色っぽい男性ボーカルを活かすロックナンバー

 アークシステムワークスとトイボックスがタッグを組んで贈るアドベンチャー・RPG『魔都紅色幽撃隊』(2014年4月10日発売予定)は、『東京魔人學園伝奇』シリーズなどを手掛けた今井秋芳氏が監督を務める、“學園ジュヴナイル伝奇”最新作。本作では、東京の夕闇に潜む霊と戦う、少年少女たちの青春が描かれる。

 本作のオープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」は、数々のゲームの楽曲を手掛けてきた植松伸夫氏による書き下ろし楽曲だ。『魔都紅色幽撃隊』の世界を、植松氏はどのように音楽で表現したのか? レコーディングを終えた植松氏に直撃インタビューを行った。

『魔都紅色幽撃隊』作曲家・植松伸夫氏が語る、オープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」でのチャレンジ_05
作曲家
植松伸夫氏

■植松さんのルーツを紐解く「Shoot That Crimson Sky」

――初めに、植松さんが、『魔都紅色幽撃隊』のオープニングテーマを担当することになった経緯からうかがいたいと思います。植松さんが今井監督とお仕事をするのは、今回が初めてですよね?
植松 ええ、初めてですよ。きっかけを作ってくれたのは、トイボックスの和田康宏さんです。和田さんとは僕、飲み仲間なので(笑)。和田さんと飲んでいたときに、トイボックスの金沢十三男さん(『魔都紅色幽撃隊』プロデューサー)もいらっしゃって。そのとき、「植松さんのルーツって何ですか?」と聞かれて、「じつは僕、レッド・ツェッペリン(※'70年代を代表する、イギリスのロックバンド)なんですよ」と答えたら、「え!?」と驚かれて。そこで、ぜひ新作の曲を作ってほしい、と言われたんです。『魔都紅色幽撃隊』のサウンドは、ロックをテーマにしているとのことだったので。

――では、「ロックな曲を書いてほしい」というリクエストがあったのですね。
植松 はい。飲み会のノリで始まった話ではあったのですが、改めて今井さんがお話をしにきてくださって、オープニングテーマを作らせていただくことになりました。曲は、けっこう悩みましたね。いくつか作ってて。本当は、途中まで作ってる曲があったんだけど、ボツにしたんです。その曲は、ちょっとミディアムテンポだったんですが、アップテンポのほうがいいかな、と思って。ボツにして、EARTHBOUND PAPAS(※)の2枚目のアルバムに入れた(笑)。
※EARTHBOUND PAPAS(アースバウンド・パパス)……植松氏が率いるロックバンド。
セカンドアルバムに関する植松氏のインタビュー記事は→こちら

『魔都紅色幽撃隊』作曲家・植松伸夫氏が語る、オープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」でのチャレンジ_01
EARTHBOUND PAPASセカンドアルバム
「DANCING DAD」
DERショップにて販売中
http://www.dogearrecords.com/shop/

――えっ、どの曲ですか!?
植松 「Doppelganger」。

――そうだったんですか! あの曲は、じつは『魔都紅色幽撃隊』のために作っていた曲だったんですね。
植松 そうなんです。ちょっとミディアムテンポだったので、ゆるいかな、と思って。あとは、ディープ・パープル(※イギリスのハードロックバンド)みたいなのも考えたりもしたんだけど、それもちょっと違うのかな、と。今井さんは、'60年代、'70年代って言ってたから、もっとギターをガシャガシャやって歌うほうがいいのかな、でもアレンジはもうちょっとカッチリさせたほうがいいな、と試行錯誤して、いまの形になりました。最終的には、'60年代という感じではなくなったかもしれませんが。

――今井監督は、どんな理由から、“'60年代がいい”とおっしゃったのでしょう?
植松 ゲームの中に、“スライヴ・ブリック”という、イギリスのインディーズバンドが出てくるそうなんです。'60年代、'70年代に活躍したけど、アルバムを1枚出して消えちゃった、という設定らしくて。

