インディーとオルタナティブ、そしてカルト

 インディー(あるいは映画や音楽におけるインディーズ)という単語が、しばしば“独創的”という意味を内包しているかのように使われるが、それは多分「オルタナティブ」の混同だ。「インディーでありオルタナティブである」ことが多いからといって、資本的に独立しているのがインディーであって、必ずしもオルタナティブな(メインストリームとは異なる)感性やセンスである必要はない。
 逆もまた然り。まぁ何が言いたいかというと、インディーの本来の定義からすると加賀電子グループに属するアクセスゲームズはまったくもってインディーではないが、それは同社のSWERY氏がオルタナティブであることを否定しないということだ。

 同氏が手掛けた『レッドシーズプロファイル』にしても、『D4: Dark Dreams Don't Die』にしても、「わかってしまった人」の熱狂は、普通の人にはほとんど伝わらないかもしれない。でも多分それでいいのだ。論理を超えたオルタナティブな魅力によりある種の人を惹きつけて離さない作品を、我々はしばしば“カルト”と呼ぶ。そして先週末、GDCの行われたサンフランシスコとPAX EASTの行われたボストンで、SWERY氏は間違いなく日本が生み出した新たなカルト作家として君臨していた。

 記者はレッドシーズもD4もプレイしていて、その妙なグルーヴの魅力を自分なりに理解しているつもりだが、仮にあなたがゲームにピンと来なくても、GDCなりPAXなりで「あんたSWERYだろ? 僕にサインをくれ! 写真もお願いしていいか? 『Deadly Premonition』(レッドシーズの英題)は最高だ!」、「お、俺はハードを持ってないからD4を遊べなかったんだ。本当にPC版を頼むよ!」と異様な熱量でやってくるファン達を見れば、海を超えて彼らに何かが刺さってしまったことは推測できるだろう。

 そしてこれはすべて誇張なしの本当のことだ。ボストンで先週末行われたPAX EASTの会場で、SWERY氏との立ち話は際限なく中断され続けた。記者なんか無視する勢いで、ひっきりなしにサインや2ショット写真を求めるファンがやってきていたからだ(そしてファンを優先してもらった)。PAXには全米からゲーマーが集まってくるので、「ボストンを舞台にしたD4がPAX EASTでボストンっ子に温かく迎えられる」というような美談でもない。筋金入りのゲーマーが集まるPAXで、やってくるファンがそれだけいるというシリアスな話だ。

 そんなファンたちを喜ばせていたのが、D4のPC版デモ。正式に製品化されるかどうかは不明なものの、『D4: Dark Dreams Don't Die』の特徴であるKinectを使ったジェスチャー入力が、ちゃんとマウスでの操作に置き換えられていた。
 「自分の体を使ってジェスチャー入力をする内にプレイヤーがキャラクターと心理的にシンクロしていく」という本来の設計意図からは少しずれるものの、特にテンポ良くQTEが出てくるようなシーンでは、動きのベクトルと対処していくリズムでシンクロしそうな感じがあった。

▲アクセスゲームズのブースに出ていたD4のPC版デモ。Kinectのジェスチャー操作の代わりに、マウスでプレイ可能になっている。

 記者が2011年のGDCでレッドシーズプロファイルについての講演を取材した時、そこにいたファンの熱狂ぶりに感銘を受けて「明日のカルト作品?」とタイトルにつけたのだが、4年後、それは本当になっていた。もしD4のPC版が実現してさらなるファンを獲得した時、次に何が起こるのだろうか?

▲SWERYさん、このPC版、出すってことですか? 「(虚空を見上げながら)……。」