ヒットメーカーのクリエイティブの源泉とは?
2015年1月31日~2月1日、千葉・幕張メッセにて開催中の“闘会議2015”。ゲーム実況ストリートのソニーコンピュータエンタテインメントブースでは、“SCE JAPAN スタジオチャンネル”の出張版として、女優の結さんとSCE PR担当の北尾泰大氏をMCに公開生放送を実施している。
ここでは、2日目に行われた、『パラッパラッパー』や『ウンジャマラミー』、『ビブリボン』などの作品を生み出したクリエイター、松浦雅也氏のトークステージをリポートしよう。
『パラッパ』以前にもリズムアクションは存在した?
まずは『パラッパラッパー』の制作当時を振り返ってのトークが展開された。1996年12月に発売された本作は、まさにリズムアクションゲームの元祖と言える作品。ただし松浦氏によると、音楽のタイミングに合わせてボタンを押す“ゲームのようなもの”は、『パラッパラッパー』以前にも存在しており、実際に遊んだこともあったのだそうだ。しかしそうした“ゲームのようなもの”は、「圧倒的につまらなかったんですよ(笑)」(松浦氏)。というのは、それらはおもにアメリカで、教育目的で作られたものであって、純粋なエンターテインメントとして作られたものではなかったことによる。結さんも幼少期にそうしたソフトに触れたことがあるそうだが、「子ども向けに作られていることが、子ども心にもわかりました」(結さん)というほど、子どもだましのものに過ぎなかった。『パラッパラッパー』が革命的におもしろいタイトルとなるうえでは、そうした“圧倒的につまらない”“ゲームのようなもの”の存在にも、意味があったのかもしれない……?
また、『パラパラッパー』の魅力を語るうえでは、独特のペラペラなグラフィックも見逃せないポイントだ。しかし、じつはこの表現は、ロドニー・グリーンブラット氏がデザインしたキャラクターを、プレイステーションでうまく再現するのが困難だったことから、いわば苦肉の策として生み出されたものだったのだそうだ。
さらに、主人公パラッパくんのボイスアクターの選定にも偶然の出来事が関係していたそうだ。アメリカで収録を実施するにあたり、候補者の資料が送られてきたものの、どのサンプルを聞いても、どうにもイメージに合わず、困り果てた松浦氏。そこに、本当はオーディションに参加するはずだったのが、事情があって参加できなかったという役者から連絡が入る。そこで電話越しに即席オーディションを実施した結果、「この人がいいな、と」(松浦氏)と、その人物を採用することが決まったのだそうだ。松浦氏によると、「たぶん、オーディションに参加できなかったというのも、忘れていたとかいう理由だと思うんですけど(笑)。でも、その抜けている感じが、パラッパのイメージに重なったんです」とのこと。こうした運命的な(?)成り行きに恵まれたのも、『パラッパラッパー』にとって幸運なことだったと言えるだろう。
『パラッパ』以降もユニークな発想とこだわりが満載!
続いては、1999年3月に発売された『ウンジャマ・ラミー』についての話題に。やりたいことを詰め込んだぶん、荒削りな部分もあった『パラッパラッパー』に対して、よりブラッシュアップしたものを作ろう、という意図も込められていたという本作。しかし、松浦氏らしいこだわりは本作でも同様で、ジャケットやディスクの盤面など、ゲーム以外の部分についても見どころは多い。ちなみに主人公のラミーは左利きだが、それは松浦氏が左利きであることに由来しているそうだ。松浦氏の感覚では、「3ピースのバンドだと、中央にドラムがいて、両脇にギター、ドラムがいますよね。これを正面から見たときに、ギターとベースのネックがシンメトリーになっていると、非常にいい感じでしょう?(笑)」とのこと。言われてみれば、確かにそうかも?
つぎに、1999年12月発売の『ビブリボン』について。本作は、手持ちの音楽CDをセットすると、その音楽をもとに自動的にステージを作成してくれるという画期的な仕組みのゲームだ。
松浦氏が本作を制作したのは、とくに海外のファンから、「ほかの音楽ジャンルのゲームも作ってほしい」と請われることがとても多かったからなのだそうだ。『パラッパラッパー』ではラップとヒップホップ、『ウンジャマ・ラミー』ではギターサウンドをフィーチャーして制作したが、「やはり音楽が好きな皆さんは、好きなジャンルの音楽でゲームをしたいとう要望があることがわかったんです」(松浦氏)と実感した松浦氏。何とかそれを実現するべく考え抜き、その結果、「音楽を入れ替えられるようにしたらいいんじゃないか、と」(松浦氏)と思いついたのだという。
ちなみに本作では、音楽の特徴を波形から分析し、「このタイミングでこれを出したらゲームがおもしろくなる」というタイミングで障害物などを出したりするシステムがコアとなっている。そして本作にあらかじめ収録されているステージは、“作成した音楽に合わせてステージを作る”のではなく、“おもしろいステージになるように音楽を作成する”、という逆のアプローチから作られているのだそうだ。本作をプレイする際には、そのあたりを意識すると、ひと味違う楽しさが発見できるかもしれない。
2003年11月に発売された『モジブリボン』についての話題も。本作は、松浦氏の「人間の声で歌う以外の方法で歌を作りたい」という願望から誕生したものだそうだ。いまでこそ、音声合成は珍しいものではなくなっているが、テキストを入力すると自動的にラップになるという本作は、極めてユニークなものだった。
最後に、2014年12月、PlayStation Awards 2014の会場で披露された、松浦氏のスペシャルライブ(リポート記事はこちら)の映像を見ながら、現在、そしてこれからの松浦氏の活動について語られた。
このライブでは、映像にARマーカーを表示することで、スマートフォン越しにいろいろなものが見える特別な演出を楽しむことができたが、これは2014年内に実施したライブを通じてブラッシュアップを重ねていったものだったのだそうだ。『パラッパラッパー』のように新しいゲームジャンルを生み出したり、こうしたユニークなパフォーマンスを続けていることからも、「新しいものがお好きなんですね?」と質問された松浦氏だが、回答は意外にも、「よく誤解されますが、そうではないんです」とのこと。松浦氏は、ライブで使用しているボコーダー用のマイクが、30年来使い続けているものであることも例に挙げつつ、決して新しいものをよしとしているわけではないことを説明した。それはつまり、新旧に関わらず、“おもしろいもの”を追求し続けていることが、松浦氏のクリエイティブの源である、ということなのだろう。
なお今後の活動については、現在のところ、国内でのライブの予定は決まっていないとのこと。最新情報は、松浦氏が代表を務める七音社の公式サイト(こちら)や松浦氏のFacebookページ(こちら)をチェックしてほしい、とのことだった。
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