――きっと、そのバンドの曲をイメージしていたんですね。曲作りについて、今井監督からは何かリクエストはありましたか?
植松 いえ、英語ボーカルということ以外は、とくにはなかったですね。今回は、キャシェルさんというアイルランドの方に歌っていただいています。キャシェルさんは、セクシーな声をしてるんですよ。ちょっと嗄れ声の。

――そこがキャシェルさんを起用したポイントだったのでしょうか?
植松 そうですね。昔、ポール・ロジャースという、うまくはないけれどすごく色っぽい声をしてるロックボーカリストがいたんですが、そういう、不器用だけどセクシーな歌声の人がいいな、という考えが僕の中にあったんですよね。キレるボーカリストじゃなくて、何か味わい深い声を持つ人が、不器用にシャウトする、みたいな。

――では実際、キャシェルさんの収録を行って、いかがでしたか?
植松 いいものができたと思いますよ。でも、収録中、いちばんハイトーンの箇所はファルセットでしか出せなかったんだけど、収録が終わった後、「ビールを飲んでたら、あそこは地声で出る」って言うんですよ。それ、先に言ってくれたら!(笑)

――ギネスを飲ませたのに! と思いますね(笑)。
植松 そうそう。収録する前に、一度キャシェルさんと飲んでたら、そのあたりのこともわかって、もっとスムーズに収録できたのかな、と思います。

――今後、この曲をライブで演奏する予定はありますか?
植松 いまは予定はありませんが、もちろん演奏できますよ。だって、アレンジやったのも、ギター弾いてるのも岡宮(※)だし。きっとライブで映える曲だと思うな。
※岡宮道生氏……EARTHBOUND PAPASのギター担当。

――サビのところなど、とくに盛り上がりそうです。
植松 僕はゲームでは、女性ボーカルの曲を作ることが多かったのですが、男性のボーカルもすごく好きなんですよ。いままで、オープニングで流れる曲を、ロックで、しかも男性ボーカルでやらせてもらうことはなかったので、今回は自分にとっても初のチャレンジでした。

――では、「Shoot That Crimson Sky」は、植松さんの新しい世界を切り拓いた曲と言えますね。
植松 そうですね。色っぽい声質の人と組むのは初めてでした。さっきも言いましたが、僕は男性の色っぽい声が好きでね、ロッド・スチュワートとか、音程なんかいい加減もんなんだけど、あの声だけで引きずり込まれる。独特の魅力がありますよね。

『魔都紅色幽撃隊』作曲家・植松伸夫氏が語る、オープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」でのチャレンジ_04

■曲作りをしているときは、どこかとつながっている気がする

――ところで植松さん、『魔都紅色幽撃隊』って、霊がテーマなんですよ。
植松 来た。来ましたね、ゴースト。

――主人公たちはゴーストハンターなんですが。植松さん、ゴースト好きですよね?
植松 大好き。本当に好き。僕、自分の人生の中で、音楽とオカルトのパーセンテージを考えると、オカルトのほうが勝ってるかもしれないと本当に思う(笑)。

――本当ですか(笑)。
植松 昔から、僕、ああいう不思議なことが好きで。よく当たる占い師とか、未来が読める人がいる、と聞くと、会いに行きますしね。なかなか「こいつ本物だ」って人には会えないですけど。オバケはこの世に、本当にいるんですかね?

――スタジオには霊がいるって、よく言いますよね。
植松 僕、昔一度、どこかのスタジオで……青山墓地だ! 青山墓地のスタジオで録音してるときに、「青山墓地で写真撮ったら、何か写るかもしれないぜ」とか言って、休憩時間にスタッフと撮りに行ったんですよ。で、スタジオに戻ってきて、ソファーで休んでたら、身体がすごく重くなって、気持ち悪くなってきて。どうしたのかな? と思っていたら、そのスタッフが「植松さん、僕、立てないです」とか言い始めて。時間が経ったらふたりとも治ったんだけど、あれは何だったんだろう。

――それは、墓地にいた何かが憑いてきちゃったのかも……。
植松 でもね、死後の世界とか妖怪とかわからないけど、音楽を作ってる人とか、絵を描いてる人とか、文章を書いてる人とか、集中してるときって、何かどこかとつながっているような気はするんですよね。ほかの世界と、つながってるんじゃないかと思うときはある。

――そういうとき、曲作りははかどるのですか?
植松 そうですね、はかどります。僕、朝5時に起きて仕事をしてるんですよ。目が覚めてない、ボーッとした状況で朝5時にベッドから出て、仕事部屋へ行って、もういきなり作曲を始めるんですよ。それがね、自分の中でいちばんはかどる。寝てるときって、何かとつながっているという説があるじゃないですか。その状態を引きずってるのかな、と。そういう別の世界が存在するのか、確証は持てませんが、多分あるんだろうなとは思います。

■またキャシェルさんと組んでみたい!

