アニメーションのエキスパートが動きで個性化を図っている
ワーナー ブラザース ジャパンより、2016年10月13日発売予定のプレイステーション4、プレイステーション3、プレイステーション Vita、Wii U、ニンテンドー3DS用ソフト『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。ここでは、同作にてアニメーションを担当する、マット・パーマー氏へのインタビューの模様をお届けしよう。
[『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の世界]
(1)“真の”『スター・ウォーズ』体験の実現を目指して“レゴ ゲーム”はここまで進化する
(2)本作は『スター・ウォーズ』史上最高のゲームになる! TT Gamesのキーパーソンも大きな手応え
(3)“これぞ『スター・ウォーズ』の世界だ!”という想い出を可能な限り再現している
(5)「レゴを引き立てるために、背景はリアルにする」
(6)“マルチビルド”はたいへんな挑戦だった
――本作のアニメーションでもっとも注力したポイントは何ですか?
マット 私たちは、インゲームのアニメーションチームです。カットシーンとは別の部署なのですが、彼らとは協力して密接に仕事をしています。インゲームもカットシーンも同じスタイルになるように統一していますよ。私たちが注力しているのは、いかにリアルなキャラクターを造形するかです。そのためにはキャラクターの立ち居振る舞いがカギを握ると思っています。映画のティザートレーラーの段階から、映像をしっかりと観察して、キャラクターの動きを把握していきました。たとえば、“レイがどのようにモノを握るか”といったことがわかったので、そうした動きをちゃんと再現できるように心掛けました。本作には、アニメーション担当として、動かし甲斐のあるすばらしいキャラクターがたくさん登場します。たとえば、ハン・ソロ。彼が登場することは最初からわかっていました。ハン・ソロは前作の『レゴ スター・ウォーズ』(2007年)にも出ていたのですが、(映画では)30年ぶりの登場ということで、ほかのキャラクターに比べて少し年齢を感じさせるようにしました。本作にはBB-8も出てきますが、あのキャラクターはとてもシンプルで、なおかつコメディの要素を盛り込んでいくのにうってつけです。仕事をしていてとても楽しかったですね。
――レゴには動きに制約があるかと思いますが、それにリアリティを持たせて動かす秘訣は?
マット “レゴ ゲーム”のためのアニメーションは、すべて手作業なんです。モーションキャプチャーは一切使用していません。レゴのフィギュアを実物大にすると、横幅がかなり広くなり、足が短く胴長になります。したがって、ある一定の要素は考慮しないといけないです。そんなサイズ感なので、とくに女性キャラクターのキャラクタリゼーション(特徴づけ)は難しい。筋肉隆々としたキャラクターのキャラクタリゼーションにも気をつけないといけないです。レゴのキャラクターは、全部同じプロポーションですからね(笑)。私たちのチームは、人の動きや立ち居振る舞いの微妙な違いを捉えて、レゴのキャラクターに変換して表現するのに非常に長けています。それはとても困難なことなのですが、他社とは比較できないほどすばらしい才能溢れるチームなので、見事にやってのけますよ。
――もしかして、TT Gamesさんには“手付け職人”みたいな優秀なクリエイターさんがたくさんいらっしゃるのですね?
マット その通りです。
――レゴキャラクターに特化して、日々研鑽しているクリエイターがいると。そんなノウハウが蓄積しているのですね?
マット その通りです。私たちのチームは、すべてのスタッフがゲーム開発出身ではなくて、さまざまな分野出身のクリエイターたちで構成されています。手描きのアニメーターだった人、伝統的なストップモーションアニメーションの世界にいた人、パペットアニメーションをやっていた人などが集結し、それぞれが持ち前のスキルやプラスになる要素をチームに持ち寄っているんです。だからこそ、私たちが対象とする層にとって、楽しいと感じられるようなすばらしいゲームを作ることができるんです。
――それぞれのキャラクターの動きに個性を持たせているのだと思いますが、個性をつけやすかったキャラクターや、逆に個性をつけ辛かったキャラクターはいましたか?
マット 各アニメーターの強みを活かして作業することが多いですね。コメディが得意なアニメーターであれば、それに適したキャラクターを与えるようにしています。微妙な動きが得意なアニメーターであれば、またそれにふさわしいキャラクターを与えていますよ。テクニカルなキャラクターもいますね。たとえば、BB-8のようなキャラクターは、一見してボールと半ボールがくっついただけのシンプルなキャラクターに見えますが、じつはうまく表現するのはとても難しい、テクニカルなキャラクターなんです。とはいえ、当社には優秀なアニメーターがいて、アニメーションがとても上手で、BB-8のようなキャラクターも見事に描写してくれます。
――適材適所で、得意分野を任せたので、やりづらいキャラクターはいないということですね?
マット アニメーターの長所を活かす感じにはしていますね。ただ、キャラクターのリストがあって、「このキャラクターにはこういうことが必要だ」とか、「これにはこういう要素が求められている」といったことを考慮しながら、アニメーターをある意味、追い込んでいくこともあります。とてもジェネリック(一般的)なキャラクターであれば、分担して手掛けることもありますが、専門分野を持つアニメーターがいることを私たちは把握していて、基本は、キャラクターによって振り分けています。
――基本は、ひとりのキャラクターはひとりのアニメーターが担当するのですか?
マット そうですね。可能な限りそうするようにしています。
――ちなみに職人さんは何人くらいいらっしゃるのでしょうか?
マット この部署の人数はかなり変動します。プロジェクトの当初から人数をかなり増やしていき、ある程度維持した後で、減らしていきます。というわけで、数字でお答えするのは難しいですね。
――ところで、本作で個人的にいちばんお気に入りのキャラクターは?
マット C-3POかな。個人的な理由で恐縮だけど、私自身がアニメーションを担当したキャラクターなんです(笑)。すべてのキャラクターの中でもっとも気に入っているのは、BB-8ですね。
――C-3POは、どんなところに注力したのですか?
マット C-3POは誰もが知っているおなじみのキャラクターなので、これまでの7作品と、最新作のどちらにも結び付けられるように心掛けました。私たちがこれまで作ったレゴの『スター・ウォーズ』関連の作品にも登場してきましたが、メカニクス面では少し新しいものになるようにしています。個人的には、子どものころに『スター・ウォーズ』の映画を観て以来、ずっと私のお気に入りのキャラクターでした。本作でC3-POを担当するのを、個人的に目標のひとつにしていたので、“達成できた”という思いでした。
――最後になりますが、『スター・ウォーズ』はマットさんにとってどんな作品ですか?
マット 不思議なもので、私にとっては“終わりがこないもの”という感じかなあ。先ほどもお話した通り、子どものころに『スター・ウォーズ』の映画を観ていたのですが、私の息子がちょうど、『スター・ウォーズ』の1作目が公開になったときの私の年齢なんです。私が観たもの(IP)と同じものを、彼が観て大きくなろうとしている。私の両親が私を見て抱いたであろうものと同じ思いを、いま私が彼を見て抱いているわけです。歴史は巡るということで、終わりのこないものですね。