モナコという国でゲーム・アニメのイベントを開催する理由とは? シブヤ プロダクションズCEOのセドリック・ビスカイ氏に聞く【MAGIC 2017】

モナコで開催されたエンターテインメントのイベント“MAGIC(Monaco Anime Game International Conferences) 2017”を主催する、シブヤ プロダクションズのプレジデント/CEO セドリック・ビスカイ氏のインタビューをお届け。

●ビスカイ氏からは、『シェンムー3』に関する発言も!?

 2017年2月18日(現地時間)、モナコのグリマルディ・フォーラムにて、アニメやゲーム、コミックを中心とするエンターテインメントのイベント“MAGIC(Monaco Anime Game International Conferences) 2017”が開催された。

 MAGICは、2015年から始まった新興イベントだ。モナコに本社を構え、ゲームやアニメのプロジェクトを手掛ける企業“シブヤ プロダクションズ”が主催しているもので、世界各地のマンガ家やゲームクリエイターがゲストとして招かれ、講演やサイン会などを行う。今回は、日本からはスクウェア・エニックスの野村哲也氏が参加し、ファンとの交流を行った。
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▲会場となるグリマルディ・フォーラムは海沿いにある。ガラスの壁で構成された、独特の形の建物だ。

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▲マリオ、ミク、ハルヒといった、日本発のコンテンツのコスプレをしている人も多数。

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▲『Horizon Zero Dawn』の主人公、アーロイのコスプレイヤーさん。

▲アニメ『甲鉄城のカバネリ』のヒロイン、無名。

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▲グリマルディ・フォーラムのお隣には日本庭園があり、ここで撮影を楽しむコスプレイヤーさんたちも。ちなみにこの庭園は、「モナコに日本庭園を造りたい」という望みを持っていたという故・グレース公妃の遺志を継いで作られたもの。設計・施工は日本の造園家が担当。

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▲こちらはMAGIC 2017で開催されたコスプレコンテストの模様。『ソウルキャリバー』シリーズのティラのコスプレをした女性が優勝し、賞品として、日本行きの航空券のチケットをゲットしていた。

 本記事では、シブヤ プロダクションズのプレジデント/CEOである、セドリック・ビスカイ氏のインタビューをお届け。MAGIC開催の意図や、シブヤ プロダクションズが関わっているプロジェクト(『鉄腕アトム』、『コブラ』の新作アニメや『シェンムー3』など)についてうかがった。


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シブヤ プロダクションズ
プレジデント/CEO
セドリック・ビスカイ氏(文中はビスカイ)


●MAGICは、ファンとアーティストが近い距離で交流できる場

――MAGICとはどのようなイベントなのか、開催目的などを教えていただけますでしょうか。
ビスカイ MAGICは“小規模のVIPイベント”というコンセプトで作ったイベントです。有名なアーティストの皆さんを中心に開催するもので、入場は無料ですが、お客様の入場人数は限らせていただいています。小規模にすることで、お客様がアーティストの皆さんを身近に感じられるようにしているんです。

――では、開催地にモナコを選んだ理由は?
ビスカイ じつはもともと、イベントを立ち上げたいと思っていたわけではないんですよ。シブヤ プロダクションズをモナコで設立したとき、立ち上げパーティーを行いたいと思って、世界各地のゲストに招待状をお送りしたところ、皆さんから快いお返事をいただけたんですね。それなら、「せっかくだし、ファンの皆さんも呼びたいね」と思い、MAGICを開催することになりました。そういった経緯もあり、このMAGICは、収益を上げるためのイベントというより、ファンとの交流のために開催しています。

――MAGICにゲストとして呼ぶアーティストは、どのようなアーティストなのですか?
ビスカイ いわゆる世界のポップカルチャーの分野において、有名な方です。アニメだったり、ゲームだったり。その年に作品を発売・発表しているかということはあまり基準にしておらず、自分が尊敬している方や、フランス語圏で知られているアーティストの方にお声がけさせていただいています。

――今回日本から、野村哲也さんと、残念ながら来られませんでしたが小島秀夫さんを呼ばれた理由を教えてください(※)。
※小島秀夫氏は、当初MAGIC 2017に参加予定だったが、都合により欠席となった。
ビスカイ まず野村さんについてお話ししますと……2年前のMAGICに、天野喜孝さんと、スクウェア・エニックスの橋本真司さんに来ていただいたんですね。その後、橋本さんに、「野村さんにもぜひ来ていただきたい」とご相談しました。野村さんはゲーム業界において非常に尊敬されている方ですし、あまりイベントには出演されないレアな方なので、そんな方がMAGICに来てくださったら、みんな喜ぶと思ったんです。小島監督については、独立された後、自分の道を進んでいく動きに惹かれています。いま小島監督が作ろうとしている作品は、ゲームと映画を混ぜたようなイメージのゲームだと思いましたので、監督の日本のゲーム業界に対する意見をうかがいたいという理由もありました。私は、1990年代、2000年代の日本のビデオゲームはすごく盛り上がっていたのに、いまはその勢いがないと思っています。そんな中、新しい生み出す力を持っているクリエイターに興味があるんです。

