ゲーム性のために環境を拡張する
ワーナー ブラザース ジャパンより、2016年10月13日発売予定のプレイステーション4、プレイステーション3、プレイステーション Vita、Wii U、ニンテンドー3DS用ソフト『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。今回は、リード環境アーティストのジョシュ・ピッカリング=ピック氏に、同作の環境面で注力したポイントを聞いた。
[『レゴ スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の世界]
(1)“真の”『スター・ウォーズ』体験の実現を目指して“レゴ ゲーム”はここまで進化する
(2)本作は『スター・ウォーズ』史上最高のゲームになる! TT Gamesのキーパーソンも大きな手応え
(3)“これぞ『スター・ウォーズ』の世界だ!”という想い出を可能な限り再現している
(4)「リアルな動きがキャラクターに生命を吹き込む」
(6)“マルチビルド”はたいへんな挑戦だった
――デモで見る、本作の環境はとても印象的なものだったのですが、どのような点を心掛けて環境を構築していったのですか?
ジョシュ 端的に言えば、“正統な『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の世界を再現する”ことですね。可能な限り、映画に忠実に再現しています。
――一方で、本作は“レゴ ゲーム”でもあるので、レゴ的にしないといけない一面もありますよね。映画の世界観と“レゴ ゲーム”としての側面。両者のすり合わせはたいへんだったのでは?
ジョシュ レゴと背景のコントラストによってレゴが引き立つようにするため、背景は決まって最高にリアリスティックなものにしています。そのためにディテールにこだわっているのですが、リアリスティックでディテールの細密な背景によって、シンプルで平面的なレゴの色が、より引き立つんです。
――開発体制として、基本は据え置き機向けにも携帯ゲーム機向けにも同じアセット(素材)を使っているとのことですが、背景もそうなのですか?
ジョシュ それに近いですね。本作は、プレイステーション4やXbox Oneなどのため、DirectX 11をメインとして使用する初めてのゲームなのですが、スペックが低いほかのプラットフォームのために、時間をかけて最適化を行っています。
――各プラットフォーム間にはスペックの違いがあるので、やはり最適化はけっこうたいへんなのですか?
ジョシュ 最適化はいつでも難しいものです。とはいえ、私たちにはこれまで数々のゲームを作ってきた経験があります。すでに3本のタイトルを、ふたつのプラットフォームで展開してきました。最適化は慣れていくものではありますね。基本的に古いプラットフォームのほうが、テクスチャーメモリが少ないうえに、スクリーン上のジオメトリも少ない。ディテールやテクスチャーが少ないわけです。
――リアリティを保つために、実際の映画とゲームを比較しながら照らし合わせるという作業に?
ジョシュ それはたしかにありました。私たちは、ルーカスフィルムと密接に仕事をしていきました。環境によっては、世界観をさらに広げるということもありました。ご存じの通り、本作は映画で使われたロケーションを舞台にしているのですが、ゲーム性を確保するために、(映画では描かれていない)舞台のセクションを少し拡張するということがあるんです。そういう場合は、拡張して新規に作ったものをルーカスフィルムに承認してもらうという形で進めています。
――映画で描かれなかったシーンは、映画から推測して新規に構築するということですか?
ジョシュ 映画に一切出てこなかったシーンがゲームにあるというわけではなくて、映画で描かれた舞台をさらに広げていって、ゲームプレイにふさわしいものにしていっているんですね。ゲーム性に合わせて、よりゲームがおもしろくなるように、舞台を構築しているというわけです。
――ゲームプレイのために、舞台をアレンジしているということですね?
ジョシュ そうですね。たとえば、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の終盤で、ハンとフィンがスターキラー基地の中に降りていくシーンでは、映画の環境をもとにして、セクション一帯を拡張しています。ゲームプレイにふさわしいものになっていますよ。
――開発にあたっては、ゲームプレイありきの拡張になるのですか? それとも、ある程度環境を拡張しつつ、ゲーム性を加味していく形になるのでしょうか?
ジョシュ 必ずゲームプレイが先にあります。最初にデザイナーが「ここをゲームプレイのエリアとなるようにしたい」という要望を出します。それに対して、コンセプトイメージを作り、すべてのディテールの模型を作るんです。それを最終的にゲームにエキスポートするというわけです。
――環境によってゲームプレイがインスパイアされ、ゲーム性そのものが変化していくということは?
ジョシュ そういうこともたまにはありますね。私たちが環境に入れたものの何かをデザイナーが見て、それがレゴの小道具によいと感じたら、それを環境から抜き取って、レゴの小道具にするということもあります。それから、アーティストが何気なく作った洞窟に、コレクターアイテムを入れるということもありますね。そんな感じでいったり来たり……ということは、いつもやっています。
――環境の中で、とくにお気に入りのものや、気合を入れて作った箇所はありますか?
ジョシュ 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は個人的にとても気に入っています。すばらしい映画だと思う。あまりたくさんのロケーションに行かずに、ストーリーを見事に構築しており、そのおかげで私たちも砂漠や雪景色、森といった感じで、ある程度絞った環境に開発の時間をかけられるのはよいことですね。カギを握る3つのロケーションに集中できた。これはまた、よいチャレンジにもなりました。
――本作でお気に入りのキャラクターは?
ジョシュ 個人的にはレイが最高だと思う。レイはすばらしいキャラクターだね。なぜかって? 彼女は身のこなしの軽さやパーソナリティーが、ただただすばらしいと感じるからです。
――では、ジョシュさんにとって『スター・ウォーズ』とは?
ジョシュ 子ども時代の一部です。このようなプロジェクトに携われるということは、まさに夢が叶った思いです。子どものころからずっと遊んできたものが、いまでは自分の子どもがそれで遊ぶことができるというのは、最高の喜びです。