――『魔都紅色幽撃隊』は4月10日に発売されますが、プレイヤーに、「Shoot That Crimson Sky」をどのように楽しんでもらいたいですか?
植松 先ほども言いましたが、あんまりゲームで作ったことのないタイプの曲なので、「あ、こういう曲も、あいつは作るんだな」と思ってもらえたらうれしいです。キャシェルさんとは、また何か別の形で、いっしょに曲を作ってみたいな。あの人のおいしい音域を活かす曲を作ってみたいです。

――キャシェルさんの色っぽい声が、さらに活かされるような?
植松 はい。キャシェルさん、ふだんはファンクっぽい音楽をやっているそうなんですよ。それから、アップテンポ、バラード、ミディアムテンポぐらいの3パターンのロックがあってもおもしろかったかな、と思っているので、また機会があったらチャレンジしてみたいですね。

ボーカルを担当したキャシェルさんにショートインタビュー!

『魔都紅色幽撃隊』作曲家・植松伸夫氏が語る、オープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」でのチャレンジ_06
歌手
キャシェルさん

――「Shoot That Crimson Sky」はどのような曲なのか、教えていただけますか?
キャシェル 「Shoot That Crimson Sky」は、とってもストロングなロックサウンドです。情熱とパワーに溢れている曲で、ゲームにマッチしていると思います。歌と映像、ゲームのコンビネーションは、きっと皆さんに興奮していただけるものになっていると思うので、楽しみにしていてください。

――歌詞の中では、どんなことが表現されているのですか?
キャシェル 困難を乗り越えること、パワーを表現した歌詞です。ちょっぴりダークで、ミステリアスな部分もあります。パワフルなイメージを持って歌いました。

――歌うときに、とくに心がけたことを教えてください。
キャシェル ふだんは低い声で歌うことが多いので、高く、強く歌うところでは、さまざまなアプローチを試みながら歌いました。いい結果が出たと思いますので、ぜひ聴いてください。

――ちなみに、キャシェルさんは霊の存在を信じますか?
キャシェル もちろんです。アイルランド人はもちろん信じています、ハロウィンを作ったのはアイルランド人ですから! 見たことは……たぶんないです(笑)。幽霊を見たのか、酔っ払っていたのかわからない、ということはありましたが。写真の中では見たことはありますよ! 日光に行ったときに写真を撮って、後で見てみたら、森の中に何か浮いているものが写っていたんです。

――最後に、ゲームを楽しみにしている人へのメッセージをお願いします。
キャシェル 今回のゲームは、キャラクターを描く方、映像や音楽を作る方など、多くの人の努力によってできあがったものです。楽しんでいただけたらうれしいです。

『魔都紅色幽撃隊』作曲家・植松伸夫氏が語る、オープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」でのチャレンジ_03
『魔都紅色幽撃隊』作曲家・植松伸夫氏が語る、オープニングテーマ「Shoot That Crimson Sky」でのチャレンジ_02
▲ファミ通.com『魔都紅色幽撃隊』特設サイトもチェック!

(画像をクリックすると特設サイトに飛べます)

魔都紅色幽撃隊
メーカー アークシステムワークス
対応機種 PS3プレイステーション3 / PSVPlayStation Vita
発売日 2014年4月10日発売予定
価格 各6800円[税抜](各7344円[税込])
ジャンル アドベンチャー・RPG / 学園
備考 監督・脚本:今井秋芳、キャラクターデザイン:倉花千夏、オープニングテーマ:植松伸夫、プロデューサー:金沢十三男、田口和憲、エグゼクティブ・プロデューサー:和田康宏、開発:トイボックス