説明しきれないため、「また誘っていただければ、続きをお話しします」と野村氏。

●『KHIII』と『FFVII リメイク』の最新スクリーンショットを公開

 キャラクターデザインに関するトークの後には、野村氏がディレクターを務めている開発中の2タイトル、『キングダム ハーツIII』と、『ファイナルファンタジーVII リメイク』の最新画像が、サプライズで公開された。詳細は下記の関連記事で紹介しているので、ぜひチェックしてほしい。
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 また、トークイベントの最後には、質疑応答コーナーが設けられた。野村氏は、旧スクウェアに入った理由について尋ねられると、“デザインの学校を卒業し、求人誌を見ていたところ、スクウェアが募集しているのを知った”と回答。当時、ゲームをそこまでプレイしていたわけではなかったが、天野喜孝氏の絵が好きだったので、スクウェアに入ろうと思ったのだそうだ。

 『パラサイト・イヴ』のアヤのデザインはどのようにできあがったのか? という質問に対しては、当時、『パラサイト・イヴ』の主人公だとは思わずに、「エアリスみたいなキャラクター(もみあげが長く垂れているような)を描いて」と坂口博信氏というリクエストに応えて、アヤの第1案を描いたというエピソードを披露。そのデザインを坂口氏は気に入ったそうだが、その後、アヤが『パラサイト・イヴ』の主人公だと知った野村氏は、「それなら、このデザインではダメだ」と描き直し、いまのアヤが生まれるにいたったそうだ。また、『FFVII』と『FFVIII』のあいだに、『パラサイト・イヴ』のキャラクターデザインを行ったことで、『FFVIII』のキャラクターデザインがリアル寄りになったため、『パラサイト・イヴ』の影響は大きかったとのこと。

●野村氏のサイン会は大盛況!

 MAGIC 2017の会場では野村氏のサイン会も開催。ファンはそれぞれ、お気に入りのタイトルのジャケットや関連書籍、PS4のベイカバーなどを持参し、サインを求めた。なかには、日本でもなかなかお目にかかれない、レアなグッズを持ってきている人も。ファンの熱い思いが伝わってくるサイン会だった。

▲野村氏がデザインしたキャラクターのコスプレをしている人の姿も。

▲熱心なファンの列は廊下の先までぐんぐん伸びてゆき、やがて制限がかかるほどに!

▲エアリスの後ろにエアリス。

▲お友だちどうしでコスプレをして参加していた皆さん。

▲笑顔がキュートなセルフィ。

▲『ライトニング リターンズ FFXIII』仕様のライトさん。

▲髪型がバッチリきまっているゼムナス。