――いま、“日本のゲーム業界に勢いがない”とおっしゃいましたが、そう考える理由を教えていただけますか?
ビスカイ 自分はすごくゲーマーなんです。日本のビデオゲームが好きすぎて、日本から取り寄せてプレイしていたほどです。日本のゲームには特徴があって、すごくいいゲームが多かったのですが、6~7年くらい前から、日本の企業の皆さんが、欧米の企業が作っているようなゲームを作るようになったと思います。あえての選択とはいえ、日本のゲームのアイデンティティがなくなっていくようで、それを残念に思っています。モバイルゲームに力を入れている企業も多いと思いますが、やはりモバイルゲームと家庭用ゲームは種類が違うものですから、家庭用ゲームの数が減っていっていることも、残念だと思いますね。

――ちなみに、MAGICは今後も開催されるのでしょうか?
ビスカイ おそらくですが、長年続けていくことはないと思います。とても著名なゲストを中心にしたイベントですので、今後お呼びしたいと思っているアーティストの皆さん全員が参加された後は、MAGICを開催するのは止めると思います。


●『シェンムー3』の開発は順調!

――そもそも、シブヤ プロダクションズをモナコに設立した理由を教えてください。
ビスカイ 僕自身はフランス人で、よくフランスのメディアに「税金対策のために、モナコで設立したの?」と聞かれることがあるのですが(笑)、そういうことではありません。フランス人がモナコで会社を作る手順は、わりと複雑で、ぜんぜん税金対策にはならないんですよ。モナコにはゲームやアニメの企業がぜんぜん存在しておらず、シブヤ プロダクションズしかないんです。ですので、モナコの中で目立つことができ、いいイメージを持っていただけています。それが、モナコで設立した理由のひとつですね。

――ほかには、どのような理由が?
ビスカイ モナコにはビジネスマンが大勢集まっているので、ビジネスの話がしやすいということが、ふたつ目の理由です。そして3つ目は、モナコに集まる、トップクラスの俳優の皆さんに話ができるということです。いま手掛けているアニメに出演してくださる方を捜しやすいんです。

――いまシブヤ プロダクションズでは、『鉄腕アトム』や『コブラ』の新作アニメのプロジェクトを進めていますよね(展開時期等は不明)。それらのアニメを手掛けることになったのは、どういった経緯からですか?
ビスカイ 『鉄腕アトム』については、シブヤ プロダクションズの前身であるシブヤ インターナショナルを運営していたころから、手塚プロダクションと交流があったことがきっかけです。そしてシブヤ プロダクションズを立ち上げるときに、『鉄腕アトム』の西洋版のようなアニメを作りたい、とお話ししました。デザインを少し西洋寄りにして、新しいストーリーを作りたいと。そのアイデアに対してオーケーをいただいて、いま、プロジェクトを進めています。


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▲『鉄腕アトム』を題材にした新作アニメ『ASTROBOY REBOOT』。

――『コブラ』のアニメプロジェクトについては、いかがですか?
ビスカイ 寺沢武一先生にMAGICに来ていただきたくて、ご連絡したのが始まりです(※寺沢氏はMAGIC 2016に参加)。それから、MAGICの準備を進める中で、「『コブラ』の新しいアニメを作りたい!」と考え、先生に提案させていただきました。この作品については、キャラクターデザインはもともとの『コブラ』に近いものにする予定です。


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▲『コブラ』の新作アニメ『COBRA RETURN OF JOE GILLIAN』。

▲会場には『COBRA RETURN OF JOE GILLIAN』のパネルも。

――モナコという異国で、日本のコンテンツの新しいプロジェクトが進むというのが興味深いです。
ビスカイ シブヤ プロダクションズは、西洋と日本の架け橋になりたいという気持ちから立ち上げた企業です。世界各地の皆さんが話し合って、各国のいいところを取れれば、もっといい作品ができると思っています。

――シブヤ プロダクションズは、『シェンムー3』の開発にも携わっているとのことですが、なぜ『シェンムー3』に関わることになったのですか?
ビスカイ もともと自分は『シェンムー』ファンで、『1』、『2』をプレイして、『3』がないことをとても残念に思っていたんです。ですので、鈴木裕さんとヨーロッパのイベントにお会いするたびに、冗談で「『シェンムー3』はまだですか?」とうかがっていました。

――もともと、鈴木さんとはご交流があったんですね。
ビスカイ 鈴木さんとは、じつはシブヤ プロダクションズとして、ほかの企画をいっしょに進めていたんです。その企画は残念ながらなくなってしまってしまったのですが、一方で『シェンムー3』開発が現実味を帯びてきたということを聞いて、シブヤ プロダクションズとして関わることにしました。それは、Kickstarterでの支援募集が始まるよりも前のことです。

――具体的に、『シェンムー3』にはどのように関わっているのですか?
ビスカイ 出資者のひとりとして、Co-プロデューサーとして、開発が順調に進んでいるかどうかをチェックしています。

――多くのファンが気になっていることかと思いますが、いまの開発状況はいかがでしょうか?
ビスカイ 順調ですよ。鈴木裕さんの手首が折れないかぎり、予定通りに進むと思います! 楽しみにしていてください。


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▲渋谷の街が大好きだというビスカイ氏。「初めて渋谷に行ったときは、すごく衝撃を受けました。若者が大勢いて、ネオンがキラキラしていて。とくに交差点とQFRONTが印象に残っていて、いつかこのビルにオフィスを構えたいという夢を持っています」とのこと。ちなみに、シブヤ プロダクションの日本支店は、山梨県北杜市にある。なぜ北杜市に構えたかというと……名前が“北斗神拳”に似ているからだとか!?